- 英
- spinal subarachnoid anesthesia
- 同
- 脊椎麻酔 spinal anesthesia、脊麻、腰椎麻酔 lumbar anesthesia lumbar spinal anesthesia、くも膜下麻酔 subarachnoid anesthesia
- 関
- クモ膜下ブロック くも膜下ブロック。硬膜外麻酔
- 誤用
- 脊椎クモ膜下麻酔 ← 脊椎にくも膜下はない
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薬剤
合併症
- 血圧低下、呼吸抑制、頭痛
- 穿刺部位によって、CN III/IV/VI麻痺、馬尾症候群を呈しうる。
禁忌
- ショック時、脱水、心筋梗塞、穿刺部位の炎症、脳脊髄疾患、出血性素因
国試
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2022/04/04 11:15:38」(JST)
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脊髄くも膜下麻酔(せきずいくもまくかますい)とは、局所麻酔のひとつであり、クモ膜下腔に麻酔薬を注入し、脊髄の前根、後根をブロックする方法である。脊髄自体にはほとんど効果はなくあくまで神経根に作用すると考えられている。かつては脊椎麻酔と言われていた。Spinalと略されることが多い。
特徴
- 他の局所麻酔に比べて少ない麻酔薬の量で強力な麻酔効果が得られる。
- 循環・呼吸管理上の問題で通常下腹部以下の手術に用いられる。
- 通常はカテーテルを挿入しないため持続投与ができず、短時間の手術に適応が限られる。
- 硬膜外麻酔と比較して述べられることが多い。
適応
- 下腹部の手術、会陰の手術、下肢の手術
- 術後疼痛管理
- 癌性疼痛管理
手技
基本的にはL3/4を目標に穿刺する。不可能ならL4/5やL5/S1を目標にする。椎体の数え方は体表解剖学の知識を利用する。頸部で最も突出しているのがC7、肩甲棘を結んだ線がTh3の下縁、肩甲骨下縁を結んだ線がTh7の下縁、腸骨稜を結んだ線(ヤコビ線)がL4下縁を通る。またThとLでは棘突起の大きさが違うということも参考になる。
麻酔薬
日本では主に局所麻酔薬が用いられる。代表的なのは0.5%マーカイン(ブピバカイン)、テトカイン(テトラカイン)。以前は0.3%ペルカミンS(ジブカイン)、ネオペルカミンS(ジブカインとテーカインの合剤)も用いられていたが神経毒性を疑われており、現在はあまり使用されない。オピオイドを局所麻酔薬に併用することもある。その場合は塩酸モルヒネかフェンタニルを用いる。多くの薬剤で高比重と等比重が用意されており、麻酔高の調節に用いることができる。
麻酔高
麻酔高の調節は体位や麻酔薬の選択で調節が可能である(投与量は麻酔範囲との相関が低いことが知られている)。しかしそれらは非常に経験的であるため必ず麻酔範囲の確認が必要となる。代表的な手術において必要な麻酔高を以下に示す。
- 下腹部手術
- 子宮全摘、卵巣手術 Th7
- 虫垂切除 Th4(腸管牽引をするため)
- 前立腺全摘 Th10
- 膀胱部分切除 Th10
- 鼠径ヘルニア Th10
- 鼠径部以下
- TUR Th10
- 精巣手術 Th10
- 下肢手術 Th10 (ターニケットを用いることが多いため)
- 外陰部、肛門 S
麻酔高を判定するにはデルマトームを参考とする。特にわかりやすいものとしては、腕がC領域、乳頭はTh4、剣状突起はTh6、臍部はTh12、大腿はL領域、膝がL3、大腿後部はS2、足底部はS1、肛門がS3である。
体位調節で必要なレベルの麻酔効果が得られなかった場合は再び穿刺し麻酔薬を追加するしかない。麻酔薬によるブロックは細い神経線維から順に効果が現れることが知られており、交感神経、温覚、痛覚、触覚、圧覚、運動神経という順にブロックされていく。痛覚の判定を行うピンプリックテスト、温覚の判定を行うコールドサインテスト、運動神経の判定を行うBromageスケールが有名である。
効果判定
前節で述べたようにデルマトームに従って各部位における麻酔高の判定を行う。最も重要なことは呼吸の抑制があるかである。呼吸は横隔神経、すなわちC領域で駆動されている。すなわち上肢が動くうちは呼吸停止は考えにくい。但し、高齢者や呼吸機能障害を合併している患者の場合はThレベルの呼吸補助筋の働きがおちることで呼吸困難を訴えることがある。腕がC領域、乳頭はTh4、剣状突起はTh6、臍部はTh10、大腿はL領域、膝がL3、大腿後部はS2、足底部はS1、肛門がS3というデルマトームは必ず覚えておき、麻酔の分布に異常を感じたら繰り返し効果判定は行うべきである。
