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鉄

英
iron Fe
同
scissors
関
ヘモグロビン、赤血球、血清鉄、iron salts

概念

  • ヘモグロビン、ミオグロビン、およびペルオキシダーゼなどの正常な働きのために必須の元素である。ヒトは一日10-15mgの鉄を摂取しており、そのうちわずか1mgが小腸で吸収される。主に十二指腸でFe2+の形で吸収されるので、胃酸、ビタミンC、クエン酸などによりFe3+→Fe2+になっていると吸収の効率が高まる。生体内には4gの鉄が存在しており、その2/3がヘム鉄(2.5g)(ほぼヘモグロビン鉄、一部ミオグロビン鉄)で存在し、残りのほとんど(1g)は貯蔵鉄(網内系の中。フェリチン・ヘモジデリンとして)として組織に貯蔵される。鉄は受動的に1mgが主に消化管から失われ、その他皮膚、尿路からも失われる。

基準値

→血清鉄

鉄の体内分布(SP.499)

  • 成人の体内鉄量:3-4g
  • うち2/3がヘム鉄 約2.5g = ヘモグロビン鉄 2.3g + ミオグロビン鉄 0.14g
  • 残りの1g 貯蔵鉄(フェリチン 0.5g + ヘモジデリン 0.5g
[mg] 成人男性 成人女性
総鉄量 4050 2750
ヘモグロビン 2700 2000
貯蔵鉄 1000 450
組織の機能蛋白 350 300
血清トランスフェリン 3 3
血清フェリチン 0.3 0.1


鉄の収支 (SPC.280)

  • 喪失
  • 糞、汗、脱落皮膚:1mg/day
  • 月経中の女性:30mg/月経期間中
  • 妊娠中:500mg/満期まで
  • 必要摂取量
  • 月経中の女性:1.4mg/day
  • 妊娠中:5-6mg/day
  • 男性:0.5-1.0mg/day
  • 食物としての摂取量 (SP. 500)
  • 10-15mg
うち0.9mg程度しか吸収されない

鉄の吸収 (詳しくは図:SP.500)

  • 十二指腸で良く吸収される。 (吸収部位:十二指腸、空腸上部(LAB.579))
  • Fe2+は水溶性、Fe3+は難溶性なので、Fe2+であるほうが吸収されやすい。また、ヘム鉄、アミノ酸鉄などキレート状の鉄は吸収が容易である(SP.499)


  • 腸管(Feイオンorヘム)-→上部小腸粘膜(Fe2+アポフェリチン→フェリチン)-(Fe3+→Fe2+はセルロプラスミンの作用)→血漿中(Fe3++トランスフェリン)-→末梢臓器(肝臓、骨髄(赤芽球)→赤血球)
  • 赤芽球上のトランスフェリンレセプターと結合して、エンドサイトーシスにより取り込まれる。


  • 鉄は摂取量の10%しか吸収されない。腸上皮中ではフェリチンと結合して存在するが、フェリチンが飽和するとそれ以上取り込まない。腸上皮のフェリチンは血清中のトランスフェリンに鉄を渡すが、トランスフェリンが飽和するとそれ以上鉄を渡せなくなる。鉄が飽和した状態の腸上皮はやがて脱落する。これで、必要以上の鉄が吸収されないように厳密に制御されている(←過剰の鉄は生体内でフリーラジカルを産生する反応を触媒するので危険)。ビタミンCは鉄の吸収を促進し、肉に含まれるヘム鉄は食物中の無機鉄より効率よく吸収される。またアルコールやフルクトースは鉄の吸収を促進するが、カルシウムは鉄の吸収を阻害する。(HBC.486)

QB.A-366

  • 鉄の吸収には胃酸の分泌、十二指腸からの吸収が必要。胃全摘が施行された場合には、胃酸の分泌減少と、Billroth II法が施行された場合には食物が十二指腸を通過せず鉄の吸収が障害される。





治療薬

  • 鉄欠乏性貧血:硫酸鉄

臨床関連

  • 鉄欠乏性貧血
  • ヘモジデローシス

WordNet

  1. an edge tool having two crossed pivoting blades (同)pair of scissors
  2. a wrestling hold in which you wrap your legs around the opponents body or head and put your feet together and squeeze (同)scissors hold, scissor hold, scissor grip, scissors grip
  3. a gymnastic exercise performed on the pommel horse when the gymnast moves his legs as the blades of scissors move

PrepTutorEJDIC

  1. 『はさみ』

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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/12/08 14:11:59」(JST)

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「鉄」のその他の用法については「鉄 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
マンガン ← 鉄 → コバルト
-

↑
Fe
↓

Ru
26Fe
周期表
外見
銀白色



鉄のスペクトル線
一般特性
名称, 記号, 番号 鉄, Fe, 26
分類 遷移金属
族, 周期, ブロック 8, 4, d
原子量 55.845(2) 
電子配置 [Ar] 3d6 4s2
電子殻 2, 8, 14, 2(画像)
物理特性
相 固体
密度(室温付近) 7.874 g·cm-3
融点での液体密度 6.98 g·cm-3
融点 1811 K, 1538 °C, 2800 °F
沸点 3134 K, 2862 °C, 5182 °F
融解熱 13.81 kJ·mol-1
蒸発熱 340 kJ·mol-1
熱容量 (25 °C) 25.10 J·mol-1·K-1
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1728 1890 2091 2346 2679 3132
原子特性
酸化数 6, 5[1], 4, 3, 2, 1 [2], −1, −2
(両性酸化物)
電気陰性度 1.83(ポーリングの値)
イオン化エネルギー
(詳細)
第1: 762.5 kJ·mol-1
第2: 1561.9 kJ·mol-1
第3: 2957 kJ·mol-1
原子半径 126 pm
共有結合半径 132±3 (低スピン), 152±6 (高スピン) pm
その他
結晶構造 体心立方
磁性 強磁性
1043 K
電気抵抗率 (20 °C) 96.1 nΩ·m
熱伝導率 (300 K) 80.4 W·m-1·K-1
熱膨張率 (25 °C) 11.8 µm·m-1·K-1
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(r.t.) (electrolytic) 5120 m·s-1
ヤング率 211 GPa
剛性率 82 GPa
体積弾性率 170 GPa
ポアソン比 0.29
モース硬度 4
ビッカース硬度 608 MPa
ブリネル硬度 490 MPa
CAS登録番号 7439-89-6
最安定同位体
詳細は鉄の同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
54Fe 5.8 % > 3.1×1022 y εε  ? 54Cr
55Fe syn 2.73 y ε 0.231 55Mn
56Fe 91.72 % 中性子30個で安定
57Fe 2.2 % 中性子31個で安定
58Fe 0.28 % 中性子32個で安定
59Fe syn 44.503 d β− 1.565 59Co
60Fe syn 2.6×106 y β− 3.978 60Co
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鉄(てつ、旧字体/繁体字表記:鐵、英: iron、羅: ferrum)は原子番号26の元素。元素記号は Fe。金属元素の一つで、遷移元素である。太陽や他の天体にも豊富に存在し、地球の地殻の約5%を占め、大部分は地核にある。古代には地表に落下してきた隕鉄が使われた。

目次

  • 1 概要
  • 2 性質
    • 2.1 同位体
    • 2.2 鉄の「臭い」
  • 3 用途
    • 3.1 産業
  • 4 製法
    • 4.1 産出
    • 4.2 選鉱
    • 4.3 製錬
    • 4.4 新製鉄法
      • 4.4.1 最近提案/実用化されている製鉄法
  • 5 鉄利用の歴史
    • 5.1 古代
    • 5.2 古代・中世前期日本
    • 5.3 中世後期・近世日本
    • 5.4 近世ヨーロッパ
  • 6 主な化合物
  • 7 世界の鉄鋼生産
  • 8 イメージ
  • 9 生体内での利用
    • 9.1 鉄分の役割
    • 9.2 鉄分の吸収
    • 9.3 鉄分の不足
    • 9.4 鉄分の過剰
    • 9.5 鉄分の許容量
    • 9.6 鉄分の推奨量
    • 9.7 その他
  • 10 その他
  • 11 脚注・出典
  • 12 参考文献
  • 13 関連項目
  • 14 外部リンク

概要

元素記号の Fe は、ラテン語での名称「ferrum」に由来する。日本語では、鈍い黒さから「くろがね(黒鉄、黒い金属)」と呼ばれていた。

道具の材料として、人類にとって最も身近な金属元素の1つで、様々な器具・工具や構造物に使われる。鉄を最初に使い始めたのはヒッタイトである。ヒッタイト以前の紀元前18世紀ごろ、すでに製鉄技術があったことが発掘された鉄によって明らかになっている。鉄器時代以降、鉄は最も重要な金属の1つであり、産業革命以降、益々その重要性は増した。鉄は、炭素などの合金元素の存在により、より硬い鋼となり構造物を構成する構造用鋼などや、工具鋼などの優れたトライボロジー材料にもなる。

性質

純粋な鉄は白い金属光沢を放つが、イオン化傾向が高いため、湿った空気中では容易に錆を生じ、見かけ上黒ずんだり褐色になったりする。一方、極めて純度の高い (99.9999 %) 鉄は、比較的高いイオン化傾向を有するにも拘らず、塩酸や王水などの酸に侵されにくくなるうえ、液体ヘリウム温度(-268.95℃)でも失われないほどの高い可塑性を有するようになる[3]。この超高純度鉄は東北大学金属材料研究所の安彦兼次客員教授により、電解鉄を超高真空中で溶解し、電子銃を用いた浮遊帯溶融精製で処理することにより1999年に製造に成功し[4][5]、2011年に日本とドイツの標準物質データベースに登録された[6]。

固体の純鉄は、フェライト(BCC構造)、オーステナイト(FCC構造)、デルタフェライト(BCC構造)の3つの多形がある。911 °C以下ではフェライト、911 - 1392 °Cはオーステナイト、1392 - 1536 °Cはデルタフェライト、1536 °C以上は液体の純鉄となる。常温常圧ではフェライトが安定である。強磁性体であるフェライトがキュリー点を超えたところからオーステナイト領域までの770 - 911 °Cの純鉄の相は、以前はβ鉄と呼ばれていた。

栄養学的には、鉄は人(生体)にとって必須の元素である。鉄分を欠くと、血液中の赤血球数やヘモグロビン量が低下し、貧血などを引き起こす。腸で吸収される鉄は二価のイオンのみであり、3価の鉄イオンは2価に還元されてから吸収される。鉄分を多く含む食品はホウレンソウやレバーなどである。動物性の食物起源の鉄の方が吸収効率が高い。ただし、過剰に摂取すると鉄過剰症になることもある。

