- 英
- Staphylococcus
- 同
- スタフィロコッカス属、ブドウ球菌属
- 属名なので、ブドウ球菌属(Staphylococcus属)
- グラム陽性球菌
- 通性嫌気性
- カタラーゼ産生 ← 連鎖球菌との判別に利用
- 耐塩性が高い → マンニット食塩培地でコロニーを形成しうる
- 常在細菌
- 皮膚、鼻腔粘膜 (内科診療学)
Staphylococcus属
毒性 (SMB.236)
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/07 10:01:51」(JST)
[Wiki ja表示]
|
ウィキペディアは医学的助言を提供しません。免責事項もお読みください。 |
ブドウ球菌属 |
写真は黄色ブドウ球菌
|
分類 |
ドメ
イン |
: |
真正細菌 Bacteria |
門 |
: |
フィルミクテス門
Firmicutes |
綱 |
: |
バシラス綱
Bacilli |
目 |
: |
バシラス目
Bacillales |
科 |
: |
ブドウ球菌科
Staphylococcaceae |
属 |
: |
ブドウ球菌属
Staphylococcus |
|
学名 |
Staphylococcus
Rosenbach 1884 |
種 |
#種類参照
|
ブドウ球菌(ブドウきゅうきん)とは、ブドウ球菌属(Staphylococcus属)に属するグラム陽性球菌である真正細菌の総称。
一つ一つの球菌が不規則に配列した集合体(クラスター)を作りながら増殖し、光学顕微鏡下で観察すると「ブドウの房」のように見えるため、もう一つのグラム陽性球菌のグループである連鎖球菌(直鎖状に配列する)との対比から「ブドウ球菌」と名付けられた。属名のStaphyloccocusも、ラテン語で「ブドウの房」を意味するstaphylo-と、球菌を意味するcoccus(元は「(穀物の)粒」や「木の実」の意)に由来する。
元来「ブドウ球菌」とは、細菌が発見されて間もない、分類法が整理されていない頃に細菌の形態および配列から名付けられた名称である。このためStaphylococcus属以外でも、クラスターを形成することがあるMicrococcus属などを含めて広義に「ブドウ球菌」(staphylococcus)と呼ばれていた。本項目では、ブドウ球菌属に属する細菌全般(Staphylococcus sp.)を解説する。広義のブドウ球菌については球菌の項を参照のこと。
目次
- 1 特徴
- 2 分類
- 3 種類
- 4 関連項目
- 5 外部リンク
|
特徴
ブドウ球菌は、直径 1µm程度のグラム陽性球菌で、ブドウの房状の不規則な配列をする、通性嫌気性の有機栄養菌である。生化学的には、カタラーゼ陽性(カタラーゼ酵素を有すること)と、ブドウ糖を嫌気的に発酵する性質から、他の代表的なグラム陽性球菌と鑑別される。多くの菌種は耐塩性であり10%食塩濃度下でも増殖可能である。35〜40℃でよく生育し、寒天培地で培養すると、菌種によっては黄色〜ピンクのさまざまな色調の不溶性の色素を産生するものがあり、コロニーは白色、レモン色、橙色、ピンクなどさまざまな色を示す。
分類
2005年現在、ブドウ球菌属の細菌は35菌種に分類されている。これ以前の最も初期の分類では、コロニーの色調によって「白色ブドウ球菌」「黄色ブドウ球菌」「橙色ブドウ球菌」に分けられていたが、その後「表皮ブドウ球菌」「黄色ブドウ球菌」「腐性ブドウ球菌」の3菌種に改名された。また、血漿を凝固させる働きを持つタンパク質であるコアグラーゼを産生するかどうかが、ヒトに対する病原性と密接に関連しているため、コアグラーゼ陽性(コアグラーゼを産生する)、コアグラーゼ陰性(産生しない)の二群に大別することも医学分野では慣用的に行われてきた。しかし、これらの初期の分類はいずれも大まかなものであり、遺伝学的分類法の導入によって生物学的には35菌種に分類されていて、約15種がヒトから分離されることがある。
コアグラーゼ産生
