- 英
- hypochlorous acid
- 関
次亜塩素酸(じあえんそさん、Hypochlorous acid)は塩素のオキソ酸の1つで、塩素の酸化数は+1である。組成式では HClO と表わされるが、水素原子と塩素原子が酸素原子に結合した構造 H−O−Cl を持つ。不安定な物質であり水溶液中で徐々に分解する。次亜塩素酸および次亜塩素酸の塩類は酸化剤、漂白剤、外用殺菌剤、消毒剤として利用される。
性質
実験室的には水酸化カリウム水溶液などに塩素を通じたりして調整した次亜塩素酸塩水溶液を硫酸で中和し、水蒸気蒸留して遊離酸の水溶液を得る。また、酸化水銀 の四塩化炭素懸濁液に塩素を通じた後に水で抽出したり、あるいは酸化ビスマスを水懸濁液中に塩素を通じることで遊離酸の水溶液を得る方法も知られている。
薄い水溶液としては存在するが、25%以上の濃度では一酸化二塩素に変化するので遊離酸を単離することはできない。濃厚水溶液は淡黄色である。また、遊離酸が弱酸 (pKa = 7.53)<ref>「次亜塩素酸」、『岩波理化学辞CD-ROM版』 第5版、岩波書店、1998年。</ref> のため、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩水溶液はかなり強い塩基性を示す。
水溶液中でも不安定で、次のような不均化により塩化水素を放出しながら徐々に分解する。
- <math>\rm 2 HClO \longrightarrow 2 HCl + O_{2}</math>
- <math>\rm 3 HClO \longrightarrow 2 HCl + HClO_{3}</math>
次亜塩素酸やその塩の水溶液は、カルキ臭と呼ばれるプールの消毒槽のようなにおいを持つ。
また、塩素を水に溶かすと、次のような平衡により一部が塩酸と次亜塩素酸となる<ref>「次亜塩素酸」、『世界百科事典CD-ROM版』 V1.22、平凡社、1998年。</ref>。
- <math>
{\rm Cl_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ HCl + HClO} \quad K _{\rm w}=1.56 \times 10^{-4}
</math>
すなわち、中性~酸性条件ではこの反応はあまり進行しないが、アルカリ性条件では生成する遊離酸が次亜塩素酸塩となり平衡が右に偏るので、次亜塩素酸塩を製造する方法の1つとなる。
- <math>
\rm Cl_2O + H_2O \longrightarrow 2HClO
</math>
- <math>
\rm HClO + H_2O_2 \longrightarrow HCl + H_2O + O_2
</math>
- ハロホルム反応により、アルカリ性条件下で次亜塩素酸(塩)はメチルケトンやアルコール類を塩素化する。
- 炭素二重結合に次亜塩素酸が付加すると、クロロヒドリン体を与える。
塩
出典
<references />
参考文献
- R・B・ヘスロップ、K・ジョーンズ 『ヘスロップ ジョーンズ無機化学(下)』 第1版、斎藤喜彦訳、東京化学同人、1977年。
関連項目
WordNet
- a compound used as a fixing agent in photographic developing (同)sodium thiosulphate, sodium_thiosulfate
PrepTutorEJDIC
- 定着液,ハイポ[hypo-sulfiteの短縮形]
- 皮下注射器[hypodermicの短縮形]
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/05 10:23:00」(JST)
[Wiki ja表示]
次亜塩素酸 |
|
|
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
7790-92-3 |
PubChem |
24341 |
ChemSpider |
22757 |
UNII |
712K4CDC10 |
EINECS |
232-232-5 |
|
- InChI=1S/ClHO/c1-2/h2H
Key: QWPPOHNGKGFGJK-UHFFFAOYSA-N
InChI=1/ClHO/c1-2/h2H
Key: QWPPOHNGKGFGJK-UHFFFAOYAT
|
特性 |
化学式 |
HClO |
モル質量 |
52.46 g/mol |
外観 |
無色の水溶液 |
密度 |
可変 |
水への溶解度 |
可溶 |
酸解離定数 pKa |
7.53[1] |
危険性 |
主な危険性 |
酸化剤 (O) |
関連する物質 |
関連物質 |
塩素
次亜塩素酸カルシウム
次亜塩素酸ナトリウム |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
次亜塩素酸(じあえんそさん、英: hypochlorous acid)は塩素のオキソ酸の1つで、塩素の酸化数は+1である。組成式では HClO と表されるが、水素原子と塩素原子が酸素原子に結合した構造 H-O-Cl を持つ。不安定な物質であり、水溶液中で徐々に分解する。次亜塩素酸および次亜塩素酸の塩類は酸化剤、漂白剤、外用殺菌剤、消毒剤として利用される。
目次
- 1 性質
- 2 塩
- 3 出典
- 4 参考文献
- 5 関連項目
性質