同位体

詳細は「鉄の同位体」を参照

自然の鉄の同位体比率は、5.845 %の安定な 54Fe、91.754 %の安定な 56Fe、2.119 %の安定な 57Fe、0.282 %の安定な 58Fe からなる。60Fe は不安定で比較的短寿命(半減期150万年)なため、自然の鉄中には存在しない。理論的に予測される 54Fe の二重β崩壊の検出は未確定である[7]。58Fe と 56Fe の原子核は非常に安定(核子1つあたりの質量欠損が大きい)であり、全ての原子核の中でそれぞれ2番目と3番目に安定である(最も安定な核種は62Ni)[8][9]。

しばしば全ての原子核の中で 56Fe が最も安定とされることがあるが、これは誤りである。このような誤解が広まった理由として、56Fe の天然存在比が 62Ni や 58Fe よりもはるかに高いことに加え、核子1つあたりの質量を比較した場合には 56Fe が全原子核中で最小となることが挙げられる。中性子の方が陽子よりもわずかに重いため、核子1つあたりの質量が最小となる核種と質量欠損が最大になる核種は一致しない。また、下記のように恒星の核融合の最終生成物が 56Fe であることを「鉄が最も安定であるため」と便宜的に説明されることがあることも誤解を招いていると考えられる。

58Fe よりも不安定な 56Fe のほうが存在比が高い理由は、星の元素合成の過程で質量数が4の倍数の核種が主に作られるためである。炭素より重い元素は 4He の融合(アルファ反応)によって作られるために生成する核種の質量数は4の倍数に偏る。太陽質量の4 - 8倍の質量を持った恒星ではアルファ反応は 56Ni まで進行するが、次の 60Zn の原子核は 56Ni よりも不安定なため、これ以上は反応が進行しない。56Ni は2度のβ崩壊を経て 56Fe を生成するため、恒星の核融合の最終生成物は 56Fe になる(詳しくはIa型超新星参照のこと)。鉄より重い核種も超新星爆発等であわせて生成するが、その生成プロセスは明確になっていない。

鉄の「臭い」

鉄棒などの鉄製品を手に持つと、手に特有の臭いが付く。これは俗に「金属臭」、「鉄の臭い」と呼ばれるが、原因は鉄そのものではない(鉄は常温では揮発しない)。研究により、人体の汗に含まれる皮脂分解物と鉄イオンが反応して生じる炭素数7-10の直鎖アルデヒド類や1-オクテン-3-オンなどの有機化合物、そしてメチルホスフィン・ジメチルホスフィンなどのホスフィン類がこの臭いの原因であることが確認されている[10][11]。

用途

産業

セヴァーン川にかかるコールブルックデール橋。世界初の鉄橋とされる。

安価で比較的加工しやすく、入手しやすい金属であるため、人類にとって最も利用価値のある金属元素である。特に産業革命以後は産業の中核をなす材料であり、「産業の米」などとも呼ばれ、「鉄は国家なり」と呼ばれる程、鉄鋼の生産量は国力の指標ともなった。この為、鉄鋼産業には政府の桿入れも大きく、第二次世界大戦後の世界的な経済発展にも大きく影響している。現在においても工業生産されている金属の大半は鉄鋼であり、鉄を含まない金属は非鉄金属と呼ばれる。

鉄は、炭素をはじめとする合金元素を添加することで鋼となり、炭素量や焼入れなどを行うことなどで硬度を調節できる極めて使い勝手の良い素材となる。鋼は古くから刃物の素材として使われ、ほとんどの機械は鉄鋼を主な素材とする。さらに鉄鋼は、鉄道レールの素材となるほか、鉄筋や鉄骨、鋼矢板などとして建築物や土木構築物の構造用部材に使われ大量に消費されている。

鉄に炭素とさまざまな微量金属を加えることで、多様な優れた特性を持つ合金鋼が生み出される。鉄とクロム・ニッケルの合金であるステンレス鋼は腐食しにくく強度が高く、なおかつ見た目に美しく比較的安価な合金として知られる。このため、ステンレス鋼に加工された鉄は、液体や気体を通すパイプ、液体や粉体を貯蔵するタンク[要曖昧さ回避]や缶、流し台、建築資材などにも用いられるほか、鍋や包丁などの生活用具、家電製品、鉄道車両、自動車部品、産業ロボットなど、あらゆる分野に利用されている。また、工具鋼は固体材料の中で最も強度増幅能力が高く超硬材料と比べても高い曲げ強度を有するため、不変形特性が重要でかつ加工形状の自由度が要求される金型に多用される。金属材料で最も熱膨張係数が低いインバー合金、最強の保磁力を持つ磁性材料(ネオジム磁石)も鉄を含む。

他にも、鉄化合物はインクや絵具などの顔料として、赤色顔料のベンガラや青色顔料のプルシアンブルーなどとして使われる。

鉄は強い磁性を持つため、不燃物からの回収が容易であり、再利用率も高い。屑鉄として回収された鉄は、電気炉で再び鉄として再生される。

製法

産出

詳細は「鉄鉱石」を参照

大規模な鉄鉱床は、光合成により酸素単体が大量に発生したことにより、海水中に溶存しイオン化していた鉄が、酸化鉄として沈殿したことにより産み出されたと言われている。

選鉱

詳細は「選鉱」を参照

製錬

宋応星が著した「天工開物」の1頁。攪拌精錬法による製鉄方法を解説している。

鉄の製錬はしばしば製鉄と呼ばれる。簡単にいえば、鉄鉱石に含まれる様々な酸化鉄から酸素を除去して鉄を残す、一種の還元反応である。アルミニウムやチタンと比べて、化学的に比較的小さなエネルギー量でこの反応が進むことが、現在までの鉄の普及において決定的な役割を果たしている。この工程には比較的高い温度(千数百度)の状態を長時間保持することが必要なため、古代文化における製鉄技術の有無は、その文化の技術水準の指標の1つとすることができる。

製鉄は2つ、もしくは加工まで加えた3つの工程からなる。鉄鉱石とコークスから炭素分の多い銑鉄を得る製銑、銑鉄などから炭素を取り除き炭素分の少ない鋼を作る製鋼、さらに圧延である[12]。製銑には古くは木炭が使われていたが、中国では、前漢時代に燃料として石炭の利用が進み、更に石炭を焼いて硫黄などの不純物を取り除いたコークスを発明、コークスを使った製鉄が始められた[13]。文献記録としては4世紀の北魏でコークスを使った製鉄の記録が最も早い[14]。以来、華北では時代と共にコークス炉が広まり北宋初期には大半がコークス炉となった。その1000年以上の後、森林が減ったことから1620年頃にイギリスのダッド・ダドリー(英語版) (Dud Dudley) も当時安価に手に入った石炭を使うことを考えて研究を進めた。石炭には硫黄分が多く、そのままでは鉄に硫黄が混ざり使い物にならなかったので、ダッドは石炭を焼いて硫黄などの不純物を取り除いたコークスを発明し、1621年にコークスを使った製鉄方法の特許を取った。しかし1709年からエイブラハム・ダービーが大々的にコークスで製鉄することを始めるまでは、コークスを使った製鉄の使用は少数にとどまっていた[15]。

日本では古来からたたら吹き(鑪吹き、踏鞴吹き、鈩吹き)と呼ばれる製鉄技法が伝えられている。現在では島根県安来市の山中奥出雲町等の限られた場所で日本刀の素材製造を目的として半ば観光資源として存続しているが、それと並存し和鋼の進化の延長上にもある先端的特殊鋼に特化した日立金属安来工場がある。鉄鉱石を原料とする日本の近代製鉄は1858年1月15日(旧暦1857年(安政4年)12月1日)に始まったと言われ、幕末以降欧米から多数の製鉄技術者が招かれ日本の近代製鉄は急速に発展した。現在の日本では、鉄鉱石から鉄を取り出す高炉法とスクラップから鉄を再生する電炉法で大半の鉄鋼製品が製造されている。高炉から転炉や連続鋳造工程を経て最終製品まで、一連の製鉄設備が揃った工場群のことを銑鋼一貫製鉄所(もしくは単に製鉄所)と呼び、臨海部に大規模な製鉄所が多数立地していることが、日本の鉄鋼業の特色となっている。日本では電炉法による製造比率が粗鋼換算で30 %強を占める。鉄が社会を循環する体制が整備されており、鉄のリサイクル性の高さと日本における鉄蓄積量の大きさを示している。鉄スクラップは天然資源に乏しい日本にとって貴重な資源であり、これをどう利用するかが、注目されるべき課題とされている。

新製鉄法

イギリスのコークス炉を用いた製鉄工場の絵。フィリップ・ジェイムズ・ド・ラウザーバーグ画(1801年)
製鉄百年記念切手 (日本)

従来の高炉法の場合、下記の欠点があった。

  • 銑鉄を製造するだけでも高炉のほかにコークス炉(石炭を乾留)・焼結炉が必要であり、また反応速度も8時間かかり、巨大設備投資が必要な割りに生産量が少ない。
  • コークスを製造できる石炭は石炭の中の極一部である粘結炭(原料炭)だけであり、もともと価格が高かった。近年資源メジャーによる原料炭鉱山の買占めのため、単年度で原料炭価格が2倍に上昇するなど大きなコスト上昇要因となっている。高炉法に羽口からの非粘結炭(一般炭)吹き込みを併用しても、価格の安い一般炭の使用比率は全石炭使用量の25 - 30 %程度が限界である。
  • 鉄鉱石価格は塊鉱石が高価で粉鉱石が安価であるが、高炉で粉鉱石を使う場合焼結炉で塊に焼き固めなければならない。その結果、焼結炉が必要で焼結工程で燃料を消費してコストが掛かるのみならず二酸化炭素を発生させてしまう。
  • 酸素濃度を多少増やす工夫もされているが基本は空気を吹き込む製鉄法である。反応速度が遅いほか、C1化学の立場からは製鉄排ガスに窒素が混入する事が、製鉄排ガスの化学工業的・商業的価値を落とし、製鉄排ガス(合成ガス)を原料とした大規模な自動車燃料合成、燃料自給率向上を妨げているとの批判もある。

最近提案/実用化されている製鉄法

溶融還元製鉄法
溶融還元炉では粉状の一般炭を酸素吹きで燃焼させ高温の一酸化炭素ガスを発生させ、予備還元した粉鉄鉱石を一気に還元し溶かして溶けた銑鉄を造る。溶融還元炉を出た一酸化炭素ガスは流動床/回転炉/シャフト炉で鉄鉱石を予備還元する。予備還元炉を出た一酸化炭素ガスは石炭乾燥空気の加熱などを経て、発電やスラブの再加熱、化学原料などに使用される。
利点