ブドウ球菌の分類において、その菌種がコアグラーゼを産生するかどうかという性状は大きい意味を持つものとしてとらえられてきた。これは医学上の立場から重要視されたものである。ヒトから分離される15種のブドウ球菌のうちでは、最も病原性が高い黄色ブドウ球菌だけがコアグラーゼ陽性であるため、この菌であるかどうかの判定に利用可能だからである。この他、ヒトを宿主としない、動物由来のブドウ球菌のうち、S. intermediusがコアグラーゼ陽性、S. delphiniとS. hyicusには菌株によってコアグラーゼ陽性または陰性のものがある。これらを除いた31種はすべてコアグラーゼ陰性で、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Coagulase -negative staphylococci, CNS)と総称される。ただし臨床の現場ではCNSはヒトから分離されることのある、黄色ブドウ球菌以外の種(約14種)を指し、なかでも検出される頻度が高い表皮ブドウ球菌を意味するものとして使われることがある。
種類
ブドウ球菌はヒトから分離されることが多い常在細菌であり、特に健常人の鼻腔内には100%存在する。大部分は非病原性で、体表面(皮膚)、鼻咽腔、消化管(腸)、膣などの常在細菌として、常在細菌叢(あるいは正常フローラ)(腸内細菌)を形成し、むしろ外部からの病原体の侵入を防ぐバリヤーの役割の一端を担っている。ただし、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌の3種は、ヒトに対する病原性を持つ。
- 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)
- 主として鼻腔や表皮に常在する。ブドウ球菌の中では最も病原性が高く、健常者に対しても化膿性疾患を中心とする各種疾患を引き起こすことがある。また足の裏の悪臭の原因物質を作る菌のひとつであることでも知られている。詳細は黄色ブドウ球菌の項で説明する。
- 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
- 主として鼻腔や表皮に常在する。通常は非病原性であり、他の病原菌から表皮を守るバリアーや、表皮を健康に保つ役目を果たしている菌であるが、体内に侵入すると病原性を発することがある。プラスチック表面などに対する付着性が強くまた表皮の常在菌であるため、手術の際にカテーテルや心臓弁などの医療用器具に付着して体内に侵入することがある。特に体内に留置するタイプの医療器具に付着して、そこで増殖することによって深在性の化膿症の原因になることがある。
- 腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus)
- 主として泌尿器周辺の皮膚に常在している。そこから尿路に侵入すると尿路感染症の原因になる場合がある。
一般に、ヒトはブドウ球菌による病気の発症に対しては抵抗性が強く、ある種の自然免疫が備わっていると考えられている。またブドウ球菌によって感染巣が化膿しても、白血球の働きによって病巣部は限局的になり容易に蔓延することはない。しかし他の原因によって白血球の機能が低下した患者などでは、この機構が働かずに重症化することもある。
関連項目
外部リンク
- 表皮ブドウ球菌 病原細菌データベース 京都大学
- 黄色ブドウ球菌
- 医学的に重要な細菌についての分類学1 ブドウ球菌とレンサ球菌の分類・この10年の変遷 モダンメディア 2005年12月号(第51巻12号)
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 症例 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌人工血管感染に対するホモグラフトを用いた再上行大動脈置換術の1例 : 東日本大震災における隣県支援
- 黄色ブドウ球菌の細胞壁成分による自然免疫の誘導と制御
- Structure-Based Drug Screening手法を用いた<i>Staphylococcus</i>属細菌に対する新規抗菌薬同定の試み
- 小林 舞子,金城 知広,小関 祐司,山田 淳美,アリィヴァロ 志穂,青木 俊介
- 情報処理学会研究報告. BIO, バイオ情報学 2012-BIO-30(11), 1-2, 2012-08-02
- … 薬剤耐性黄色ブドウ球菌に対する有効な抗菌薬の枯渇により多くの患者が世界中で亡くなっている。 … その結果、黄色ブドウ球菌のモデル細菌に対して抗菌効果を有する4種類の新規化合物を同定した。 …
- NAID 110009432499
Related Links
- ブドウ球菌(ブドウきゅうきん)とは、ブドウ球菌属(Staphylococcus属)に属するグラム 陽性球菌である真正細菌の総称。 一つ一つの球菌が不規則に配列した集合体( クラスター)を作りながら増殖し、光学顕微鏡下で観察すると「ブドウの房」のように 見えるため、 ...
