- 英
- Clostridium
- 関
- 細菌
- 例外的に酸素に耐性が有るのがC. tertium, C. histolyticum, C.innocuum, C.perfringens
クロストリジウム属
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/19 02:35:56」(JST)
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クロストリジウム属 |
Clostridium difficile
|
分類 |
ドメイン |
: |
真正細菌 Bacteria |
門 |
: |
フィルミクテス門
Firmicutes |
綱 |
: |
クロストリジウム綱
Clostridia |
目 |
: |
クロストリジウム目
Clostridiales |
科 |
: |
クロストリジウム科
Clostridiaceae |
属 |
: |
クロストリジウム属
Clostridium |
|
学名 |
Clostridium
Prazmowski 1880 |
種 |
- 酪酸菌(タイプ種)
- 破傷風菌
- ウェルシュ菌
- ボツリヌス菌 ほか100種以上
|
クロストリジウム属(Clostridium)は、真正細菌の一属。偏性嫌気性で芽胞を形成するグラム陽性の桿菌である。この属名は、ギリシャ語のkloth(捻じれ)から派生したklostridion (小さい捻じれたもの)から来ており、ラテン語化するとClostridium となる[1]。
クロストリジウム属の菌は、土壌内部や生物の腸内などの酸素濃度が低い環境に生息する偏性嫌気性菌であり、酸素存在下では増殖できない。一般に偏性嫌気性菌は、スーパーオキシドディスムターゼやカタラーゼなどの活性酸素を無毒化する酵素を持たないため、酸素がある通常の環境下では不活化するが、クロストリジウム属の菌は酸素存在下で、耐久性の高い芽胞を作って休眠することで、死滅を免れることができる。この性質から、他の偏性嫌気性菌が生き残れない状態でも生き残るため、偏性嫌気性菌の中では比較的古くからその存在が発見され、研究が進められてきた。
ハイム・ワイツマン(後にイスラエル初代大統領)による1919年の特許[2]によりデンプンから醗酵によって工業的な規模でのアセトン・ブタノール生産が可能になったが、この醗酵に用いられたのもクロストリディウムであり、第一次世界大戦中は燃料や火薬の原材料として破砕したトウモロコシからアセトンを生産していた。この醗酵生産法は化学合成法が発達する1950年代まで、アセトンやブタノールの主な生産法であった。
目次
- 1 病原性と薬理応用
- 2 代表的なクロストリジウム属菌
- 3 参考文献
- 4 関連項目
- 5 脚注
- 6 外部リンク
病原性と薬理応用[編集]
クロストリジウム属の一部には、ヒトに対する病原性を有するものも知られている。中でも、破傷風菌やボツリヌス菌などは、強力な神経毒を産生する。 その反面、近年、医療分野においてその偏性嫌気性菌としての能力を利用したがん治療への応用が期待されている。[3]。 また(Shaw 2010)によって、自閉症をもつ小児の尿より本属が作り出す物質 3-(3-hydroxyphenyl)-3-hydroxypropionic acid (略称:HPHPA) が高濃度で検出される報告がなされ、カビ毒の向神経作用が注目された。
代表的なクロストリジウム属菌[編集]
- 破傷風菌 (C. tetani )
- 土壌中に芽胞の形で多く存在。傷口から感染し、テタヌストキシンを産生して破傷風の原因になる。
- ボツリヌス菌 (C. botulinum )
- 土壌中などの自然環境中に存在。ソーセージや真空パックの食品内部で増殖してボツリヌストキシンを産生し、その食品を食べた人はボツリヌス食中毒を起こす。蜂蜜などに含まれる芽胞が乳児の腸内に定着する乳児ボツリヌス症なども起こす。
- ウェルシュ菌 (C. perfringens )
- ヒトや動物の腸内に生息する常在菌の一種だが、一部の菌種は毒素を産生して、食中毒の原因になる。また傷口に感染して、重篤なガス壊疽を起こす事もある。クロストリジウム属の中では例外的に、鞭毛を持たない。
- ガス壊疽菌群
- 傷口に感染して、重篤なガス壊疽を起こす。C. novyi , C. septicum など。
- クロストリジウム・ディフィシレ (C. difficile )
- ヒトや動物の腸内に生息。抗生物質に比較的抵抗性で、抗生物質大量投与時に、他の腸内細菌が死滅したときに過剰に増殖して(菌交代症)、偽膜性大腸炎の原因になる[4] 。
- クロストリジウム・サーモセラム (C. thermocellum )
- 好熱性。セルロソームという特徴的な酵素複合体を有し、効率的なセルロース分解を行う。セルロソームは足場となるスキャフォルディン(scaffoldin、scaffold(足場)が語源)というタンパク質の上にコヘシン(cohesin、cohere(結合)が語源か)というタンパクが乗っており、それがセルラーゼ(厳密にはヘミセルラーゼなども含む。)上のドッケリン(dockerin、dock(繋ぐ)が語源)と結合して数百万の分子量の巨大なものとなっている。
- クロストリジウム・ブチリカム (C. butyricum )