  • コークス炉、焼結炉が不要で、反応速度が速く比較的小さな溶融還元炉で大きな生産能力を持つために製鉄所新設の設備投資が高炉法より安くつく。
  • 一般炭100 %使用可能なため、資源メジャーの原料炭値上げで大きな損害を出さなくて済む。製鉄だけを目的とするなら半無煙炭などの炭素含有量の高い石炭を使えば、投入原単位を節約できるが、副生ガスを化学工業原料として販売できる立地なら、より安価な高揮発分石炭でガス産出を増やす事もできる。
  • 予備還元炉の一部に流動床か回転炉を使えば、安価な粉鉱石も使える。
  • 酸素製鉄の場合、発生する還元ガスである一酸化炭素に窒素が混入しないため、燃料としてもカロリーが高いばかりでなく、C1化学の出発原料である合成ガスとして活用できる。日本の製鉄石炭消費は年間1億tに及び、その排ガスを活用してフィッシャー・トロプシュ法で軽油を生産したり、メタノールを生産した場合数千万tの自動車燃料を自給できる可能性があると言われている。
  • 鉄ガス併産・化学とのコプロダクション(資源エネルギー庁省エネルギー技術戦略 9P参照)

課題

  • 日米欧とも蒸留設備は過剰気味である。日米欧とも鉄鋼需要は大きな成長はない。需要の増大している中国インドでは国産鉄鋼の価格が安く冷延鋼板より上流の製品では日米欧製品は価格が高すぎて売れないので、日本鉄鋼メーカーの設備投資は亜鉛/錫メッキ鋼板設備など下流高級用途に集中している。中国では熱効率が悪く二酸化炭素排出が多い中小高炉が乱立する様相を示しており、地球環境の視点からは、製鉄企業の適正な合併指導と新製鉄法の技術供与が望まれるが、それは中国インド産鋼鉄の価格競争力を高め、日本産鉄鋼の価格競争力が地盤沈下するブーメラン効果の原因ともなりうる(中国鉄鋼生産の現状と神戸製鋼の対中技術供与)。
  • 鉄鋼会社が溶融還元法に転換すると、現在コークスを鉄鋼企業に納品している企業はコークス炉の経営が立ち行かなくなる。そのため、現在稼動中のコークス炉が40年の寿命を迎える2015年まで溶融還元製鉄の導入は困難と見られていたが、昨今の原料炭価格の急激な上昇、韓国浦項総合製鉄の溶融還元製鉄炉操業開始など、切替え前倒しが必要になるかもしれない事象が起きている。
  • 技術的には酸化鉄による炉壁の溶損の解決が課題の一つのようである。
  • 酸素製鉄法は膨大な酸素を消費する。東京湾・伊勢湾・大阪湾のような液化天然ガスの大消費地であれば液化天然ガスの冷熱利用で低コストに酸素を量産できる可能性があるが、そうでない場合、空気の分留によって酸素を製造するのに多大な電力を消費する。

炭材内装塊の高速自己還元技術
粉炭と粉鉱石を加熱成型した塊を高炉に装填した場合、コークスと塊鉱石を交互装填した場合の5倍の速さで還元反応が進む。また同様の混合ペレットを溶融還元炉に使用した場合、炉壁溶損原因となる FeO の溶出が3 %で済むという。回転炉によるITmk3法も後述のフロートスメルター法も同技術を使用しているとのこと。
フロートスメルター法
粉炭に窪みを作り、粉炭と粉鉱石と石灰を混合したものを窪みに充填し周囲の石炭を燃焼して加熱する。
特徴

  • 50万トン/年規模の小型プラントに適する。炭素の酸化発熱は炭素>一酸化炭素より一酸化炭素>二酸化炭素の発熱量が大であり、石炭を CO2 まで酸化することで石炭の使用原単位が減り、CO2 の半減効果が得られる。ただし、発生するガスは二酸化炭素なので化学合成には使えない。

鉄利用の歴史

古代

今のところ製鉄技術が普及し始めたのは紀元前25世紀頃のアナトリアと考えられているが、鉄の利用自体はそれよりも古い。メソポタミアでは紀元前3300年から紀元前3000年頃のウルク遺跡から鉄片が見つかっている。また、エジプトのゲルゼーからも、ほぼ同時期の装飾品が見つかっている。これらの鉄器はニッケルの含有量から隕鉄製と考えられている。鉄利用の開始は更に有史以前に遡ると思われるが、詳細はわかっていない。カマン・カレホユック遺跡やアラジャホユック遺跡、紀元前20 - 18世紀頃のアッシリア人の遺跡からも当時の鍛鉄が見つかっている。

古代・中世前期日本

鉄器は紀元前3世紀頃 青銅とほぼ同時期に日本へ伝来した。当初は製鉄技術はなく輸入されていた。

青銅は紀元前1世紀頃から日本で作られるようになり、製鉄は弥生時代後期後半(1 - 3世紀)頃から北部九州のカラカミ遺跡(壱岐市)や備後の小丸遺跡(三原市)で開始され、それから時代が下り出雲地方や吉備でも製鉄が行われるようになった。総社市の千引かなくろ谷遺跡は6世紀後半の製鉄炉跡4基、製鉄窯跡3基が見つかっている。鞴(ふいご)を使い、原料は鉄鉱石である。製鉄炉の作り方は、これまで朝鮮半島からの導入と推定されていた[16]が、近年の研究により、中国北東部から伝わったとされている。また日本人支配地域であった任那においても日本に遅れて製鉄が開始され、鉄製品の生産拠点となった。

日本の製鉄法はある時期以降は「たたら」と呼ばれる一種の鋼塊炉 (bloomery) を用いた、砂鉄を原料とする直接製鉄法である。直接製鉄法とは、砂鉄または鉄鉱石を低温で還元し、炭素の含有量が極めて低い錬鉄を生成するもので、近代の製鉄法が確立する前は(漢代以降の中国などの例外を除いて)広く世界的に見られた方法である。日本の製鉄法の特色は、鉄の含有量が高い砂鉄を原料に用いていることであろう。 古代、中世においては露天式の野だたら法が頻繁に行われていたが、16世紀中葉から全天候型で送風量を増加した永代たらら法に発展した。この古代以来の日本独自のたたら製鉄法では、玉鋼や包丁鉄といった複数の鉄が同時に得られるために、それが後の日本刀を生み出す礎となった。以後、出雲は一貫して日本全国に鉄を供給し、現在でも出雲地方にその文化の名残が認められ、日立金属などの高級特殊鋼メーカーへと変貌を遂げている。

農器具が鉄器で作られるようになると、農地の開拓が進んだ。中世日本では鉄は非常に貴重であり、鉄製の農機具は政府の持ちもので、朝借りて来て夕方には洗って返すことになっていた。私有地の耕作には鉄の農機具を使う事が出来なかったため、良い農地は政府の所有であった。すなわち、中世の日本の貴族は鉄の所有権を通して遠隔地にある荘園を管理した[17]。

11世紀頃から鉄の生産量が増えると、鉄が安価に供給されるようになった。個人が鉄の農機具を持つ事が出来るようになると、新しい農地が開墾されるようになった。

中世後期・近世日本

暦応5年(1342年)鋳物師の認可状 巻末
官営八幡製鉄所

戦国時代にあった日本では、1550年代頃に銃器の生産が普及した。鉄の技術者は鍛冶師、鋳物師と呼ばれた。また、永代たたらの普及により生産量が爆発的に増加したため、生産性の観点から歩止まりの良い砂鉄が採れる中国地方や九州地方への産地の集中が進むこととなった。

当時、鉄の精錬には木炭が使われた(ただし、宋代以降の中国においては石炭の利用が始まる)。日本の森林は再生能力に優れ、幸いにも森林資源に枯渇することが無かった。豊富な砂鉄にも恵まれており、鉄の生産量と加工技術では世界で抜きん出た存在になった。

中世後期から江戸時代にかけて、刀剣は輸出商品として長崎から輸出された。輸出先は中国やヨーロッパである。今日でもヨーロッパ各地の博物館で当時の貴族たちが収集した日本刀を見ることができる。明は一貫して日本との交易を禁じる政策を取ってきたが、鄭若曽の『籌海図編』には倭寇が好んだもの(倭好)として「鉄鍋」が挙げられ、謝杰の『虔台倭纂』には「鉄鍋重大物一鍋価至一両銭、重古者千文価至四両、小鍋曁開元永楽銭二銭、及新銭不尚也」(上巻「倭利」)として記し、日本人が小鍋でも永楽銭2銭を出して手に入れようとした事が記されている。これについて、太田弘毅は16世紀に西日本、特に倭寇とのつながりが強い瀬戸内海沿岸や九州に新興の日本刀産地が発生している事を指摘し、戦国時代に増大する日本刀需要(軍事的、あるいは密輸出用として)を賄うために中国から鉄鍋などの中古の鉄を獲得したと論じる[18]。また、16世紀の明の人で倭寇事情を調べるために日本を訪れて帰国後に『日本一鑑』を著した鄭舜功によれば、「其鉄既脆不可作、多市暹羅鉄作也、而福建鉄向私市彼、以作此」(巻二「器用」)と述べて日本の鉄砲に使われていた鉄がシャムや福建からの密輸品(収奪を含む)であったことを指摘している。更に近年において佐々木稔らによって行われた日本産の鉄砲などに用いられた鉄の化学分析によれば、日本の砂鉄には含まれていない銅やニッケル、コバルトなどの磁鉄鉱由来成分の含有が確認されており、佐々木は近世以前の日本国内において磁鉄鉱の鉱床開発が確認できない以上、国外から輸入された銑鉄などが流通していたと考えざるを得ないと指摘する[19]。

壊れた鉄製品を修復する需要があり、鉄の加工技術は日本各地で一般化していった。鍛接・鋳掛けの他にも、金属の接合にはろう付け・リベットが使われた。

鋳物業の盛んな富山県高岡市にも鋳物師の伝統である高岡銅器があり、この地域には古い技術がよく伝承されている。現在でもYKK、新日軽といった金属加工関係の大企業の工場が富山県に多くあるのはこの伝統と無縁ではない。

江戸幕末には、艦砲を備えた艦隊の武力を背景に開国を迫る西洋に対抗するために、大砲鋳造用の反射炉が各地に建造された。これらは明治時代になるとより効率の良い高炉にとって代わられた[20]。

近世ヨーロッパ

鉄を生産している所では森林破壊が深刻で、16世紀に鉄の生産が増加したイギリスでは、17世紀には鉄生産のための森林破壊が深刻となって木炭が枯渇し始め、製鉄の中心地だったウィールドでは17世紀末になると生産量が盛時だった17世紀前半の半分以下まで落ち込み、18世紀中葉には1/10まで減少した。18世紀後半にはダービーでコークスを使った精錬が始まる。コークスは石炭を蒸し焼きにしたもので、不純物が少なく鉄の精錬に使うことができ、火力も強かった。コークスの発明により木材資源の心配が無くなり、鉄の生産量も増加した。