- ブドウ球菌は、通性嫌気性のグラム陽性球菌である。顕微鏡で観察すると、ブドウの房 のように複数の細菌が集団を形成している。他の細菌と比較して高濃度 (10%) の食塩 存在下でも増殖が可能であり、またカタラーゼ活性、ブドウ糖発酵性を持つなどの生 ...
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
エキザルベ
組成
成分・含量(1g中)
- 混合死菌浮遊液:0.166mL
大腸菌死菌:約1.5億個
ブドウ球菌死菌:約1.5億個
レンサ球菌死菌:約0.15億個
緑膿菌死菌:約0.15億個を含有
ヒドロコルチゾン:2.5mg
添加物
禁忌
(次の場合には使用しないこと)
- 皮膚結核、単純疱疹、水痘、帯状疱疹、種痘疹〔本剤に含まれるヒドロコルチゾンはこれらの疾患を悪化させるおそれがある〕
- 真菌症(カンジダ症、白癬等)〔本剤に含まれるヒドロコルチゾンは真菌症(カンジダ症、白癬等)を悪化させるおそれがある〕
- 本剤に対し、過敏症の既往歴のある患者
- 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷〔本剤に含まれるヒドロコルチゾンはこれらの疾患、症状の治癒を遅延させるおそれがある〕
効能または効果
湿潤、びらん、結痂を伴うか、又は二次感染を併発している下記疾患
- 湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎、日光皮膚炎を含む)、熱傷、術創
湿疹様変化を伴う膿皮症(感染性湿疹様皮膚炎、湿疹様膿痂疹)
- 通常、1日1〜数回直接患部に塗布又は塗擦するか、あるいは無菌ガーゼ等にのばして貼付する。
なお、症状により適宜増減する。
薬効薬理
- 本剤の局所感染防御作用、肉芽形成促進作用及び抗炎症作用は、混合死菌浮遊液及びヒドロコルチゾンの協力作用に基づく2)。(ラット、マウス)
- 混合死菌浮遊液は白血球遊走能を高め3)、局所感染防御作用を示す2)。(in vitro、マウス)
- 混合死菌浮遊液は、肉芽形成促進作用により創傷治癒を促進する2)。(ラット)
- ヒドロコルチゾンは血管透過性亢進抑制、浮腫抑制等の抗炎症作用を有する2)。(ラット)
★リンクテーブル★
[★]
- 64歳の男性。労作時の息切れと左胸痛とを主訴に来院した。20歳からビルなどの解体業に約30年間従事した。3か月前から咳が出現し、次第に労作時の息切れと左胸痛とを自覚するようになったため受診した。身長168cm、体重62kg。体温36.9℃。脈拍92/分、整。血圧152/88mmHg。呼吸数26/分。SpO2 96%(room air)。心音に異常を認めないが、左呼吸音が減弱している。血液所見:赤血球350万、Hb 11.2g/dl、Ht 34%、白血球8,800、血小板29万。血液生化学所見:総ビリルビン0.3mg/dl、AST 30IU/l、ALT 24IU/l、LD 460IU/l(基準176~353)。CRP 3.2mg/dl。胸部CT(別冊No.14A)とFDG-PET(別冊No.14B)とを別に示す。
- この疾患でみられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107I052]←[国試_107]→[107I054]
[★]
- 27歳の女性。発熱と左腰部痛とを主訴に来院した。2日前から排尿時痛があり、昨晩から悪寒戦慄を伴う39℃台の発熱と左腰部痛とが出現した。既往歴と家族歴とに特記すべきことはない。体温39.4℃。左肋骨脊柱角部に叩打痛を認める。尿所見:蛋白2+、糖(-)、潜血1+、沈渣に赤血球10-20/1視野 白血球100以上/ 1視野。腹部超音波検査に異常を認めない。
- 起炎菌として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [104D038]←[国試_104]→[104D040]
[★]
- 25歳の男性。排尿時の違和感と尿道分泌物とを主訴に来院した。2週前に性行為感染の機会があった。1週前に前医を受診し、尿道炎と診断されペニシリンの投与を受けたが、症状が改善しなかった。外陰部と前立腺とに異常を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(±)、沈渣に赤血球2~3/1視野、白血球10~20/1視野。尿沈渣のグラム染色で細菌を認めない。
