アルポート症候群
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アルポート症候群(アルポートしょうこうぐん、英: Alport syndrome)は感音性難聴、眼異常を伴う遺伝性の進行性腎炎である。
概要
神経性難聴を伴う家族性遺伝性腎炎で伴性優性遺伝のものが多い。幼児期には血尿のみであるが年齢とともに蛋白尿が出現し、20歳前後までに腎不全に陥る。難聴は神経性で高音領域で著明であり、腎障害の進行とともに進行する。男性の方が女性よりも進行が早く、20歳前後で腎不全になり、難聴の合併率も高い。水晶体異常、白内障なども伴う。一方女性は無症候性血尿が主体であり、腎不全に陥るのは10%以下である。病理学的には光学顕微鏡では糸球体の増殖性変化が主体であり、間質に泡沫細胞を認めるが、初期にはほとんど正常と変わらない。電子顕微鏡では糸状体基底膜の細裂、網目状変化が特徴である。 腎不全への進行を阻止する特異的な治療法は無く、基本的は慢性腎不全と同様の保存治療を行い、最終的に末期腎不全となった場合は透析・移植療法を行う。
原因
アルポート症候群はIV型コラーゲンの異常に基づく先天性疾患であり、原因となる遺伝子はIV型コラーゲンのα鎖に関わっているCOL4A3, COL4A4, COL4A5の3つが知られるが、COL4A3とCOL4A4は第2染色体上に、COL4A5はX染色体上にあり、それぞれ常染色体劣性遺伝、伴性優性遺伝の形式を示す。アルポート症候群の約80%が伴性優性遺伝を示すCOL4A5が原因である。IV型コラーゲンは腎臓の糸球体基底膜や蝸牛のらせん靭帯にあり[1]、これらが障害されることにより腎障害や感音性難聴をきたすとされている。
症状
アルポート症候群では腎障害に加えて難聴や眼症状を呈することが多い。一般にX染色体が1つしかない男性の方が、2つある女性よりも症状の進行が速い。
- 血尿
- 蛋白尿
- ネフローゼ症候群
- 白内障
- 円錐水晶体
- 感音性難聴
参考文献
- 佐々木成『腎臓内科学』(2010)シュプリンガージャパン ISBN 9784431100898
出典
- ^ Zehnder AF, Adams JC, Santi PA, Kristiansen AG, Wacharasindhu C, Mann S, Kalluri R, Gregory MC, Kashtan CE, Merchant SN (November 2005). “Distribution of type IV collagen in the cochlea in Alport syndrome”. Archives of Otolaryngol Head and Neck Surgery 131: 1007-1013. PMID 16301374. http://archotol.ama-assn.org/cgi/reprint/131/11/1007.
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Japanese Journal
- 岡 政史,野津 寛大,飯島 一誠,松尾 雅文
- 日本小児腎臓病学会雑誌 = Japanese journal of pediatric nephrology 23(1), 8-12, 2010-04-15
- … Alport症候群 (AS) は感音性難聴を伴う遺伝性進行性腎疾患である。 … 今回,分子遺伝学的特徴および近年報告された家族性良性血尿症候群との関連について,常染色体性Alport症候群を中心に概要をまとめる。 …
- NAID 10026412082
- 腎疾患と電解質異常を来す疾患の遺伝子学 (臨床遺伝子学'10)
Related Links
- 医学生時代に知識の整理のために書き留めておいたメモの集積です。
- Alport症候群(アルポート症候群). 1. 概要. 進行性遺伝性腎炎で、約9割がX連鎖型 遺伝を呈します。重症例では男性で10代後半から20代前半に末期腎不全に進行する ことから、若年透析導入の主因ともなっています。糸球体基底膜に電子顕微鏡で認める ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 40歳の女性。下肢の浮腫を主訴に来院した。半年前に職場の健康診断で蛋白尿を指摘されたが、そのままにしていた。1か月前から両側下腿の浮腫が出現し、次第に増悪するため受診した。身長 160cm、体重 58kg。脈拍 64/分、整。血圧 132/90mmHg。尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球 10~20/1視野、白血球 O~2/1視野、赤血球円柱と顆粒円柱とを認める。尿蛋白 4.0g/日。血液所見:赤血球 460万、Hb 13.1g/dL、Ht 42%、白血球 3,800(桿状核好中球 40%、分葉核好中球 26%、好酸球 2%、好塩基球 O%、単球 7%、リンパ球 25%)、血小板 19万。血液生化学所見:総蛋白 4.3g/dL、アルブミン 1.9g/dL、IgG 2,400mg/dL(基準 960~1,960)、IgA 486mg/dL(基準 110~410)、IgM 188mg/dL(基準 65~350)、尿素窒素 31mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、尿酸 7.0mg/dL、血糖 116mg/dL、HbA1c 6.3%(基準 4.6~6.2)、トリグリセリド 143mg/dL、LDLコレステロール 213mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.1mg/dL、抗核抗体 640倍(基準 20以下)。腎生検のPAS染色標本(別冊No. 5A)と蛍光抗体C1q染色標本(別冊No. 5B)とを別に示す。Congo-Red染色は陰性である。
