出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/06/18 16:42:06」(JST)
過酸(かさん、英: peroxy acid)は、オキソ酸のヒドロキシ基 (−OH) をヒドロペルオキシド基 (−O−OH) に置き換えた構造を持つ物質のことである。英語読みそのままでペルオキソ酸ともいう。金属粉など共雑物があると急速に分解し、場合によっては爆発するが、共雑物が少ない状態で過酸を内面が滑らかな容器で保存する場合は比較的安定である。あるいは塩として単離できるものもある。
過酸の名称 | 分子式 | 示性式 | 過酸塩の名称 |
---|---|---|---|
過硫酸 (ペルオキソ一硫酸) |
H2SO5 | HO−SO2−O−O−H | 過硫酸塩 (ペルオキソ一硫酸塩) |
過炭酸 (ペルオキソ一炭酸) |
H2CO4 | HO−CO−O−O−H | 過炭酸塩 (ペルオキソ一炭酸塩) |
過リン酸 (ペルオキソ一リン酸) |
H3PO5 | (HO)2−PO−O−O−H | 過リン酸塩 |
次過塩素酸 (ペルオキソ一過塩素酸) |
HClO5 | H−O−O−Cl(=O)3 | 次過塩素酸塩 |
過酢酸 | C2H4O3 | CH3−C(=O)−O−O−H | 過酢酸塩 |
過安息香酸 | C7H6O3 | C6H5−C(=O)−O−O−H | 過安息香酸塩 |
メタクロロ過安息香酸 | C7H5ClO3 | m-ClC6H4−C(=O)−O−O−H |
表中、過酢酸や過安息香酸など、カルボン酸から誘導される過酸を過カルボン酸と呼ぶ。
過マンガン酸 HMnO4 や過塩素酸 HClO4 などは −O−O−H 基を有しないから過酸には該当しない。
また過炭酸ナトリウムなど、通称は過酸の塩のようであるにもかかわらず、実際の構造は過酸の塩ではないものもある。
過酢酸は加熱滅菌が不可能な医療用器具や飲料用ペットボトルなどの殺菌剤として使用されている。酸素系の漂白剤として使用されている過炭酸ナトリウムは上述したように過炭酸のナトリウム塩ではない。
有機合成では実験室的にはメタクロロ過安息香酸(m-chloroperbenzoic acid、mCPBAと略される)、工業的には過酢酸が二重結合のエポキシ化やバイヤー・ビリガー反応などの酸化反応によく用いられる。
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。]] オキソ酸(オキソさん、Oxoacid)とは、ある原子にヒドロキシル基 (-OH) とオキソ基 (=O) が結合しており、且つそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物のことを指す<ref>IUPAC Gold Book - oxoacids</ref>。ただし、無機化学命名法IUPAC1990年勧告のオキソ酸の定義では、先述した化合物の他にアクア酸(aqua acid)<ref>中心金属イオンに配位した水分子に酸性プロトンが存在する酸。例:ヘキサアクア鉄(III)イオン</ref>、ヒドロキソ酸(hydroxoacid)<ref>隣接するオキソ基が存在しないヒドロキシル基に酸性プロトンが存在する酸。例:オルトケイ酸 (H4SiO4)</ref>もオキソ酸に含まれることになる。無機化合物のオキソ酸の例としては硫酸や硝酸、リン酸などが挙げられる。有機化合物で最も重要なオキソ酸はカルボン酸である。酸性の強弱は化合物の種類によりさまざまなものがある。一般に、オキソ酸は多原子イオンと水素イオンを与える。
オキソ酸が脱水縮合することで、ポリオキソ酸が生成する。例えば、リン酸では二リン酸、三リン酸である。酸無水物も同様に、オキソ酸の脱水縮合生成物にあたる。遷移金属元素のオキソ酸は金属オキソ酸(ポリ酸)と呼ぶ。
単核オキソ酸の酸性度の強さを推定する2つの経験則としてポーリングの規則(Pauling's rules)が知られている。
ただし、この規則に従わないオキソ酸も存在する。例えば炭酸の推定値は3であるが実測値は6.4である。これは水溶液中に溶けている二酸化炭素が僅かしか炭酸にならないためである。このことを考慮に入れるとpKa値は規則通り約3.6となる。また、亜硫酸も規則に従わない。これは溶液中に亜硫酸分子は検出されず、さらにSO2が複雑な平衡を持っているからである。
テンプレート:脚注ヘルプ <references/>
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