- 77歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。半年前から呼吸困難を自覚するようになった。咳と痰とはないが、歩行や階段昇降時に呼吸困難が増強する。喫煙は20本/日を50年間。意識は清明。身長160cm、体重43kg。体温36.2℃。脈拍60/分、整。血圧146/70mmHg。心音に異常を認めない。呼吸音は減弱している。血液所見:赤血球434万、Hb 13.5g/dl、Ht40%、白血球5,400、血小板19万。血液生化学所見:総蛋白6.7g/dl、アルブミン4.0g/dl、尿素窒素19.0mg/dl.クレアチニン0.9mg/dl.総ビリルビン0.5mg/dl、AST 19IU/l、ALT 7IU/l.LDH 188IU/l(基準176~353)、ALP 178IU/l(基準260以下)。CRP 0.2mg/dl。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.42、PaO2 72Torr、PaCO2 36Torr。胸部エックス線写真と胸部単純CTとを以下に示す。
- この患者の肺機能検査所見はどれか。
- a. %VC 97%、FEV1.0% 88%、%DLCO 95%
- b. %VC 62%、FEV1.0% 88%、%DLCO 63%
- c. %VC 97%、FEV1.0% 58%、%DLCO 95%
- d. %VC 97%、FEV1.0% 58%、%DLCO 63%
- e. %VC 62%、FEV1.0% 58%、%DLCO 95%
[正答]
※国試ナビ4※ [102A050]←[国試_102]→[102A052]
★リンクテーブル★
[★]
- 20歳の女性。咳を主訴に来院した。3日前から乾性咳蠍が出現し、2日前から発熱、頭痛および前胸部痛があった。抗菌薬の投与を受けたが改善しなかった。18歳からアレルギー性鼻炎を指摘されている。10日前から喫煙を始めた。ペットは飼育していない。意識は清明。身長154cm、体重48kg。体温36.9℃。脈拍104/分、整。血圧120/80mmHg。胸部両側下部にcoarse cracklesを聴取する。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球394万、Hb13.8g/dl、Ht42%、白血球12,200(桿状核好中球12%、分葉核好中球24%、好酸球56%、単球1%、リンパ球7%)、血小板37万。気管支肺胞洗浄液中の好酸球が80%を占めている。胸部エックス線写真と胸部単純CTとを以下に示す。
- 治療薬はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102A051]←[国試_102]→[102A053]
[★]
- 58歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。若いころから運動時の息切れがあった。呼吸困難は少しずつ増強している。湿性咳嗽を認める。意識は清明。体温36.7℃。脈拍88/分、整。血圧120/68mmHg。心音に異常を認めない。胸部両側にcoarse cracklesを聴取する。血液所見:赤血球429万、Hb12.9g/dl,Ht39%、白血球9,600。CRP2.1mg/dl。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.45、PaO2 59Torr、PaCO2 45Torr。胸部エックス線写真と胸部単純CTとを以下に示す。
- 考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102A049]←[国試_102]→[102A051]
[★]
[★]
- 英
- chronic obstructive pulmonary disease, COPD
- 同
- chronic obstructive lung disease COLD
- 関
- 慢性気道閉塞
- 日本語訳としての「慢性閉塞性肺疾患」より「COPD」を使用することが勧められている
概念
- 「COPD とは有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限を呈する疾患である.この気流制限には様々な程度の可逆性を認め、発症と経過が緩徐であり、労作性呼吸困難を生じる」疾患
- 完全に可逆性ではない気流制限が特徴 ← 気管支喘息ではβ2受容体作動薬により気流制限の改善をみる。
- 慢性気管支炎や肺気腫により常に気道閉塞(一秒率:一秒量FEV1/努力肺活量FVC<70%)に陥っている病態で、気管支拡張薬に対する反応は乏しく、症状(呼吸困難)が恒常的・慢性的である。
疫学
病因
- 参考1
臨床上のリスク因子
- 喫煙
- 気道の過敏性
- 環境からの暴露
- アトピー体質
- 抗酸化物質の欠乏
- 気管支肺低形成
- 結核
遺伝形式
症状
身体所見
検査
- PaO2:低下
- PaCO2:上昇
- A-aDO2:上昇
- %VC:軽度の肺気腫においては時に正常より増えていることがあるが、進行した肺気腫においては低下する。(093E019)
- %DLCO:肺胞領域の破壊により拡散能低下
- 肺肝境界の下降、肺の過膨張、
- 気管短縮(輪状軟骨上縁から胸骨上炎までが4-5cm未満に短縮していることがある、らしい)(出典不明、機序不明)
診断
- 呼吸器学会ガイドライン
- 1. 気管支拡張薬投与後のスパイロ検査で、FEV1/FVC<70%
- 2. 他の気流制限を来しうる疾患を除外する
-
- 検査は原則として急性呼吸器感染症のない臨床安定期に行う
- 短時間作用型気管支拡張薬は少なくとも 6 時間、長時間作用型気管支拡張薬は 24 時間中止したうえで検査を行う
- 検査に用いる気管支拡張薬は、通常、短時間作用型吸入用 β2刺激薬を原則とするが、抗コリン薬あるいは両者の併用であってもよい
- 投与方法はスペーサーを用いた β2刺激薬定量噴霧式吸入薬(MDI)吸入、ネブライザー吸入のいずれであってもよい
- 気管支拡張薬吸入後の検査は吸入後 30~60 分後に行うべきものとする.
