- 英
- tissue factor TF
- 同
- 第III因子、factor III
- 関
- 血液凝固因子、組織トロンボプラスチン
- 組織で産生される
- 糖タンパク質
- 45kDa
- 外因系カスケードの起点となる
- 第VII因子を活性化し(第VIIa因子)、また複合体を形成して以下の反応を起こす
- 第X因子の活性化
- 第IX因子の活性化
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/03/05 20:16:06」(JST)
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凝固系(血液凝固因子)とは出血を止めるために生体が血液を凝固させる一連の分子の作用系であり、そうして固まった血栓を溶かして分解するのが線溶系(線維素溶解系)である。多くの病態においてこの二つは密接に関係しているため、本稿では二つをまとめて述べる。
目次
- 1 前駆的な止血の機序
- 2 血漿の凝固系
- 2.1 開始期(外因性経路)
- 2.2 (内因性経路)
- 2.3 増幅期
- 2.4 伝播期
- 2.5 各々の凝固因子
- 2.6 凝固阻止物質
- 3 線溶系
- 4 参考文献
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
前駆的な止血の機序
血管因子
末梢の血管が収縮したり、周囲へ漏れた血液が血管を圧迫することで出血を止める。前者の反応には血小板から放出されるセロトニンやトロンボキサンA2が関わっている。またプロスタグランジンE2が局所の神経を敏感にして痛み信号を中枢神経系に送り、患部への注意を喚起する。中枢神経系は生体外の状況を勘案し、末梢の瑣末な損傷を放置してでもその状況から「闘争か逃走か」をすることが肝要と判断すればノルアドレナリンを分泌して更に末梢血管を収縮させると同時に,エンドルフィンで痛み信号を遮断して外的状況を「闘争か逃走か」によって打開することを選ぶ。
血小板因子
- 傷害を受けた組織の細胞はフォン・ウィルブランド因子を分泌する。
- フォン・ウィルブランド因子は血小板表面に結合する。
- 損傷部位のコラーゲンとトロンビンが血小板を活性化し、ホスホリパーゼCが活性化される。
- ホスホリパーゼCはホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)を分解してイノシトールトリスリン酸(IP3)とする、IP3はセカンドメッセンジャーとして小胞体からCa++の遊離を促す、
- 血小板は損傷部位に凝集する、またトロンボキサンA2、第V因子、アデノシン二リン酸(ADP)を放出し、周囲の血小板を活性化する。
血漿の凝固系
開始期(外因性経路)
- 細胞が傷害を受けると、組織因子が第VIIa因子(第VII因子が活性化したもの)と結合する。
- 第VIIa因子は第IX因子を活性化して第IXa因子とする。
- 第IXa因子は第X因子を活性化して第Xa因子とする。
(内因性経路)
- 血液が負に帯電した固体(例えば、岩石や砂)に触れると、プレカリクレインと高分子量キニノゲンが第XII因子を活性化し、第XIIa因子とする。
- 第XIIa因子は第XI因子を活性化して第XIa因子とする。
- 第XIa因子は第IX因子を活性化して第IXa因子とする。
増幅期
- トロンビンは第XI因子を活性化して第XIa因子とする。第XIa因子は第IX因子を活性化して第IXa因子とする。
- また、トロンビン自体も第V因子と第VIII因子を活性化させてそれぞれ第Va因子、第VIIIa因子とする。
- さらにトロンビンは血小板を活性化して、第XIa因子、第Va因子、第VIIIa因子を血小板表面に結合させる。
伝播期
- 血小板表面に結合した第VIIIa因子と第IXa因子は第X因子を活性化して血小板表面に結合させる。
- 血小板表面に結合した第Xa因子と第XIa因子はプロトロンビンを次々とトロンビンに変化させる。
- 大量のトロンビンが血漿中のフィブリノーゲンを分解してフィブリンモノマーにする。フィブリンモノマーは第XIII因子によって架橋されてフィブリンポリマーとなり、他の血球を巻き込んで血餅(血栓)となる。
各々の凝固因子
