心臓弁膜症 VHD
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/02 09:02:35」(JST)
[Wiki ja表示]
心臓弁膜症のデータ |
ICD-10 |
I05-I08, I34-I39 |
統計 |
出典: |
世界の患者数 |
人
(20xx年xx月xx日) |
日本の患者数 |
人
(20xx年xx月xx日) |
学会 |
日本 |
|
世界 |
|
この記事はウィキプロジェクトの雛形を用いています |
心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう、英: valvular disease of the heart)は、心臓にある4つの弁のうちのひとつまたは2つ以上が機能障碍を起こす疾患の総称である。弁膜性心疾患と呼ぶ場合もある。
目次
- 1 概要
- 2 原因
- 3 種類
- 3.1 大動脈弁領域の疾患
- 3.1.1 大動脈弁狭窄症
- 3.1.2 大動脈弁閉鎖不全症
- 3.2 肺動脈弁領域の疾患
- 3.2.1 肺動脈弁狭窄症
- 3.2.2 肺動脈弁閉鎖不全
- 3.3 三尖弁領域の疾患
- 3.3.1 三尖弁狭窄症
- 3.3.2 三尖弁閉鎖症
- 3.3.3 三尖弁閉鎖不全症
- 3.4 僧帽弁領域における疾患
- 3.4.1 僧帽弁狭窄症
- 3.4.2 僧帽弁閉鎖不全症
- 4 統計
- 5 合併症
- 6 治療
- 7 診療科
- 8 心臓弁膜症を取り上げた作品
- 9 関連項目
概要
ヒトの心臓は内部が4つの部屋(心房・心室)に分かれている。各部屋の出口には膜でできた弁があり、血液の逆流を防いでいる。この弁が何らかの原因によって硬化もしくは破損すると、血液の通過障害や逆流が起きる。これが心臓弁膜症である。心臓には4つの弁があり、障害される弁によって出現する症状が異なる。
原因
種類
大動脈弁領域の疾患
大動脈弁狭窄症
詳細は「大動脈弁狭窄症」を参照
大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう; AS)は、左心室から大動脈へ血液を流す大動脈弁が狭まった病気。
- 病態
- 狭まった大動脈弁に血液を通そうとして左心室が頑張り過ぎて左心室に負担が掛かる。左心室に負担が掛かる事を左室負荷という。
- 分類
- に分けられる。
- 統計
- 先天性 (ICD-10: Q23.0)
- 後天性 (ICD-10: I35.0)
- 治療
- 手術療法を行う。手術は、人工心肺下開胸術では石灰化など器質的変化の強い大動脈弁を人工弁に取り替える。開胸術による弁置換が一般的である。
大動脈弁閉鎖不全症
詳細は「大動脈弁閉鎖不全症 」を参照
大動脈弁閉鎖不全症(だいどうみゃくべんへいさふぜんしょう; AR)は、大動脈弁が締まり切らない病気。
- 病態
- 拡張期に血液が大動脈から左心室に逆流してくるために、拡張期に開くはずの僧帽弁をこの血流が押して、相対的僧帽弁狭窄が生じる。
- 分類
-
- 梅毒性 (ICD-10: A52.0)
- リウマチ性 (ICD-10: I06.1)
- (ICD-10: I35.1)
- 先天性 (ICD-10: Q23.1)
- に分けられる。
- 検査
- 身体基本検査
-
- 聴診
- III音 : 拡張早期に大動脈から勢いよく逆流して来た血液が心室壁を振動させる事で生じる。
- オースチン・フリント雑音(Austin-Flint雑音) : 狭窄させられた僧帽弁を血液が通過する際に生じる雑音。
肺動脈弁領域の疾患
肺動脈弁狭窄症
詳細は「肺動脈弁狭窄症」を参照
肺動脈弁狭窄症(はいどうみゃくべんきょうさくしょう; PS)は、肺動脈弁が狭まった病気。
- 病態
- 狭まった肺動脈弁に血液を通そうとして右心室が頑張り過ぎて右心室に負担が掛かる。右心室に負担が掛かる事を右室負荷という。
- 分類
-
- 先天性 (ICD-10: Q22.1)
- 後天性 (ICD-10: I37.0)
- に分けられる。
- 症状
- 右室負荷によって右室の壁が厚くなる。右室の壁が厚くなる事を右室肥大と言う。
- 治療
- 右室圧が上昇してきたら手術療法を行う。手術は、人工心肺下開胸術ではなく血管内カテーテル手術で行う。この血管内カテーテル手術は経皮的バルーン肺動脈形成術と言い、中心静脈からカテーテルを入れて、順行性に右心房、右心室、肺動脈へ向かい、バルーン(蒸留水で満たした風船)を膨らませてたり、ステント(金属等の網で出来た筒)を置いて狭まった部分を広げて、肺動脈弁を修復する。
