- 英
- sulfinic acid
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/01/13 17:19:04」(JST)
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スルフィン酸(スルフィンさん、sulfinic acid)とは、有機硫黄化合物の一種で、構造式が R-S(=O)OH と表される一連のオキソ酸のこと。
目次
- 1 性質
- 2 命名法
- 3 合成
- 4 反応
- 5 参考文献
性質[編集]
スルフィン酸は一般に、スルホン酸と同程度の強酸性を示す。しかし、化学的にはやや不安定で、不均化を起こしてスルホン酸とスルフェン酸に変わる。スルフェン酸はさらに不安定であり、不均化や付加などを起こす。
金属塩の形では比較的安定となり、芳香族スルフィン酸のナトリウム塩は市販品として入手可能である。
命名法[編集]
IUPAC命名法においてスルフィン酸は、例えばベンゼンスルフィン酸 (benzenesulfinic acid, C6H5-S(=O)OH) のように、母骨格名に接尾辞「スルフィン酸」を添えて表す。-S(=O)OH 部位は、スルフィノ基 (sulfino group) と呼ばれ、対応する接頭辞は「スルフィノ」である。
合成[編集]
通常、塩化スルホニルを金属亜鉛などで還元し[1]、得られる亜鉛の塩を酸で分解してスルフィン酸とする。
- 2 R-S(=O)2-Cl + 2 Zn → (R-S(=O)O)2Zn + ZnCl2
- (R-S(=O)O)2Zn + 2 HCl → 2 R-S(=O)OH + ZnCl2
亜硫酸ナトリウムなど、他の還元剤を用いる手法も知られる。
反応[編集]
スルフィン酸に塩基を作用させると、共役塩基であるスルフィナートアニオンが発生する。
- R-S(=O)OH + Base → R-S(=O)O− + Base-H+
このスルフィナートアニオンは求核剤として振る舞う。例えばハロゲン化アルキルと反応すると、炭素-硫黄結合が生成してスルホンが得られる。
- R-S(=O)O− + R'-X → R-S(=O)2-R' + X−
この反応では、HSAB則 で堅いとされる求電子剤を用いた場合は特に、炭素が酸素と結合したスルフィン酸エステル (R-S(=O)OR') が副生物となる。
参考文献[編集]
- Smith, M. B.; March, J. in March's Advanced Organic Chemistry, 5th ed., 2001, Wiley.
- ^ 例: Whitmore, F. C.; Hamilton, F. H. Org. Synth., Coll. Vol. 1, p.492 (1941); Vol. 2, p.89 (1922). オンライン版
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Japanese Journal
- チオスルホン酸エステルとジスルフィドの無溶媒合成と反応機構
- 谷藤 尚貴,山本 耕平
- 日本高専学会誌 : journal of the Japan Association for College of Technology 16(3), 105-108, 2011-07-31
- … る反応特性を明らかにした.チオスルホン酸エステルの合成は,3段階の反応がすべて固体状態でも進行することによって溶媒反応同様の生成物を与えた.この反応についてXRD測定で検証したところ,ヨウ素とスルフィン酸塩が結晶状態からでも効率良く反応が進み,無溶媒反応を推進する上でヨウ素の昇華性が効果的に作用することを明らかにした.次に,この生成物を原料としたジスルフィド形成反応についても,塩基触媒が …
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- 溶媒無使用条件における新しいベンゼンチオスルホン酸エステルの合成
- 谷藤 尚貴,寺本 絵里子,山本 耕平
- 日本高専学会誌 : journal of the Japan Association for College of Technology 15(3), 81-84, 2010-08-30
- … フィド・ベンゼンスルフィン酸ナトリウム・ヨウ素における無溶媒反応によって合成した.チオスルホン酸エステルの合成反応は溶液中でも無溶媒条件でも進行するが,2つのチオスルホン酸エステルを有する分子では,無溶媒条件でのみ目的物を合成できた.チオスルホン酸エステルの間にフェニレンを有する分子の合成は,あらかじめ前駆体のジスルフィドを合成した後,スルフィン酸ナトリウムとヨウ …
- NAID 110008594151
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★リンクテーブル★
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- 英
- oxo acid、oxoacid
。]]
オキソ酸(オキソさん、Oxoacid)とは、ある原子にヒドロキシル基 (-OH) とオキソ基 (=O) が結合しており、且つそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物のことを指す<ref>IUPAC Gold Book - oxoacids</ref>。ただし、無機化学命名法IUPAC1990年勧告のオキソ酸の定義では、先述した化合物の他にアクア酸(aqua acid)<ref>中心金属イオンに配位した水分子に酸性プロトンが存在する酸。例:ヘキサアクア鉄(III)イオン</ref>、ヒドロキソ酸(hydroxoacid)<ref>隣接するオキソ基が存在しないヒドロキシル基に酸性プロトンが存在する酸。例:オルトケイ酸 (H4SiO4)</ref>もオキソ酸に含まれることになる。無機化合物のオキソ酸の例としては硫酸や硝酸、リン酸などが挙げられる。有機化合物で最も重要なオキソ酸はカルボン酸である。酸性の強弱は化合物の種類によりさまざまなものがある。一般に、オキソ酸は多原子イオンと水素イオンを与える。
オキソ酸が脱水縮合することで、ポリオキソ酸が生成する。例えば、リン酸では二リン酸、三リン酸である。酸無水物も同様に、オキソ酸の脱水縮合生成物にあたる。遷移金属元素のオキソ酸は金属オキソ酸(ポリ酸)と呼ぶ。
ポーリングの規則
単核オキソ酸の酸性度の強さを推定する2つの経験則としてポーリングの規則(Pauling's rules)が知られている。
- 1, 中心元素 E のオキソ酸の化学式が EOm(OH)n で表されるときに、酸解離定数 Ka は次の関係式で表される。
- <math>\mbox{p}K_a = -\log K_a \approx 8 - 5m </math>
- 2, n>1の酸の逐次酸解離のpKa値はプロトン解離が1回起こる毎に5ずつ増加する。
ただし、この規則に従わないオキソ酸も存在する。例えば炭酸の推定値は3であるが実測値は6.4である。これは水溶液中に溶けている二酸化炭素が僅かしか炭酸にならないためである。このことを考慮に入れるとpKa値は規則通り約3.6となる。また、亜硫酸も規則に従わない。これは溶液中に亜硫酸分子は検出されず、さらにSO2が複雑な平衡を持っているからである。
- <math>\rm CO_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ H_2CO_3</math>
- <math>\rm SO_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ H^+ + HSO_3^-</math>
オキソ酸の一覧
脚注
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<references/>
関連項目
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- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義