- 英
- buprenorphine
- 化
- 塩酸ブプレノルフィン buprenorphine hydrochloride
- 商
- レペタン Lepetan
- 関
- 非麻薬性鎮痛薬
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/05/19 17:13:58」(JST)
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ブプレノルフィン
|
IUPAC命名法による物質名 |
(2S)-2-[(−)-(5R,6R,7R,14S)-
9α-cyclopropylmethyl-4,5-epoxy-
6,14-ethanomorphinan-7-yl]-3-hydroxy-
6-methoxy-3,3-dimethylbutan-2-ol |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
? |
法的規制 |
劇薬、向精神薬、習慣性医薬品、処方せん医薬品 |
投与方法 |
舌下、筋肉内、静脈内、直腸、パッチ |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
31%(舌下、エタノール溶液)
~10%(舌下、高用量錠剤) |
血漿タンパク結合 |
96% |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
37 h |
排泄 |
胆汁、腎臓 |
識別 |
CAS登録番号 |
52485-79-7 |
ATCコード |
N02AE01 N07BC01 |
PubChem |
CID 40400 |
DrugBank |
APRD00670 |
KEGG |
D07132 |
化学的データ |
化学式 |
C29H41NO4 |
分子量 |
467.64 g/mol |
ブプレノルフィン (buprenorphine) とは、弱オピオイド薬物の一種で、鎮痛剤、オピオイド依存の治療薬として用いられる化合物。部分アゴニスト、受容体アンタゴニストとして作用する。ブプレノルフィンの塩酸塩(塩酸ブプレノルフィン)は鎮痛剤として、1980年代に Reckitt & Colman 社(現: Reckitt Benckiser)により初めて上市された。日本では「レペタン」という商品名で鎮痛剤として、大塚製薬より注射薬、座薬として、「ノルスパンテープ」が久光製薬よりパッチ剤として市販されている。アメリカでは 2001年後期にオピオイド依存の治療薬として高用量の錠剤が FDA の認可を受け、現在はその用途が主となっている。
国際条約の向精神薬に関する条約におけるスケジュールIII薬物である。麻薬及び向精神薬取締法における第二種向精神薬である。日本の薬事法における習慣性医薬品に指定されている[1]。劇薬である。
薬理作用
ブプレノルフィンはテバインの誘導体であり、その鎮痛作用は μ-オピオイド受容体に対し部分アゴニストとして働くことによる。すなわち、ブプレノルフィンの分子がオピオイドの受容体に結合すると、部分的にだけ活性化をもたらす。一方で、μ-オピオイド受容体に対する結合力は、アンタゴニストとして知られるナロキソンなどと匹敵するほど非常に強い。これらの性質のためブプレノルフィンはオーバードースを避け、注意深く使用しなければならない。完全アゴニストであるモルヒネなどへの依存症患者に処方する場合には離脱症状を引き起こす可能性もある。離脱症状が治まるには 24 時間以上かかる。このためブプレノルフィンに切り替えるときは、以前のオピオイド薬物の服用から十分な期間(半減時間の数倍の期間)をおかなければならない。
ブプレノルフィンはまた、κ-オピオイド受容体へのアンタゴニストとして、リコンビナント ヒト ORL1受容体、nociceptin への部分/完全アゴニストとしても作用する。[2]
塩酸ブプレノルフィンは筋肉内注射、静脈への点滴、経皮吸収、錠剤として舌下吸収により投与される。初回通過効果が高いために経口では投与されない。肝臓でシトクロムP450 の CYP3A4アイソザイムによりブプレノルフィンは代謝され、窒素原子上が脱アルキル化されたノルブプレノルフィンへ変えられる。この代謝産物はグルクロン酸と結合し、主に胆汁へと排出される。ブプレノルフィンの半減時間は 20-73 時間、平均 35 時間である。ノルブプレノルフィンは δ-オピオイド受容体や ORL1受容体のアゴニスト、μ-、κ-オピオイド受容体の部分アゴニストとして働くが、その作用はブプレノルフィンによって阻害される。[2]
脚注
- ^ 厚生省, “薬事法第50条第9号の規定に基づき習慣性があるものとして厚生労働大臣の指定する医薬品 通知本文” (プレスリリース), 厚生労働省, http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_document.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&EFSNO=627&PAGE=1 2014年2月16日閲覧。
- ^ a b Huang P. et al. "Comparison of pharmacological activities of buprenorphine and norbuprenorphine: norbuprenorphine is a potent opioid agonist", J. Pharmacol. Exp. Ther. 2001, 297, 688-95. PMID 11303059
参考文献
- 大塚製薬 (2013-03) (pdf). レペタン坐剤 (Report). 日本医薬情報センター. http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00003347.pdf 2014年2月16日閲覧。.