肺動脈弁閉鎖不全
詳細は「肺動脈弁閉鎖不全症」を参照
肺動脈弁閉鎖不全症(はいどうみゃくべんへいさふぜんしょう: PR)は、肺動脈弁が締まり切らない病気。
三尖弁領域の疾患
三尖弁狭窄症
三尖弁狭窄症(さんせんべんきょうさくしょう: TS)は、三尖弁が狭まった病気。
-
- 概要
-
- 器質的; 右心房から右心室へ向かう血流が、三尖弁の狭窄により阻害される。
- 機能的; 三尖弁通過血流の相対的な増加により、三尖弁通過不全状態となる。
- 病態
-
- 器質的; 肺動脈および肺へ供給される血流が減少する。また右心房では血流が停滞し、右心房圧が上昇する。
- 機能的; 原疾患による症状が主。
- 治療
- 症状が軽度であれば、内服薬での治療を行う。重症であれば、内科的なカテーテル治療や外科的な切開・形成・弁置換などが行われることもある。
三尖弁閉鎖症
詳細は「三尖弁閉鎖症」を参照
三尖弁閉鎖症(さんせんべんへいさしょう: TA; ICD-10: Q22.4)は、右心房から右心室へ血液を流す三尖弁が閉じている先天性の病気。
-
- 概要
- 右心房から右心室への血流が途絶するためこのままでは出生出来ないが、心房中隔欠損症を合併することが多くここで右左短絡を生じ、さらに動脈管開存症等の左右短絡を合併すると、両循環が成立して出生できる。
- 病態
- 大きな右左短絡から大きな左室負荷が掛かり左室肥大を来たし、右左短絡からチアノーゼを来たす。チアノーゼ性心疾患の一つ。
- 治療
- 外科的治療を行う。手術は、フォンタン手術(Fontan手術)と言い、未発達の右心室を経由せず右心房から肺動脈へ直接血液を流すように吻合する。
三尖弁閉鎖不全症
詳細は「三尖弁閉鎖不全症」を参照
三尖弁閉鎖不全症(さんせんべんへいさふぜんしょう: TR)は、右心房から右心室へ血液を流す三尖弁の閉鎖不全により血液が逆流する病気。
- 病態
- 心室が収縮時に右心室から肺動脈へ駆出するだけでなく、右心房にも逆流してしまうため、右心房にも負荷がかかるし、無駄な血流を補うだけ右心室も頑張らないといけないため右心負荷もかかる。
- 症状
- 右心不全により静脈血が心臓へ戻りにくくなるため、下肢の浮腫や経静脈の怒張、肝臓の腫大がみとめられる。
- 分類
-
- リウマチ性 (ICD-10: I07.1)
- 非リウマチ性 (ICD-10: I36.1)
- に分けられる。
僧帽弁領域における疾患
僧帽弁狭窄症
詳細は「僧帽弁狭窄症」を参照
僧帽弁狭窄症(そうぼうべんきょうさくしょう: MS)は、左心房から左心室へ血液を流す僧帽弁が狭まった病気。
- 病態
- 肺循環から戻ってきた血液が左房で鬱滞し、左房に負荷が掛かる。
- 分類
-
- (ICD-10: I05.0)
- 非リウマチ性 (ICD-10: I34.2)
- 先天性 (ICD-10: Q23.2)
- に分けられる。
- 治療
- 手術療法を行う。手術は、人工心肺下開胸術ではなく血管内カテーテル手術で行う。血管内カテーテル手術は、大腿動脈からカテーテルを入れて、逆行性に大動脈、心室と向かい、僧帽弁を修復する。
僧帽弁閉鎖不全症
詳細は「僧帽弁閉鎖不全症」を参照
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう: MR)は、僧帽弁が締まり切らない病気。
- 検査
-
- 身体基本検査
- 聴診
- III音 : 収縮期に心房へ逆流していた血液の分だけ拡張早期に心房から勢いよく血液が心室壁を振動させる事で生じる。
- 分類
-
- リウマチ性 (ICD-10: I05.1)
- (ICD-10: I34.0)
- 先天性 (ICD-10: Q23.3)
- に分けられる。
統計
リウマチ治療の進歩によって本症に至る症例は減ってきている。
合併症
治療
- 手術
- 開心術(弁置換術、弁形成術)
- 血管内カテーテル手術
診療科
心臓弁膜症を取り上げた作品
日本
- 本症を取り上げた作品に橋本紡の小説(ライトノベル)「半分の月がのぼる空」がある。
関連項目
心血管疾患 |
|
疾患 |
|
心疾患
|
不整脈
|
徐脈性
|
洞不全症候群 | 房室ブロック | 脚ブロック(右脚ブロック · 完全右脚ブロック · 左脚ブロック)
|
|
頻脈性
|
上室性
|
洞性頻脈(en) | 心房細動 | 心房粗動(en) | ブルガダ症候群 | QT延長症候群 | WPW症候群