主な化合物

  • 塩化鉄(II) (FeCl2)
  • 塩化鉄(III) (FeCl3)
  • 酸化鉄(II) (FeO)
  • 四酸化三鉄 (Fe3O4)
  • 硫化鉄(II) (FeS)
  • 硫酸鉄(II) (FeSO4)
  • 硫酸鉄(III) (Fe2(SO4)3)
  • ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム (K4[Fe(CN)6])
  • ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム (K3[Fe(CN)6])
  • その他についてはCategory:鉄の化合物を参照。

世界の鉄鋼生産

世界全体では、15.5億トンの粗鋼が生産されている(2012年)。[21]。

国別粗鋼生産量ベスト10(2012年)…1位中国7.17億トン、2位日本1.07億トン、3位アメリカ0.89億トン、4位インド0.77億トン、5位ロシア0.71億トン、6位韓国0.69億トン、7位ドイツ0.43億トン、8位トルコ0.36億トン、9位ブラジル0.35億トン、10位ウクライナ0.33億トン。

世界の企業別粗鋼生産量ベスト10(2012年)…1位アルセロールミッタル(ルクセンブルク)8,800万トン、2位河北鋼鉄集団(中国)6,900万トン、3位新日鉄住金(日本)4,600万トン、4位鞍鋼集団(中国)4,500万トン、5位宝鋼集団(中国)4,300万トン、6位ポスコ(韓国)3,800万トン、7位武漢鋼鉄(中国)3,600万トン、8位江蘇沙鋼集団(中国)3,200万トン、9位首鋼集団(中国)3,100万トン、10位JFEスチール(日本)3,000万トン。

イメージ

西洋占星術や錬金術などの神秘主義哲学では、軍神マルスと関連づけられ、その星である火星を象徴する。これは、古くから鉄が武器の材料として利用された事や、鉄錆がくすんだ血のような色である事に由来すると思われる。また、妖精は冷たい鉄を嫌うという伝説があり、ファンタジー小説において魔法的なものとの相性が悪いとされる。

また上記のような理由から「鉄」は「強固なもの」の代名詞となり「鉄の○○」などといえば「強固で倒しがたいもの」という比喩となる(例:鉄のカーテン、鉄の女、鉄十字、鉄人[要曖昧さ回避])。

一方の日本では、鉄は邪悪なものを取り除く力を持つと考えられていた時代もあった。たとえば『遠野物語』では、怪力の河童を鉄の針で退治したり、山中で身の危険を感じた猟師が魔除け用に持っていた鉄の弾を撃つというエピソードがある[要出典]。

「鉄」の旧字体(繁体字)である「鐵」は「金・王・哉」に分解できることから、本多光太郎は「鐵は金の王なる哉」と評した。なお、「鉄」は「鐵」の略字という説が有力であるが、使用頻度が高いために失われやすい点から、「鐵」の誤字「鉄」が略字になったという説がある。又、「鉄」以外にも「wikt:銕」という略字もある。

しかし、「鉄」の表記は「金を失う」となるため、製鉄業者・鉄道事業者などでは忌み嫌う傾向も見られ、あえて繁字体の「鐵」を使用する会社(新日本製鐵、大井川鐵道、和歌山電鐵など)や、「金が矢のように入る」とするため本来は鏃の意味を持つ「wikt:鉃」の字を「鉄」の代替としてロゴで使用する会社(四国旅客鉄道を除くJR各社)も存在する。

鉄はその用途から、機械や人工物を象徴する元素として用いられることも多い。対する人間・生物の象徴としては、有機化合物の主要元素である炭素(元素記号C)が用いられる。

生体内での利用

鉄分の役割

鉄の生物学的役割は非常に重要である。赤血球の中に含まれるヘモグロビンは、鉄のイオンを利用して酸素を運搬している[22]。ヘモグロビン1分子には4つの鉄(Ⅱ)イオンが存在し、それぞれがポルフィリンという有機化合物と錯体を形成した状態で存在する[23]。この錯体はヘムと呼ばれ、ミオグロビン、カタラーゼ、シトクロムなどのタンパク質にも含まれる[24]。ヘモグロビンと酸素分子の結合は弱く、筋肉のような酸素を利用する組織に到着すると容易に酸素を放出することができる[23]。

フェリチンは鉄を貯蔵する機能を持つタンパク質ファミリーである。その核は鉄(Ⅲ)イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオンからなる巨大なクラスター(オキソヒドロキソリン酸鉄)で、分子あたり4500個もの鉄イオンを含む[23]。

おもな鉄含有タンパク質[23]
タンパク質名 1分子中の鉄原子数 機能
ヘモグロビン 4 血液中のO2輸送[22]
ミオグロビン 1 骨格筋細胞中のO2貯蔵[22]
トランスフェリン 2 血液中のFe3+輸送[25]
フェリチン 4500以下 肝臓、脾臓、骨髄などの細胞中でのFe3+貯蔵[25]
ヘモシデリン 103~104 Feの貯蔵
カタラーゼ 4 H2O2の分解
シトクロムc 1 電子移動
鉄-硫黄タンパク質 2~8 電子移動

鉄分の吸収

肉や魚のミオグロビンやヘモグロビンに由来するポルフィリンと結合した鉄はヘム鉄と呼ばれ、非ヘム鉄と比較して2-3倍体内への吸収率が高い。非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂取すると、水溶性の高いFe2+に還元されて体内への吸収が促進されるが、玄米などの全粒穀物に含まれるフィチン酸、お茶や野菜類に含まれるポリフェノールなどは非ヘム鉄の吸収を阻害する[26][27]。

鉄分の不足

体内の鉄分が不足すると、酸素の運搬量が十分でなくなり鉄欠乏性貧血を起こすことがあるため、鉄分を十分に補充する必要がある。鉄分は、レバーやホウレンソウなどの食品に多く含まれ、その他に鉄分を多く含む食品は、ひじき、海苔、ゴマ、パセリ、アサリ、シジミなどである。これらを摂取することで鉄分の不足が改善される。

また鉄の溶解度が小さい土壌で育てられる植物などでは、鉄吸収が不足することで植物の成長が止まり黄化することがある。この症状は、土壌に水溶性型の鉄肥料を与えるなどすると一時的に改善されるが、植物中に含まれる鉄量が増えるわけではなく、ビタミンAの含有量が増えることがわかっている。したがって、鉄肥料を与えることは植物中の鉄分ではなくビタミンAを増やすことに役立つ。植物の鉄欠乏を長期的に改善するには、土壌に大量の硫黄を投入するなどして、土壌質を変える必要がある。なお陸上植物に限らず、藻類も微量の鉄を必要とする。

鉄分の過剰

一方で、過剰な鉄の摂取は生体にとって有害である。自由な鉄原子は過酸化物と反応しフリーラジカルを生成し、これが DNA やタンパク質、および脂質を破壊するためである。細胞中で鉄を束縛するトランスフェリンの量を超えて鉄を摂取すると、これによって自由な鉄原子が生じ、鉄中毒となる。余剰の鉄はフェリチンやヘモジデリンにも貯蔵隔離される。過剰の鉄はこれらのタンパク質に結合していない自由鉄を生じる。自由鉄がフェントン反応を介してヒドロキシラジカル(OH•)等の活性酸素を発生させる。発生した活性酸素は細胞のタンパク質やDNAを損傷させる。活性酸素が各臓器を攻撃し、肝臓には肝炎、肝硬変、肝臓がんを、膵臓には糖尿病、膵臓癌を、心臓には心不全を引き起こす[28]。ヒトの体には鉄を排出する効率的なメカニズムがなく、粘膜や粘液に含まれる1-2mg/日程度の少量の鉄が排出されるだけであるため、ヒトが吸収できる鉄の量は1-2mg/日程度と非常に少ない[28]。しかし血中の鉄分が一定限度を超えると、鉄の吸収をコントロールしている消化器官の細胞が破壊される。この為、高濃度の鉄が蓄積すると、ヒトの心臓や肝臓に恒久的な損傷が及ぶ事があり[29]、最悪の場合は死に至ることもある。鉄中毒の治療には、デフェロキサミンが投与される。

鉄分の許容量

米国科学アカデミーが公表している DRI 指数によれば、ヒトが1日のうちに許容できる鉄分は、大人で45 mg、14歳以下の子供は40 mgまでである。摂取量が体重1 kgあたり20 mgを超えると鉄中毒の症状を呈する。鉄の致死量は体重1 kgあたり60 mgである。6歳以下の子供が鉄中毒で死亡する主な原因として、硫酸鉄を含んだ大人向けの錠剤を飲み過ぎるケースがあげられる。

なお、遺伝的な要因により、鉄の吸収ができない人々もいる。第六染色体のHLA-H遺伝子に缺陥を持つ人は、過剰に鉄を摂取するとヘモクロマトーシスなどの鉄分過剰症になり、肝臓あるいは心臓に異変を来す事がある。ヘモクロマトーシスを患う人は、白人では全体の0.3 - 0.8 %と推定されているが、多くの人は自分が鉄過剰症であることに気づいていないため、一般に鉄分補給のための錠剤を摂取する場合は、特に鉄欠乏症でない限り、医師に相談することが望ましい。

鉄分の推奨量

鉄分の摂取についての必要量、推奨量は、以下の式で表される。
推定平均必要量=基本的鉄損失 ÷ 吸収率(0.15)
推定平均推奨量=推定平均必要量 × 1.2
20歳前後の男性の鉄分損失量は0.9 mg/日であるので、必要量は6.0 mg/日、推奨量は7.2 mg/日、となる。
月経のある女性の鉄分の必要量は、以下の式で表される。
推定平均必要量=(基本的鉄損失+月経血による鉄損失(0.55 mg/日)) ÷ 吸収率(0.15)
20歳前後の女性の鉄分損失量は0.76 mg/日であるので、必要量は8.7 mg/日、推奨量は10.5 mg/日、となる。
鉄分の耐用上限量は、0.8 mg/kg体重/日とされる。70kgの成人で56 mg/日が上限となる[30]。

その他

鉄の同位体の一種である 59Fe は、鉄動態検査に用いられる。

その他

  • 日本では第二次世界大戦中に「夢の製鉄法」と呼ぶ騒動があった。ある発明家が畑に砂鉄を盛り、さらにアルミニウムの粉末を加え燃焼させて純鉄を作った。この手法により高価な溶鉱炉を要する事なく、ふんだんにある砂鉄から武器の元となる鉄を精製できると大日本帝国陸軍は色めき立った。その実態は以前から知られたテルミット法であり、中谷宇吉郎は「1台の戦車を作るのに100機の飛行機を潰すような話」と評した[31]。