- 尿道炎の原因で最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101A037]←[国試_101]→[101A039]
[★]
- 54歳の女性。早朝から腹痛、嘔吐および頻回の下痢が出現し来院した。一昨日夕食にすき焼きと生卵とを食べた。夫にも同様の症状がある。体温37.6℃。脈拍88/分、整。腹部全体に腸雑音の亢進がある。血液所見:赤血球395万、Hb 12. 9g/dl、Ht39%、白血球9,900、血小板26万。CRP5.2mg/dl(基準0.3以下)。最も考えられる起因菌はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096D057]←[国試_096]→[096D059]
[★]
- 68歳の男性。脳梗塞で入院中に発熱と咳嗽とが出現した。膿性痰を認め、右上肺野にcoarse crackles(水泡音)を聴取する。体温38.9℃。呼吸数20/分。脈拍96/分、整。血液所見:白血球13,600(好中球86%、単球2%、リンパ球12%)。喀痰のGram染色像を以下に示す。
- 起因菌と推定されるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097A056]←[国試_097]→[097A058]
[★]
- 市中肺炎の病原微生物でセフェム抗菌薬が有効でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [095A057]←[国試_095]→[095A059]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [098G089]←[国試_098]→[098G091]
[★]
- 新生児髄膜炎の起因菌で頻度が高いのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103E015]←[国試_103]→[103E017]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [096G077]←[国試_096]→[096G079]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[★]
- 学童の肺炎の病原体として最も頻度が高いものはどれか
[★]
- 英
- infective endocarditis, IE
- 関
- 心内膜炎、細菌性心内膜炎
概念
- 感染性心内膜炎は弁膜や心内膜、大血管内膜に細菌集蔟を含む疣腫(vegetation)(注1)を形成し、菌血症、血管塞栓、心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である。感染性心内膜炎はそれほど頻度の多い疾患ではないがいったん発症すれば、的確な診断の下、適切な治療が奏功しないと多くの合併症を引き起こし、ついには死に至る。(ガイドライン.1)
疫学
- 緑色連鎖球菌が感染性心内膜炎の原因として最多である。(YN.C-129)
- 院内発症:Streptococcus viridans > ブドウ球菌 > 腸球菌
- 院外発症:ブドウ球菌(Staphylococcus aureus > CNS ) > Streptococcus viridans
発症のメカニズム
- 非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombogenic endocarditis, NBTE)は次の2つの影響で生じるとされる;(1)弁膜疾患や先天性心疾患に伴う異常血流、(2)人工弁置換術語例など異物の影響。非細菌性血栓性心内膜炎の存在下で一過性の菌血症(医原性など)すると、NBTEに病原体が付着・増殖し疣腫が形成される。疣腫は僧帽弁の心房側、半月弁の心室など逆流血流がアル部位や、シャント血流や狭窄血流の異常ジェット血流が心内膜面にある所に認められる。(ガイドライン.1改変)
- ジェット血流の存在が発症に関わっているので、軽症の弁膜症の方がジェット血流を来しやすい。従って、心内膜炎も来しやすい。(QB.C-454)
リスクファクター
資料(1)より
- 人工弁置換患者:(感染性心内膜炎による?)手術例の3分の2を占める!
