- 英
- mitral valve prolapse, MVP
- 同
- フロッピーバルブ症候群 floppy valve syndrome、収縮中期クリック・収縮後期雑音症候群 mid-systolic click-late systolic murmur syndrome、僧帽弁逸脱症候群 mitral valve prolapse syndrome MVPS、クリック症候群 click syndrome
- 関
- 僧帽弁閉鎖不全症
概念
- 僧帽弁の前尖または後尖の一部ないし全部が収縮中期に左房に逸脱膨隆すること。また前後尖の合致しない部分から逆流を生じるため、僧帽弁閉鎖不全症の原因の一つとなっている。
疫学
- 小児では2:1で女児に多い(男女=1:2) (SPE.16)
- 僧帽弁逆流で手術適応となり外科に紹介される患者の80-90%は弁尖や腱索の変性に因る逸脱症(ガイドライン1)
- 痩せている人に多いとされている。また、女性の方が多いとされている。
- 日本では、軽症も含めると成人では 4-5%に達すると考えられる。
- 突然死の危険因子は僧帽弁閉鎖不全の存在、高齢、男性とされている。
病因
- SPE.16
- 特発性
- 二次性:先天性心疾患、虚血性心疾患、心筋症、川崎病、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群、Turner症候群
- 2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン
- 僧帽弁逸脱症の素地となるのは、弁尖や腱索へのムコ多糖の蓄積による粘液腫様変性である。マルファン症候群などの結合織異常をきたす疾患に伴うこともあるが、多くの場合は特発性である
- 弁尖の変化が少なく断裂・延長などの腱索の問題が主である場合と、弁尖自体の粘液腫様変性が主である場合とに大別される。
病態
- 左室の収縮に伴い左室の大きさがある一定以下になると僧帽弁の逸脱を生じるようになる、らしい
身体所見
- 収縮中期クリック音:I音の後。クリック音
- 収縮後期逆流性雑音:高調 ← 圧較差が大きいと高調になるらしい
- 逆流を伴わない場合には、典型的な収縮中期のクリック音の後に収縮期雑音が聴取されるが、僧帽弁閉鎖不全症が重畳する場合には汎収縮期雑音のみ聴取されるようになりクリック音は聴取されなくなる。
- 左室を小さくさせるような操作は逸脱をより顕著にするので、収縮中期のクリック音はI音に近づく。例えば、バルサルバ法、立位、亜硝酸アミルがこれにあたる。
臨床症状
- 無症状のまま経過することがほとんどである。
- 非定型的胸痛、動悸、胸部不快感や失神がみられることがある。
- 僧帽弁閉鎖不全が高度になると心不全症候が出現しうる。
- 腱索が断裂した場合には、急激な心不全症候を呈しうる。
合併症
- 僧帽弁閉鎖不全症:MVPは一次性僧帽弁閉鎖不全症のうち50%を占めている。また、MVPは腱索断裂患者の60%以上を占めている。MVPでは逆流は軽微ないし軽度にとどまり、重症となることは稀であるが2-7%の症例で見られる。
- 感染性心内膜炎:前感染性心内膜炎患者の1/3の原因を占めるらしい(ソースは不明)
治療
- 交連領域を含む後尖逸脱:弁形成術の最も良い適応で約半数を占める。手術は標準的な矩形切除と弁輪形成術による。
- 前尖逸脱、両弁尖逸脱:腱索移植術、人工腱索による腱索再建術、edge to edge sutureなど
予後
- MVP患者はリスクによって階層化されており、ハイリスクグループの血管死亡率は年間3.4%である。死亡の危険因子は、中等症から重症のMRとLVEF<50%である。(Nonarrhythmic complications of mitral valve prolapse - uptodate)
ガイドライン
- 1. 弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_matsuda_h.pdf
国試
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 心エコー診断入門講座 心エコーの「いろは」(9)綸言汗の如し
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★リンクテーブル★
[★]
- 15歳の女子。学校の健康診断で心雑音を指摘され来院した。小児期から強度の近視と漏斗胸とを指摘されているが、健常な生活を送っている。身長168cm、体重48kg。脈拍72/分、整。血圧118/72mmHg。心エコー図(別冊No.7)を別に示す。
- 心雑音の特徴はどれか。
- a 連続性
- b 収縮期・低調
- c 収縮期・高調
- d 拡張期・低調
- e 拡張期・高調
[正答]
※国試ナビ4※ [104I047]←[国試_104]→[104I049]
[★]
- 英
- heart murmur, cardiac murmur
- 関
- 拡張期雑音、過剰心音、レヴァイン分類
収縮期雑音 systolic murmur
拡張期雑音 diastolic murmur
continuous murmur
- 連続的な圧較差の存在を示唆する
- A. continuous:動脈管開存症 PDA:肺動脈弁領域。動脈管を流れる血流と雑音が比例するので、S2に向かって大きくなり、S1に向かって小さくなる。
- B. to-and-fro: AS + AR, PS+ PR :S1~(収縮期:AS,PSによる駆出性雑音。ダイアモンド型)~S2, S2~(拡張期:MR,PRによる逆流性雑音。decrescendo)~S1 S1に向かって小さくなるので、連続音とは区別できるはず。
手技見えp.116
- 僧帽弁開放音(OS):MS
- 収縮中期クリック:MVP
- 拡張期ランブル + 前収縮期雑音:MS
- 拡張期灌水様雑音/拡張期逆流性雑音:AR、PR
- 収縮期逆流性雑音:心尖部:MR
体位との関係
呼吸との関係
右心系:三尖弁の雑音
- 吸うとき強く、吐くとき弱く
- 吸うと胸腔内圧が陰圧になり、静脈還流量が増加する
左心系:僧帽弁、大動脈弁の雑音
- 吸うとき弱く、吐くとき強く
- 胸腔内圧が上昇すると、肺から心臓に向かう血流が増加する(ホントニか?)ので、左心系の雑音が増強するのだ???????????