- 本属のタイプ種である。酪酸菌群を含み、整腸剤としても用いられる 腸内常在菌「宮入菌」など有用な株がある一方、一部の株はE型ボツリヌストキシンを産生し食中毒の原因となる[5]。
- クロストリジウム・アセトブチリクム (Clostridium acetobutylicum )
- デンプンからアセトン等を合成する。1910年ごろ、ハイム・ヴァイツマン(イスラエル初代大統領)によって発見された。この株は近年バイオブタノール合成の研究で注目されている[6]。
参考文献[編集]
- Shaw, William (2010-06). “Increased urinary excretion of a 3-(3-hydroxyphenyl)-3-hydroxypropionic acid (HPHPA), an abnormal phenylalanine metabolite of Clostridia spp. in the gastrointestinal tract, in urine samples from patients with autism and schizophrenia”. Nutritional Neuroscience (Maney Publishing) 13 (3): 135-43. doi:10.1179/147683010X12611460763968. PMID 20423563.
関連項目[編集]
|
ウィキメディア・コモンズには、クロストリジウム属に関連するカテゴリがあります。 |
脚注[編集]
- ^ H.Bahl and P.Durre Clostridia
- ^ Weizmann,C. September 1919. U.S. patent 1,325,585.
- ^ Ian Cheong, Xin Huang, Katherine Thornton, Luis A. Diaz, Jr. and Shibin Zhou (2007). “Targeting Cancer with Bugs and Liposomes: Ready, Aim, Fire”. The Official Organ Of The American Association For Cancer Research, Inc 67 (20): 9605-9608. http://cancerres.aacrjournals.org/cgi/reprint/67/20/9605.
- ^ http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/clostridium1.html クロストリジウム-ディフィシル感染症について] 横浜市衛生研究所
- ^ Giménez JA, Sugiyama H. (1988). “Comparison of Toxins of Clostridium butyricum and Clostridium botulinum Type E.”. Infection and Immunity. 56 (4): 926-29. http://iai.asm.org/cgi/reprint/56/4/926.pdf.
- ^ http://www.rite.or.jp/Japanese/labo/biseibutsu/03/b-2(2)/b-2(2).html
外部リンク[編集]
- 嫌気性芽胞形成菌(クロストリジウム属菌)について 食品分析開発センター
- クロストリジウム・ディフィシル感染症 厚生労働省-戸山研究庁舎
- クロストリジウム・ディフィシル (PDF)
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 高橋 元秀
- 日本集中治療医学会雑誌 = Journal of the Japanese Society of Intensive Care Medicine 17(3), 253-255, 2010-07-01
- NAID 10029382346
- アセチレン還元と逆転写PCRに基づいた植物内生クロストリジウム属細菌の窒素固定能の評価(日本微生物生態学会2007年度論文賞受賞講演)
- 木村 美和子,萩澤 美帆,中嶋 正人,二藤 隆春,田山 二朗
- 日本気管食道科学会会報 56(6), 484-488, 2005-12-10
- NAID 10018622485
Related Links
- クロストリジウム属(Clostridium)は、真正細菌の一属。偏性嫌気性で芽胞を形成する グラム陽性の桿菌である。この属名は、ギリシャ語のkloth(捻じれ)から派生した klostridion (小さい捻じれたもの)から来ており、ラテン語化するとClostridium となる。
- クロストリジウム属の菌は一般に嫌気性菌と呼ばれる偏性嫌気性菌で、無酸素の状態 でのみ増殖ができ、酸素はこの属の菌に有害に作用して菌を死滅させてしまいます。 しかし、クロストリジウム属の菌は発育に不適当な環境におかれると芽胞と呼ばれる 厚い ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- bacterium,(pl.) bacteria
- 同
- バクテリア
- 関
- 特殊な細菌 、細菌の鑑別、細菌の同定?、細菌の分類?