脚注・出典

[ヘルプ]
  1. ^ Demazeau, G.; Buffat, B.; Pouchard, M.; Hagenmuller, P. (1982). “Recent developments in the field of high oxidation states of transition elements in oxides stabilization of Six-coordinated Iron(V)”. Zeitschrift für anorganische und allgemeine Chemie 491: 60. doi:10.1002/zaac.19824910109. 
  2. ^ R. S. Ram and P. F. Bernath (2003). Journal of Molecular Spectroscopy 221: 261. http://bernath.uwaterloo.ca/media/266.pdf. 
  3. ^ 超高純度鉄
  4. ^ 金属の超高純度化を基に高温金属材料開発、東北大学金属材料研究所ナノ金属高温材料学寄附研究部門
  5. ^ 安彦兼次、「究極の超高純度金属」、日経サイエンス2000年10月号
  6. ^ 「東北大の純鉄が標準物質に 日独で登録」、2011年1月16日、日本経済新聞
  7. ^ Audi, Bersillon, Blachot, Wapstra. The Nubase2003 evaluation of nuclear and decay properties, Nuc. Phys. A 729, pp. 3-128 (2003).
  8. ^ M. P., Fewell (7 1995). “The atomic nuclide with the highest mean binding energy”. American Journal of Physics 63 (7): 653-658. doi:10.1119/1.17828. http://adsabs.harvard.edu/abs/1995AmJPh..63..653F 2008年2月17日閲覧。. 
  9. ^ R. Nave, Carl (2005年). “The Most Tightly Bound Nuclei” (English). Hyperphysics. ジョージア州立大学(Georgia State University). 2008年2月17日閲覧。
  10. ^ A 'metallic' smell is just body odour Nature News
  11. ^ 鉄のにおいの正体
  12. ^ 萩原芳彦 監修 『ハンディブック 機械 改訂2版』 オーム社 2007年3月20日 p.93
  13. ^ 鄭州古栄鎮遺跡出土鋳造所
  14. ^ 翻道安『西域記』
  15. ^ ロジャー・ブリッジマン『1000の発明・発見図鑑』丸善株式会社 平成15年11月1日 p.89
  16. ^ 狩野久「吉備の国づくり」 藤井学・狩野久・竹林栄一・倉地克直・前田昌義『岡山県の歴史』山川出版社 2000年 23-24ページ
  17. ^ 司馬遼太郎「この国のかたち」文春文庫 p.113-120
  18. ^ 太田弘毅「倭寇が運んだ輸入鉄―「鉄鍋」から日本刀製作へ―」(所収:明代史研究会明代史論叢編集委員会 編『山根幸夫教授退休記念明代史論叢』上巻(汲古書院、1990年) P521-538)
  19. ^ 佐々木稔/編『火縄銃の伝来と技術』(吉川弘文館、2003年 ISBN 978-4-642-03383-1)P84-87・191-201ほか。
  20. ^ 鉄と生活研究会編 『鉄の本』 2008年2月25日初版1刷発行 ISBN 978-4-526-06012-0
  21. ^ 『日本の鉄鋼業』(日本鉄鋼連盟、2013年)
  22. ^ a b c 八木康一編著 『ライフサイエンス系の無機化学』 三共出版、 p.155-159、1997年、ISBN 4-7827-0362-7
  23. ^ a b c d Geoff Rayner-Canham, Tina Overton『レイナーキャナム 無機化学(原著第4版)』西原寛・高木繁・森山広思訳、p.355-356、2009年、東京化学同人、ISBN 978-4-8079-0684-0
  24. ^ 八木康一編著 『ライフサイエンス系の無機化学』 三共出版、 p.95、1997年、ISBN 4-7827-0362-7
  25. ^ a b 八木康一編著 『ライフサイエンス系の無機化学』 三共出版、 p.163、1997年、ISBN 4-7827-0362-7
  26. ^ 「健康食品」の安全性・有効性情報「鉄解説」
  27. ^ 専門領域の最新情報 最新栄養学 第8版:建帛社
  28. ^ a b 輸血後鉄過剰症の診療ガイド
  29. ^ 肝臓病食における鉄制限 (群馬県肝臓病食懇話会記録 (PDF)
  30. ^ 日本人の食事摂取基準(2010年)6.2.微量ミネラル 6.2.1.鉄(Fe)
  31. ^ 読売新聞「編集手帳」2009年5月21日13S版1面から要約

参考文献

  • 『メイド・イン・ジャパン-日本製造業変革への指針-』(ダイヤモンド社、1994年)
  • 『産業技術短期大学大学案内2011』(産業技術短期大学、2010年)
  • 『産業技術短期大学五十年のあゆみ』(学校法人鉄鋼学園 産業技術短期大学、2012.4.25)
  • 『日本の鉄鋼業』(日本鉄鋼連盟、2013年)

ほか

関連項目

ウィキクォートに鉄に関する引用句集があります。
ウィキメディア・コモンズには、鉄に関連するカテゴリがあります。
  • 隕鉄
  • 鋼
  • たたら吹き
  • たたら研究会
  • 産業革命
  • 溶接
  • 鉄バクテリア
  • マルテンサイト
  • 人造黒鉛電極
  • KEY to METALS - データベース
  • 製鉄所
  • 鉄鋼業
  • 日本鉄鋼連盟
  • 産業技術短期大学-日本の鉄鋼業界(日本鉄鋼連盟)が設立した大学。

外部リンク

  • たたら - 日本の製鉄技術の歴史と解説
  • 超高純度ベースメタルの科学(ナノメタラジー)
  • 国立健康・栄養研究所
    • 鉄解説 -「健康食品」の安全性・有効性情報
    • 鉄 -「健康食品」の安全性・有効性情報
表・話・編・歴
周期表(未発見元素を含む)
  1 2   3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
1 H   He
2 Li Be   B C N O F Ne
3 Na Mg   Al Si P S Cl Ar
4 K Ca   Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr
5 Rb Sr   Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe
6 Cs Ba La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn
7 Fr Ra Ac Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr Rf Db Sg Bh Hs Mt Ds Rg Cn Uut Fl Uup Lv Uus Uuo
アルカリ金属 アルカリ土類金属 ランタノイド アクチノイド 遷移金属 その他の金属 半金属 その他の非金属 ハロゲン 希ガス 不明
表・話・編・歴
鉄の化合物
二元化合物
FeBr2 · FeBr3 · Fe3C · FeCl2 · FeCl3 · FeF2 · FeF3 · FeH2 · FeH3 · FeI2 · FeI3 · FeN · Fe3N · Fe3N2 · Fe(N3)2 · FeO · Fe2O3 · Fe3O4 · FeS · FeS2 · Fe2S3 · Fe3S4 · FeSe · Fe2Se3 · FeSi2
三元化合物
Fe(C5H5)2 · Fe(ClO3)3 · Fe(ClO4)2 · Fe(ClO4)3 · Fe(CN)2 · Fe(CN)3 · FeCO3 · Fe(CO)5 · FeC2O4 · Fe2(CO3)3 · Fe2(CO)9 · Fe2(C2O4)3 · Fe3(CO)12 · Fe2(CrO4)3 · Fe2(Cr2O7)3 · Fe5(IO6)2 · FeMnO4 · FeMoO4 · Fe(NO3)2 · Fe(NO3)3 · Fe(OH)2 · Fe(OH)3 · FeO(OH) · FePO4 · Fe3(PO4)2 · FeSeO4 · FeSO3 · FeSO4 · Fe2(SO4)3 · H2FeO4 · BaFeO4 · K2FeO4 · Fe(IO3)2 · Fe(IO3)3 · FeWO4
四元・五元化合物
[Fe(C5H5)2]BF4 · Fe(CH3COO)2 · Fe(CH3COO)3 · Fe(HCOO)2 · Fe(OCN)2 · Fe(SCN)2 · Fe(SCN)3 · H3[Fe(CN)6] · H4[Fe(CN)6] · (NH4)2Fe(SO4)2


UpToDate Contents

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  • 1. 鉄欠乏性貧血を有する成人の治療 treatment of the adult with iron deficiency anemia
  • 2. 幼児および若齢小児における鉄欠乏:治療 iron deficiency in infants and young children treatment
  • 3. 鉄過剰が疑われる患者に対するアプローチ approach to the patient with suspected iron overload
  • 4. 思春期における鉄の所要量および鉄欠乏 iron requirements and iron deficiency in adolescents
  • 5. 成人における鉄欠乏性貧血の原因および診断 causes and diagnosis of iron deficiency anemia in the adult

Japanese Journal

  • 鉄欠乏性貧血うを予防しよう
  • 森川 浩子
  • 中学保健ニュース, 6-7, 2012-10-08
  • 保健だより用資料
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鉄は半分以上が赤血球中のヘモグロビンの成分となり、各細胞へ酸素を運ぶ働きをし ています。各細胞はこの酸素補給によりエネルギーが生成されます。また、鉄は成長 促進や免疫力増進に関わり、酸..


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Japan Pharmaceutical Reference

薬効分類名

  • アンジオテンシン変換選択性阻害剤

販売名

イミダプリル塩酸塩錠10mg「オーハラ」

組成

成分・含量

  • 1錠中日局イミダプリル塩酸塩10mgを含有

添加物

  • 乳糖水和物、トレハロース水和物、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、硬化油、ステアリン酸マグネシウム

禁忌

  • 本剤の成分に対し、過敏症の既往歴のある患者
  • 血管浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシン変換酵素阻害剤等の薬剤による血管浮腫、遺伝性血管浮腫、後天性血管浮腫、特発性血管浮腫等)〔呼吸困難を伴う血管浮腫を発現することがある。〕
  • デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシスを施行中の患者〔ショックを起こすことがある。〕(「相互作用」の項参照)
  • アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた血液透析施行中の患者〔アナフィラキシーを発現することがある。〕(「相互作用」の項参照)
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
  • アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く。)〔非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスク増加が報告されている。〕(「重要な基本的注意」の項参照)

効能または効果

  • 高血圧症、腎実質性高血圧症
  • 通常、成人にはイミダプリル塩酸塩として5〜10mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、重症高血圧症、腎障害を伴う高血圧症又は腎実質性高血圧症の患者では2.5mgから投与を開始することが望ましい。
  • クレアチニンクリアランスが30mL/分以下、又は血清クレアチニンが3mg/dL以上の重篤な腎機能障害のある患者では、投与量を半量にするか、若しくは投与間隔をのばすなど慎重に投与すること。〔排泄の遅延による過度の血圧低下及び腎機能を悪化させるおそれがある。〕(「慎重投与」の項参照)