|
|
心室性
|
心室細動 | 心室頻拍
|
|
|
|
虚血性疾患
|
狭心症 | 心筋梗塞 | 急性冠症候群 | 冠動脈血栓症 | 心室瘤 | 心破裂 | 乳頭筋断裂(en)
|
|
弁膜症
|
僧帽弁狭窄症 | 僧帽弁閉鎖不全症 | 三尖弁狭窄症 | 三尖弁閉鎖不全症 | 大動脈弁狭窄症 | 大動脈弁閉鎖不全症
|
|
先天性心疾患
|
心房中隔欠損 | 心室中隔欠損 | 心内膜床欠損症 | 動脈管開存症 | ファロー四徴症(極型ファロー四徴症) | 大血管転位(左旋性 · 右旋性) | 総肺静脈還流異常症 | 大動脈縮窄 | 左心低形成症候群 | 両大血管右室起始症 | 三尖弁閉鎖(en) | 単心室
|
|
心内膜・心筋
・心膜疾患
|
心内膜疾患
|
感染性心内膜炎
|
|
心膜疾患
|
心膜炎(急性心膜炎 · 慢性収縮性心膜炎) | 心タンポナーデ
|
|
心筋疾患
|
心筋症(虚血性心筋症・特発性拡張型心筋症 · 肥大型心筋症 · 拘束型心筋症 · 特発性心筋症) | 心筋炎
|
|
|
心臓腫瘍(en) | 心臓性喘息 | 肺性心
|
|
|
血管疾患
|
大血管
|
大動脈瘤(胸部・腹部・胸腹部) | 大動脈解離 | 大動脈炎症候群
|
|
動脈
|
閉塞性動脈硬化症 | 閉塞性血栓性血管炎 | 動静脈瘻 | 動脈硬化 | レイノー病
|
|
静脈
|
静脈瘤 | 血栓性静脈炎 | 静脈血栓塞栓症 | 脂肪塞栓症
|
|
|
|
|
病態・症候 |
|
心不全
|
左心不全 | 右心不全 | 両心不全
|
|
血圧異常
|
高血圧
|
本態性高血圧症(en) | 二次性高血圧(en) | 高血圧性緊急症(en)
|
|
低血圧
|
|
|
心臓発作 | 心臓肥大 | 心停止 | 心肺停止
|
|
|
|
所見・検査 |
|
血圧計 | 聴診 | 心雑音 | 心電図 | 心電図モニタ | 心臓超音波検査 | 胸部X線写真 | 胸部X線CT | 心臓MRI | 心臓カテーテル検査(肺動脈カテーテル) | 心臓核医学検査 | 脈波伝播速度検査
|
|
|
治療 |
|
外科的治療
|
冠動脈バイパス術(CABG)
|
CABG | off-pump CAB(OPCAB) | MIDCAB(en) | TECAB(en)
|
|
弁膜症手術
|
弁置換術(en) | 弁形成術(en) | 弁輪形成術 | 交連切開術(en)
|
|
小児心臓外科
|
動脈管結紮術 | BTシャント | 肺動脈絞扼術(en) | ノーウッド手術 | グレン手術 | フォンタン手術 | ジャテン手術 | ラステリ手術 | ロス手術
|
|
心不全外科
|
心移植術 | 補助人工心臓装着術 | 左室形成術(Dor・SAVE・Overlapping)
|
|
不整脈外科
|
メイズ手術(en) | ペースメーカー | 植え込み型除細動器
|
|
大動脈手術
|
大動脈人工血管置換術 | 大動脈基部置換術 (Bentall, David) | ステントグラフト内挿術(en)
|
|
末梢血管手術
|
末梢動脈血行再建術 | 末梢静脈血行再建術 | 静脈抜去術(en) | 静脈血栓摘除術(en) | 内シャント作成術 | 肢切断
|
|
|
内科的治療
|
循環作動薬
|
抗不整脈薬
|
Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド(en), プロパフェノン(en)
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール(en)
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
|
|
心不全治療薬(en)
|
利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤 | PDEⅢ阻害薬
|
|
狭心症治療薬
|
交感神経β受容体遮断薬 | 硝酸薬
|
|
高血圧治療薬
|
利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬(en)) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
|
|
|
血管内治療
|
経皮的冠動脈形成術
|
|
|
|
|
循環器系の正常構造・生理 |
