出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/01/20 16:13:41」(JST)
セレウス菌 | |||||||||||||||||||||
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グラム染色されたセレウス菌
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Bacillus cereus Frankland & Frankland 1887 |
セレウス菌(セレウスきん、Bacillus cereus)はBacillus属に属するグラム陽性大桿菌で芽胞を有する通性嫌気性菌である。土壌や汚水など自然界に多く存在し、酸性域では発育は悪い。食中毒の原因となる。
常在菌として、健康な成人の10%で腸管の中に見られる。菌は4〜50℃で発育、芽胞は1〜59℃で発芽、100℃ 10分の加熱で大部分が不活化するが、芽胞は100 ℃ 30分の加熱にも耐え、芽胞の形で土壌などを中心に自然環境に広く分布する[1]。70% の皮膚消毒用のエチルアルコールでも不活化されないという報告がある[2]。そのため、速乾性擦式消毒剤に使用されるエタノール系消毒剤に耐性を獲得した菌が残存し十分に滅菌されない[3]。
汚染された食物の摂食により発生する感染性胃腸炎(食中毒症状)と、血液中に菌が侵入し発症する菌血症(大部分の感染はほぼ無症状)がある。菌血症を起こしただけではほとんど発症せず、乳幼児や高齢者など抵抗力の弱い者が時折敗血症まで病状が進行した時のみ死亡例まで発展する場合がある。セレウス菌が起こす食中毒は毒素系食中毒なので、なっても免疫はつかず、何度でも感染発症する。汚染された食物を臭いや見かけで判別することはできない。休止状態の芽胞を加熱や胃酸では完全に不活性化することが出来ず、嘔吐型毒素は更に耐性を持つ(下痢型毒素は熱で容易に不活性化を起こす)。毒素の量が増えてしまった食品は再加熱しても食中毒を起こすので、本菌での食中毒予防法として発芽と増殖の抑制がとても重要になる。(例えば調理済みの食品は10〜50℃で保存しないなどである)。本菌によって引き起こされる食中毒は、菌が体内で増殖し多量の毒素を排出して発症する下痢型と、食品中で増殖した菌が生産する毒素を大量に摂取して発症する嘔吐型の2つに別けられる。日本での発生例の大部分は嘔吐型食中毒である。平成11年(1999年)の全国の食中毒事件は総数2697件で、35214人の患者が発生し、セレウス菌による食中毒は、11件(全体の0.4%)、患者総数、59人(全体の0.2%)。[1] 食品衛生法第27条により保健所への届け出が義務づけられている。 下痢原性毒素は加熱、pH4以下の酸(胃酸)などで不活化されやすく、食中毒症状は一般に軽く1〜2日程度で回復する。セレウス菌による食中毒は、人から人へは感染しない。
下痢型は感染型食中毒(生体内毒素産出型)でウエルシュ菌食中毒に似た症状を呈する。本菌が芽胞形成などにより不活化することなく腸管に達すると、小腸内でHbI(heamolytic enterotoxin)、Nhe(non-heamolytic enterotoxin)、CytK(サイトトキシンK)などの2種類のエンテロトキシン型下痢毒を産生し食中毒症状が引き起こされる。菌の摂取後約8〜16時間で症状が現れ、約24時間続く。乳製品や野菜、肉類が原因となりやすい。2000年の雪印集団食中毒事件では、黄色ブドウ球菌が検出された製造工程のバルブなど2か所からセレウス菌も検出されている[4]。この下痢型毒素本体はたんぱく質で出来ており、消化酵素・60℃以上加熱・強酸で容易に不活性化させることが出来るため、感染者に関わっても適切な毒素除去を行えば食中毒が拡散することはない。セレウス菌の生産するエンテロトキシンはブドウ球菌、病原大腸菌、ウェルシュ菌の毒素のエンテロトキシンと同じ名称であるが異なった物質なので要注意である。[5]
嘔吐型は毒素型食中毒でぶどう球菌食中毒に似た症状を呈する。本菌は芽胞を形成することにより、食品の中でも100 ℃30 分の加熱調理過程を生き延びることができる。 調理後の食品が長時間室温で放置されると菌の増殖が起こり、この際産生された嘔吐毒を食品と共に摂取することにより引き起こされる。この嘔吐毒はアミノ酸が環状につながった小ペプチドで、消化酵素・酸・アルカリに安定であり、120℃で15分間処理しても失活しない[4]。症状は毒素摂取後1〜6時間後に現れ、8〜10時間続く。通常発熱しない。焼き飯、カレーライス、ごはんやパスタでの事例が多く報告されている。これらの食品では調理後、保存中に菌が増殖するが、保存温度を4℃以下にすることで増殖を抑えることができる[4]。患者が排泄した嘔吐物を大量に摂取しなければ患者から感染することはほとんどない。
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リンク元 | 「細菌」「食中毒菌」「バシラス属」「芽胞」「Bacillus cereus」 |
関連記事 | 「菌」 |
科 | 属 | 種 | 法律 | 特徴 | 季節性 | 感染 | 毒素 | 症状 | 原因食品 | 潜伏期間 | 経過 | 治療 | 予防 | ||