慎重投与

  • 両側性腎動脈狭窄のある患者又は片腎で腎動脈狭窄のある患者(「重要な基本的注意」の項参照)
  • 高カリウム血症の患者(「重要な基本的注意」の項参照)
  • 腎機能障害のある患者(<用法・用量に関連する使用上の注意>及び「副作用 重大な副作用」の項参照)
  • 脳血管障害のある患者〔過度の降圧が脳血流不全を惹起し、病態を悪化させることがある。〕
  • 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)

重大な副作用

  • 呼吸困難を伴う顔面、舌、声門、喉頭の腫脹を症状とする血管浮腫があらわれることがあるので、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤の投与及び気道確保等の適切な処置を行うこと。(頻度不明)
  • 重篤な血小板減少があらわれることがあるので、このような場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。(頻度不明)
  • 急性腎不全、また、腎機能障害の増悪があらわれることがあるので、腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。(頻度不明)
  • 重篤な高カリウム血症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。(頻度不明)
  • 紅皮症(剥脱性皮膚炎)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、天疱瘡様症状があらわれることがあるので、紅斑、水疱、そう痒、発熱、粘膜疹等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。(頻度不明)

薬効薬理

  • イミダプリル塩酸塩は経口投与後、加水分解により活性代謝物であるジアシド体(イミダプリラート)に変換される。イミダプリラートが血中・組織中のACE活性を阻害し、昇圧物質であるアンジオテンシンIIの生成を抑制することによって降圧作用を発現する。

有効成分に関する理化学的知見

一般名

  • イミダプリル塩酸塩(Imidapril Hydrochloride)

化学名

  • (4S)-3-{(2S)-2-[(1S)-1-Ethoxycarbonyl-3-phenylpropylamino]propanoyl}-1-methyl-2-oxoimidazolidine-4-carboxylic acid monohydrochloride

分子式

  • C20H27N3O6・HCl

分子量

  • 441.91

性状

  • 本品は白色の結晶である。
    本品はメタノールに溶けやすく、水にやや溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくい。
    本品1.0gを水100mLに溶かした液のpHは約2である。

融点

  • 約203℃(分解)

★リンクテーブル★
国試過去問「114E029」「105E043」「107A038」「096I011」「098I044」「102G052」「099F009」「100A028」「107G034」「104G027」「105B034」「096G040」「098G101」「102E001」「105E001」「107E036」「105G010」「104B036」「110B002」「096E047」
リンク元「小腸」「検査値」「プロトンポンプ阻害薬」「ビタミンB12」「血清鉄」
拡張検索「鉄錆症」「肺血鉄症」「鉄カルボニル化合物」

「114E029」

  [★]

  • 28歳の男性。ふらつきを主訴に家族に伴われて来院した。高校在学中に不登校となり、そのまま自宅2階の自室に引きこもるようになった。高校は退学となり、仕事には就かず1日中カーテンを閉め切ってオンラインゲームに熱中していた。食事は母親が自室の前に提供していたが偏食が激しい。3か月前から夜にコンビニエンスストアに出かける際に暗いところで歩行が左右にふらついていることに家族が気付いていた。立ちくらみはなく、日中はトイレに行くときに見かけるのみだが、ふらつきはみられないという。喫煙歴と飲酒歴はない。眼瞼結膜に貧血はなく、心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察では眼球運動は正常で眼振を認めない。指鼻試験および膝踵試験に異常を認めない。不随意運動はみられない。腱反射は全般に低下しており起立閉眼で体幹の動揺が増強する。
  • ビタミンB12とともにこの患者の症状の原因と考えられる不足栄養素はどれか。
  • a 鉄
  • b 銅
  • c 葉酸
  • d ビタミンD
  • e マグネシウム


[正答]

?


※国試ナビ4※ [114E028]←[国試_114]→[114E030]

「105E043」

  [★]

  • 59歳の女性。水様下痢を主訴に来院した。生来便秘気味で下剤を使用することがあった。2年前に膿瘍形成を伴う急性虫垂炎のため約20cmの終末回腸を含む回盲部切除術を受け、それ以来下痢となっている。排便は4-10回/日であり、夜間に便意のため目が覚めることもある。自宅近くの診療所での下部消化管内視鏡検査で異常を認めず、止痢薬、抗コリン薬、消化管運動調節薬およびプロバイオティクスも無効であるため来院した。体温36.5℃。脈拍72/分、整。血圧112/70mmHg。腸雑音の亢進を認めるが、腹部に圧痛はない。糞便検査で外観は水様、脂肪(-)、寄生虫卵(-)、便細菌検査では病原性細菌(-)。血液所見:赤血球 434万, Hb 13.2g/dl、Ht 41%、白血球 6,100、血小板 18万。血液生化学所見:アルブミン 4.2g/dl、尿素窒素 12mg/dl、クレアチニン 0.6mg/dl、AST25IU/l、ALT 38IU/l、Na 139mEq/l、K 3.6mEq/l、Cl 105mEq/l。CRP 0.1mg/dl。
  • この患者の下痢に最も関与していると考えられるのはどれか。
  • a 鉄
  • b 脂肪
  • c 胆汁酸
  • d 腸内細菌
  • e ビタミンB12


[正答]

C


※国試ナビ4※ [105E042]←[国試_105]→[105E044]

「107A038」

  [★]

  • 70歳の男性。息切れを主訴に来院した。5年前に胃癌のため胃全摘術を受けた。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。胸骨左縁で収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部の正中部に手術痕を認める。肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球185万、Hb 8.3g/dl、Ht 25%、網赤血球0.3%、白血球3,900、血小板8.1万。血液生化学所見:尿素窒素12mg/dl、クレアチニン0.6mg/dl、総ビリルビン2.1mg/dl、直接ビリルビン0.2mg/dl、AST 28IU/l、ALT 16IU/l、LD 1,280IU/l(基準176~353)、Fe 65μg/dl(基準59~161)、ビタミンB12 112pg/ml(基準250~950)、葉酸8.3ng/ml(基準2.4~9.8)。末梢血塗抹標本で核に過分葉のある成熟好中球を認め、骨髄血塗抹標本で巨赤芽球を認める。ビタミンB12の筋肉内投与が行われ、貧血は改善しつつあったが、治療中に改善がみられなくなった。
  • 現時点で患者に不足していると考えられるのはどれか。
  • a 鉄
  • b 亜鉛
  • c ビタミンC
  • d ビタミンB6
  • e エリスロポエチン


[正答]

A


※国試ナビ4※ [107A037]←[国試_107]→[107A039]

「096I011」

  [★]

  • 26歳の男性。4か月前から頻回の軟便があり、1か月前から1日6、7行の粘血便が出現し来院した。上腹部から左側腹部にかけて圧痛を認める。血液所見:赤血球389万、Hb 11.5g/dl、白血球9,600、血小板39万。血清生化学所見:総蛋白7.0g/dl、アルブミン3.5g/dl、AST(GOT)25単位(基準40以下)、ALT(GPT)22単位(基準35以下)、LDH360単位(基準176~353)。CRP5.6mg/dl (基準0.3以下)。注腸造影写真と下行結腸の内視鏡写真とを以下に示す。
  • この疾患で吸収が特に障害されるのはどれか。
  • (1) 鉄
  • (2) 胆汁酸
  • (3) ビタミンA
  • (4) ナトリウム
  • (5) 水分
  • a. (1)(2)
  • b. (1)(5)
  • c. (2)(3)
  • d. (3)(4)
  • e. (4)(5)


[正答]

E


※国試ナビ4※ [096I010]←[国試_096]→[096I012]

「098I044」

  [★]

  • 1歳の男児。持続する下痢と皮疹とを主訴に来院した。
  • 母親の妊娠・分娩歴には特記すべきことはない。母乳分泌が不十分で、人工栄養で育てられた。6か月ころから水様性の下痢をきたすようになり、体重増加も不良になった。ミルクアレルギーを考え治療乳を試みたが下痢は改善しなかった。
  • 1週前から口周囲と指に皮疹が出現した。
  • 口周囲写真を以下に示す。
  • 血中で低下しているのはどれか。
  • a. 銅
  • b. 鉄
  • c. 亜鉛
  • d. セレニウム
  • e. 高級不飽和脂肪酸


[正答]

C


※国試ナビ4※ [098I043]←[国試_098]→[098I045]

「102G052」

  [★]

  • 59歳の女性。傾眠と背部痛とを主訴に来院した。5年前に左乳癌の摘出術を受けている。身長150cm、体重51kg。血圧150/88mmHg。貧血と黄疸とを認めない。表在リンパ節の腫脹は認めない。血液生化学所見:尿素窒素30.0mg/dl、クレアチニン1.6mg/dl、尿酸 6.0mg/dl、Na 140mEq/l、K 3.6mEq/l、Cl 102mEq/l。腹部超音波検査で腎に異常を認めない。
  • 血液生化学検査で必要な項目はどれか。2つ選べ。
  • a. 鉄
  • b. アルブミン
  • c. カルシウム
  • d. マグネシウム
  • e. 総ビリルビン

[正答]

BC

  • 乳癌の骨転移、高カルシウム血症


※国試ナビ4※ [102G051]←[国試_102]→[102G053]

「099F009」

  [★]

  • 62歳の女性。労作時の息切れと倦怠感とのため来院した。2か月前から体のだるさを自覚し、3週前に階段を昇る時息切れが出現した。6年前に胃癌のため胃全摘術を受けているが最近は受診していない。意識は清明。脈拍108/分、整。血圧98/56mmHg。眼瞼結膜は貧血様。下肢の感覚異常を認める。血液所見:赤血球125万、Hb4.2g/dl、Ht14%、白血球3,500、血小板13万。
  • この患者に欠乏しているのはどれか。
  • (1) 鉄
  • (2) 銅
  • (3) 葉酸
  • (4) ビタミンB6
  • (5) ビタミンB12
  • a. (1)(2)
  • b. (1)(5)
  • c. (2)(3)
  • d. (3)(4)
  • e. (4)(5)

[正答]

B


※国試ナビ4※ [099F008]←[国試_099]→[099F010]

「100A028」

  [★]

  • 28歳の男性。1か月前から1日6、7行の粘血便が出現し来院した。4か月前から頻回の軟便がある。回盲部から右側腹部にかけて圧痛を認める。血液所見:赤血球389万、Hb11.5g/dl、白血球9,600、血小板39万。血清生化学所見:総蛋白7.0g/dl、アルブミン3.5g/dl、AST25単位、ALT22単位、LDH360単位(基準176~353)。CRP5.6mg/dl。注腸造影写真を以下に示す。
  • この患者で吸収障害が予想されるのはどれか。2つ選べ。
  • a. 鉄
  • b. 胆汁酸
  • c. アミノ酸
  • d. ブドウ糖
  • e. ビタミンB12


[正答]