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 血圧と眼圧との間に相関がみられた血管新生緑内障の1例 (第22回日本緑内障学会 原著)
- 手術の工夫 末期腎不全を合併した大動脈高度石灰化および僧帽弁輪石灰化を有する連合弁膜症
Related Links
- 心臓弁膜症の症状、治療方法、手術後の日常生活についてご説明します。
- 弁膜症とは. ホーム > 弁膜症とは. 弁膜症と 診断されたら、まず患者さんご自身が、 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 28歳の女性。全身倦怠感と黄疸とを主訴に来院した。幼少時から何度か顔色不良を指摘されたことがあった。兄が貧血と言われたことがある。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。第3肋間胸骨左緑に2/6度の収縮期雑音を聴取する。左肋骨弓下に脾の先端を触れる。血液所見:赤血球262万、Hb8.2g/dl、Ht25%、網赤血球7.4%、白血球4,600、血小板17万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dl.アルブミン4.6g/dl,尿素窒素12.0mg/dl、クレアチニン0.8mg/dl.総コレステロール185mg/dl、総ビリルビン3.8mg/dl.直接ビリルビン0.8mg/dl、AST 78IU/l、ALT 35IU/l、LDH 684IU/l(基準176~353)、ALP220IU/l(基準260以下)。
[正答]
※国試ナビ4※ [102C017]←[国試_102]→[102C019]
[★]
- a. 弁膜症と先天性心疾患とに発症しやすい。
- b. 起因菌の同定には1回の動脈血培養で十分である。
- c. 黄色ブドウ球菌が主な起因菌である。
- d. 広いスペクトルの抗菌薬で治療する。
- e. 弁虎贅は大きさにかかわらず外科手術の絶対適応となる。
[正答]
※国試ナビ4※ [097H068]←[国試_097]→[097H070]
[★]
- (1) A群溶連菌感染が原因となる。
- (2) 弁膜症は三尖弁に好発する。
- (3) 心電図でQT時間の延長がみられる。
- (4) CRPは高値となる。
- (5) ASOは高値となる。
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [096H062]←[国試_096]→[096H064]
[★]
- 英
- infective endocarditis, IE
- 関
- 心内膜炎、細菌性心内膜炎
概念
- 感染性心内膜炎は弁膜や心内膜、大血管内膜に細菌集蔟を含む疣腫(vegetation)(注1)を形成し、菌血症、血管塞栓、心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である。感染性心内膜炎はそれほど頻度の多い疾患ではないがいったん発症すれば、的確な診断の下、適切な治療が奏功しないと多くの合併症を引き起こし、ついには死に至る。(ガイドライン.1)
疫学
- 緑色連鎖球菌が感染性心内膜炎の原因として最多である。(YN.C-129)
- 院内発症:Streptococcus viridans > ブドウ球菌 > 腸球菌
- 院外発症:ブドウ球菌(Staphylococcus aureus > CNS ) > Streptococcus viridans
発症のメカニズム
- 非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombogenic endocarditis, NBTE)は次の2つの影響で生じるとされる;(1)弁膜疾患や先天性心疾患に伴う異常血流、(2)人工弁置換術語例など異物の影響。非細菌性血栓性心内膜炎の存在下で一過性の菌血症(医原性など)すると、NBTEに病原体が付着・増殖し疣腫が形成される。疣腫は僧帽弁の心房側、半月弁の心室など逆流血流がアル部位や、シャント血流や狭窄血流の異常ジェット血流が心内膜面にある所に認められる。(ガイドライン.1改変)
- ジェット血流の存在が発症に関わっているので、軽症の弁膜症の方がジェット血流を来しやすい。従って、心内膜炎も来しやすい。(QB.C-454)
リスクファクター
資料(1)より
- 人工弁置換患者:(感染性心内膜炎による?)手術例の3分の2を占める!