個々の凝固因子には通常の自然科学の慣例(発見者が名を付ける)ではなく発見順のローマ数字が使われている。これは、次々に新しい因子が発見され、しかも後になってそれは同じ因子の別の形態だと言うことが判明したためである。後者の理由により、いくつかの欠番がある。ただし、最初の4つはローマ数字による呼び方は余り使われない。
- フィブリノーゲン・フィブリン(第I因子)
- プロトロンビン・トロンビン(第II因子)
- 組織因子(第III因子、トロンボプラスチン)
- カルシウムイオン(第IV因子)
- 第V因子(プロアクセレリン):第1染色体長腕(1q23)にマップされたF5遺伝子によってコードされる分子量33000のタンパク質で、肝臓で発現し血流に放出される。第506残基がアルギニンからグルタミンへと変異した多型を(その多型が多いオランダの街の名前から)第V因子ライデン変異(Factor V Leiden)と言い、静脈血栓塞栓症の増加がみられる。黒人・黄色人種ではまれである。また、この遺伝子は常染色体劣性遺伝のため欠損症はまれである。
- 第VI因子は欠番である(第Va因子の旧名)。
- 第VII因子(プロコンペルチン)
- 第VIII因子:X染色体長腕末端(Xq28)にマップされたF8遺伝子[1]によりコードされる分子量約3万のタンパク質。血漿中では、フォン・ウィルブランド因子と複合体を形成して存在する。この欠損により血友病Aを罹患する。
- 第IX因子(クリスマス因子):X染色体長腕末端近く(第VIII因子に隣接するXq27領域)にマップされたF9遺伝子[2]によりコードされる分子量約55000~60000の糖タンパク質。この欠損により血友病Bを罹患する。
- 上図のように、第VIII因子または第IX因子を介する反応以外はそれをバイパスする反応経路があるが、第VIII因子および第IX因子には無い。それゆえ血友病AおよびBは先天性の凝固障害でも特に重篤な物となる。またX染色体上にマップされており、染色体の末端にも近いことから、他の凝固障害に比べて罹患率が高く、新規に発生する突然変異も無視できない頻度で存在する。
- 第X因子(スチュアート・ブラウアー因子)第13染色体長腕末端近く(第VII因子に隣接する13q34領域)にマップされたF10遺伝子[3]によりコードされる分子量約35000の糖タンパク質で、主に肝でビタミンK依存的に合成され血流に放出される。
- 第XI因子(血漿トロンボプラスチン前駆物質)第4染色体長腕末端近く(4q35領域)にマップされたF11遺伝子[4]によりコードされる80kDaのタンパク質で,S-S結合した二量体を形成し、さらに高分子量キニノゲンと1:1で結合している。
- 第XII因子(ハーゲマン因子)
- 第XIII因子:フィブリンの安定化。
- プレカリクレイン
凝固阻止物質
- アンチトロンビンIII(AT3):分子量65000のタンパク質で、肝および血管内皮細胞で発現して血流中に放出される。第Xa因子やトロンビンの作用を阻害する。アロステリック部位へのヘパリンの結合により活性が1000倍にもなる。
- ヘパリン:多糖類であり、アンチトロンビンIIIを活性化させる。また低分子量ヘパリンはフォン・ウィルブランド因子の活性をも低下させ、血小板との反応を抑制する。
- プロテインC:トロンビンにより分解され活性化プロテインC(Activated Protein C; APC)となり、補酵素であるプロテインSと結合する。活性型第V因子や活性型第VIII因子に結合し抑制する。
- プロテインS:活性型プロテインC(APC)の補酵素であり、APCと結合し抗凝固作用を示す。
- エチレンジアミン四酢酸(EDTA)・クエン酸は血漿中の遊離Ca++イオンをキレート化することでトロンビンの形成を阻止する。両者とも採血した血液の凝固を阻止するために使用される。クエン酸は体内成分でもあり、体内では速やかに代謝されて凝固活性が問題にならない濃度になるため、体外循環回路内や輸血用保存血液の凝固阻止にも使用される。一方、EDTAはヒトの体の成分ではなく、体内では代謝されず二価金属イオンをキレートしたまま尿中へ排泄されるため、抗凝固作用を利用した後人体へ戻されることはない。
- アスピリンはヒトの体の成分ではなく、シクロオキシゲナーゼを阻害し、血小板のアラキドン酸からプロスタグラジン、トロンボキサンA2の生合成を阻害することにより抗血小板作用を発揮する医薬品である。採血した血液に直接加えても、凝固を阻止しない。