実験室的には水酸化カリウム水溶液などに塩素を通じたりして調整した次亜塩素酸塩水溶液を硫酸で中和し、水蒸気蒸留して遊離酸の水溶液を得る。また、酸化水銀(II) の四塩化炭素懸濁液に塩素を通じた後に水で抽出したり、あるいは酸化ビスマス(Bismuth Oxide)を水懸濁液中に塩素を通じることで遊離酸の水溶液を得る方法も知られている。
薄い水溶液としては存在するが、25 %以上の濃度では一酸化二塩素に変化するので遊離酸を単離することはできない。濃厚水溶液は淡黄色である。また、遊離酸が弱酸 (pKa = 7.53)[2] のため、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩水溶液はかなり強い塩基性を示す。
水溶液中でも不安定で、次のような不均化により塩化水素を放出しながら徐々に分解する。特に酸性物質水溶液と化合するとこの分解が促進される。
次亜塩素酸やその塩の水溶液は、カルキ臭と呼ばれるプールの消毒槽のようなにおいを持つ。
また、塩素を水に溶かすと、次のような平衡により一部が塩酸と次亜塩素酸となる[3]。
すなわち、中性〜酸性条件ではこの反応はあまり進行しないが、アルカリ性条件では生成する遊離酸が次亜塩素酸塩となり平衡が右に偏るので、次亜塩素酸塩を製造する方法の1つとなる。
- ハロホルム反応により、アルカリ性条件下で次亜塩素酸(塩)はメチルケトンやアルコール類を塩素化する。
- 炭素二重結合に次亜塩素酸が付加すると、クロロヒドリン体を与える。
塩
- 次亜塩素酸カルシウム いわゆるさらし粉
- 次亜塩素酸ナトリウム
- 次亜塩素酸カリウム
出典
- ^ Harris, Daniel C. (2009). Exploring Chemical Analysis, Fourth Edition. p. 538.
- ^ 「次亜塩素酸」、『岩波理化学辞CD-ROM版』 第5版、岩波書店、1998年。
- ^ 「次亜塩素酸」、『世界百科事典CD-ROM版』 V1.22、平凡社、1998年。
参考文献
- R・B・ヘスロップ、K・ジョーンズ 『ヘスロップ ジョーンズ無機化学(下)』 第1版、斎藤喜彦訳、東京化学同人、1977年。
関連項目
- 消毒
- 塩素
- 亜塩素酸
- 塩素酸
- 過塩素酸
- 強酸性水 次亜塩素酸水という呼称で食品添加物とされている
水素の化合物 |
|
二元化合物 |
AlH3 · AsH3 · BH3 · B2H6 · CaH2 · CH4 · GaH3 · GeH4 · HAt · HBr · HCl · HF · HI · HN3 · H2O · H2O2 · H2O3 · H2S · H2S2 · H2Se · KH · NaH · NH3 · PH3 · SiH4
|
|
多元化合物 |
H3AsO4 · H5As3O10 · HAuCl4 · HBF4 · HBiO3 · HBO2 · H3BO3 · HBrO · HBrO2 · HBrO3 · HBrO4 · HClO · HClO2 · HClO3 · HClO4 · HClO5 · HCN · H2CrO4 · H2Cr2O7 · H2CO3 · H2CO4 · H2CS3 · H[CuCl2] · H2[CuCl4] · HFO · HIO · HIO3 · HIO4 · H5IO6 · HMnO4 · H2MoO4 · HNC · HNCO · HNO2 · HNO3 · HNO4 · H2N2O2 · HOCN · HCNO · HPH2O2 · H2PHO3 · H3PO3 · H3PO4 · H3PO5 · H4P2O7 · H4P2O8 · H5P3O10 · H2[PtCl4] · H2[PtCl6] · HReO4 · HRuO4 · H2RuO4 · H2SeO3 · H2SeO4 · H2SeO5 · H2SiF6 · H2SiO3 · H4SiO4 · H2Si2O5 · HSNC · HSCN · H2SO4 · H2SO5 · H2S2O3 · H2S2O4 · H2S2O6 · H2S2O7 · H2S2O8 · HTcO4 · H2TeO3 · H6TeO6 · HVO3 · H3VO4 · H4V2O7 · H2WO4 · H2XeO4
|
|
塩素の化合物 |
|
ClF · ClF3 · ClF5 · ClNO3 · ClO · ClO2 · Cl2O · Cl2O4 · Cl2O5 · Cl2O6 · Cl2O7 · ClOF3 · ClO2F · ClO2F3 · ClO3F · HClO · HClO2 · HClO3 · HClO4
|
|
Japanese Journal
- 次亜塩素酸によるEPDMの劣化に関する研究(第2報)非解離型次亜塩素酸によるカーボンブラック充塡EPDM架橋物の劣化機構
- 石田 拓也,岩蕗 仁,福﨑 智司
- 日本ゴム協会誌 = Journal of the Society of Rubber Science and Technology, Japan 87(3), 107-114, 2014-03
- NAID 40020014803
- 次亜塩素酸ナトリウムで前処理を受けた好熱性好酸性菌芽胞の耐熱性
- 小林 哲也,青山 好男
- 日本防菌防黴学会誌 = Journal of Antibacterial and Antifungal Agents 42(3), 117-120, 2014-03
- NAID 40020012333
- ポリエチレンテレフタレート板に収着したリモネンの除去における非解離型次亜塩素酸の効果
- 竹原 淳彦,常定 健,石田 拓也 [他]
