出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/01/02 13:37:47」(JST)
哺乳綱 Mammalia |
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生息年代: 後期三畳紀 – 現世、220–0 Ma
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分類 | |||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||
Mammalia Linnaeus, 1758 | |||||||||||||||
亜綱・下綱相当 | |||||||||||||||
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哺乳類(ほにゅうるい、Mammalia)は、動物界 脊索動物門 脊椎動物亜門に分類される生物群である。分類階級は哺乳綱(ほにゅうこう)とされる。
多くのものが胎生で、乳で子を育てるのが特徴である。ヒトは哺乳綱の中の霊長目ヒト科ヒト属に分類される。
哺乳類に属する動物の種の数は、研究者によって変動するが、おおむね4,300から4,600ほどであり、脊索動物門の約10%、広義の動物界の約0.4%にあたる。
日本およびその近海には、外来種も含め、約170種が生息する(日本の哺乳類一覧、Ohdachi, S. D., Y. Ishibashi, M. A. Iwasa, and T. Saitoh eds. The Wild Mammals of Japan. Shoukadoh, Kyoto. 2009を参照)。
Mammalia(哺乳類)という言葉は、1758年、「分類学の父」リンネによる『自然の体系』第10版においてはじめて用いられた。ラテン語の字義は「乳房の」を意味する。
「哺乳類」は、ドイツ語の Säugetiere の訳である。saugen(母乳を飲む)と Tier(動物)に由来している。「哺」は、口でとる(捕)、あるいは口でささえる(輔)という字の成り立ちから、口にふくむ、食らうことを表すが、口にふくませる、食物を与える意味ともなり、「哺乳」とは(「哺乳瓶」「哺乳期」などと言うように)乳を飲ませて育てることである。
哺乳類の起源は古く、既に三畳紀後期の2億2500万年前には、最初の哺乳類といわれるアデロバシレウスが生息していた。そのルーツは、古生代に繁栄した単弓類 (Synapsida) のうち、キノドン類 (Cynodontia) である。単弓類は、爬虫類の双弓類 (Diapsida) とは石炭紀中期に分岐し、独自の進化をしていた。単弓類はペルム紀末の大量絶滅において壊滅的なダメージを受け、キノドン類などごくわずかな系統のみが三畳紀まで生き延びている。一時期再び勢力を挽回するものの、既に主竜類などの勢力も伸長し単弓類は既に地上の覇者ではなくなっていた。そして、三畳紀後期初頭の大絶滅を哺乳類とともに生き延びたのは、トリティロドン科のみであった。しかし彼らも白亜紀前期には姿を消している。
恐竜の全盛時代であるジュラ紀、白亜紀の哺乳類はネズミほどの大きさのものが多かった。しかし進化が停滞していたわけではない。白亜紀前期には、すでに有胎盤類が登場している。また、中国から発見された大型の哺乳類の化石(胃の辺り)から未消化の恐竜の子供が見つかっている。これは、哺乳類が恐竜を捕食していたということになる。
恐竜を含む主竜類が繁栄を極めた時代には、哺乳類は、夜の世界など主竜類の活動が及ばない時間・場所などのニッチに生活していた。魚類、両生類、爬虫類、鳥類には4タイプの錐体細胞を持つものが多い(4色型色覚)。現在、鳥類などに比して哺乳類の視覚(とりわけ色覚)が全般的に劣っているのも、この長い夜行生活を経て大部分の哺乳類の視覚が2色型色覚に退化したためである(二次的に3色型色覚を獲得した霊長目狭鼻下目などを除く)。約6400万年前、鳥類とワニ類を除く主竜類が絶滅し、次の新生代では、その空白を埋めるように哺乳類は爆発的に放散進化し、多種多様な種が現れた。
現在では地中や水中などを含め、地球上のほとんどの環境に、哺乳類が生息している。
※単弓類の系統は哺乳類以外は全て絶滅した。