感染型 | グラム陰性桿菌 | 腸内細菌科 | サルモネラ属 | 再興感染症 | 新生児・乳児での接触感染 | 菌体内毒素 | 下痢(粘液、水様で緑色)、嘔吐、腹痛、急激な発熱(38-40℃) | レバー刺身、生肉、焼き鳥、生卵、ハム、ソーセージ、魚肉練り製品、乳製品、あん | 6-48時間(平均12時間) | 1-3日 | 対症療法 | 加熱、二次感染の予防(ネズミ、ゴキブリの駆除) | |||
グラム陰性らせん菌 | カンピロバクター属 | Campylobacter jejuni | 初夏(5-6月) | まな板、包丁などによる2次感染 | 菌体内毒素 | 下痢(水樣、腐敗臭)、腹痛、嘔吐、発熱、まれに敗血症 | 肉類、生乳、水(家畜の屎尿による汚染) | 2-5日(まれに10日) | 1-2週間 | 対症療法、エリスロマイシン | 加熱、ペットからの感染予防 | ||||
Campylobacter coli | |||||||||||||||
グラム陰性桿菌 | 腸内細菌科 | サルモネラ属 | チフス菌 | ||||||||||||
グラム陰性桿菌 | 腸内細菌科 | サルモネラ属 | パラチフス菌 | ||||||||||||
グラム陰性桿菌 | 腸内細菌科 | シゲラ属 | 赤痢菌 | ||||||||||||
生体内毒素型 | グラム陰性桿菌 | ビブリオ科 | ビブリオ属 | コレラ菌 | |||||||||||
グラム陰性桿菌 | 腸内細菌科 | エシェリキア属 | 腸管出血性大腸菌 | 3種感染症 | 経口感染 | ベロ毒素 | 激しい腹痛を伴う頻回の水樣便、溶血性尿毒症候群や脳症の合併により重症化 | 加熱不足の牛肉の摂食(牛乳、フルーツ、汚染野菜) | 3-4日 | 75℃1分の加熱で菌は死滅する | |||||
グラム陰性桿菌 | ビブリオ科 | ビブリオ属 | 腸炎ビブリオ | 耐熱性毒素、好塩菌、真水、酸に弱い | 夏季 | 生板・包丁などによる二次感染。成年男子に多い | 激しい下痢(水様、粘血便)、上腹部激痛、発熱(-38℃) | 刺身、漬け物 | 10-20時間(平均13時間) | 2-3日 | 対症療法 | 加熱(60℃, 10分)、冷蔵(10℃以下)、水洗い。まな板、包丁の洗浄 | |||
グラム陽性桿菌 | クロストリジウム属 | ウェルシュ菌 | 土壌、水、ヒトおよび動物の腸管に常在、嫌気性菌、芽胞形成 | エンテロトキシン | 下痢、腹痛、吐き気 | 畜肉および魚肉とその加工品、動物性蛋白質を用いて調理後、長期保存されていた食品(カレー、シチューなど) | 8-22時間 | 肉類、魚介類の脹内容物からの汚染防止。長時間保存する場合、加熱調理後冷蔵庫内にて保存。再加熱を十分に行う。 | |||||||
毒素型 | グラム陽性桿菌 | バシラス属 | セレウス菌 | 芽胞形成、芽胞形態で自然に広く存在。食品腐敗変敗細菌 | エンテロトキシン | 嘔吐型: 吐き気、嘔吐 | 米飯、チャーハン、スパゲティ | 1-5時間 | 低温保存、長期保存を避ける | ||||||
下痢型: 下痢 | 食肉製品、スープ、プリン、野菜 | 8-12時間 | |||||||||||||
グラム陽性桿菌 | クロストリジウム属 | ボツリヌス菌 | 嫌気性細菌、致命率が高い。芽胞形成。 | ボツリヌス毒素(80℃, 数分で無毒化) | 悪心、吐き気、めまい、頭痛、腹痛、下痢。眼症状(眼瞼下垂、複視、視力低下、瞳孔散大)、神経・筋症状(言語障害、嚥下障害、呼吸困難) | 缶詰、瓶詰(魚、獣肉、野菜、果実)、いずし、ハム、ソーセージ、からしレンコン) | 12-36時間 | 抗毒素血清治療 | 野菜などの水洗い、魚の内臓による汚染を防ぐ | ||||||
グラム陽性球菌 | スタフィロコッカス属 | 黄色ブドウ球菌 | ヒト常在菌(皮膚、口腔、粘膜、鼻咽頭粘膜)。化膿傷、咽頭炎、ニキビ、風邪の症状時には病巣となる | 耐熱性エンテロトキシン | 激しい吐き気、嘔吐、腹痛、下痢 | おにぎり、柏餅、シュークリーム、生クリーム | 0.5-6時間 | 1-3日 | 化膿巣のある人を調理に従事させない。低温保持(5℃以下) |
起炎菌 | 潜伏期間 | 原因食 | 発熱 | 腹痛 | 嘔気・嘔吐 | 下痢 | その他 | |
感染性食中毒 | 腸炎ビブリオ | 5-24hr 平均10hr |
魚介類(加工品) 6-9月に多い |
++ | +++ | ++ | +++ | ショック 心筋障害 |
サルモネラ | 7-72hr 平均12-24hr |
肉、卵、サラダ | +++ | ++ | + | ++ | ショック 敗血症 | |
カンピロバクター | 2-5日 | 鶏肉、牛肉、牛乳 5-7月に多い |
++ | + | ++ | ++ | ||
病原性大腸菌 | 1-3日 平均24hr |
牛肉が多い | ++ | + | ++ | + | ||
毒素性食中毒 | ブドウ球菌 | 0.5-6hr 平均3hr |
乳製品、かまぼこ、氷小豆、 夏季に多い |
± | + | +++ | + | エンテロトキシンによるショック |
ボツリヌス菌 | 2hr-8日 | いずし、キャビア | - | + | + | ± | 神経症状 眼症状 |
-セレウス菌
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