- 心内膜炎の既往を有する患者:再発しやすい
- 先天性心疾患:心房中隔欠損症(ASD)(二次口型)を除いてほとんどの先天性心疾患がハイリスク群となる。
- 大動脈二尖弁:0.5-1.0%に存在するとされ、また感染性心内膜炎患者の約20%程度が大動脈二尖弁
- 大動脈弁閉鎖不全症(AR)、僧帽弁閉鎖不全症(MR)、僧帽弁逸脱症(MVP)はリスクとなる
- ASはARよりリスクは小さいとされ、MSについてはハイリスクかは議論が分かれている。
- 閉塞型肥大型心筋症:ハイリスク群とのコンセンサスがある
- 中心静脈カテーテル留置患者
分類
経過
- 急性感染性心内膜炎:ブドウ球菌
- 亜急性感染性心内膜炎:緑色連鎖球菌、腸球菌、心筋
病原体を細菌に限定
宿主の要因
- native valve endocarditis:心内膜炎患者の60-80%を占める
- prosthetic valve endocarditis:Staphylococcus epidermidisが病原体であることが普通
- endocarditis in the setting of intravenous drug abuse:右心系の弁に起こりやすい
検査
臨床経過
- 菌血症が起こってから,症状の発現までの期間は短く、80%以上の例では2週間以内(ガイドライン.1)。
身体所見
- 感染性心内膜炎の身体所見JaRO → ジェーンウェー病変(Janeway斑)、ロス斑(Roth斑)、オスラー結節(Osler結節)
症状
亜急性感染性心内膜炎
- 非特異的な症状(発熱・全身倦怠感、食欲不振、体重減少、関節痛)が徐々に進展。
急性感染性心内膜炎
心臓外の合併症
- ガイドライン.1
- 頻度:27-45%
- 好発時期:発症後2週間
- 検査:CTなど
- 好発部位:中枢神経系(60-70%)、脾臓、腎臓、肺、末梢動脈、冠動脈、肝臓、腸間膜動脈
- 脾臓:脾梗塞、脾膿瘍、脾破裂
- 肺梗塞:IE全体の9-11%の頻度で見られる。右心系の疣腫(三尖弁、肺動脈弁、右室流出路)
- 腎障害
- 原因:疣贅による脳動脈の塞栓
- 頻度20-40%
- 感染性心内膜炎初発症状としての脳合併症:47%
- 種類:脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、脳動脈流、髄膜炎、脳膿瘍、てんかん発作
- 頻度:1.2-5.6%
- 症状:頭痛、知覚障害、脳神経症状
- 好発部位:中大脳動脈領域(二次分岐部)
診断
- 病歴:先天性心疾患、弁膜症の既往、抜歯・手術後の発熱の遷延
- 血液培養:起炎菌の検出
- 心エコー:疣贅
- 2. Duke criteria(HIM.792)
- ガイドライン.1より抜粋
IE 確診例
Ⅰ.臨床的基準
- 大基準2 つ,または大基準1 つと小基準3 つ,または小基準5 つ
(大基準)
-
- A.2回の血液培養で以下のいずれかが認められた場合
- B.つぎのように定義される持続性のIE に合致する血液培養陽性
- (i) 12 時間以上間隔をあけて採取した血液検体の培養が2 回以上陽性
- (ii)3 回の血液培養すべてあるいは4 回以上の血液培養の大半が陽性(最初と最後の採血間隔が1 時間以上)
- 2.心内膜が侵されている所見でAまたはB の場合(注4)
-
- (i) 弁あるいはその支持組織の上,または逆流ジェット通路,または人工物の上にみられる解剖学的に説明のできない振動性の心臓内腫瘤
- (ii)膿瘍
- (iII) 人工弁の新たな部分的裂開
- B.新規の弁閉鎖不全(既存の雑音の悪化または変化のみでは十分でない)
(小基準)(注5)
- 1.素因:素因となる心疾患または静注薬物常用
- 2.発熱:38.0℃以上
- 3.血管現象:主要血管塞栓,敗血症性梗塞,感染性動脈瘤,頭蓋内出血,眼球結膜出血,Janeway病変
- 4.免疫学的現象:糸球体腎炎,Osler結節,Roth斑,リウマチ因子
- 5.微生物学的所見: 血液培養陽性であるが上記の大基準を満たさない場合,またはIE として矛盾のない活動性炎症の血清学的証拠
Ⅱ.病理学的基準
- 菌: 培養または組織検査により疣腫,塞栓化した疣腫,心内膿瘍において証明,あるいは病変部位における検索:組織
学的に活動性を呈する疣贅や心筋膿瘍を認める
IE 可能性
- 大基準1 つと小基準1 つ,または小基準3 つ(注6)
否定的
- 心内膜炎症状に対する別の確実な診断,または
- 心内膜炎症状が4 日以内の抗菌薬により消退,または
- 4 日以内の抗菌薬投与後の手術時または剖検時にIE の病理学所見なし
- 注1) 本ガイドラインでは菌種の名称についてはすべて英語表記とし通例に従って Streptococcus viridans 以外はイタリック体で表示した.
- 注2) Staphylococcus aureus は,改訂版では,i)に含まれるようになった.
- 注3) 本項は改訂版で追加された.
- 注4) 改訂版では,人工弁置換例,臨床的基準でIE可能性となる場合,弁輪部膿瘍などの合併症を伴うIE,については,経食道心エコー図の施行が推奨されている.