※哺乳類は、従来は後述する顎関節の特徴で定義されてきた。しかし近年、中間的な化石が出現するなどこの定義が適用できない場合が増えたため、現生種を含む最も小さい単系統となるよう、系統学的に厳密に再定義することが多くなった。これにより、梁歯目、モルガヌコドン目などの原始的なグループ(ここでは代表的なもののみ記した)が哺乳類から外れることになる。それらを含めた従来の広い意味での哺乳類を、哺乳形類という。
これらは化石では確認しにくい。
以上である。
次の特徴は「哺乳類の特徴」と言われることがあるが、正しくは、あくまで一部の系統の特徴である。
動物名 | 平均体温 |
ブタ | 39.0℃ |
ヤギ | 39.0℃ |
ヒツジ | 39.0℃ |
ウサギ | 39.5℃ |
ウシ | 38.5℃ |
イヌ | 38.5℃ |
ネコ | 38.5℃ |
ウマ | 37.5℃ |
ヒト | 36.0℃ |
(参考)ニワトリ | 42.0℃ |
哺乳類の歯は一般的に、それぞれ別の機能を持つ形状を取っており、切歯(門歯)・犬歯・前臼歯(小臼歯)・臼歯(大臼歯)の4種類に分化している[4]。基本数はイノシシに見られる片顎あたり切歯3・犬歯1・前臼歯4・臼歯3だが、これが揃っている種は少なく[4]食性により歯の退化したものや、ハクジラ類のように同型歯をもつものもある。両生類や爬虫類は同型歯であり、鳥類は歯をもたない。
頬歯(前臼歯と臼歯)は、歯冠に咬頭と呼ばれるふくらみを複数もち、複雑な形をしている。また、頬歯の歯根は2本以上に分岐している。
脊椎動物の色覚は、網膜の中にどのタイプの錐体細胞を持つかによって決まる。魚類、両生類、爬虫類、鳥類には4タイプの錐体細胞(4色型色覚)を持つものが多い。よってこれらの生物は長波長域から短波長域である近紫外線までを認識できるものと考えられている。一方ほとんどの哺乳類は錐体細胞を2タイプ(2色型色覚)しか持たない。哺乳類の祖先である爬虫類は4タイプ全ての錐体細胞を持っていたが、2億2500万年前には、最初の哺乳類と言われるアデロバシレウスが生息し始め、初期の哺乳類は主に夜行性であったため、色覚は生存に必須ではなかった。結果、4タイプのうち2タイプの錐体細胞を失い、青を中心に感知するS錐体と赤を中心に感知するL錐体の2錐体のみを保有するに至った。これは赤と緑を十分に区別できないいわゆる「赤緑色盲」の状態である。この色覚が哺乳類の子孫に遺伝的に受け継がれることとなった。
霊長類直鼻猿亜目は、メガネザル下目と真猿下目に分岐する。この分岐の際に真猿下目のX染色体に位置する錐体視物質に関連した色覚の多型が顕著になり、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスに限定した3色型色覚の再獲得につながり、さらに狭鼻下目のオスを含めた種全体の3色型色覚の再獲得へとつながることとなる[5]。真猿下目の狭鼻下目(旧世界ザル)と広鼻下目(新世界ザル)とが分岐したのは3000-4000万年前と言われている[6][7][要高次出典]。ヒトを含む旧世界の霊長類狭鼻下目の祖先は、約3000万年前、性染色体であるX染色体に位置している赤を中心に感知するL錐体から変異した緑を中心に感知する新たなタイプの錐体(M錐体)視物質の遺伝子が出現し、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスのみが3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こして同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなりX染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚はビタミンCを多く含む色鮮やかな果実等の発見と生存の維持に有利だったと考えられる[8][6]。
なお、時代を下ってヒトの色覚を鑑みるに、ヒトが属する狭鼻下目のマカクザルに色盲がヒトよりも非常に少ないことを考慮すると、ヒトの祖先が狩猟生活をするようになり3色型色覚の優位性が低くなり、2色型色覚の淘汰圧が下がったと考えられる[8]。広鼻下目のヨザルは1色型色覚でありホエザルは狭鼻下目と同様に3色型色覚を再獲得している[5][要高次出典]が、これらを除き残りの新世界ザル(広鼻下目)はヘテロ接合体のX染色体を2本持つメスのみが3色型色覚を有し、オスは全て色盲である。これは狭鼻下目のようなX染色体上での相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こさなかったためである[6]。ヒトは上記のような霊長目狭鼻下目の祖先のX染色体の遺伝子変異を受け継いでいるため、M錐体を欠損したX染色体に関連する赤緑色盲が伴性劣性遺伝をする。男性ではX染色体の赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいると色盲が発現し、女性では2本のX染色体とも赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいる場合に色盲が発現する[9]。なお、日本人では男性の4.50%、女性の0.165%が先天赤緑色覚異常で、白人男性では約8%が先天赤緑色覚異常であるとされる。