- 考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111A024]←[国試_111]→[111A026]
[★]
- 66歳の男性。両下腿の浮腫と体重増加とを主訴に来院した。10年以上前に糖尿病と診断され治療を受けていたが、最近は医療機関を受診していなかった。3か月前に両下腿の浮腫が出現し浮腫の増悪と4kgの体重増加とを自覚したために受診した。腎疾患の家族歴はない。身長 165cm、体重 75kg。脈拍 76/分、整。血圧 138/72mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、血管雑音を聴取しない。顔面および下腿に圧痕性の浮腫を認める。尿所見:蛋白4+、潜血(-)、尿蛋白 4.2g/日。血液所見:赤血球 380万、Hb 12.0g/dL、Ht 38%、白血球 8,800、血小板 24万。血液生化学所見:総蛋白 5.8g/dL、アルブミン 2.6g/dL、尿素窒素 25mg/dL、クレアチニン 1.8mg/dL、尿酸 6.8mg/dL、HbA1c 7.2%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 280mg/dL。
- 蛋白尿の原因として考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [112D072]←[国試_112]→[112D074]
[★]
- 65歳の男性。感冒症状のため近医を受診したところ、蛋白尿を指摘され精査のため来院した。尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血2+、沈渣に赤血球10~20/1視野、白血球3~5/1視野。血液所見:赤血球400万、Hb13.0g/dl、Ht39%。血清生化学所見:空腹時血糖90mg/dl、総蛋白6.4g/dl、アルブミン4.0g/dl、尿素窒素32mg/dl、クレアチニン4.0mg/dl、尿酸8.0mg/dl、総コレステロール200mg/dl。腹部超音波検査で腎臓の萎縮を認めない。腎生検の光顕PAS染色標本を以下に示す。最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099A034]←[国試_099]→[099A036]
[★]
- 21歳の男性。難聴を主訴に来院した。10歳頃から両側難聴があったが原因不明と言われていた。3年前から両側難聴が進行し、昨年から補聴器を装用している。時々、浮動性めまいを自覚している。また、家族性腎炎の診断で7歳から透析を受けている。オージオグラムを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [102A042]←[国試_102]→[102A044]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [110E012]←[国試_110]→[110E014]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- 心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)を合併しやすいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096H025]←[国試_096]→[096H027]
[★]
- 英
- Alport syndrome, Alport's syndrome, AS
- 同
- 遺伝性腎炎、Alport症候群、難聴遺伝性腎炎 hereditary nephritis with deafness
概念
- 主にX連鎖劣性遺伝の遺伝性腎炎であり、血尿を伴う腎炎のほかに、感音難聴、眼症状を呈する。IV型コラーゲンの異常と考えられている。進行型であり、やがて蛋白尿、高血圧を来たし腎不全に陥る。
病因
- SPE.603
- X-linked(70-80%)
- AR(10-15%)
- AD
遺伝形式
- 1. XD : 血尿、感音性難聴、水晶体の変形(円錐水晶体 lenticonus)
- 2. X-linked form : 1. + びまん性平滑筋腫(diffuse keiomyomatosis)
- 3. AR : 腎病変のみ
- 4. AD : 腎病変のみ
身体所見
症候
- (XD型)男性の場合、幼少期に無症候性血尿として発見され、肉眼的血尿から、次第に蛋白尿(難治性ネフローゼ)を呈するようになり、20歳頃に腎不全に至る。女性の場合のまま緩徐に経過する。
- 1. 感音性難聴(30-40%の症例。両側。(SPE.604))
- 2. 血尿:初発
- 3. 腎炎
- 4. 眼症状(円錐角膜、球状水晶体、白内障など)(15%の症例(SPE.604))
検査
- SPE.604
光学顕微鏡
- メサンギウム細胞、基質の増加。進行例では巣状・分節状糸球体硬化
電子顕微鏡
蛍光顕微鏡
- IV型コラーゲン抗α鎖抗体で免疫蛍光染色すると、XD男性の糸球体基底膜、皮膚基底膜は染色されない。
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化
[★]
- 英
- symptom and sign
- 関
- 症状, 徴候 兆候