- 注5) 改訂版では,“心エコー図所見:IEに一致するが,上記の大基準を満たさない場合”,は小基準から削除されている
- 注6) 改訂版では,“IE可能性”は,このように変更されている
治療
QB.C-454
- 緑色連鎖球菌:ペニシリンG(大量投与)
- 腸球菌:ペニシリン+アミノグリコシド系抗菌薬
- 黄色ブドウ球菌:第1-2世代セフェム系抗菌薬+アミノグリコシド系抗菌薬
外科的治療
- ガイドライン.1
- 以下の病態が観察されるか予想されるときに手術適応を考慮。
- 1. うっ血性心不全
- 2. 抵抗性感染
- 3. 感染性塞栓症
うっ血性心不全
抵抗性感染
感染性塞栓症
感染性心内膜炎の手術適応
- ガイドライン.1
自己弁および人工弁心内膜炎に共通する病態
- 1. 弁機能障害による心不全の発現
- 2. 肺高血圧(左室拡張末期圧や左房圧の上昇)を伴う急性弁逆流
- 3. 真菌や高度耐性菌による感染
- 4. 弁輪膿瘍や仮性大動脈瘤形成および房室伝導障害の出現
- 5. 適切かつ十分な抗生剤投与後も7 ~ 10 日以上持続ないし再発する感染症状
- 1. 可動性のある10 ㎜以上の疣腫の増大傾向
- 2. 塞栓症発症後も可動性のある10 ㎜以上の疣腫が観察される場合
人工弁心内膜炎における病態
- 1. 弁置換後2 ヶ月以内の早期人工弁感染抗菌薬抵抗性のブドウ球菌,グラム陰性菌による感染
- 2.適切かつ充分な抗菌薬投与後も持続する菌血症で他に感染源がない場合
予防
成人における感染性心内膜炎の基礎疾患別リスク
- 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)
- 生体弁、機械弁による人工弁置換術患者、弁輪リング装着例
- 感染性心内膜炎の既往を有する患者
- 複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室、完全大血管転位、ファロー四徴症)
- 体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者
- 中等度リスク群(必ずしも重篤とならないが、心内膜炎発症の可能性が高い患者)
- ほとんどの先天性心疾患:単独の心房中隔欠損症(二次孔型)を除く
- 後天性弁膜症:逆流を伴わない僧帽弁狭窄症ではリスクは低い
- 閉塞性肥大型心筋症
- 弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
- 人工ペースメーカ、植込み型除細動器などのデバイス植込み患者
- 長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者
ガイドライン
- 1. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2003_miyatake_h.pdf
- 2. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)
- https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_nakatani_h.pdf
[★]
- 関
- 食中毒
細菌性食中毒
|
|
科
|
属
|
種
|
法律
|
特徴
|
季節性
|
感染
|
毒素
|
症状
|
原因食品
|
潜伏期間
|
経過
|
治療
|
予防
|
感染型
|
グラム陰性桿菌
|
腸内細菌科
|
サルモネラ属
|
|
再興感染症
|
|
|
新生児・乳児での接触感染
|
菌体内毒素
|
下痢(粘液、水様で緑色)、嘔吐、腹痛、急激な発熱(38-40℃)
|
レバー刺身、生肉、焼き鳥、生卵、ハム、ソーセージ、魚肉練り製品、乳製品、あん
|
6-48時間(平均12時間)
|
1-3日
|
対症療法
|
加熱、二次感染の予防(ネズミ、ゴキブリの駆除)
|
グラム陰性らせん菌
|
|
カンピロバクター属
|
Campylobacter jejuni
|
|
|
初夏(5-6月)
|
まな板、包丁などによる2次感染
|
菌体内毒素
|
下痢(水樣、腐敗臭)、腹痛、嘔吐、発熱、まれに敗血症
|
肉類、生乳、水(家畜の屎尿による汚染)
|
2-5日(まれに10日)
|
1-2週間
|
対症療法、エリスロマイシン
|
加熱、ペットからの感染予防
|
|
Campylobacter coli
|
|
|
グラム陰性桿菌
|
腸内細菌科
|
サルモネラ属
|
チフス菌
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
グラム陰性桿菌