BE


※国試ナビ4※ [100A027]←[国試_100]→[100A029]

「107G034」

  [★]

  • 体内の鉄動態について正しいのはどれか。2つ選べ。
  • a 鉄は2価イオンの形で吸収される。
  • b ヘプシジンは鉄の吸収を促進する。
  • c 腸管からの鉄吸収率は50%を超える。
  • d Hb15g/dlの血液10mlには10mgの鉄が含まれる。
  • e 血清鉄はトランスフェリンと結合して細胞に輸送される。


[正答]

AE


※国試ナビ4※ [107G033]←[国試_107]→[107G035]

「104G027」

  [★]

  • 消化吸収について正しいのはどれか。3つ選べ。
  • a 糖質は上部小腸から吸収される。
  • b トリグリセリドはリパーゼで消化される。
  • c 蛋白質はアミラーゼで消化される。
  • d ビタミンB12は内因子と結合して吸収される。
  • e 鉄は回腸末端から吸収される。

[正答]

ABD


※国試ナビ4※ [104G026]←[国試_104]→[104G028]

「105B034」

  [★]

  • 鉄代謝について正しいのはどれか。 2つ選べ。
  • a 回腸末端部で吸収される。
  • b 3価の鉄イオンとして吸収される。
  • c アスコルビン酸は鉄吸収を促進する。
  • d ヘモグロビン鉄は生体内の鉄全体の1/4である。
  • e 能動的排泄機構は存在しない。


[正答]

CE

  • 鉄


※国試ナビ4※ [105B033]←[国試_105]→[105B035]

「096G040」

  [★]

  • 鉄代謝について誤っているのはどれか。
  • a. 約70%はヘモグロビンに利用されている。
  • b. 大腸から吸収される。
  • c. 1日の吸収量は約1mgである。
  • d. 血清フェリチンは貯蔵鉄の指標となる。
  • e. 血清中ではトランスフェリンに結合している。

[正答]

B


※国試ナビ4※ [096G039]←[国試_096]→[096G041]

「098G101」

  [★]

  • 5年前にBillroth II法再建幽門側胃部分切除術を受けた患者に起こりやすい栄養代謝障害の対策として適切なのはどれか。
  • a. 鉄剤投与
  • b. 高繊維食摂取
  • c. 高糖質食摂取
  • d. 乳製品摂取制限
  • e. 水溶性ビタミン補充

[正答]

A

  • 鉄


※国試ナビ4※ [098G100]←[国試_098]→[098G102]

「102E001」

  [★]

  • 吸収障害の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
  • a. 空腸切除 - ビタミンB12
  • b. 回盲部切除 - 鉄
  • c. Crohn病 - 胆汁酸
  • d. 潰瘍性大腸炎 - アミノ酸
  • e. 慢性膵炎 - 脂肪

[正答]

CE


※国試ナビ4※ [102D060]←[国試_102]→[102E002]

「105E001」

  [★]

  • 生活活動強度IIIの30歳の男性の1日摂取目標量として適切なのはどれか。
  • a 鉄1mg
  • b 脂質150g
  • c 糖質100g
  • d 蛋白質70g
  • e カルシウム200mg


[正答]

D


※国試ナビ4※ [105D060]←[国試_105]→[105E002]

「107E036」

  [★]

  • 母乳より牛乳に多く含まれるのはどれか。3つ選べ。
  • a 鉄
  • b 乳糖
  • c カゼイン
  • d カルシウム
  • e ビタミンK


[正答]

CDE


※国試ナビ4※ [107E035]←[国試_107]→[107E037]

「105G010」

  [★]

  • 牛乳よりも母乳に多く含まれる成分はどれか。
  • a 鉄
  • b 糖質
  • c カゼイン
  • d ビタミンK
  • e 飽和脂肪酸


[正答]

B


※国試ナビ4※ [105G009]←[国試_105]→[105G011]

「104B036」

  [★]

  • 欠乏によって味覚障害をきたすのはどれか。2つ選べ。
  • a 鉄
  • b 銅
  • c 亜鉛
  • d ヨウ素
  • e セレン

[正答]

AC


※国試ナビ4※ [104B035]←[国試_104]→[104B037]

「110B002」

  [★]

  • 赤血球造血に関与しないのはどれか。
  • a 鉄
  • b 葉酸
  • c G-CSF
  • d ビタミンB12
  • e エリスロポエチン


[正答]

C


※国試ナビ4※ [110B001]←[国試_110]→[110B003]

「096E047」

  [★]

  • 正常妊娠の後半期に欠乏しやすいのはどれか。
  • a. 燐
  • b. 鉄
  • c. 亜鉛
  • d. ナトリウム
  • e. マグネシウム

[正答]

B


※国試ナビ4※ [096E046]←[国試_096]→[096E048]

「小腸」

  [★]

英
small intestine (Z)
ラ
intestinum tenue
関
管腔内消化
  • 小腸は3大栄養素の消化、吸収を行う重要な部位である
  • 腸液を分泌する

解剖学

定義

  • 胃の幽門より盲腸に至るまで。
  • 十二指腸+腸間膜小腸

組織学

→腸腺

生理学

運動の型

  • 1. 食後期
  • a.分節運動 segmentation
  • b.蠕動運動 peristalsis
蠕動ラッシュperistalic rush:急速移動。感染性下痢など腸粘膜の異常刺激による。
  • c. 振子運動
  • 2. 空腹期
消化間欠期伝播性収縮

運動の発生機構

  • 1. 筋原性
腸平滑筋固有リズムによる。ペースメーカーとなる細胞により発生する。
徐波 slow wave、基本的電気リズム basic electric thythm (BER)
  • 2. 神経性
外来神経系
副交感性:促進
交感性 :抑制
内在神経系
胃小腸反射により食後期運動誘発
なお、IMCの調節には外来、内在神経系のいずれも関係する
  • 3. 液性
ガストリン、コレシストキニン、インスリン
食後期運動増大
ガストリン
IMC抑制
モチリン
IMC誘発
セクレチン、グルカゴン
運動抑制

炭水化物の吸収

  • 食物中の3大炭水化物.
  • 1. 二糖類disaccharides
スクロース(グルコース+フルクトース)
マルトース(グルコース+グルコース)
ラクトース(グルコース+ガラクトース)
  • 2.ポリサッカライド
植物性でん粉
アミロース  :グルコースが直鎖状に重合
アミロペクチン:グルコースが樹枝状に重合
直鎖部はα1,4結合
分枝部はα1,6結合
動物性でん粉
グリコーーゲン
  • 3.セルロース
グルコースのβ1,4結合(消化不可)

炭水化物の消化

  • 1. 管内消化
管内消化は、主に口腔、十二指腸で起こる
唾液αアミラーゼと膵αアミラーゼにより、直鎖状に2~9分子重合したグルコースまで分解される
αアミラーゼは直鎖部分(α1,4結合)を加水分解する
唾液αアミラーゼは作用が弱く、また胃で失活する
マルトース(グルコース2分子)
マルトリオース(グルコース3分子)
α1,4結合マルトオリゴ糖(グルコース4-9分子)
α限界デキストリン(グルコース5-9分子、分岐したオリゴ糖)
  • 2. 膜消化 membrane digestion (終末消化terminal digestion)
膜消化は小腸の刷子縁で起こる。
刷子縁にはオリゴ糖消化酵素が存在する。
ラクターゼ:ラクトース→グルコース+ガラクトース
スクラーゼ:スクロース→グルコース+フルクトース
マルターゼ:マルトース→グルコース+グルコース
トレハラーゼ:トレハロース→グルコース+グルコース
αデキストリナーゼ:α1,4結合,α1,6結合の分解(=isomaltase)
グルコアミラーゼ:マルトオリゴ糖(α1,4結合)→グルコース
  • 3. 吸収(炭水化物の90-95%が小腸で吸収される。)
  • グルコース、ガラクトース~一能動輸送
刷子縁膜
Na依存性能動輸送を介して細胞内に取り込まれる。Na+とグルコース(ガラクトース)の共輸送体であるSGLT1が、Na+の濃度勾配を利用して細胞内に取り込む(2次的能動輸送)
外側基底膜
GLUT2による促進拡散により細胞外に拡散する
  • フルクトース
刷子縁膜
GLUT5によるNa非依存的促進拡散により細胞内に取り込まれる。
細胞内
フルクトース+Pi→グルコース+乳酸
外側基底膜
GLUT2による促進拡散により細胞外に拡散する

炭水化物の吸収傷害

腸内炭水化物濃度↑→腸内浸透圧↑     →下痢
         →腸内フローラ(細菌叢) →腸内ガス発生
乳糖不耐症
小腸上皮細胞刷子縁におけるラクターゼ産生不能

タンパク質の吸収

  • 1. 管内消化
胃や膵臓でタンパク質を分解してオリゴペプチド(アミノ酸4個以上)を生成
1-1. 消化酵素の活性化
ペプシン
胃液ペプシノーゲン → (H+が触媒:::) → ペプシン
胃液ペプシノーゲン → (ペプシンが触媒) → ペプシン
トリプシン
膵液トリプシノーゲン → (エンテロペプチダーゼ) → トリプシン
膵液トリプシノーゲン → (トリプシンが触媒::) → トリプシン
その他のタンパク質分解酵素(カルボキシペプチダーゼA,B)
トリプシンが活性化
  • 2. 終末消化 (膜消化+細胞内消化)
刷子縁でオリゴペプチドの分解がおき、そのための酵素ペプチド分解酵素が存在する。
アミノペプチダーゼ
N末から加水分解してアミノ酸を遊離
ジペプチダーゼ
ジペプチドを2個のアミノ酸に分解
ジペプチジルアミノペプチダーゼ
N末よりジペプチドを遊離する
  • 3. 吸収
  • アミノ酸輸送
刷子縁膜
Na+依存性能動的輸送
中性アミノ酸、イミノ酸(プロリン、水酸化プロリン)、酸性アミノ酸:::::::::::Na+非依存性促進拡散
塩基性アミノ酸、中性アミノ酸(疎水基を有するもの)
外側基底膜
Na+依存性能動的輸送、Na+非依存性促進拡散、単純拡散(外側基底膜はアミノ酸透過性高い)
  • ペプチド輸送
刷子縁膜
Na+/H+ antiporter
2H+/ペプチド synporter
細胞内
プロリダーゼ、ジペプチダーゼ、トリペプチダーゼによる分解
外側基底膜
Na+-K+-ATPase

