出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/03/19 09:03:05」(JST)
インターロイキン-1 (英:Interleukin-1、IL-1) はサイトカインと呼ばれる生理活性物質の一種であるインターロイキンの中でも最初に同定された分子である。炎症反応に深く関与し、炎症性サイトカインと呼ばれるグループに含まれる。IL-1には現在IL-1αとIL-1βの2種類が同定されている。IL-1はもともと内因性発熱物質やリンパ球活性化因子などとして発見された。その後1984年-1985年にIL-1α及びβの2種類が存在することが明らかになり、これらが同一のインターロイキン-1受容体に結合して生理作用を発現することも分かった。2種類のIL-1の間に生理作用の差はないものと考えられている。また、近年ではIL-18もIL-1ファミリーに含まれると考えられている[1]。
目次
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IL-1は分子量17.5kDaのタンパク質である。構造中に12個のβシート構造を有する[2]。
以下にIL-1のアミノ酸配列を示す(NCBIより引用)。
1 makvpdmfed lkncysenee dsssidhlsl nqksfyhvsy gplhegcmdq svslsisets
61 ktskltfkes mvvvatngkv lkkrrlslsq sitdddleai andseeeiik prsapfsfls
121 nvkynfmrii kyefilndal nqsiirandq yltaaalhnl deavkfdmga yksskddaki
181 tvilrisktq lyvtaqdedq pvllkempei pktitgsetn llffwethgt knyftsvahp
241 nlfiatkqdy wvclaggpps itdfqilenq a
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61 frqaasvvva mdklrkmlvp cpqtfqendl stffpfifee epiffdtwdn eayvhdapvr
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181 knlylscvlk ddkptlqles vdpknypkkk mekrfvfnki einnklefes aqfpnwyist
241 sqaenmpvfl ggtkggqdit dftmqfvss
IL-1α及びIL-1βは共に前駆体タンパク質(アミノ酸残基数 IL-1α:271,IL-1β:269)として産生されるが、その後酵素により構造の一部を切断されることにより成熟体となる(プロセシング)。この過程に関与する酵素はIL-1αとIL-1βではそれぞれ異なり、IL-1αはカルパインと呼ばれる酵素により行われる。一方IL-βはカスパーゼ-1(別名IL-1β変換酵素、英:IL-1β Comverting Enzyme、ICE)などから構成されるインフラマソームと呼ばれるタンパク質複合体により産生されることが知られている[3]。成熟後のIL-1α、IL-1βはそれぞれ159及び153アミノ酸残基であり、それぞれの間での相同性は低いが類似した高次構造を示す。
先に述べたとおりIL-1は細胞膜表面のIL-1受容体を介して作用することが知られている。このIL-1受容体にはタイプI(IL-1RI)及びタイプII(IL-1RII)の2つのサブタイプが存在する。これらの受容体は細胞膜を1回貫通する構造をとっており、細胞外ドメインと細胞内ドメインに大きく分けて考えられる。細胞外ドメインは免疫グロブリン様構造を有する一方、細胞内ドメインの構造はToll様受容体(英:Toll-like Receptor、TLR)と相同性が高く、Toll/IL-1受容体相同領域(TIRドメイン)と呼ばれる。IL-1RIIは細胞内ドメインをほぼ欠損しているためシグナル伝達には関与しないがIL-1との結合能は持っているため、IL-1とIL-1RIとの結合を阻害しむしろ抑制的に働く(以降、細胞内ドメインを持つIL-RIをIL-1受容体と表記する)。さらにIL-1に対する可溶性受容体が存在することが明らかになっており[4]、IL-1をトラップすることによりシグナル伝達を阻害している。
リガンドの結合による細胞内シグナル伝達経路はTLRと同様であり、以下の通りである。まず、IL-1受容体のTLRにアダプタータンパク質であるミエロイド系分化因子88(英:Myeloid Differentiation Protein-88、MyD88)を介してセリン/スレオニンキナーゼであるIL-1受容体関連キナーゼ(英:IL-1 Receptor Associating Kinase、IRAK)を活性化する。さらにIRAKの下流にあるアダプタータンパク質TRAF-6(TNF Receptor-associated Factor-6)を介して炎症反応に関与するNFκB(Nuclear Factor κB)やMAPキナーゼ等の活性化を引き起こし、転写活性を示す[5]。