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Japanese Journal
- 持続硬膜外麻酔を用いた漏斗胸術後疼痛にて錐体外路症状を来たした1例
- 稲村 幸雄 [他]
- 長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi 85(4), 339-342, 2011-12-25
- … 0.25%ブピバカイン50ml、ブプレノルフィン0.3mg、ドロペリドール2.5mgの混合液を、術後から2ml/hrで硬膜外持続注入した。 …
- NAID 110008452476
- 帝王切開におけるくも膜下ブプレノルフィン投与とモルヒネ投与の術後鎮痛効果の比較
Related Links
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- レペタンとは?ブプレノルフィンの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる( おくすり110番:病気別版)
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ノルスパンテープ5mg
組成
成分・含量(1枚中)
添加物
- レブリン酸、オレイン酸オレイル、ポビドンK90、アクリル酸2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体溶液、アルミニウムアセチルアセトナート、ポリエチレンテレフタレート
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 重篤な呼吸抑制状態及び呼吸機能障害のある患者〔呼吸抑制が増強されるおそれがある。〕
効能または効果
- 非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患に伴う慢性疼痛における鎮痛
- ・ 変形性関節症
- ・ 腰痛症
- 本剤は、非オピオイド鎮痛剤の投与を含む保存的治療では十分な鎮痛効果が得られない患者で、かつオピオイド鎮痛剤の継続的な投与を必要とする日常生活動作障害を有する変形性関節症及び腰痛症に伴う慢性疼痛の管理にのみ使用すること。
- 慢性疼痛の原因となる器質的病変、心理的・社会的要因、依存リスクを含めた包括的な診断を行い、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。
- 通常、成人に対し、前胸部、上背部、上腕外部又は側胸部に貼付し、7日毎に貼り替えて使用する。
初回貼付用量はブプレノルフィンとして5mgとし、その後の貼付用量は患者の症状に応じて適宜増減するが、20mgを超えないこと。
初回貼付時
- 初回貼付72時間後までブプレノルフィンの血中濃度が徐々に上昇するため、鎮痛効果が得られるまで時間を要する。そのため、必要に応じて他の適切な治療の併用を考慮すること。
- 他のオピオイド鎮痛剤から本剤へ切り替える場合には、切り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤の鎮痛効果の持続時間を考慮して、本剤の貼付を開始すること。なお、高用量(経口モルヒネ換算量80mg/日超)のオピオイド鎮痛剤から切り替えた場合には、十分な鎮痛効果が得られないおそれがあるので、注意すること。
貼付方法
- 血中濃度が上昇するおそれがあるので、毎回貼付部位を変え、同じ部位に貼付する場合は、3週間以上の間隔をあけること。
増量
- 本剤貼付開始後は患者の状態を観察し、適切な鎮痛効果が得られ副作用が最小となるよう用量調節を行うこと。鎮痛効果が十分得られない場合は、ブプレノルフィンとして5?10mgずつ貼り替え時に増量する。
減量
- 連用中における急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと。副作用等により減量する場合は、患者の状態を観察しながら慎重に行うこと。
投与の継続
- 本剤貼付開始後4週間を経過してもなお期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を検討すること。また、定期的に症状及び効果を確認し、投与の継続の必要性について検討すること。