|
腸内細菌科
|
サルモネラ属
|
パラチフス菌
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
グラム陰性桿菌
|
腸内細菌科
|
シゲラ属
|
赤痢菌
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
生体内毒素型
|
グラム陰性桿菌
|
ビブリオ科
|
ビブリオ属
|
コレラ菌
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
グラム陰性桿菌
|
腸内細菌科
|
エシェリキア属
|
腸管出血性大腸菌
|
3種感染症
|
|
|
経口感染
|
ベロ毒素
|
激しい腹痛を伴う頻回の水樣便、溶血性尿毒症候群や脳症の合併により重症化
|
加熱不足の牛肉の摂食(牛乳、フルーツ、汚染野菜)
|
3-4日
|
|
|
75℃1分の加熱で菌は死滅する
|
グラム陰性桿菌
|
ビブリオ科
|
ビブリオ属
|
腸炎ビブリオ
|
|
耐熱性毒素、好塩菌、真水、酸に弱い
|
夏季
|
生板・包丁などによる二次感染。成年男子に多い
|
|
激しい下痢(水様、粘血便)、上腹部激痛、発熱(-38℃)
|
刺身、漬け物
|
10-20時間(平均13時間)
|
2-3日
|
対症療法
|
加熱(60℃, 10分)、冷蔵(10℃以下)、水洗い。まな板、包丁の洗浄
|
グラム陽性桿菌
|
|
クロストリジウム属
|
ウェルシュ菌
|
|
土壌、水、ヒトおよび動物の腸管に常在、嫌気性菌、芽胞形成
|
|
|
エンテロトキシン
|
下痢、腹痛、吐き気
|
畜肉および魚肉とその加工品、動物性蛋白質を用いて調理後、長期保存されていた食品(カレー、シチューなど)
|
8-22時間
|
|
|
肉類、魚介類の脹内容物からの汚染防止。長時間保存する場合、加熱調理後冷蔵庫内にて保存。再加熱を十分に行う。
|
毒素型
|
グラム陽性桿菌
|
|
バシラス属
|
セレウス菌
|
|
芽胞形成、芽胞形態で自然に広く存在。食品腐敗変敗細菌
|
|
|
エンテロトキシン
|
嘔吐型: 吐き気、嘔吐
|
米飯、チャーハン、スパゲティ
|
1-5時間
|
|
|
低温保存、長期保存を避ける
|
|
|
|
|
下痢型: 下痢
|
食肉製品、スープ、プリン、野菜
|
8-12時間
|
|
|
グラム陽性桿菌
|
|
クロストリジウム属
|
ボツリヌス菌
|
|
嫌気性細菌、致命率が高い。芽胞形成。
|
|
|
ボツリヌス毒素(80℃, 数分で無毒化)
|
悪心、吐き気、めまい、頭痛、腹痛、下痢。眼症状(眼瞼下垂、複視、視力低下、瞳孔散大)、神経・筋症状(言語障害、嚥下障害、呼吸困難)
|
缶詰、瓶詰(魚、獣肉、野菜、果実)、いずし、ハム、ソーセージ、からしレンコン)
|
12-36時間
|
|
抗毒素血清治療
|
野菜などの水洗い、魚の内臓による汚染を防ぐ
|
グラム陽性球菌
|
|
スタフィロコッカス属
|
黄色ブドウ球菌
|
|
ヒト常在菌(皮膚、口腔、粘膜、鼻咽頭粘膜)。化膿傷、咽頭炎、ニキビ、風邪の症状時には病巣となる
|
|
|
耐熱性エンテロトキシン
|
激しい吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
|
おにぎり、柏餅、シュークリーム、生クリーム
|
0.5-6時間
|
1-3日
|
|
化膿巣のある人を調理に従事させない。低温保持(5℃以下)
|
食中毒菌
|
起炎菌
|
潜伏期間
|
原因食
|
発熱
|
腹痛
|
嘔気・嘔吐
|
下痢
|
その他
|
感染性食中毒
|
腸炎ビブリオ
|
5-24hr 平均10hr
|
魚介類(加工品) 6-9月に多い
|
++
|
+++
|
++
|
+++
|
ショック 心筋障害
|
サルモネラ
|
7-72hr 平均12-24hr
|
肉、卵、サラダ
|
+++
|
++
|
+
|
++
|
ショック 敗血症
|
カンピロバクター
|
2-5日
|
鶏肉、牛肉、牛乳 5-7月に多い
|
++
|
+
|
++
|
++
|
|
病原性大腸菌
|
1-3日 平均24hr
|
牛肉が多い
|
++
|
+
|
++
|
+
|
|
毒素性食中毒
|
ブドウ球菌
|
0.5-6hr 平均3hr
|
乳製品、かまぼこ、氷小豆、 夏季に多い
|
±
|
+
|
+++
|
+
|
エンテロトキシンによるショック
|
ボツリヌス菌
|
2hr-8日
|
いずし、キャビア
|
-
|
+
|
+
|
±
|
神経症状 眼症状
|
[★]
- 英
- immune response
- 同
- 免疫反応
- 関
免疫応答とリンパ球