- ワルファリンはヒトの体の成分ではなく血栓形成を抑制する目的で使用される医薬品である。内服すると、肝で血液凝固因子が生合成される際にCa結合部位であるγーカルボキシグルタミン酸の生成を阻害して血液凝固因子の機能を損なうことにより、血液凝固を阻害する。採血した血液に加えても凝固を阻止しない。
線溶系
凝固した血餅は生体にとっては異物であり、組織の修復とともに除去されねばならない。このために存在するのが線溶系である。
- 血漿中のプラスミノゲンが組織型プラスミノゲン活性化因子(t-PA)もしくはウロキナーゼ(u-PA)によって活性化され、プラスミンになる。
- プラスミンは凝固したフィブリンを分解し、D-ダイマーその他の分解産物に変化させる。
線溶阻止物質
- プラスミノゲン活性化阻止物質
- α1アンチトリプシン:第14染色体長腕末端(14q32)にマップされたSERPINA1遺伝子によりコードされる分子量約51000の糖タンパク質で、活性化されたプラスミンの作用を阻害する。この欠損によりCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を発病する確率が上がることが知られているが、機序は不明である。
- α2アンチプラスミン:第17染色体短腕末端(17p13)にマップされたSERPINF1とSERPINF2遺伝子によりコードされる分子量59000の糖タンパクで、肝で合成され血流に放出される。血漿電気泳動ではα2グロブリンに属し、線溶阻止に果たす役割は上記のα1アンチトリプシンよりも大きい。
- トロンビン活性化性線溶阻止物質
線溶系の異常
そもそも侵襲を受けていない血管壁でも血栓の形成と線溶は絶えず繰り返されており、このバランスが崩れると様々な疾患を引き起こす。
多発外傷では組織因子が血液内に流入して凝固系を発動し、また敗血症によるエンドトキシンなどは炎症性メディエイターの誘導を介して血管内皮細胞の抗血小板作用を減弱させるため、身体各部で血栓が形成されて凝固因子が消費され、ついには凝固因子の枯渇に至る。同時に血栓による循環不全を解消すべく線溶系が亢進する結果、止血が出来なくなる。これが播種性血管内凝固症候群(DIC)である。DICの治療にはヘパリンを用いるが、AT3が枯渇している場合は効果がないのでAT3も同時に投与する。また凝固因子と線溶系の因子の多く(第II、VII、IX、XI、XIII因子、プラスミン)はセリンプロテアーゼが進化した物であるから、セリンプロテアーゼ阻害薬であるメシル酸ナファモスタットやメシル酸ガベキサートを投与する。
参考文献
Ferguson JJ. et al. "Safe use of platelet GP IIb/IIIa inhibitors." Eur Heart J. 19 Suppl D:D40-51.;1998 Apr Entrez PubMed
関連項目
- 血栓
- 播種性血管内凝固症候群
- 静脈血栓塞栓症
- 血友病
- 凝固・線溶系疾患
- 凝固機能検査
外部リンク
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Japanese Journal
- P2-24-18 子容頸癌,体癌における組織因子,血液凝固第VII因子の発現と血栓塞栓症との関連の検討(Group125 婦人科悪性腫瘍・手術合併症1,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 最上 多恵,横田 奈朋,丸山 康世,長谷川 哲哉,井畑 穣,助川 明子,沼崎 令子,佐藤 美紀子,杉浦 賢,中山 裕樹,宮城 悦子,平原 史樹
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 874, 2011-02-01
- NAID 110008510043
- 銅合金の耐応力緩和特性を支配する原子レベルの組織因子の究明
- 有賀 康博,Saxey David W.,Marquis Emmanuelle A. [他]
- 銅と銅合金 50(1), 1-6, 2011
- NAID 40018947748
Related Links
- 組織因子は、分子量が5万~30万の. 糖タンパクで ... 組織因子は、膜を1回貫通して いる膜タンパクである。 組織因子は、 ... 組織因子の役割. 組織因子は、凝固系の外因 系の. 出発地点となる。 ■組織因子の進行. 1.組織因子は、カルシウムイオンを介して ...
