- 55歳の男性。下腿の浮腫を主訴に来院した。4か月前に夕方になると靴下のゴムの痕がつくことに気付いた。徐々に浮腫の程度が強くなってきた。意識は清明。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧150/86mmHg。皮膚に発疹と発赤とを認めない。眼瞼に軽度の浮腫を認める。頸部と胸部とに異常はない。下腿と足背とに圧痕を残す浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、潜血(-)、沈渣に赤血球0/1視野、脂肪円柱3/1視野。血液所見:赤血球520万、Hb16.2g/dl、Ht48%、白血球4,600。血清生化学所見:空腹時血糖96mg/dl、HbA1c5.4%(基準4.3~5.8)、総蛋白5.9g/dl、アルブミン2.2g/dl、尿素窒素22mg/dl、クレアチニン1.3mg/dl、Na135mEq/l、K4.6mEq/l。免疫学所見:抗核抗体陰性、CH50 37U/ml(基準30~40)。腎生検PAS染色標本を以下に示す。
- 最も可能性の高い疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G035]←[国試_101]→[101G037]
★リンクテーブル★
[★]
- 3歳の男児。紫斑を主訴に来院した。2週前に38.7℃の発熱が2日間続き、近医で咽頭炎と診断された。昨日から全身に赤~紫色の点状の皮疹が出現している。診察前に鼻出血があり、止血に20分を要した。体温36.9℃。脈拍88/分、整。全身の皮膚に紫斑を認める。口腔内に粘膜出血を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球340万、Hb10.5g/dl、白血球6,700、血小板0.6万。血清生化学所見:AST31IU/l、ALT28IU/l、LDH284IU/l(基準176~353)。CRP0.11mg/dl。骨髄塗抹May-Giemsa染色標本を以下に示す。
- 治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G034]←[国試_101]→[101G036]
[★]
- 24歳の女性。浮腫と顔面の紅斑とを主訴に来院した。尿所見:蛋白3+、糖(-)、沈渣に赤血球10~20/1視野、白血球5~10/1視野、顆粒円柱2~3/1視野、細菌(-)。抗核抗体320倍(基準20以下)。腎生検H-E染色標本を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G036]←[国試_101]→[101G038]
[★]
- membranous
- 英
- membranous nephropathy, MN
- 同
- 膜性糸球体腎炎 membranous glomerulonephritis, membranous GN, MGN
- 関
- ネフローゼ症候群
まとめ
- 膜性腎症は免疫複合体が糸球体基底膜上皮下に沈着することで基底膜の肥厚をきたす疾患である。中年以降(30-40歳以降)の男性に多い。自覚症状なしにネフローゼ症候群を来たし、ネフローゼ症候群の原因として成人では30%、小児では5%を占める。病因としては特発性と続発性があるが、免疫複合体の抗原が不明な特発性が大部分(85%)を占め、残りは感染症(B型肝炎、梅毒、住血吸虫マラリア)、膠原病(SLE)、悪性腫瘍、無機金属(金、水銀)、薬剤(ペニシラミン、カプトプリル、NSAID)などによる続発性である。病理組織像では光顕的に糸球体膜の重層化・二重化・肥厚が認められ、PAM染色で糸球体基底膜上皮下にスパイク状・顆粒状の沈着物が認められる。これらは蛍光顕微鏡ではIgG、C3の沈着として認められる。電顕的には電子高密度沈着物(免疫複合体)として認められる。自覚症状はなく検診などで蛋白尿陽性として見いだされることが多い。診断には腎生検の所見による。治療は特発性の場合、無症候性であれば経過観察、ネフローゼ症候群が存在していればステロイドによる治療を行う。二次性の場合は原因疾患の治療も行う。治療抵抗例では免疫抑制薬、抗血小板薬、抗凝固療法を行う。経過は緩徐であり、予後は良好であることが多い。症例の2/3は緩徐進行、1/3は自然緩解する。(YN.E-50 SPE.599)
概念
- 糸球体腎炎の病理診断名の一つ
- 糸球体基底膜の上皮側にびまん性の免疫複合体が沈着し、基底膜が肥厚する疾患。
- (1)糸球体基底膜のびまん性肥厚、(2)糸球体基底膜上皮下へのびまん性沈着
- ネフローゼ症候群を来す。成人ネフローゼの典型例
疫学
- 中年以降(30-50%)の男性に好発。 30-40歳代の男性に多い(QB.E-173)。
- 健診で発覚(チャンス蛋白尿)
- ネフローゼ症候群の原因となる。ネフローゼ症候群のうちそれぞれ占める割合は成人30%、小児5%。 (YN.E-50)
分類
病因による分類
- 特発性(85%) ← 免疫複合体の抗原が不明
- 続発性
- APT.241
- B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、腫瘍、薬物(NSAID)、SLE
病理
- 蛍光抗体法
- 糸球体基底膜のびまん性肥厚 → 糸球体膜の重層化・二重化・肥厚
- 免疫複合体が糸球体基底膜上皮下に沈着 ← 糸球体の外側 → スパイク(PAM染色で) 、 granular pattern(IgG)
- メサンギウム領域の細胞増殖(-)
病態生理
- 80%がネフローゼ症候群で発症し、あとは無症候性蛋白尿(QB.E-173)
症状
検査
- ネフローゼ症候群を来す場合には低蛋白血症、低アルブミン血症
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- 蛍光顕微鏡(蛍光抗体法):IgG、C3よりなる免疫複合体が糸球体上皮下腔に顆粒状に沈着
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-
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診断
- 膜性腎症の診断は腎生検でのみなされる。原因不明のネフローゼ症候群には腎生検を提案している。(uptodate)
- 蛋白尿に対する検査を行う→ネフローゼ症候群 → uptodate Serologic tests in the evaluation of nephrotic syndrome
- 膜性腎症の原因を検索するために以下の検査を行う:自己抗体、血清C3(普通は正常)、血清学的ウイルス検査(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)、悪性腫瘍スクリーニング (uptodate)
検査所見
尿検査
治療
- 免疫抑制薬
- ステロイド(微小変化群より奏効しない)
予後
- 治療への反応性がよく予後良好。半数例が自然寛解。 1/3は自然寛解。2/3はゆっくり進行。75%は寛解/腎機能安定/極めて緩徐な進行。(YN.E-50)
- 10-20%が末期腎不全に移行。ネフローゼ症候群が持続する例に多い傾向。
国試