- 心内膜炎の既往を有する患者:再発しやすい
- 先天性心疾患:心房中隔欠損症(ASD)(二次口型)を除いてほとんどの先天性心疾患がハイリスク群となる。
- 大動脈二尖弁:0.5-1.0%に存在するとされ、また感染性心内膜炎患者の約20%程度が大動脈二尖弁
- 大動脈弁閉鎖不全症(AR)、僧帽弁閉鎖不全症(MR)、僧帽弁逸脱症(MVP)はリスクとなる
- ASはARよりリスクは小さいとされ、MSについてはハイリスクかは議論が分かれている。
- 閉塞型肥大型心筋症:ハイリスク群とのコンセンサスがある
- 中心静脈カテーテル留置患者
分類
経過
- 急性感染性心内膜炎:ブドウ球菌
- 亜急性感染性心内膜炎:緑色連鎖球菌、腸球菌、心筋
病原体を細菌に限定
宿主の要因
- native valve endocarditis:心内膜炎患者の60-80%を占める
- prosthetic valve endocarditis:Staphylococcus epidermidisが病原体であることが普通
- endocarditis in the setting of intravenous drug abuse:右心系の弁に起こりやすい
検査
臨床経過
- 菌血症が起こってから,症状の発現までの期間は短く、80%以上の例では2週間以内(ガイドライン.1)。
身体所見
- 感染性心内膜炎の身体所見JaRO → ジェーンウェー病変(Janeway斑)、ロス斑(Roth斑)、オスラー結節(Osler結節)
症状
亜急性感染性心内膜炎
- 非特異的な症状(発熱・全身倦怠感、食欲不振、体重減少、関節痛)が徐々に進展。
急性感染性心内膜炎
心臓外の合併症
- ガイドライン.1
- 頻度:27-45%
- 好発時期:発症後2週間
- 検査:CTなど
- 好発部位:中枢神経系(60-70%)、脾臓、腎臓、肺、末梢動脈、冠動脈、肝臓、腸間膜動脈
- 脾臓:脾梗塞、脾膿瘍、脾破裂
- 肺梗塞:IE全体の9-11%の頻度で見られる。右心系の疣腫(三尖弁、肺動脈弁、右室流出路)
- 腎障害
- 原因:疣贅による脳動脈の塞栓
- 頻度20-40%
- 感染性心内膜炎初発症状としての脳合併症:47%
- 種類:脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、脳動脈流、髄膜炎、脳膿瘍、てんかん発作
- 頻度:1.2-5.6%
- 症状:頭痛、知覚障害、脳神経症状
- 好発部位:中大脳動脈領域(二次分岐部)
診断
- 病歴:先天性心疾患、弁膜症の既往、抜歯・手術後の発熱の遷延
- 血液培養:起炎菌の検出
- 心エコー:疣贅
- 2. Duke criteria(HIM.792)
- ガイドライン.1より抜粋
IE 確診例
Ⅰ.臨床的基準
- 大基準2 つ,または大基準1 つと小基準3 つ,または小基準5 つ
(大基準)
-
- A.2回の血液培養で以下のいずれかが認められた場合
- B.つぎのように定義される持続性のIE に合致する血液培養陽性
- (i) 12 時間以上間隔をあけて採取した血液検体の培養が2 回以上陽性
- (ii)3 回の血液培養すべてあるいは4 回以上の血液培養の大半が陽性(最初と最後の採血間隔が1 時間以上)
- 2.心内膜が侵されている所見でAまたはB の場合(注4)
-
- (i) 弁あるいはその支持組織の上,または逆流ジェット通路,または人工物の上にみられる解剖学的に説明のできない振動性の心臓内腫瘤
- (ii)膿瘍
- (iII) 人工弁の新たな部分的裂開
- B.新規の弁閉鎖不全(既存の雑音の悪化または変化のみでは十分でない)
(小基準)(注5)
- 1.素因:素因となる心疾患または静注薬物常用
- 2.発熱:38.0℃以上
- 3.血管現象:主要血管塞栓,敗血症性梗塞,感染性動脈瘤,頭蓋内出血,眼球結膜出血,Janeway病変
- 4.免疫学的現象:糸球体腎炎,Osler結節,Roth斑,リウマチ因子
- 5.微生物学的所見: 血液培養陽性であるが上記の大基準を満たさない場合,またはIE として矛盾のない活動性炎症の血清学的証拠
Ⅱ.病理学的基準
- 菌: 培養または組織検査により疣腫,塞栓化した疣腫,心内膿瘍において証明,あるいは病変部位における検索:組織
学的に活動性を呈する疣贅や心筋膿瘍を認める
IE 可能性
- 大基準1 つと小基準1 つ,または小基準3 つ(注6)
否定的
- 心内膜炎症状に対する別の確実な診断,または
- 心内膜炎症状が4 日以内の抗菌薬により消退,または
- 4 日以内の抗菌薬投与後の手術時または剖検時にIE の病理学所見なし
- 注1) 本ガイドラインでは菌種の名称についてはすべて英語表記とし通例に従って Streptococcus viridans 以外はイタリック体で表示した.