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★リンクテーブル★
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [097H036]←[国試_097]→[097H038]
[★]
- 英
- coagulation factor (Z), clotting factor, blood coagulation factor, blood coagulation factors
- 関
- ビタミンK
血液凝固因子
表
- 15種類ある
産生部位
臨床関連
-凝固因子
[★]
- 英
- disseminated intravascular coagulation DIC, disseminated intravascular coagulopathy?
- 同
- 播種性血管内凝固、汎発性血管内血液凝固 generalized intravascular coagulation
- 関
- TNF-αの作用により血管内で血液が凝固する(2008年前期免疫学)
- 致死率は70-80% (2008年前期免疫学)
概念
- 癌、敗血症、白血病などを基礎とし、過度の凝固亢進により、全身の微小血管に血栓が多発して循環障害による臓器障害と、血小板・凝固因子の消費と線溶系の亢進による著明な出血傾向を来す病態
病因
疫学
病変形成&病理
症状
- 出血傾向(紫斑など皮下出血、鼻出血、血尿、消化管出血、肺出血)
- 臓器障害(血栓形成に基づく循環障害)
- 初発は70%が出血(紫斑、うっ血斑、注射部位からの出血、消化管出血など)。
診断
表1.DIC診断基準
|
|
厚労省DIC診断基準
|
急性期DIC診断基準
|
基礎疾患
|
基礎疾患あり:1点
|
基礎疾患は必須項目
|
臨床症状
|
出血症状あり:1点 臓器症状あり:1点
|
要除外診断 SIRS(3項目以上):1点
|
血小板数 (X104/μL)
|
8< ≦12:1点 5< ≦ 8:2点 ≦ 5:3点
|
8≦<12 or 30%以上減少/24h:1点 <8 or 50%以上減少/24h:3点
|
血清FDP(μg/ml)
|
10≦ <20:1点 20≦ <40:2点 40≦ :3点
|
10≦ <25: 1点 25≦ :3点 D-dimerもFDPとの換算表により使用可能
|
フィブリノゲン(mg/dl)
|
100< ≦150:1点 ≦100:2点
|
―
|
PT比
|
1.25≦ <1.67:1点 1.67≦ :2点
|
1.2≦:1点
|
DIC診断
|
7点以上 (白血病群では、出血症状と血小板数を除いて、4点以上)
|
4点以上 (白血病群には適応できない)
|
検査
治療
予後
予防
参考
- どの診断基準を使うべきか記載有り
- http://fhugim.com/?p=2454
[★]
- 英
- hepaplastin test, HPT
- 関
- トロンボプラスチン、プロトロンビン時間
- 検体:クエン酸を加えた全血もしくは血漿
- 組織トロンボプラスチン(組織因子とリン脂質)を検体に加え、凝固するまでの時間を計測する。(その時間とコントロールの時間を使って活性の大小を%で表現する、と思われる)
- 外因系を反映、すなわち、第II、VII、X因子を反映する検査である。
- ワルファリンの影響を受ける。
- ビタミンK欠乏症では低下する。
- 組織因子としてウサギ脳トロンボプラスチンを使用 → PIVKAの影響を受けない(トロンボテストとの異差) → 肝実質細胞の合成能を反映 (LAB.416)
[★]
- 英
- thromboplastin
- 同
- 第III因子 factor III。CD142?
- 関
- 血液凝固因子
トロンボプラスチン
-
- 部分トロンボプラスチンを血漿に加えCa2+を再加して凝固時間を測定
[★]
- 英
- tissue thromboplastin, TPL
- 関
- 組織因子
[★]
- 英
- tissue factor pathway inhibitor, TFPI
- 関
- 血液凝固因子
生理作用
- 外因系凝固反応の開始を阻止:F III, F VIIa, F Xaを不活性化する
- FXa → K2領域
[★]
- 英
- tissue
- ラ
- textus
- 関
- 何種類かの決まった細胞が一定のパターンで集合した構造の単位のこと。
- 全体としてひとつのまとまった役割をもつ。
分類
[★]
- 英
- child
- 関
- 子供、雑種、小児、小児用
[★]
- 英
- factor
- 関
- 要因、要素、ファクター