- 日本防菌防黴学会誌 = Journal of Antibacterial and Antifungal Agents 42(1), 3-8, 2014-01
- NAID 40019947980
- 症例報告 次亜塩素酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム含有漂白剤の摂取により腐食性食道炎,縦隔気腫をきたし,保存的治療で改善した1例
- 中野 寛之,伊関 憲,小澤 昌子 [他]
- The Japanese journal of clinical toxicology 27(1), 39-44, 2014
- NAID 40020011522
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- oxo acid、oxoacid
。]]
オキソ酸(オキソさん、Oxoacid)とは、ある原子にヒドロキシル基 (-OH) とオキソ基 (=O) が結合しており、且つそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物のことを指す<ref>IUPAC Gold Book - oxoacids</ref>。ただし、無機化学命名法IUPAC1990年勧告のオキソ酸の定義では、先述した化合物の他にアクア酸(aqua acid)<ref>中心金属イオンに配位した水分子に酸性プロトンが存在する酸。例:ヘキサアクア鉄(III)イオン</ref>、ヒドロキソ酸(hydroxoacid)<ref>隣接するオキソ基が存在しないヒドロキシル基に酸性プロトンが存在する酸。例:オルトケイ酸 (H4SiO4)</ref>もオキソ酸に含まれることになる。無機化合物のオキソ酸の例としては硫酸や硝酸、リン酸などが挙げられる。有機化合物で最も重要なオキソ酸はカルボン酸である。酸性の強弱は化合物の種類によりさまざまなものがある。一般に、オキソ酸は多原子イオンと水素イオンを与える。
オキソ酸が脱水縮合することで、ポリオキソ酸が生成する。例えば、リン酸では二リン酸、三リン酸である。酸無水物も同様に、オキソ酸の脱水縮合生成物にあたる。遷移金属元素のオキソ酸は金属オキソ酸(ポリ酸)と呼ぶ。
ポーリングの規則
単核オキソ酸の酸性度の強さを推定する2つの経験則としてポーリングの規則(Pauling's rules)が知られている。
- 1, 中心元素 E のオキソ酸の化学式が EOm(OH)n で表されるときに、酸解離定数 Ka は次の関係式で表される。
- <math>\mbox{p}K_a = -\log K_a \approx 8 - 5m </math>
- 2, n>1の酸の逐次酸解離のpKa値はプロトン解離が1回起こる毎に5ずつ増加する。
ただし、この規則に従わないオキソ酸も存在する。例えば炭酸の推定値は3であるが実測値は6.4である。これは水溶液中に溶けている二酸化炭素が僅かしか炭酸にならないためである。このことを考慮に入れるとpKa値は規則通り約3.6となる。また、亜硫酸も規則に従わない。これは溶液中に亜硫酸分子は検出されず、さらにSO2が複雑な平衡を持っているからである。
- <math>\rm CO_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ H_2CO_3</math>
- <math>\rm SO_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ H^+ + HSO_3^-</math>
オキソ酸の一覧
脚注
テンプレート:脚注ヘルプ
<references/>
関連項目
[★]
- 英
- perchloric acid, perchlorate
- 関
- 塩素酸 HClO3, 亜塩素酸 HClO2, 次亜塩素酸 HClO
- 関
- 過塩素酸塩
HClO4
酸性 :過塩素酸>塩素酸>亜塩素酸>次亜塩素酸
酸化力:次亜塩素酸>亜塩素酸>塩素酸>過塩素酸
-perchlorate
[★]
- 同
- hyp
- (化)より酸化状態?の低いという意味で使われている
[★]
- 関
- hypochlorite、hypochlorous
[★]
- 英
- sodium hypochlorite
- 商
- アンチホルミン、キャナルクリーナー、テキサント、ネオクリーナー、ヒポクロリット、ヤクラックス、ヤクラックスD、次亜塩、ピーラックス、ミルトン
- 次亜塩素酸のナトリウム塩である。
- 化学式:NaClO
- 弱酸と思われるので、強酸と混合すると塩素を発生する
- NaClO + 2HCl → NaCl + Cl2 + H2O
- 金属腐食性を有する
- pHが高くなると殺菌力が低下する。
[★]
- 英
- calcium hypochlorite poisoning
- 関
- 次亜塩素酸カルシウム
有害作用
- 局所刺激作用のほか、酸化作用(→メトヘモグロビン血症)がある。
症状
[★]
- 英
- sodium hypochlorite
- 関
- 次亜塩素酸ナトリウム
[★]
- 英
- hypochlorite
- 関
- 次亜塩素酸
[★]
- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義
[★]
- 英
- chlorine
- 同
- クロル
- 関
- 塩素イオン Cl-
[★]
- 英
- chlorate
- 関
- 塩素酸塩
[★]
次亜塩素酸ナトリウム