免疫応答と病原体
[★]
- 英
- macrolide antibiotic macrolide antibiotics, macrolides, MLs
- 同
- マクロライド系抗生物質 ←厳密には違うが、多くの人が間違って使っている
- 関
- 抗菌薬
特徴
- 抗菌スペクトルが広い
- 静菌的に作用
- 大きな環状構造を有する。14員環-16員環
- タンパク質合成阻害薬
- 抗生物質としての作用の他に、抗炎症作用を有するらしい
- 炎症の抑制 ex.びまん性汎細気管支炎
構造
- http://www.sigmaaldrich.com/life-science/life-science-catalog/product-catalog.html?TablePage=14572877
- Macrolide antibiotics contain a many-membered lactone ring (14-membered rings for erythromycin and clarithromycin and a 15-membered ring for azithromycin) to which are attached one or more deoxy sugars. Clarithromycin differs from erythromycin only by methylation of the hydroxyl group at the 6 position, and azithromycin differs by the addition of a methyl-substituted nitrogen atom into the lactone ring. These structural modifications improve acid stability and tissue penetration and broaden the spectrum of activity.(GOO. chapter 46)
作用機序
- inhibit bacterial protein synthesis by reacting with the 50s ribosomal subunit and preventing the release of the uncharged tRNA.
薬理作用
動態
抗菌スペクトル
- ペニシリンより広い抗菌スペクトル
- グラム陽性球菌、グラム陰性球菌、グラム陰性桿菌、スピロヘータ、一部のリケッチア、ウイルス
適応
- マイコプラズマ肺炎、クラミジア感染症、カンピロバクター腸炎、レジオネラ症
- びまん性汎細気管支炎:14員環マクロライドのみ
- URIs, pneumonias, STD
注意
禁忌
副作用
- 悪心、嘔吐、消化器の蠕動を促進
- テオフィリン
- 喘息の治療薬。CYP3A4で代謝される。中毒域と治療域がちかいので注意する
マクロライド系抗菌薬
14員環
15員環
16員環
14員環 (ケトライド系抗菌薬)
有効性 (SMB.147)
- ○:殺菌的、△静菌的
[★]
- 同
- 黄色ブドウ球菌
- 関
- ブドウ球菌
- first aid step1 2006 p.138
細菌学
毒素
感染症
転移性合併症
細菌学的同定法
毒原性因子
- α毒素
- コアグラーゼ:プロトロンビンに結合して、複合体のままトロンビン活性をを発揮させ、フィブリノゲンをフィブリンに変換する作用がある。
- スタフィロキナーゼ:プラスミノゲンと複合体を作り、プラスミン活性を発現させ、フィブリンを分解する
- プロテインA:IgGのFc部分に親和性を持ち抗体によるオプソニゼーションを阻害
- ロイコシジン:白血球を死滅させる
[★]
- 英
- staphylococcal skin infection
- 関
- ブドウ球菌皮膚感染
[★]
- 英
- staphylococcal osteomyelitis
- 関
- ブドウ球菌
[★]
- 英
- vancomycin-resistant Staphylococcus aureus VRSA
[★]
- 英
- staphylococcal
- 関
- ブドウ球菌
[★]
- 英
- Staphylococcus immunoglobulin
[★]
- 英
- fungus、fungi、microbial
- 関
- 菌類、真菌、真菌類、微生物
[★]
- 英
- grape、grapevine
- ラ
- Vitis vinifera
- 関
- ブドウ属、ブドウ科
[★]
- 英
- coccus
- 関
- 細菌