手技との関連
疾患別
MS
- 概念:拡張期ランブル
- 時相:拡張中期(open snap)に続いて。
- 最強点:心尖部
- 放散:
- 体位:左側臥位
- 音程:低音
MR
- 概念:収縮期逆流性雑音
- 最強点:心尖部
- 放散:左腋窩
- 体位:左側臥位
- 呼吸:呼気
- 音程:高音
AS
- 概念:収縮期駆出性雑音
- 最強点:2LSB
- 放散:右鎖骨下動脈、右頚動脈
- 体位:座位
- 呼吸:呼気
AR
- 概念:拡張期灌水様雑音
- 時相:拡張期
- 特徴:呼気で増強
- 最強点:3LSB
- 放散:
- 体位:座位前屈位
- 音程:高音
MVP
- 概念:収縮期逆流性雑音
- 時相:収縮期中期。クリック音の後から。
- 音程:高音 ← 圧較差が大きいため
ASD
- 概念:駆出期駆出性雑音
- 最強点:2LSB
- 放散:
- 体位:
VSD
病態特異的な心雑音
[★]
- 英
- congenital heart disease, CHD
- 同
- 先天性心血管奇形 congenital cardiovascular anomaly
- 関
- 先天性心奇形
先天性心疾患.xls
先天性心疾患
右→左シャントが優位な疾患 チアノーゼ性心疾患
左→右シャントが優位な疾患 非チアノーゼ性心疾患
疫学
症状
- 参考文献(2)より
心疾患による症状
|
|
肺血流増加
|
肺血流減少
|
低心拍出
|
1.新生児期・乳児早期
|
多呼吸,陥没呼吸, 呼吸困難,喘鳴, 多汗, 哺乳障害
|
チアノーゼ
|
蒼白,末梢冷感, 冷汗,網状チアノーゼ, 体重増加不良, 弱い泣き声
|
2.乳幼児期
|
多呼吸, 易感染性,反復する肺炎
|
チアノーゼ, 低酸素発作, 蹲踞
|
体重増加不良, 運動発達遅延, 易疲労性, 顔色不良,やせ
|
3.小児期
|
運動能低下, 息切れ
|
ばち状指
|
運動能低下, 動悸
|
4.思春期以後 合併症による症状
|
胸痛,失神発作,突然死,喀血,不整脈,出血傾向,痛風,けいれん 等
|
|
|
酸素投与の悪影響(1)
- 1)動脈管依存型 → 酸素投与により動脈管が閉鎖方向に向かう
-
- 肺動脈閉鎖、右室低形成、重症肺動脈狭窄
- 大動脈縮窄・大動脈離断、大動脈閉鎖
- 2)肺循環負荷型 → 酸素投与により肺血管が拡張し、肺血管抵抗も減少して肺うっ血が増強
-
- 心室中隔欠損、大動脈縮窄複合、完全心内膜床欠損、総動脈幹遺残、
- 完全大血管転位(II型)、三尖弁閉鎖(C型)、大動脈肺動脈窓など
- 総肺静脈環流異常、三心房心、僧帽弁狭窄、肺静脈狭窄など
合併症
- QB.C-478
先天性疾患と先天心疾患
参考文献
- http://nmcg.shiga-med.ac.jp/rc_lecture/lecture21.htm
- (2) 先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_hamaoka_h.pdf
[★]
- 英
- heart sound
- 関
- 過剰心音、心雑音、心拍数
心音
open snap
- 三尖弁や肺動脈弁が開く音。三尖弁領域や僧帽弁領域で聴取。高音。僧帽弁狭窄症、三尖弁狭窄症。呼吸で変動しにくい。
- 僧帽弁狭窄症:左胸骨縁~心尖。A2~P2~OSの順に聞こえる。吸気ではS1,,,A2, P2, OS、呼気ではS1,,,S2,OSと聴取される。病状が進行するほどS2~OSは狭くなる(左心房の圧上昇を反映)。
- 左房が固くなった左室に対して強力に収縮するときの音 PHD.37
- まれ
- 高音
- 収縮性心膜炎
- 拡張期早期
- S2の後(S3やOSと混同しやすい。OSより若干遅めで、音が大きい。ventricular gallopよりタイミングは早い)
- 心室への血流充満が急激に止まる(abrupt cessation)ことにより生じる
収縮期早期
- ejection click:大動脈弁や肺動脈弁が開く音。大動脈弁領域・肺動脈弁領域で聴取。高音。大動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、大動脈の拡張、肺動脈の拡張。
- 大動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症:硬くなった弁が急に開くため?