投与の中止
- 本剤の投与を必要としなくなった場合には、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。
- 本剤の投与を中止し他のオピオイド鎮痛剤に変更する場合は、本剤剥離後24時間以上の間隔をあけること。また、ブプレノルフィンのμオピオイド受容体への親和性は他のオピオイド鎮痛剤より強いため、切り替え直後には他のオピオイド鎮痛剤の鎮痛効果が十分に得られないことがあるので、注意すること。
慎重投与
- 呼吸機能の低下している患者〔呼吸抑制があらわれるおそれがある。〕
- QT延長を起こしやすい患者(不整脈の既往歴のある患者、先天性QT延長症候群の患者、QT延長を起こすことが知られている薬剤を投与中の患者等)〔QT延長を起こすおそれがある。〕
- 薬物・アルコール依存又はその既往歴のある患者〔依存性を生じやすい。〕
- 脳に器質的な障害のある患者〔呼吸抑制や頭蓋内圧の上昇を起こすおそれがある。〕
- ショック状態にある患者〔循環不全や呼吸抑制を増強するおそれがある。〕
- 肝・腎機能障害のある患者〔作用が増強するおそれがある。〕
- 麻薬依存患者〔麻薬拮抗作用を有するため禁断症状を誘発するおそれがある。〕
- 麻痺性イレウスの患者〔消化管運動を抑制する。〕
- 胆道疾患のある患者〔オッディ括約筋の収縮を起こすおそれがある。〕
- 高熱のある患者〔本剤からのブプレノルフィンの吸収量が増加し、血中濃度が上昇するおそれがある。〕
重大な副作用
呼吸抑制、呼吸困難
(頻度不明)
- 呼吸抑制、呼吸困難があらわれるおそれがあるので、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。なお、本剤による呼吸抑制には、人工呼吸又は呼吸促進剤(ドキサプラム塩酸塩水和物)が有効であるが、麻薬拮抗薬(ナロキソン塩酸塩、レバロルファン等)の効果は確実ではない。
ショック、アナフィラキシー様症状
(頻度不明)
- ショック、アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
依存性
(頻度不明)
- 長期の使用により薬物依存を生じることがあるので観察を十分に行い、慎重に投与すること。長期使用後、急に投与を中止すると、不安、不眠、興奮、胸内苦悶、嘔気、振戦、発汗等の禁断症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合は徐々に減量することが望ましい。
薬効薬理
鎮痛作用
- ブプレノルフィンは、マウス、ラット及びウサギにおいて、化学刺激、熱刺激、圧刺激及び電気刺激を侵害刺激として用いたいずれの試験においても、モルヒネより強く、かつ長い鎮痛効果を示した21)。ブプレノルフィンは、オピオイド受容体に作用し、中枢神経系の痛覚伝導系を抑制することにより鎮痛効果を発揮すると考えられている。
作用機序(in vitro )22)
- 受容体結合試験の結果、ブプレノルフィンはヒト組み換えμ(ミュー)オピオイド受容体に対してKi=0.16nM、κ(カッパ)オピオイド受容体に対してKi=0.06nM、δ(デルタ)オピオイド受容体に対してKi=1.79nM及びORL-1(オピオイド受容体様1)受容体に対してKi=15.44nMの親和性を示した。また、機能活性試験の結果、ブプレノルフィンはヒト組み換えμオピオイド受容体に対してEC50=0.76nM、κオピオイド受容体に対してEC50>20,000nM、δオピオイド受容体に対してEC50=52,458nM及びORL-1受容体に対してEC50=67nMの効力を示した。これらの結果から、ブプレノルフィンはμオピオイド受容体を介してアゴニストとして作用し、強力な鎮痛作用を示すものと考えられている。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
化学名:
- 21-cyclopropyl-7-α-[(S)-1-hydroxy-1,2,2-trimethylpropyl]-6,14-endo -ethano-6,7,8,14-tetrahydrooripavine
- 約217℃
★リンクテーブル★