- ピンプリックテスト
- 痛覚刺激を感じるかを調べるテストである。針など尖ったもの(但し出血しない程度)を皮膚にあててチクチクするかどうかを尋ねる。
- コールドサインテスト
- 温覚の消失を確認するテストである。アルコール綿(ワンショットプラスなど)を皮膚にあてて冷たいかどうかを尋ねる。当てた感じ、圧覚はブロックされるのが相当後であるので必ず冷たいかどうかで判定する。
- Bromageスケール
- 踵膝を十分に動かせる場合はⅠ(遮断されていない)、膝がやっと動く場合はⅡ(部分遮断ブロック)、踵のみが動く場合はⅢ(ほぼ完全遮断ブロック)、踵膝が動かない場合はⅣ(完全遮断ブロック)となる。
交感神経、温覚、痛覚、触覚、圧覚、運動神経という順にブロックされていく、という法則を利用するとBromageスケールで十分わかることになるが、細かな判定ができないので必ず他の試験を併用する必要がある。
一般に脊椎麻酔は効果が3分位で現れてくる。不必要な範囲まで麻酔しないように体位で調節する。とくに全脊麻にならないように注意する。基本的には麻酔薬注入後15分程度で効果判定を行い、麻酔域が変化しないように調節する。マーカインでは60分位、ペルカミンSなら30分位は麻酔域が上昇する可能性がある。体位変換で十分な麻酔域が得られなかったら再度脊髄くも膜下麻酔を行う。
術中合併症
血圧低下、徐脈が起こりやすいので、昇圧薬(エフェドリンなど)や硫酸アトロピンは準備しておくことが必須である。また低血圧予防として輸液が必要である。
- 血圧低下
- 交感神経節前線維(B繊維)のブロックによる静脈拡張が原因と考えられている。知覚、運動麻痺(A,C繊維)より早く起こる。このことから静脈収縮作用のみをもつ昇圧薬が最も望ましいが2007年現在、そのような薬物は存在しない。輸液とエフェドリンが用いられる。最低でも平均動脈血圧が50mmHgを保つように心がける。
- 徐脈
- T1~5の交感神経心臓枝のブロックや血圧低下に反応した心臓の圧受容器の反射によるものと考えられている。血圧が維持できないような徐脈や進行性を認めない限り、硫酸アトロピンは不要と考えられている。
- 呼吸抑制
- 横隔膜(C3~C5支配)は基本的に抑制されることはまずない。外肋間筋、内肋間筋、腹直筋といった呼吸補助筋はThレベルの麻酔で麻痺となるが高齢者や呼吸機能障害者以外では問題となることは少ない。低血圧や鎮静薬、鎮痛薬によって延髄呼吸中枢が抑制されたりTh4より高位に麻酔がきくと喘息発作が誘発されることはある。治療の基本は酸素投与である。
- 悪心、嘔吐
- 交感神経ブロックよる、胃液分泌亢進や消化管蠕動運動亢進、または血圧低下によるCTZの刺激によっておこる。酸素投与、輸液、硫酸アトロピン、昇圧薬投与で改善することもある。消化管機能改善薬も適応がある。
- 全脊髄くも膜下麻酔
- 脊髄くも膜下麻酔の際に局所麻酔薬の作用が脳幹部にまで及び、血圧低下、呼吸停止、全身の筋弛緩、意識消失、瞳孔散大、対光反射消失が起こること。徐々に進行することが多い。呼吸補助をしながら循環管理を行う。脊髄くも膜下麻酔の際、あるいは硬膜外麻酔で硬膜穿刺になっていることに気づかず予定量の局所麻酔薬を使用した後に起こる。正しく脊髄くも膜下麻酔されていても起こることがある。
術後合併症
- PDPH(硬膜穿刺後頭痛、脊椎麻酔後頭痛)
- 硬膜の穿刺孔から髄液漏出により脳圧の低下とそれによる脳支持組織の牽引が原因と考えられている。術後1〜2日で発症し坐位、立位で増悪するのが特徴である。治療は輸液、安静、NSAIDs、カフェインなどが有効とされている。治療抵抗性の場合は自己血パッチを行うこともある。
- 馬尾症候群
- 膀胱直腸障害、性機能障害、会陰部から下肢にかけての知覚運動障害が特徴である。神経根の障害である。
- 尿閉
- 一過性の無菌性髄膜炎と考えられている。通常は2〜3日で軽快する。馬尾症候群と鑑別が必要。
- 脳神経障害
- 脳脊髄圧の変化による神経の牽引や圧迫によるもの(低髄液圧)と考えられている。外転神経麻痺で複視、聴神経麻痺で突発性難聴となる。動眼神経、滑車神経も同様に侵されることがある。
- 髄膜炎
- 項部硬直、頭痛がみられる。
- 硬膜外血腫、硬膜外膿瘍
- 症状に進行性があるのが特徴である。麻酔がきれたあと(目安として6時間後)、すぐにわかる。緊急除圧術の適応となる。
- 神経障害
サドル麻酔