- 注2) Staphylococcus aureus は,改訂版では,i)に含まれるようになった.
- 注3) 本項は改訂版で追加された.
- 注4) 改訂版では,人工弁置換例,臨床的基準でIE可能性となる場合,弁輪部膿瘍などの合併症を伴うIE,については,経食道心エコー図の施行が推奨されている.
- 注5) 改訂版では,“心エコー図所見:IEに一致するが,上記の大基準を満たさない場合”,は小基準から削除されている
- 注6) 改訂版では,“IE可能性”は,このように変更されている
治療
QB.C-454
- 緑色連鎖球菌:ペニシリンG(大量投与)
- 腸球菌:ペニシリン+アミノグリコシド系抗菌薬
- 黄色ブドウ球菌:第1-2世代セフェム系抗菌薬+アミノグリコシド系抗菌薬
外科的治療
- ガイドライン.1
- 以下の病態が観察されるか予想されるときに手術適応を考慮。
- 1. うっ血性心不全
- 2. 抵抗性感染
- 3. 感染性塞栓症
うっ血性心不全
抵抗性感染
感染性塞栓症
感染性心内膜炎の手術適応
- ガイドライン.1
自己弁および人工弁心内膜炎に共通する病態
- 1. 弁機能障害による心不全の発現
- 2. 肺高血圧(左室拡張末期圧や左房圧の上昇)を伴う急性弁逆流
- 3. 真菌や高度耐性菌による感染
- 4. 弁輪膿瘍や仮性大動脈瘤形成および房室伝導障害の出現
- 5. 適切かつ十分な抗生剤投与後も7 ~ 10 日以上持続ないし再発する感染症状
- 1. 可動性のある10 ㎜以上の疣腫の増大傾向
- 2. 塞栓症発症後も可動性のある10 ㎜以上の疣腫が観察される場合
人工弁心内膜炎における病態
- 1. 弁置換後2 ヶ月以内の早期人工弁感染抗菌薬抵抗性のブドウ球菌,グラム陰性菌による感染
- 2.適切かつ充分な抗菌薬投与後も持続する菌血症で他に感染源がない場合
予防
成人における感染性心内膜炎の基礎疾患別リスク
- 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)
- 生体弁、機械弁による人工弁置換術患者、弁輪リング装着例
- 感染性心内膜炎の既往を有する患者
- 複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室、完全大血管転位、ファロー四徴症)
- 体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者
- 中等度リスク群(必ずしも重篤とならないが、心内膜炎発症の可能性が高い患者)
- ほとんどの先天性心疾患:単独の心房中隔欠損症(二次孔型)を除く
- 後天性弁膜症:逆流を伴わない僧帽弁狭窄症ではリスクは低い
- 閉塞性肥大型心筋症
- 弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
- 人工ペースメーカ、植込み型除細動器などのデバイス植込み患者
- 長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者
ガイドライン
- 1. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2003_miyatake_h.pdf
- 2. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)
- https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_nakatani_h.pdf
[★]
- 日
- げんうん、めまい
- 英
- vertigo, dizziness
- ラ
- vertigo
- 同
- めまい発作 dizzy spell
- 関
- めまい、耳鳴り
めまいの分類
IMD. 276
- SOD.134
原因部位による分類
めまいをきたしうる疾患
- IMD.277
原因部位と眼振
原因部位の鑑別
- 研修医当直御法度 症例帳 p.22
- IMD.279
|
末梢前庭性めまい
|
中枢性めまい
|
性状
|
回転性が多い
|
回転性は少ない
|
強さ
|
強い
|
軽度
|
持続時間
|
数日まで
|
数日以上
|
眼振の方向
|
一方向性
|
注視方向性
|
自発眼振の性状
|
水平回旋性が多
|
純回旋性、垂直性
|
固視の影響
|
抑制される
|
抑制されない
|
注視眼振の増強する方向
|
健側
|
患側
|
蝸牛症状
|
多い
|
稀
|
中枢神経症候
|
なし
|
あり
|
悪心・嘔吐
|
軽度~重度
|
ない or 軽度
|
疫学
- IMD.277
- 1. 末梢前庭性眩暈:4-5割 → 良性発作性頭位眩暈が多い。
- 2. 中枢性眩暈 :3割
眩暈、難聴をきたす疾患
検査
参考
- 1. [charged] Benign paroxysmal positional vertigo - uptodate [1]
[★]
- 日本では、英語表記ではaortic regurgitation AR、日本語表記では「大動脈弁閉鎖不全症」とするのが一般的?