IL-1の生理作用は多岐にわたる。炎症時における発熱や急性期タンパク質の産生誘導への関与をはじめとし、リンパ球、単球及び顆粒球などの免疫系細胞の増殖促進、あるいは血管内皮細胞への接着促進、破骨細胞活性の増強などである。
IL-1は単球をはじめ、樹状細胞や好中球、T細胞、B細胞、マクロファージ、内皮細胞など様々な細胞によって広く産生される。
IL-1受容体アンタゴニスト(英:Interleukin Receptor Antagonist、IL-1Ra)とはIL-1受容体に結合してIL-1α及びIL-1βと競合的に拮抗し、IL-1の生理活性の発現に対して抑制的に働くタンパク質である。IL-1のそれぞれに対して相同性を示す。IL-1とIL-1Raのバランスが崩れ、IL-1優位になったときに関節リウマチなどの疾患が生じる。関節リウマチ治療薬としてIL-1受容体拮抗薬アナキンラ(英:Anakinra)が開発されているが、日本ではまだ使用が認可されていない。
IL-1 may refer to:
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機能 | サブグループ | サイトカイン | 標的 | 機能 |
炎症性サイトカイン | TNFファミリー | TNF-α | 白血球、上皮細胞 | 活性化 |
インターロイキン | IL-1 | 上皮細胞、リンパ球 | 活性化 | |
IL-6 | 種々の細胞 | 活性化 | ||
IL-8 | 白血球 | 炎症部位遊走 | ||
T細胞の増殖・分化 | インターロイキン | IL-2 | T細胞 | 活性化。増殖 |
IL-4 | T細胞 | 増殖 | ||
Th2細胞 | 分化誘導 | |||
IL-12 | Th1細胞 | 分化誘導 | ||
インターフェロン | IFN-γ | Th2細胞 | 分化抑制 | |
B細胞の増殖・分化 | インターロイキン | IL-2 | B細胞 | 活性化 |
IL-4 | B細胞 | 活性化、増殖、分化 | ||
IL-5 | B細胞 | 活性化、増殖 | ||
IL-6 | B細胞 | 増殖、分化 | ||
TGF-β | B細胞 | 分化(IgA分泌) | ||
アレルギー調節サイトカイン | インターロイキン | IL-3 | 肥満細胞 | 増殖、分化促進 |
IL-4 | B細胞 | IgEクラススイッチ促進 | ||
IL-5 | 好酸球 | 増殖、分化促進 | ||
IL-13 | B細胞 | IgEクラススイッチ促進 | ||
インターフェロン | IFN-γ | B細胞 | IgEクラススイッチ抑制 | |
走化性サイトカイン(ケモカイン) | CCケモカイン | MIP-1 | 好中球 | 遊走 |
MIP-2 | ||||
RANTES | 単球 | |||
CXCケモカイン | IL-8 | 好中球、リンパ球、好塩基球 | ||
SDF-1 | ||||
造血系サイトカイン | SCF | |||
インターロイキン | IL-7 | |||
erythropoietin | ||||
コロニー刺激因子 | GM-CSF | |||
G-CSF | ||||
M-CSF |
agent | clinical uses | |
aldesleukin | interleukin-2 | renal cell carcinoma, metastatic melanoma |
erythropoietin | epoetin | anemias (especially in renal failure) |
filgrastim | granulocyte colony-stimulating factor | recovery of bone marrow |
sargramostim | granulocyte-macrophage colony stimulating factor | recovery of bone marrow |
α-interferon | hepatitis B and C, Kaposi's sarcoma, leukemias, malignant melanoma | |
β-interferon | multiple sclerosis | |
γ-interferon | chronic granulomatous disease | |
oprelvekin | interleukin-11 | thrombocytopenia |
thrombopoietin | thrombocytopenia |
年齢 | 原因 |
乳児(生後3ヶ月未満) | 敗血症、細菌性髄膜炎、尿路感染症、肺炎、B群溶連菌感染、グラム陰性桿菌 |
乳児(生後3ヶ月以降) | ウィルス感染(突発性発疹などの発疹性疾患)、中耳炎、尿路感染症、消化器・呼吸器疾患、川崎病 |
幼児、学童期 | 溶連菌感染症、伝染性単核球症、膠原病、factitious fever(詐病)、学校での感染症の流行 |
see also step beyond resident 2 救急で必ず出会う疾患編 p.20
実熱 | 虚熱 | |
発病 | 急速に発病 | 緩徐に発病 |
症状 | 悪寒、高熱 顔面紅潮 苦痛あり、四肢運動多 声大きく明瞭 口渇強い 便秘 色調濃い尿 |
軽度悪寒、熱覚 顔面蒼白 苦痛少なく、静かに臥床 声小さい 口渇少ない 軟便、下痢 薄い色調の尿 |