その他の哺乳類の2色型色覚の例外として、最近の研究では、有袋類には3色型色覚が広がっている可能性がある[10]。 鰭脚類とクジラ類は1色型色覚である[11]。
かつて哺乳類は原獣亜綱、異獣亜綱、獣亜綱の3つに分類され、原獣亜綱と異獣亜綱は雑多な原始的哺乳類を含んだ。しかしその後、別系統だと判明した多くのグループが外された。原獣亜綱はかつての分類群と共通点が少ないため、原獣亜綱という分類群は解体されたとして、新しい名称の Australosphenida で呼ぶことも多い。
獣亜綱に近いグループは、獣亜綱と合わせて新たなグループに分類された。しかし、名称や分類には異説もある。階層も絶滅群を詳細に考慮すればここに記したより多くなるが、研究者により一定しないため簡略化した。
現生種を含むグループは、原獣亜綱、後獣下綱、真獣下綱の3つである。
三畳紀に出現。卵生。
現生のものは1目のみ。
白亜紀後期に出現。現生種は全て有袋類 (Marsupialia) に含まれる。胎盤が不完全で、育児嚢で子を育てる。
現生のものは6目前後に分けることが多い。詳細は→後獣下綱
白亜紀後期に出現した。現在も繁栄。現生種はすべて有胎盤類に含まれる。現存哺乳類のほとんどがこのグループにはいる。
現生のものは大きく4上目に分けられる。20目前後に分けることが多い。
伝統的な分類は、現在の分類に比べ以下のような相違点がある。
日本では明治維新以来、目名には「齧歯目」「霊長目」等、原名のラテン語をおおむね忠実に漢訳した漢名が用いられてきた(一般にはしばしば、「齧歯類」「霊長類」のように「類」が慣用されてきた)。だが、1988年、文部省の『学術用語集 動物学編』において、目以下の名称をすべてカナ書きにし、目名は「ネズミ目」「サル目」のように、それぞれの動物群を代表する動物名(カナ書き)に変えるという改定がなされた。
しかし、たとえば「ネコ目」(食肉目)のネコ亜目とアシカ亜目、イヌ上科とネコ上科のように、亜目、上科のような比較的高い階層の分類階級による動物群は、それぞれ他のグループとは明らかに異なる特有の性質をもつものであり、1つの下位分類群の名前(「ネコ」)によって、目という大きなグループの全体(ネコ・イヌ・イタチ・クマ・アライグマ・パンダ・アシカ・アザラシ・セイウチなどからなる食肉目)を代表させることは、必ずしも直観的なわかりやすさにはつながらない。それゆえに、ラテン名においても、動物の名で代表させた分類単位の名前は、上科よりも下位の分類階級でしか用いられない。
さらに、近年の研究により、偶蹄目とクジラ目の詳細な系統が明らかにされ、「鯨偶蹄目」が創設された。これをカナ書きの原則に当てはめると「クジラウシ目」となる。また、「サル目ヒト科」は教科書にも全く採用されていない。
また、以前からの慣用として、どの分類階級であるかにかかわらず、「○○の仲間」を「○○類」と書くことがあるが、かつての漢名ならば、たとえば「齧歯類」と言えば、それが「目」の階層の「齧歯目」を指すことは明らかであり、他の階層との混同のおそれはなかった。それが、「齧歯目」が「ネズミ目」となることによって、「ネズミ類」という言葉が示す可能性のある階層の範囲が目のレベルにまで広がり、混乱が拡大されたという側面もある。つまり、旧来の用例ならば、たとえば「齧歯類」にネズミの類とリスの類、ヤマアラシの類が含まれることは容易に認識できるが、新しい用例で「ネズミ類」とした場合、これが狭義のネズミ類なのか、リスやヤマアラシの類をも含んだ概念なのかが把握しにくくなってしまっている。
この分類名の改定は、分類学の根本理念に対して十分に配慮した上でのものではなく、また平易化にむしろ逆行する部分もあることから、学界内でも現在なお議論が多い。現状では、旧来の漢名をそのまま用いたり、新しいカナ名と併記したりする例も多い。
日本哺乳類学会・目名問題検討作業部会では、基本的に従来の漢字名で統一すべきという論文を発表し、事実上、用語集の再改定を求めている。