[★]
- 関
- QT延長症候群、QT間隔
原因
- 洞結節機能不全
- 房室ブロック:2度房室ブロック、3度房室ブロックアンドロゲン遮断療法(GnRHアゴニスト/アンタゴニスト療法または両側性精巣摘除術)
- 利尿薬:低マグネシウム血症・低カリウム血症の誘発による
- 鎮吐薬:
[★]
- 英
- opioid receptor
- 同
- モルヒネ受容体 morphine receptor
- 関
- オピオイドペプチド、オピオイド
- オピオイド受容体はμ受容体、κ受容体、δ受容体がある。
- モルヒネ、フェンタニルはμ受容体刺激薬
- 呼吸抑制はμ2受容体を介したものである。
オピオイドとオピオイド受容体 (GOO.552)
オピオイド受容体の生理作用(周術期管理学 091211 III)
受容体
|
μ
|
δ
|
κ
|
μ1
|
μ2
|
作用
|
鎮痛
|
鎮痛
|
鎮痛
|
鎮痛
|
悪心・嘔吐
|
鎮静
|
鎮静
|
身体依存
|
多幸感
|
呼吸抑制
|
身体違和感
|
精神依存
|
掻痒感
|
身体依存
|
気分不快
|
呼吸抑制
|
縮瞳
|
精神依存
|
興奮
|
|
尿閉
|
消化器運動抑制
|
幻覚
|
|
鎮咳
|
鎮咳
|
|
呼吸抑制
|
縮瞳
|
利尿
|
オピオイド受容体と非麻薬性鎮痛薬について
身体依存性
- 痛みがある人には精神的依存はきたさない(痛みの有無によらず退薬現象はある)
[★]
- 英
- WHO method for relief of cancer pain
- 同
- WHO式癌疼痛治療法 WHO Cancer Pain Relief Programme、WHO3段階除痛ラダー WHO three-stepanalgesic ladder、3段階ラダー
WHOの基本5原則
- 1. WHOのラダーに沿って
- 2. できるかぎり内服で、
- 3. 少量で始めて疼痛が消える量へと漸増し、
- 4. 定時投与とし、 ← 頓用ではない
- 5. 必要に応じて鎮痛補助薬の併用も考慮
鎮痛補助薬 SAN.410
参考
- http://www.geocities.jp/study_nasubi/l/l13.html
国試
- 106C030:吐き気はオピオイド服用開始に出現しやすいので、開始時から制吐薬を開始する。副作用に対してはオピオイドの減量ではなく、制吐薬・緩下薬などを利用し、オピオイドの減量は避ける、だったっけ?
メモ
[★]
- 英
- nonopioid analgesic, non-narcotic analgesic
- 同
- 麻薬拮抗性鎮痛薬、麻薬性拮抗性鎮痛薬
- 関
- 薬理学
麻薬拮抗性鎮痛薬とオピオイド受容体
(標準麻酔科学 第2版p.182)
受容体
|
μ
|
δ
|
κ
|
作用
|
μ1
|
μ2
|
上脊髄性鎮痛
|
|
幻覚・譫妄
|
脊髄性鎮痛
|
|
呼吸抑制
|
呼吸促進
|
呼吸抑制
|
|
身体依存性
|
不快感
|
鎮静
|
|
徐脈
|
頻脈
|
脈拍不変
|
縮瞳
|
散瞳
|
痙攣
|
モルヒネ
|
agonist
|
-
|
agonist
|
ペンタゾシン
|
antagonist
|
agonist
|
agonist
|
ブプレノルフィン
|
partial agonist
|
-
|
agonist
|
ブトルファノール
|
antagonist
|
-
|
agonist
|
ナロキソン
|
antagonist
|
antagonist
|
antagonist
|
[★]
- 英
- spinal subarachnoid anesthesia
- 同
- 脊椎麻酔 spinal anesthesia、脊麻、腰椎麻酔 lumbar anesthesia lumbar spinal anesthesia、くも膜下麻酔 subarachnoid anesthesia
- 関
- クモ膜下ブロック くも膜下ブロック。硬膜外麻酔
- 誤用
- 脊椎クモ膜下麻酔 ← 脊椎にくも膜下はない
[show details]
薬剤
合併症
- 血圧低下、呼吸抑制、頭痛
- 穿刺部位によって、CN III/IV/VI麻痺、馬尾症候群を呈しうる。
禁忌
- ショック時、脱水、心筋梗塞、穿刺部位の炎症、脳脊髄疾患、出血性素因
国試