脊髄くも膜下麻酔の1つで、麻酔域を仙骨神経領域に限定する方法である。サドルブロックとも呼ばれ、肛門周囲や会陰部の手術が適応となる。自転車のサドルが当たる範囲が麻痺するため、このような名前が付いたとされる。麻酔方法としては、座位で穿刺し、高比重液を1mL程度注入し、そのまま座位を保つ。麻酔域の固定後、手術体位をとる。麻酔域が仙骨領域のみであるため、血圧低下はほとんど起こらない。
参考文献
- 病態生理に基づく臨床薬理学 ISBN 4895924610
- 麻酔科必修マニュアル 羊土社 ISBN 4897063442
- STEP 麻酔科 海馬書房 ISBN 4907704275
- イヤーノート内科外科等編 2007年版 メディックメディア ISBN 9784896321500
- 麻酔科シークレット メディカルサイエンスインターナショナル ISBN 9784895923224
- 麻酔科レジデントマニュアル ISBN 4906472443
- 麻酔科研修チェックノート 改訂第2版 ISBN 9784758105682
関連項目
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- 1. 脊髄麻酔:手技spinal anesthesia technique [show details]
…perineal procedures. Spinal anesthesia is also occasionally used for spine surgery. This topic will discuss the relevant anatomy, techniques, and management of spinal anesthesia. Indications, contraindications …
- 2. 脊髄幹麻酔の概要overview of neuraxial anesthesia [show details]
…obstetric patients . Damage to the conus medullaris may occur during spinal anesthesia if the clinician unintentionally performs spinal anesthesia at a high lumber interspace. Although the spinal cord typically …
- 3. 脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔:手技epidural and combined spinal epidural anesthesia techniques [show details]
…drugs for spinal anesthesia is discussed separately. Full spinal dose CSE – In most cases, the same doses and combinations of spinal drugs are administered as for single-shot spinal anesthesia, such that …
- 4. 麻酔の概要overview of anesthesia [show details]
…injection of medication into the subarachnoid space (for spinal anesthesia) or the epidural space (for epidural anesthesia). Spinal anesthesia is usually administered as a single injection, whereas epidural …
- 5. 産婦人科における硬膜外・脊椎麻酔の副作用adverse effects of neuraxial analgesia and anesthesia for obstetrics [show details]
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- 現症:意識レベルは JCSI-3。身長 160 cm、体重 60 kg。体温 35.5℃。脈拍 120/分、整。血圧 80/50 mmHg。呼吸数 24/分。 SpO2 98% (リザーバー付マスク 10 l/分酸素投与下 )。表情は苦悶様で左大腿部の痛みを訴えている。顔面は蒼白で、皮膚は冷たく湿潤している。心音と呼吸音とに異常を認めない。左大腿部に挫滅創と活動性外出血とを認め、骨が露出している。濃い尿を少量認める。