細菌の命名
- ラテン語であり、イタリックで表す。
- 「属名 + 種名」で表現される。
グラム染色性と形状による分類と疾患
[★]
- 関
- 食中毒
細菌性食中毒
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科
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属
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種
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法律
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特徴
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季節性
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感染
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毒素
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症状
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原因食品
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潜伏期間
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経過
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治療
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予防
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感染型
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グラム陰性桿菌
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腸内細菌科
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サルモネラ属
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再興感染症
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新生児・乳児での接触感染
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菌体内毒素
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下痢(粘液、水様で緑色)、嘔吐、腹痛、急激な発熱(38-40℃)
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レバー刺身、生肉、焼き鳥、生卵、ハム、ソーセージ、魚肉練り製品、乳製品、あん
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6-48時間(平均12時間)
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1-3日
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対症療法
|
加熱、二次感染の予防(ネズミ、ゴキブリの駆除)
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グラム陰性らせん菌
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カンピロバクター属
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Campylobacter jejuni
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初夏(5-6月)
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まな板、包丁などによる2次感染
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菌体内毒素
|
下痢(水樣、腐敗臭)、腹痛、嘔吐、発熱、まれに敗血症
|
肉類、生乳、水(家畜の屎尿による汚染)
|
2-5日(まれに10日)
|
1-2週間
|
対症療法、エリスロマイシン
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加熱、ペットからの感染予防
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Campylobacter coli
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グラム陰性桿菌
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腸内細菌科
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サルモネラ属
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チフス菌
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グラム陰性桿菌
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腸内細菌科
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サルモネラ属
|
パラチフス菌
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グラム陰性桿菌
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腸内細菌科
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シゲラ属
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赤痢菌
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生体内毒素型
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グラム陰性桿菌
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ビブリオ科
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ビブリオ属
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コレラ菌
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グラム陰性桿菌
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腸内細菌科
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エシェリキア属
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腸管出血性大腸菌
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3種感染症
|
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経口感染
|
ベロ毒素
|
激しい腹痛を伴う頻回の水樣便、溶血性尿毒症候群や脳症の合併により重症化
|
加熱不足の牛肉の摂食(牛乳、フルーツ、汚染野菜)
|
3-4日
|
|
|
75℃1分の加熱で菌は死滅する
|
グラム陰性桿菌
|
ビブリオ科
|
ビブリオ属
|
腸炎ビブリオ
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|
耐熱性毒素、好塩菌、真水、酸に弱い
|
夏季
|
生板・包丁などによる二次感染。成年男子に多い
|
|
激しい下痢(水様、粘血便)、上腹部激痛、発熱(-38℃)
|
刺身、漬け物
|
10-20時間(平均13時間)
|