- 大動脈の拡張、肺動脈の拡張 :大動脈・肺動脈基部が急激に緊張するため?
- aortic ejection click :心基部、心尖部聴取。呼吸変動無し
- pulmonic ejection click:心基部のみで聴取 。吸気で減弱
収縮期中期~末期
心音と過剰心音のまとめ QB.C-360
|
音を発する構造
|
聴診部位
|
疾患
|
*I音
|
房室弁
|
心尖部
|
MS
|
*II音
|
肺動脈弁、大動脈弁
|
心基部
|
HT, PH
|
*III音
|
拡張早期に血液が心臓に充満する音
|
|
容量負荷(心不全)、生理的
|
*IV音
|
拡張後期に心房収縮により心室壁が振動する音
|
|
圧負荷(拡張不全)
|
呼吸性変動
- 吸気時:心拍数↑
- 呼気時:心拍数↓
- I音-II音の間隔の変化は小さい。
II音の分裂
まとめ
|
心拍数
|
II音分裂
|
吸気
|
↑
|
A2-P2
|
呼気
|
↓
|
S2
|
記載方法の例
- I音(→) II音(→) III音(-) IV音(-)
- I音亢進減弱無し(=normal intensity) II音normal splitting
[★]
- 英
- autosomal dominant polycystic kidney disease, ADPKD
- 同
- 常染色体優性嚢胞腎、成人型嚢胞腎 adult polycystic kidney disease APKD APCD、adult-type polycystic kidney disease
- 関
- 腎嚢胞
[show details]
遺伝
疫学
病因
病態
- 腎臓にサイズが大きめの嚢胞が多発し(⇔常染色体劣性嚢胞腎 ARPKD)、腎実質を圧迫して腎機能を低下させる。
症状
- SURO.125
合併症
参考
uptodate
- 1. [charged] 常染色体優性多発性嚢胞腎の遺伝学および嚢胞成長のメカニズム - uptodate [1]
- 2. [charged] 常染色体優性多発性嚢胞腎の診断およびスクリーニング - uptodate [2]
- 3. [charged] 常染色体優性多発性嚢胞腎の腎外症状 - uptodate [3]
- 4. [charged] 常染色体優性多発性嚢胞腎の腎症状 - uptodate [4]
- 5. [charged] 常染色体優性多発性嚢胞腎における高血圧 - uptodate [5]
- 6. [charged] 常染色体優性多発性嚢胞腎における尿路感染症 - uptodate [6]
- 7. [charged] 常染色体優性多発性嚢胞腎の経過および治療 - uptodate [7]
- 8. [charged] 小児における常染色体優性多発性嚢胞腎 - uptodate [8]
[★]
- 英
- palpitation
- 同
- 心悸亢進
- 関
- 脈拍異常
定義
原因
- 生理的反応:運動、労作、精神的ストレス、精神的興奮
- 非心疾患:
病態生理
- 生理的反応:反応性の内因性カテコラミン産生増加による心拍数増加、左室収縮力の増加、血圧上昇
- 非心疾患:
不整脈性の動悸
[★]
- 英
- mitral valve prolapse syndrome
- 関
- 僧帽弁逸脱症、逸脱性僧帽弁、収縮中期クリック症候群
[★]
- 英
- mitral valve (Z), MV
- 同
- 左房室弁 left atrioventricular valve, 二尖弁 bicuspid valve
- 関
- 三尖弁、僧帽弁閉鎖不全
- 左心房と左心室の間の弁
- 左心房と左心室の間の左房室口に存在する弁で、血液の左心室から左心房への逆流を防止する機能がある。
- 正常弁口面積 4cm2以上 ← 弁口面積<1.5cm2で僧帽弁狭窄症を発症
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
臨床関連
- 疾患
- 異常所見
- 僧帽弁収縮期異常後方運動(Mモードにおける拡張後期の僧帽弁の後方への偏位):僧帽弁逸脱症の所見とされたが非特異的である。
[★]
- 英
-
- 関
- 異常、異常性、回避、収差、出発、脱出、脱出症、逃避、分岐、偏位、偏向、偏差、免れる、迷走、漏れ、発散、逃げる、エスケープ
[★]
- 英
- sis, pathy