- 気管支拡張薬吸入効果の評価は、吸入前の FEV1.0 と吸入後 FEV1.0 を比較して、200ml 以上の増加かつ前値に対して 12%以上の増加があったときに有意と判定
鑑別診断
評価法
- mMRC(the Modified British Medical Research Council):日常生活に対する呼吸困難(息切れ)の影響を測定
- CAT(COPD assessment test):COPDの症状やQOLに関する8項目を0〜40点で評価
- IPAG(International Primary Care Airways Group):COPD 関連症状と危険因子を測定
治療
病期分類
- ガイドライン1
- 0期:リスク群:慢性症状(咳嗽・喀痰):(a) 禁煙、インフルエンザワクチン接種(肺炎球菌ワクチンはガイドライン上では推奨されていないが(COPD増悪予防に対する効果が証明されなかった?)、接種した方がよいとする意見がある)
- I期:軽症:80%≦%FEV1:(a)。(b) 必要に応じ短時間作用型の気管支拡張薬を使用。
- II期:中等症:50%≦%FEV1<80%:(a)。(b)。(c) 呼吸リハビリテーション、長時間作用型気管支拡張薬の定期的使用
- III期:重症:30%≦%FEV1<50%:(a)。(b)。(c)。(d) 吸入ステロイド薬の考慮(増悪を繰り返す)
- IV期:最重症:%FEV1<30%または%FEV1<50%かつ慢性呼吸不全あるいは右心不全合併:(a)。(b)。(c)。(d)。(e) 長期酸素療法、外科的治療の考慮
安定期の治療
- 治療のmodality:薬物療法、包括的呼吸リハビリテーション、患者教育、栄養管理、酸素療法、換気補助療法、肺容量減量手術、肺移植、在宅管理
急性増悪
- COPDの急性増悪や重症度の分類には定説はない (ガイドライン1)
- COPDの急性増悪とは「病態が日内変動を超えて悪化し、日常施行していた治療内容を変更せざるを得ない状態」(呼吸器疾患最新の治療2004-2006 p.267)
- 原因:気道感染と大気汚染が最多。1/3は原因不明。
COPDの急性増悪
定義
- COPDの自然の進行の中で起きる現象で、呼吸困難、咳嗽、喀痰といった症状が日常の変動を超えて増悪したもの
入院適応
- 突然の安静時呼吸器困難の出現など、症状の顕著な増悪
- 基盤にあるCOPDが重症(III度,IV度)
- 新たな身体所見の発言
- 増悪に対する初期治療に反応しない
- 重大な合併症の存在
- 頻回の増悪
- 新たに発生した不整脈
- 診断が不確実な例
- 高齢者
- 不十分な住宅サポート
- modality (ガイドライン1)
- 気管支拡張薬吸入の容量/回数の増加(例えば、短期間作用型β2刺激薬が用いられる)
- ステロイドの全身投与(経口/静脈注射):増悪からの回復、肺機能の回復までの時間を短縮する
- (喀痰から感染症が疑われる場合)抗菌薬の投与
- 外来 :経口ペニシリン系薬、ニューキノロン系薬
- 入院例:注射用β-ラクタム系薬/β-ラクタマーゼ阻害薬、第3,4世代セフェム系薬、カルバペネム系薬、ニューキノロン系薬
病原体
予後
参考
- 1. [charged] Chronic obstructive pulmonary disease: Risk factors and risk reduction - uptodate [1]
ガイドライン
- 1. COPD診断と治療のためのガイドライン第2版
- http://www.jrs.or.jp/quicklink/glsm/guideline/nopass_pdf/copd_summary.pdf
国試