- 英
- polyacid
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/23 21:11:29」(JST)
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ポリ酸(ポリさん、polyoxometalate)はオキソ酸が縮合してできた陰イオン種であり、3族以外の前期遷移金属元素(4族–7族)に多く知られている。金属元素からなるポリ酸は金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。化学式が[MxOy]n− (M = Mo, V, W, Ti, Al, Nb など)で表される分子を指す呼称である。ポリオキソメタレート (POM) または金属オキソ酸とも言う。一種類の遷移金属イオンから構成される化合物はイソポリ酸、複数種のオキソ酸からなるものはヘテロポリ酸と呼ばれる。
多くのポリ酸の中心元素は、複数の酸素原子が結合しているため最高酸化数まで酸化された状態である場合が多い。たとえば Mo(VI), V(V), W(VI) などが典型的なポリ酸として知られている。最高酸化数のポリ酸は酸化されないため、酸化触媒として優れた特性を示す。また、高い酸化数を持つ中心元素の存在のためプロトンを解離しやすいので、強酸である場合が多い(オキソ酸の酸性度)。
目次
- 1 構造
- 2 一次構造
- 3 二次構造
- 4 特徴
- 5 歴史
- 6 関連項目
- 7 参考文献
- 8 出典
構造
ポリ酸は金属原子などに酸素原子が 4, 5, 6配位した結果、MO4四面体、MO5正方錘、MO6六面体、またはMO5三方両錘からなる基本単位から構成される。そして、脱水縮合反応により酸素原子が基本単位間を架橋し、頂点、稜または面を介して結合していくことにより、多彩な構造体を形成することができる。
ケギン型、ドーソン型、アンダーソン型などの構造が知られている。複雑な三次元構造を見やすくするため、ベンゼン環を6角形で省略するように、ポリ酸の表示には基本単位を多面体で示す多面体表示がよく用いられる。
一次構造
ポリ酸イオンのアニオン構造(骨格構造)は一次構造と称される。骨格原子・ヘテロ原子の種類(とその個数)・配位する酸素原子の共有関係により、一次構造は決まる。同じ分子式でもまったく別の構造をもつ場合もある。また、骨格原子は異なるが同一の骨格構造をもつ場合がありそれらはケギン型、アンダーソン型、ドーソン型のようにまとめて呼称される。しかし物性は骨格原子、ヘテロ原子の種類や酸化状態によって変化する場合が多い。ポリ酸は「ポリアニオン」と表記されることから明らかなように、陰イオンであるため対カチオンが存在する。ポリ酸の固体状態については次の二次構造で説明する。
二次構造
固体のポリ酸塩の物性を規定する結晶構造は二次構造と呼称される。液相の均一系触媒にポリ酸を利用する場合には、存在するポリ酸の一次構造やその安定性などが重要視されるが、不均一系触媒として用いる際には、一次構造だけでなくポリ酸塩の結晶構造も、その触媒活性に大きく影響してくる。二次構造は、ポリ酸イオン、対カチオン、しばしば結晶格子中に存在する溶媒分子との位置関係を示すが、ポリ酸イオンと対カチオンとの大きさの違いから結晶格子中のパッキングに任意性があるため、必ずしも一義的に決定されるものではなく、固体化の条件に影響される。またプロトンを対カチオンとしたケギン型へテロポリ酸の「擬液相」挙動でみられるように二次構造が流動的な場合も存在する。
特徴
- 電気化学・光化学的に可逆な多電子酸化還元反応を行うものが多いことから、酸化還元触媒としての性能に注目が集まっている。また、この性質は特にKeggin型ヘテロポリ酸が強く示す。
- 水及び極性溶媒に溶解できる。
- 金属の一部分を異種金属で置換することができる。
- さまざまな分子をゲストとして抱接する分子を形成しやすい。
- 酸性度が高い。
- 耐酸化性能に優れている。
歴史
- 1826年 - イェンス・ベルセリウスがモリブデン酸アンモニウム (NH4)3PMo12O40・aq の塩を合成し、組成分析
- 1864年 - C・マリニャックが 12タングストケイ酸 (SiW12O40) を合成し、組成を正確に決定
- 1872年 - C・シャイブラー (Scheibler) が12タングストリン酸 (PW12O40) の生成を確認
- 1880年 - D・クライン (Klein) と F・マウロ (Mauro) が12タングストホウ酸 (BW12O40) を合成
- 1887年 - R・フィンケラー (Finkener)がドーソン構造を持つ18タングストリン酸 (P2W18O62) を合成
- 1909年 - H・コパウ (Copaux) が12タングストホウ酸の正確な組成を決定、その異性体を発見
- 1933年 - J・F・ケギン (Keggin) がα型12タングストリン酸の立体構造(通称ケギン構造)を粉末X線回折写真より決定[1]
- 1941年 - K・H・ヤール (Jahr) がγ型ケギン構造を提唱
- 1950年 - インバー・リンドクビスト (Invar Lindqvist) が Mo7O24 のアンモニウム塩および Mo8O26 のアンモニウム塩の構造を決定
- 1953年 - B・ドーソン (Dawson) が 2:18 型ポリ酸である P2W18O62 の構造を決定(通称ドーソン構造)[2]
- 1956年 - F・J・C・ロセッティ (Rossotti)、H・S・ロセッティが初めてポリアニオンの溶液内状態を決定
関連項目
参考文献
- Pope, M. T. (1983). Heteropoly and Isopoly Oxometalates; Springer Verlag: New York.