脂質の吸収

  • 1. 食物中の脂質
トリグリセリド(中性脂肪):C14~C18
コレステロール
コレステロールエステル
リン脂質:::::::::主にレシチン
  • 2. 消化
  • 2-1. 乳化
乳化は脂肪水解を速める
胆汁酸、レシチンなどにより1μm以下の脂肪滴形成
  • 2-2. 脂肪水解
膵リパーゼ
トリグリセリド → 2分子の遊離脂肪酸(FFA) + 2-モノグリセリド
コレステロールエステラーゼ
コレステロールエステル → FFA + コレステロール
ホスホリパーゼA2
レシチン → FFA + リゾレシチン
  • 2-3. ミセル形成
脂肪分解産物(モノグリセリド,リゾレシチン,FFA,コレステロール,脂溶性ビタミン)
胆汁酸、レシチンとミセル形成
  • 3. 吸収
ミセルが微絨毛周囲の非撹拝層に侵入→単純拡散により吸収(脂肪の消化・吸収過程の律速過程)
  • 4. カイロミクロン形成
ミセルにより細胞内に脂肪分解産物が運ばれ、滑面小胞体内で脂肪分解産物から脂質が再合成される。その後、リポ蛋白にと結合してカイロミクロンとなり、ゴルジ装置に入りエキソサイトーシスにより絨毛リンパ管に入る。

栄養の吸収部位

  • 鉄:十二指腸
  • カルシウム:十二指腸 ← Billroth II法により骨萎縮
  • 葉酸:十二指腸、空腸
  • ビタミンD:十二指腸、空腸 ← Billroth II法により骨萎縮
  • ビタミンB12:回腸
  • 胆汁:回腸

「検査値」

  [★]

英
laboratory data
関
臨床検査

変動要因

食事

  • 影響ほとんどなし:総コレステロール( 肝臓で産生されるコレステロール >> 腸管から吸収されるコレステロール
  • 影響有り
  • 食後 > 空腹時 : 血糖、トリグリセリド
  • 食後 < 空腹時 : 遊離脂肪酸

運動

  • 運動後 > 運動前 : クレアチニンキナーゼ、遊離脂肪酸、血糖

体位

  • 立位 > 外   : 総蛋白、アルブミン

個体間の変動

LAB.464
性 男性>女性 尿酸、クレアチニン、ヘモグロビン、鉄
女性>男性 HDL-C、クレアチン、LH、FSH
個体差 コリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、コレステロール、γGTP、アミラーゼ
年齢 幼小児 アルカリホスファターゼ、リン
女性(閉経後) アルカリホスファターゼ、HDL-C

生活リズムによる変動

LAB.464
時間帯 日中 夜間
午前 午後
早朝   夕刻  
血清鉄 高値 低値    
カルシウム       低値
ACTH 高値   低値  
コルチゾール 高値   低値  
TSH 低値     高値
GH 低値     高値
プロラクチン 低値     高値
カテコラミン 高値     低値
レニン 高値   低値  
cAMP   高値    
尿アミラーゼ 低値   高値  

「プロトンポンプ阻害薬」

  [★]

英
proton pump inhibitor PPI
同
プロトン-カリウムATPアーゼ阻害薬 proton-potassium ATPase inhibitor、H+ポンプ阻害薬



  • 命名法:"-azole"
  • 特徴
胃潰瘍の治癒率を向上する (⇔H2受容体拮抗薬)

プロトンポンプ阻害薬

  • 消化性潰瘍治療薬
  • 攻撃因子抑制剤
  • プロトンポンプ阻害薬
  • オメプラゾール omeprazole
  • ランソプラゾール lansoprazole
  • ラベプラゾール rabeprazole

相互作用

 プロトンポンプ 
  H+/K+ ATPase ・・・これはNa+/K+ ATPaseと60%相同性を持つ
   2,4のαサブユニットと同数のβサブユニットを含む。
    αサブユニット10回膜貫通, 120-150kDa, glycoprotein
    αは管腔側、原形質膜まで。細胞内輸送に必要。
    βサブユニットは管腔側に突き出ており、反対側は膜内に埋もれている。

 休止期には小胞体内内腔へのH+,K+,Cl-の移動、分泌期には小胞は管腔の細胞膜と癒合してK+, Cl-を管腔側に排出する一方でH+を排出でしてK+を取り込む。

 PPIは弱塩基性

 PPIはH+と反応してPPIaとなりS-S-活性体となり、H+,K+-ATPaseのSH基と結合して不可逆的に阻害する。

 比較
  PPI:胃潰瘍の治癒率↑
  H2R阻害薬:十二指腸潰瘍の治癒率↑

 PPI問題
  胃潰瘍8
  十二指腸6
  逆流性食道炎8
 副作用
  血中ガストリン↑→ECL cell↑→リバウンドが激しい
  week end therapy: 週末3日だけ投与後休薬
  ピレンゼピン(Mi R blocker), PG(プロスタグランジン) → ガストリン↑を軽減
  ラベプラゾール:ガストリン濃度を上げず酸分泌↓
   →リバウンドが少ない。

 PPI抵抗性潰瘍:PPIによる酸分泌抑制不十分
 ①個人差によるPPIの用量不足
 ②胃内でのPPIの不活性化→
  胃内容の排泄遅延。PPIが不活化、アルカリに晒される。

副作用

http://www.uptodate.com/contents/overview-and-comparison-of-the-proton-pump-inhibitors-for-the-treatment-of-acid-related-disorders?source=search_result&search=%EF%BC%B0%EF%BC%B0%EF%BC%A9&selectedTitle=1~150#H59974871
  • 感染:
  • クロストリジウム・ディフィシル感染症
  • その他:リスクの大きさははっきりしていないが。カンピロバクター感染症、サルモネラ感染症
  • 肺炎:上部消化管に細菌がcolonizeしやすくなるからだそうですが。
  • 代謝
  • 低マグネシウム血症:PPI使用で腸管吸収が低下するらしい。
  • 骨粗鬆症:カルシウムの吸収障害。低Cl血症(hypochlorhydria)によりカルシウムの吸収が低下するらしい
  • ビタミンB12欠乏症
  • 鉄欠乏症
  • 高ガストリン血症
  • 無酸性胃炎
  • 急性間質性腎炎(AIN)

「ビタミンB12」

  [★]

英
vitamin B12
同
コバラミン cobalamin
商
アリチア配合
関
シアノコバラミン、悪性貧血、ビタミン、メチルコバラミン
  • 構造:FB.387

吸収

  • 食物(コバラミン+蛋白質)→胃(コバラミン)+壁細胞が分泌する糖タンパク;内因子→コバラミン-内因子複合体→回腸 (SP.742)
回腸上皮細胞の刷子縁膜にコバラミン-内因子複合体に特異的なレセプターが存在 (SP.742)
細胞内ではβグロブリン(トランスコバラミン II)と結合して血中に入り組織に運ばれる (SPC.280, SPC.742)
部位: ビタミンB12は回腸。 葉酸は空腸。 鉄も空腸、ついでに十二指腸でも。

機能

  • コバラミン依存の酵素は全部で十数種ある。コバラミン依存の酵素は分子内転移、メチル転移を触媒 (FB.387)
  • 正常ミエリンの維持 (SPC.280)
  • 葉酸の代謝(葉酸は核酸代謝に関わっている) (SPC.280)
  • 奇数脂肪酸の酸化 (FB.386)
メチルマロニルCoAムターゼの補酵素(奇数脂肪酸の酸化)

補酵素

  • methylmalonyl-CoA mutase:
  • methionine synthase:homocysteine + methyl THF-→methionine + THF

必要量

  • 一日の消費量(排泄):1-3ug (体の貯蔵量の-0.1%) (HIM.643)
  • 体に貯蔵されてる量:2-3mg → 摂取しなくとも3-4年は欠乏しない

基準値

  • 260-1,050pg/ml(192-775pmol/ml)

判定

低値

  • 巨赤芽球貧血
  • 悪性貧血(内因子抗体、壁細胞抗体?)
  • 胃切除後
  • 萎縮性胃炎
  • 吸収不良をきたす病態:クローン病、セリアック病、吸収不良症候群

高値

  • 血液疾患:顆粒球増加を示す疾患   ←  顆粒球由来のビタミンB12輸送蛋白(トランスコバラミン?)が増加するため(QB.G-257)、崩壊した白血球から放出するため(YN.G-53)
  • 慢性骨髄性白血病、真性多血症

臨床関連

  • ビタミンB12欠乏症
  • 悪性貧血
  • 慢性骨髄性白血病
  • 白血球の破壊により末梢へのビタミンB12の漏出
  • 亜急性連合性脊髄変性症 SCDC
  • http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/5-16-4.pdf

「血清鉄」

  [★]

英
serum iron, SI
関
総鉄結合能 TIBC、鉄

概念

  • 血清Feはすべてトランスフェリンに結合して存在。(LAB.580) → ということは、トランスフェリンに結合した血清中の鉄を定量していることになる。
  • 健常人ではトランスフェリンの1/3がFeと結合し、残りは未結合の形で存在。(LAB.580)
  • 総鉄結合能(TIBC)と血清鉄を測定し、UIBCが求めるられる。従って、検査ではTIBCとFeをオーダーすればよい。UIBCはオーダーする必要なし。

血清鉄が変動させる要因

血清鉄が変動するメカニズムで分類

  • 造血系での赤血球生成の速度を反映
  • Fe濃度が高い:造血系の減退
  • Fe濃度が低い:造血系の亢進
  • 貯蔵組織からの鉄動員の程度を反映
  • Fe濃度が高い:肝炎などでは肝臓から貯蔵鉄が要因されて他の組織に移動する(LAB.580)。肝炎では肝細胞の破壊により鉄が放出される(←鉄は網内系に貯蔵されている)。
  • 赤血球系の細胞内で保持される程度を反映?
  • Fe濃度が高い:無効造血、溶血性貧血により赤血球系細胞内に鉄が保持されず、血液中にleakする?

血清鉄の増減で分類

  • 低下:鉄の喪失、需要の増大、貯蔵鉄利用不可(慢性炎症)
  • 増加:鉄が過剰摂取(輸血)、需要の低下、貯蔵鉄の放出

基準値

  • ♂:44-192 ug/dL (LAB)
  • ♀:29-164 ug/dL (LAB)
  • 41-141 ug/dL (HIM.A-6)
  • 70-160 ug/dL (QB)

判定

  • 高値:ヘモクロマトーシス、急性肝炎、再生不良性貧血、鉄芽球性貧血、溶血性貧血
  • 低値:鉄欠乏性貧血、悪性腫瘍、膠原病などの慢性炎症、妊娠後期、子宮筋腫

その他

  • 日内変動あり:朝高値、夕方低値。

「鉄錆症」

  [★]

英
siderosis
関
鉄沈着症、眼球鉄錆症、眼球鉄症

「肺血鉄症」

  [★] 肺ヘモジデリン沈着症

「鉄カルボニル化合物」

  [★]

英
iron carbonyl compound
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