脈 | 早く大きく、緊張 | 小さく早く、緊張なし |
舌苔 | 厚くて乾燥、白~黄~褐色 | 薄くて白い、無苔、鏡面舌 |
その他 | 頭痛、関節痛、無汗~発汗 | 倦怠感、眩暈感、盗汗 |
実熱 | 麻黄湯 | 悪寒、発熱、頭痛、関節痛 |
葛根湯 | 悪寒、発熱、頭痛、肩背部のこり | |
小柴胡湯 | 午後からの発熱、食欲不振、口の苦み | |
柴胡桂枝湯 | 詳細孤島の症状、関節痛、腹痛 | |
大柴胡湯 | 胆嚢炎、便秘 | |
柴陥湯 | 詳細孤島の症状、咳嗽、胸痛 | |
黄芩湯 | 発熱、腹痛、下痢 | |
虚熱 | 桂枝湯 | 発熱、軽度の頭痛、発汗 |
桂麻各半湯 | 発熱、発疹 | |
参蘇飲 | 発熱、食欲不振、咳嗽、あつがる | |
柴胡桂枝乾姜湯 | 微熱、上半身の自汗、盗汗、食欲不振、背部の冷汗 | |
竹じょ温胆湯 | 発熱、咳嗽、不眠 | |
補中益気湯 | 微熱、倦怠感、食欲不振、盗汗 | |
滋陰降火湯 | 微熱、下半身の脱力感、盗汗、咳嗽 | |
滋陰至宝湯 | 微熱、倦怠感、食欲不振、精神不安定状態 | |
真武湯 | 陰病、微熱、食欲不振、倦怠感、いつも寝ている | |
麻黄細辛附子湯 | 陰病、微熱、寒がる |
07解 | 異メ | 流マ | HIM.A-1 | ||||
顆粒球 | 好中球 | 桿状核球 | 40~70 | 44~66 | 40~60 | 4~14 | 0~5 |
分葉核球 | 43~59 | 40~70 | |||||
好酸球 | 2~4 | 0~ 4 | 2~4 | 0~6 | |||
好塩基球 | 0~2 | 0~0.5 | 0~2 | 0~2 | |||
無顆粒球 | リンパ球 | 25~40 | 30~38 | 26~40 | 20~50 | ||
単球 | 3~6 | 0~ 5 | 3~6 | 4~8 |
(margination)
(rolling)
(adheresion & arrested)
(transmigration)
血管内皮細胞 | 白血球 | |
Rolling | ||
E-selectin | - | 糖鎖(SLex) |
P-selectin | - | 糖鎖 |
糖鎖(GlyCAM-1)(=CD34) | - | L-selectin |
Adhestion | ||
ICAM-1 | - | LFA-1 integlin(CD11a/CD18), Mac-1 integlin(CD11b/CD18) |
VCAM-1 | - | VLA-1 integlin |
transmigration | ||
PECAM-1(CD31) | - | PECAM-1(CD31) |
尿蛋白 | |
150mg/日未満 | 健常者の基準(15mg/dL 10dL) |
300mg/日 | 糖尿病性腎症の顕性タンパク尿の定義 |
1000mg/日 | 起立性タンパク尿や熱性タンパク尿などの良性タンパク尿の上限 (血尿があるときは500mg/日のタンパク尿で腎疾患を考慮) |
1500-3000mg/日 | 尿細管障害によるタンパク尿の限界で、これ以上は糸球体疾患と考える。 |
分子量 (kDa) |
糖質 (%) |
機能 | |
β2ミクログロブリン | 11 | 0 | 構造タンパク・HLAのL鎖 |
リゾチーム | 15 | 0 | 消化殺菌酵素 |
レチノール結合蛋白 | 20 | 0 | ビタミンA担体 |
免疫グロブリンL鎖 | 22 | 0 | 構造タンパク質 |
α1ミクログロブリン | 30 | 20 | 輸送担体 |
α1酸性糖タンパク | 44 | 38 | 急性相蛋白 |
アルブミン | 67 | 0 | 膠質浸透圧維持、輸送担体 |
煮沸法 | スルフォサリチル酸法 | 試験紙法 | |
原理 | 蛋白質の熱変性による混濁 (特異性が高い) |
蛋白と酢酸の不溶性塩による混濁 | 指示薬の蛋白誤差を利用 |
感度 | 5mg/dl | 1.5-2mg/dl (鋭敏) |
5-20 mg/dl |
偽陽性 | ヨード造影剤 トルブタミド ペニシリン系抗菌薬 セフェム系抗菌薬 |
リン酸塩を含むアルカリ性尿 第4級アンモニウム化合物 (防腐剤、洗浄剤)EDTAのことか? | |
偽陰性 | リン酸塩を含むアルカリ性尿 | 低分子タンパク尿(BJP等) |
産生細胞 | 種類 | 誘発因子 | 作用 | ||
I型インターフェロン | IFN-α | 好中球、マクロファージなど | 14種類以上 | ウイルス、細菌内毒素 | 抗ウイルス効果、抗腫瘍効果 |
IFN-β | 線維芽細胞、上皮細胞など | 1種類 | ウイルス、2本鎖RNA | 抗ウイルス効果、抗腫瘍効果 | |
II型インターフェロン | IFN-γ | T細胞、NK細胞など | 1種類 | 抗原刺激、サイトカイン | 免疫細胞の活性化、免疫系の制御 |
発熱 | ほぼ必発 |
甲状腺機能異常 | 約10% |
間質性肺炎 | 非常に稀 |
精神症状 | 約10% |
白血球減少 | ほぼ必発 |
血小板減少 | ほぼ必発 |
蛋白尿 | 約10% |
糖尿病 | 0.1-5% |
口腔内病変 | 約20% |
脱毛 | 約5% |
眼底出血 | 約20% |
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