2-3日
|
対症療法
|
加熱(60℃, 10分)、冷蔵(10℃以下)、水洗い。まな板、包丁の洗浄
|
グラム陽性桿菌
|
|
クロストリジウム属
|
ウェルシュ菌
|
|
土壌、水、ヒトおよび動物の腸管に常在、嫌気性菌、芽胞形成
|
|
|
エンテロトキシン
|
下痢、腹痛、吐き気
|
畜肉および魚肉とその加工品、動物性蛋白質を用いて調理後、長期保存されていた食品(カレー、シチューなど)
|
8-22時間
|
|
|
肉類、魚介類の脹内容物からの汚染防止。長時間保存する場合、加熱調理後冷蔵庫内にて保存。再加熱を十分に行う。
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毒素型
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グラム陽性桿菌
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バシラス属
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セレウス菌
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|
芽胞形成、芽胞形態で自然に広く存在。食品腐敗変敗細菌
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|
エンテロトキシン
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嘔吐型: 吐き気、嘔吐
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米飯、チャーハン、スパゲティ
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1-5時間
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低温保存、長期保存を避ける
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下痢型: 下痢
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食肉製品、スープ、プリン、野菜
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8-12時間
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グラム陽性桿菌
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クロストリジウム属
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ボツリヌス菌
|
|
嫌気性細菌、致命率が高い。芽胞形成。
|
|
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ボツリヌス毒素(80℃, 数分で無毒化)
|
悪心、吐き気、めまい、頭痛、腹痛、下痢。眼症状(眼瞼下垂、複視、視力低下、瞳孔散大)、神経・筋症状(言語障害、嚥下障害、呼吸困難)
|
缶詰、瓶詰(魚、獣肉、野菜、果実)、いずし、ハム、ソーセージ、からしレンコン)
|
12-36時間
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抗毒素血清治療
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野菜などの水洗い、魚の内臓による汚染を防ぐ
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グラム陽性球菌
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スタフィロコッカス属
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黄色ブドウ球菌
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ヒト常在菌(皮膚、口腔、粘膜、鼻咽頭粘膜)。化膿傷、咽頭炎、ニキビ、風邪の症状時には病巣となる
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耐熱性エンテロトキシン
|
激しい吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
|
おにぎり、柏餅、シュークリーム、生クリーム
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0.5-6時間
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1-3日
|
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化膿巣のある人を調理に従事させない。低温保持(5℃以下)
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食中毒菌
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起炎菌
|
潜伏期間
|
原因食
|
発熱
|
腹痛
|
嘔気・嘔吐
|
下痢
|
その他
|
感染性食中毒
|
腸炎ビブリオ
|
5-24hr 平均10hr
|
魚介類(加工品) 6-9月に多い
|
++
|
+++
|
++
|
+++
|
ショック 心筋障害
|
サルモネラ
|
7-72hr 平均12-24hr
|
肉、卵、サラダ
|
+++
|
++
|
+
|
++
|
ショック 敗血症
|
カンピロバクター
|
2-5日
|
鶏肉、牛肉、牛乳 5-7月に多い
|
++
|
+
|
++
|
++
|
|
病原性大腸菌
|
1-3日 平均24hr
|
牛肉が多い
|
++
|
+
|
++
|
+
|
|
毒素性食中毒
|
ブドウ球菌
|
0.5-6hr 平均3hr
|
乳製品、かまぼこ、氷小豆、 夏季に多い
|
±
|
+
|
+++
|
+
|
エンテロトキシンによるショック
|
ボツリヌス菌
|
2hr-8日
|
いずし、キャビア
|
-
|
+
|
+
|
±
|
神経症状 眼症状
|
[★]
- ラ
- Clostridium perfringens
- 同
- ウェルシュ菌 Clostridium welchii
- 日
- クロストリジウム・パーフリンゲンス、クロストリジウム・パーフリンジェンス
- 関
- 細菌、クロストリジウム属、食中毒菌、gas gangrene
[show details]
特徴
感染症
- a:(創傷より侵入)ガス壊疽、蜂巣炎、子宮感染、菌血症
- b:(腸管内で外毒素分泌)食中毒、致死性腸炎
常在部位
ウェルシュ菌による食中毒
- 食中毒菌
症状
食品
- 畜肉および魚肉とその加工品、動物性蛋白質を用いて調理後、長期保存されていた食品(カレー、シチューなど)
潜伏期
予防
- 肉類、魚介類の脹内容物からの汚染防止。長時間保存する場合、加熱調理後冷蔵庫内にて保存。再加熱を十分に行う。
[★]
- 英
- clostridial gas gangrene
- 関
- ガス壊疽、クロストリジウム属
- p.722
病原体
潜伏期
病態
- 皮下組織から骨格組織への炎症の拡大。
- 外毒素(αトキシン)の産生による組織障害。
身体所見
- p.722
- 創傷部の激痛と腫脹。皮膚の色は青白~青銅色となり出血性水疱を伴う。血性滲出性浸出液は激烈な鼠臭。
- ガス産生があれば握雪感
症状
- 循環器:頻脈
- 精神 :精神障害
- 皮膚 :身体所見の通り。
治療
- デブリドマン
- 抗ショック療法
- ペニシリンG大量投与、(クリンダマイシン)
- ガス壊疽抗毒素
- 高圧酸素療法
予後
[★]
- 英
- tetanus bacillus
- ラ
- Costridium tetani
- 同
- (国試)破傷風菌
- 関
- クロストリジウム属
- 図:SMB.260
- 芽胞形成
- 嫌気性菌
- グラム陽性桿菌
- 形状:太鼓のバチ状(円形で端在性の芽胞)
- 棲息場所 土壌中に広く分布
- 運動性:寒天平板上で遊走し、辺縁は樹枝状
- 病原性:創傷感染(特に土壌で汚染された挫滅創)により感染。受傷後6時間で毒素(破傷風毒素)を産生し始める。
- 毒素:外毒素(神経毒:テタノスパスミン(破傷風毒素)、破傷風溶血毒:テタノリジン)
- 感染症:破傷風
[★]
- 英
- cross、crossreact、crosslink
- 関
- 横断、架橋、交差、交差反応、交雑、交雑種、通過
[★]
- 英
- bird、avian
- 関
- 鳥類
[★]
クロストリジウム属