- Hill, C. L. Ed. (1998). "Polyoxometalates." Chem. Rev. 98: 1–2 & ff.
出典
- ^ Keggin, J. F. (1933). Nature 131: 908.
- ^ Dawson, B. (1953). Acta Crystallogr. 6: 113.
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- 1. 骨髄造血の制御 regulation of myelopoiesis
- 2. 好中球機能異常症の検査での評価 laboratory evaluation of neutrophil disorders
- 3. 自然免疫系の概要 an overview of the innate immune system
- 4. 顆粒球輸血 granulocyte transfusions
- 5. 好中球二次顆粒欠損症 neutrophil specific granule deficiency
Japanese Journal
- 担持ヘテロポリ酸の分散状態・酸性質の評価と酸触媒特性の理解 (特集 ポリオキソメタレート)
- Recent Studies on Heteropolyacid (HPA)/TiO₂ Hybrid Photocatalysts
- PRUETHIARENUN Kunchaya,中島 章
- 色材協会誌 = Journal of the Japan Society of Colour Material 87(7), 227-234, 2014-07
- NAID 40020157119
- 光でカタチが変わる分子、ポリ酸の光化学反応 (特集 工学の構想力 : 中部大学の提案) -- (工学研究のフロンティア)
Related Links
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★リンクテーブル★
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- 英
- oxo acid、oxoacid
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オキソ酸(オキソさん、Oxoacid)とは、ある原子にヒドロキシル基 (-OH) とオキソ基 (=O) が結合しており、且つそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物のことを指す<ref>IUPAC Gold Book - oxoacids</ref>。ただし、無機化学命名法IUPAC1990年勧告のオキソ酸の定義では、先述した化合物の他にアクア酸(aqua acid)<ref>中心金属イオンに配位した水分子に酸性プロトンが存在する酸。例:ヘキサアクア鉄(III)イオン</ref>、ヒドロキソ酸(hydroxoacid)<ref>隣接するオキソ基が存在しないヒドロキシル基に酸性プロトンが存在する酸。例:オルトケイ酸 (H4SiO4)</ref>もオキソ酸に含まれることになる。無機化合物のオキソ酸の例としては硫酸や硝酸、リン酸などが挙げられる。有機化合物で最も重要なオキソ酸はカルボン酸である。酸性の強弱は化合物の種類によりさまざまなものがある。一般に、オキソ酸は多原子イオンと水素イオンを与える。
オキソ酸が脱水縮合することで、ポリオキソ酸が生成する。例えば、リン酸では二リン酸、三リン酸である。酸無水物も同様に、オキソ酸の脱水縮合生成物にあたる。遷移金属元素のオキソ酸は金属オキソ酸(ポリ酸)と呼ぶ。
ポーリングの規則
単核オキソ酸の酸性度の強さを推定する2つの経験則としてポーリングの規則(Pauling's rules)が知られている。
- 1, 中心元素 E のオキソ酸の化学式が EOm(OH)n で表されるときに、酸解離定数 Ka は次の関係式で表される。
- <math>\mbox{p}K_a = -\log K_a \approx 8 - 5m </math>
- 2, n>1の酸の逐次酸解離のpKa値はプロトン解離が1回起こる毎に5ずつ増加する。
ただし、この規則に従わないオキソ酸も存在する。例えば炭酸の推定値は3であるが実測値は6.4である。これは水溶液中に溶けている二酸化炭素が僅かしか炭酸にならないためである。このことを考慮に入れるとpKa値は規則通り約3.6となる。また、亜硫酸も規則に従わない。これは溶液中に亜硫酸分子は検出されず、さらにSO2が複雑な平衡を持っているからである。
- <math>\rm CO_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ H_2CO_3</math>
- <math>\rm SO_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ H^+ + HSO_3^-</math>
オキソ酸の一覧
脚注
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<references/>
関連項目
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- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義