- 同
- 大動脈弁閉鎖不全症 大動脈弁閉鎖不全 aortic valve insufficiency, AI
- 同
- 大動脈弁逆流症 大動脈弁逆流 aortic regurgitation AR, aortic valve regurgitation
- 関
- 弁膜症
[show details]
概念
- 大動脈弁の閉鎖不全により、拡張期に大動脈の血液が左心室に逆流する病態。
- 左室の容量負荷が特徴
身体所見
聴診
- 参考6
- S1:soft
- S2:variable
- A2:soft~absent
- P2:normal
- S3:左心機能が落ちれば聴取される
- 拡張期逆流性雑音 = 拡張期灌水様雑音 = blowing murmur in early diastole along the left sternal border
- 最強点:3LSB。
- 持続時間:軽症・急性型では持続時間は短い。
- 音量は一定かだんだん小さくなる(decrescendo)
- 重症度と音量は相関しないが、雑音の持続時間は参考になる。軽症では拡張期の初期にのみ吹くような(blowing)音が聴取される。重症になるにつれだんだん伸びていき、しまいには拡張期全体に聴取されるようになり、音は粗な音である(rougher)。
(参考6)
:::持続時間は重症度を反映しないが、軽度ARでは持続時間は短い(なぜ?)。また急性ARでも短いが、これは拡張期にすぐに大動脈と左心室の圧が均衡するからである(圧較差が小さいということか?)。(up2date)
- Austin Flint murmur:拡張期中期に低音を心尖で聴取。拡張期に大動脈弁から逆流してくる血液の乱流により、僧帽弁前尖が下方に押し下げられMS様の雑音を生じる。Austin Flint雑音はMSと違ってopening snapがなく、収縮期前期の雑音の増強がない。(PHD.214)
特徴的な身体所見 PHD.215
- 末梢の症状にトラウベ徴候、デュロジェ雑音、コリガン脈(water hammer pulse)があるが、これらは慢性ARでは特徴的だが、急性ARではほとんど見られない。急性ARではstroke volume and diastolic filling volumeが増えないためである(uptodate)
検査
心エコー
治療
外科治療
- 重症ARでありかつ症状がある場合 → 手術推奨
- 重症ARでありかつ症状が無い場合
- 左室機能低下(LVEF<50%)している場合 → 手術推奨
- 左室機能正常の場合
- 収縮終期左室径 LVESd>45mm の場合 → 手術推奨
- 収縮終期左室径 LVESd≦45mm の場合
- 拡張終期左室径 LVEDd>65mm の場合 → 手術推奨
- 拡張終期左室径 LVEDd≦65mm の場合
- 収縮終期左室径指数 >25mm/m^2 の場合 → 手術推奨
内科治療
-
- 目標:降圧(sBP<140mmHg)
- CCB, ACE-I/ARB
- β blockerは一回拍出量の増加に繋がり、sBPを上昇させうるのて好ましくない。
-
参考
http://www.mayoclinic.com/health/aortic-valve-regurgitation/ds00419
http://www.virtualmedicalcentre.com/diseases.asp?did=7
http://www.heart-valve-surgery.com/aortic-valve-regurgitation-symptoms.php
http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=4448
http://www.patient.co.uk/health/Aortic-Regurgitation.htm
- 6. [charged] Pathophysiology and clinical features of chronic aortic regurgitation in adults - uptodate [2]
ガイドライン
- 1. 弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf
- https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf
国試
[★]
- MS
- 英
- mitral stenosis, MS, mitral valve stenosis
- 関
- 僧帽弁狭窄、弁膜症
- distolic murmur at mitral area.