真獣類の分類は、リンネ以来数百年にわたって、特に「目」以上の単位では、めったに変動することがなかった。しかし近年、哺乳類の分類学はかつてない勢いで刷新されつつあり、ほんの10年か20年前の知見が、ひどく時代遅れのものとなる状況が生まれている。
この状況を生み出した要因の一つは、南半球を含むさまざまな現場での、化石発掘調査の著しい進展である。たとえば、最古の真獣類(有胎盤類には含めないことが多い)、エオマイア・スカンソリアの化石は、2002年中国は遼寧省で発見されたが、これにより、この化石の推定年代である1億2500万年前(白亜紀前期)には、すでに原始的な真獣類が発生していたことが明らかとなり、真獣類の歴史は一気に4000万年さかのぼった。
もう一つの、さらに大きな影響を及ぼした要因は、分子生物学、とりわけ、遺伝子配列解析という新しい手法の出現と流行である。これは、動物の細胞内にあるミトコンドリアや核のDNAにおける塩基配列を調べ、グループごとの類縁関係を、統計学的に明らかにしていく手法である。このアプローチにより、真獣類の系統樹は、かつての形態学的な研究によるものとは幾分異なった形で再編成されることになった。
遺伝子研究による分類では、現生の真獣類を、系統的に近いと思われるものごとに、クレードにまとめた。クレードとは分類階級(綱、目など)を特定しない表現で、階級を割り当てるときは上目とされることが多い。
現生のものは、
この新しい分類は、従来のものとはいくつかの点で大きく異なっている。たとえば、コウモリの仲間は、解剖学的な特徴から、従来はサル目などと同じ大グループ(上目)に分類されていたが、遺伝子研究から得られた知見によれば、食肉類やクジラと同じ大グループということになる。
また、従来のモグラ目(食虫類)は、トガリネズミやモグラからなるメインのグループから、アフリカに分布するテンレック類とキンモグラ類の小グループが分離されて、前者はローラシア獣類、後者はアフリカ獣類と、2つの異なった上目グループに所属することになった。 今後、分子生物学と古生物学の両陣営が、懸隔を乗り越えて歩み寄り、互いに補い合って一つの統一的な体系を作り上げるには、なお多くの議論と譲歩が積み重ねが必要となる。 だが、新しいアプローチである遺伝子研究が、哺乳類の歴史の研究に大きな進展をもたらしつつあることは確かである。[要検証 – ノート]
たとえば、哺乳類がさまざまな「目」に分化し始めたのは、従来の化石研究では恐竜絶滅後(約6000万年前)のことと考えられていたが、遺伝子研究によれば、分化そのものは約1億年前にすでに始まっていたとされる。
また、前述の、最古の真獣類エオマイアの発見は、原始的な真獣類は従来の説よりもずっと早い時期に出現していたはずだとする分子生物学者の主張を、新たに発見された動物化石が裏付ける形となった、幸運な例である。 また、分子生物学による新たな分類に対応する形態学的形質が、実は古典的な研究でかなり見落とされていたり、重要でない形質として棄却されていたという事実が、解剖学的手段で確認されるといった研究展開も見られるようになった。そのため、古典的な過去の学問とみなされがちであった解剖学が、新たに今日的な意味を持って再活性化してきているという現象も見られる。
真獣類の系統研究は、今まさに、大きな転換期のただ中にあるといえる。[要検証 – ノート]
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タウリンはカルボキシル基を持たないので、アミノ酸ではない。また、タンパク質の構成成分になることもない。したがって、ネコにおいてはタウリンは必須アミノ酸ではなく、ビタミンの一種である。しかし、アミノ基を持つ酸であることもあって、古くからアミノ酸として混同されている。合成経路においてはまず、タンパク質の構成成分にもなる含硫アミノ酸であるシステインからシステイン・ジオキゲナーゼによりシステイン酸が合成される。タウリンはシステインスルフィン酸デカルボキシラーゼ(スルフィノアラニン・デカルボキシラーゼ)によりこのシステイン酸から合成される。ヒトはこの合成経路の両酵素をもつため、タンパク質を摂取していれば、タウリンの形での積極的摂取は不要である。胆汁酸と縮合したタウロコール酸はコリル・コエンザイムAとタウリンから合成される。タウリンは尿中に一日約200mgが排泄される。
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