- 検査所見:尿所見:比重 1.030、蛋白 (-)、糖 (-)。血液所見:赤血球 250万、Hb 7.0 g/dl、Ht 21%、白血球 13,000(桿状核好中球 6%、分葉核好中球 70%、単球 4%、リンパ球 20% )、血小板 4.5万、 PT 20秒 (基準 10~14)、 APTT 50秒 (基準対照 32.2)。血液生化学所見:総蛋白 5.0 g/dl、アルブミン 3.0 g/dl、尿素窒素20 mg/dl、クレアチニン 0.9 mg/dl、血糖 120 mg/dl、Na 145 mEq/l、K 5.0 mEq/l、Cl 109 mEq/l。下肢エックス線写真で左大腿骨骨折と左脛骨骨折とを認める。胸部エックス線写真と全身 CTで下肢を除いて異常を認めない。左大腿骨開放骨折に対し、赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿および濃厚血小板を準備し、止血、デブリドマン及び骨整復固定術が予定された。急速輸液を行った。
- 最も適切な麻酔法はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108B056]←[国試_108]→[108B058]
[★]
- 31歳の初産婦。骨盤位で選択的帝王切開を受けるため妊娠38週に入院した。手術室で静脈路確保後に側臥位で脊髄くも膜下麻酔を施行された。皮膚切開予定部位の消毒のため仰臥位となったところ、3分後に悪心を訴えた。意識は清明。呼吸数 18/分。脈拍 96/分、整。血圧86/56mmHg。SpO2 98%(room air)。胎児心拍数 120/分。
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- 英
- lumbar puncture LP
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- Trendelenburg体位 (M.481)
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[★]
- 英
- epidural anesthesia, peridural anesthesia, extradural anesthesia
- 同
- 硬麻
- 関
- 脊髄くも膜下麻酔、局所麻酔
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- 手術のための麻酔
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合併症
- 血圧低下、徐脈
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脊髄くも膜下麻酔。くも膜下麻酔
[★]
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- 英
- anesthesia
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- 麻酔機、術前準備
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- 心臓手術:on-pump CAB, off-pump CAB
- 肺手術:一側肺換気
- 産科麻酔:筋弛緩薬以外は胎盤を通過すると考えて良いと思われる。硬膜外麻酔でオピオイドを投与するのは分娩後。
参考
- 1. 研修医用のマニュアル - 神戸大学大学院医学系研究科 外科系講座 麻酔科学分野
- http://www.med.kobe-u.ac.jp/anes/manual.html
- 2. 麻酔科レジデントマニュアル 麻酔応用編 筑波大学附属病院麻酔科 2011 年ver.1.4
- http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/anesthesiology/tsukuba_new_anesthesiology/pdf/manual3advanced110325.pdf
[★]
- 英
- spinal cord (M)
- ラ
- medulla spinalis
- 成人の脊髄は大後頭孔からL1-L2の椎骨まで達する (M.279)
解剖
[★]
- 英
- pulp、marrow、medulla、pith
- 関
- 延髄穿刺、果肉、骨髄、歯髄、髄質、パルプ、赤色骨髄、黄色髄
[★]
- 英
- subarachnoid anesthesia
- 関
- 脊椎麻酔
[★]
- 英
- submembranous
- 関
- 偽膜性