- opening snap at mitral area
疫学
- 女性に多い。男女比1:3。
- 50%が20歳代。20-40歳に多い。
- 既往にリウマチ熱がある事が多い。
病因
- 先天的な僧帽弁尖の狭窄
- 高齢者の前尖の石灰化
- 心内膜炎で弁尖に疣贅ができて弁口を閉塞
- 僧帽弁の弁口:MSでは2cm^2、健常人では4-6cm^2
病態
- 拡張期に左心房の血液を左室に駆出する抵抗が大きくなり、左心房に圧負荷がかかる!!
- 心房細動の合併で重症化する。
合併症
感染性心内膜炎:僧帽弁閉鎖不全症は感染性心内膜炎を来しやすい疾患であると認識してよいが,僧帽弁狭窄症の感染性心内膜炎は比較的少ない。よって僧帽弁狭窄症をハイリスクとすべきかどうかは議論が分かれる。(ガイドライン1より抜粋)
検査
- I音の亢進
- 僧帽弁開放音 (open snap)
- 心尖部拡張中期雑音:低音(low-pitched)、ランブル(rumbling)
- 前収縮期雑音:(洞調律の時に聴取され、心房細動では消失)
- 重症例 → グラハム・スティール雑音(肺高血圧を来した場合にPRを来し、拡張期に2-3LSBで聴取される。
- 経胸心エコー:
- 経食道心エコー:左房内血栓の描出に適する。
治療
- NYHA I度、かつ軽度僧帽弁狭窄症
- NYHA II度以上、かつ中等度以上僧帽弁狭窄症
手術療法の適応
- ガイドライン2
- 次の1.~2.が適応を判断するのに重要である。ガイドライン2ではOMC, MVRの推奨基準やNYHA別のフローチャートが示されている。
- 1. PTMCはNYHA II度以上の臨床症状出現 ← 僧帽弁弁口面積≦1.5cm2で左房から左室への血液流入障害が生じる。弁口面積≦1.0cm2では安静時にも左室への血液流入が障害されると肺うっ血・肺高血圧、心房細動が固定化、TRによる右心不全もきたす。
- 2. 心房臓細動の出現
- 3. 血栓塞栓症状の出現
- QB. C-444
- PTMCはNYHA II度以上、OMC,MVRはNYHA III度以上
- 弁口面積1.5cm2以下で臨床症状を有する
- NYHA I度であっても塞栓の既往や左房内血栓が疑われる場合 ← 経食道エコーで確認
- 左房平均圧15mmHg以上
- 出典不明
- 症状と治療法の選択
- 無症状例:保存的療法。心不全と血栓を予防。
- 症状有り:経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術、僧帽弁置換術
ガイドライン
- 1. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2003_miyatake_h.pdf
- 2. 弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf
国試
[★]
- 英
- palpitation
- 同
- 心悸亢進
- 関
- 脈拍異常
定義
原因
- 生理的反応:運動、労作、精神的ストレス、精神的興奮
- 非心疾患:
病態生理
- 生理的反応:反応性の内因性カテコラミン産生増加による心拍数増加、左室収縮力の増加、血圧上昇
- 非心疾患:
不整脈性の動悸
[★]
- 関
- 弁膜症性心房細動
- 僧帽弁修復術(僧帽弁輪縫縮術や僧帽弁形成術)後は塞栓症の高リスクとはいえず、非弁膜症性として取り扱う(心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版))
- リウマチ性でない僧帽弁閉鎖不全症は非弁膜症性としてとりあつかう(心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版))
[★]
- 関
- 弁膜症
- 先進国では滅多にないが、開発途上国では有病率2-10例/1000例。
- リウマチ熱の主症状であるリウマチ性心炎(主に心内膜炎、心筋炎)の後遺症。僧帽弁と大動脈弁を冒す。(PED.953)
- MS,MR,MR+MS,AR,MR+ARが起こりうるが、ASは通常見られない。(PED.953)
[★]
- 関
- 非弁膜症性心房細動
- リウマチ性僧帽弁膜症(僧帽弁狭窄症)、人工弁(機械弁・生体弁)置換術後(心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版))
[★]
- 英
- nonvalvular atrial fibrillation
- 関
- 非弁膜性心房細動
[★]
- 英
- aortic valve disease
- 関
- 大動脈弁疾患
[★]
- 英
- sis, pathy