出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/11/19 17:56:40」(JST)
この項目では、ブドウ球菌属に属する細菌全般について説明しています。
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ブドウ球菌属 | ||||||||||||||||||
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写真は黄色ブドウ球菌
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Staphylococcus Rosenbach 1884 |
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種 | ||||||||||||||||||
#種類参照
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ブドウ球菌(ブドウきゅうきん)とは、ブドウ球菌属(Staphylococcus属)に属するグラム陽性球菌である真正細菌の総称。
一つ一つの球菌が不規則に配列した集合体(クラスター)を作りながら増殖し、光学顕微鏡下で観察すると「ブドウの房」のように見えるため、もう一つのグラム陽性球菌のグループである連鎖球菌(直鎖状に配列する)との対比から「ブドウ球菌」と名付けられた。属名のStaphyloccocusも、ラテン語で「ブドウの房」を意味するstaphylo-と、球菌を意味するcoccus(元は「(穀物の)粒」や「木の実」の意)に由来する。
元来「ブドウ球菌」とは、細菌が発見されて間もない、分類法が整理されていない頃に細菌の形態および配列から名付けられた名称である。このためStaphylococcus属以外でも、クラスターを形成することがあるMicrococcus属などを含めて広義に「ブドウ球菌」 (staphylococcus) と呼ばれていた。本項目では、ブドウ球菌属に属する細菌全般(Staphylococcus sp.)を解説する。
ブドウ球菌は、直径 1µm程度のグラム陽性球菌で、ブドウの房状の不規則な配列をする、通性嫌気性の有機栄養菌である。生化学的には、カタラーゼ陽性(カタラーゼ酵素を有すること)と、ブドウ糖を嫌気的に発酵する性質から、他の代表的なグラム陽性球菌と鑑別される。多くの菌種は耐塩性であり10%食塩濃度下でも増殖可能である。35〜40℃でよく生育し、寒天培地で培養すると、菌種によっては黄色〜ピンクのさまざまな色調の不溶性の色素を産生するものがあり、コロニーは白色、レモン色、橙色、ピンクなどさまざまな色を示す。
2005年現在、ブドウ球菌属の細菌は35菌種に分類されている。これ以前の最も初期の分類では、コロニーの色調によって「白色ブドウ球菌」「黄色ブドウ球菌」「橙色ブドウ球菌」に分けられていたが、その後「表皮ブドウ球菌」「黄色ブドウ球菌」「腐性ブドウ球菌」の3菌種に改名された。また、血漿を凝固させる働きを持つタンパク質であるコアグラーゼを産生するかどうかが、ヒトに対する病原性と密接に関連しているため、コアグラーゼ陽性(コアグラーゼを産生する)、コアグラーゼ陰性(産生しない)の二群に大別することも医学分野では慣用的に行われてきた。しかし、これらの初期の分類はいずれも大まかなものであり、遺伝学的分類法の導入によって生物学的には35菌種に分類されていて、約15種がヒトから分離されることがある。
増殖の際に体外タンパク質毒素として分子量19000から29000前後の単純タンパク質(エンテロトキシン)を数10種類の産生する [1]。このエンテロトキシンは、熱、消化酵素(トリプシン)により破壊されない。つまり、調理の熱で菌を失活(死滅)させてもエンテロトキシンは残るだけで無く、消化器官中で分解されないため毒素型食中毒の重要な原因となっている[2]。体内で増殖した場合、敗血症、毒素性ショック症候群(TSS)、軟部組織感染症、肺炎、心内膜炎、川崎病、慢性副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患など重要な疾病との関連性が指摘されている[1]。また、ヒトだけで無く獣医学畜産領域においても重要な病原体である[1]。
菌体外酵素の1つであり、血漿凝固作用を有する物質。ブドウ球菌の分類において、その菌種がコアグラーゼを産生するかどうかという性状は大きい意味を持つものとしてとらえられてきた。これは医学上の立場から重要視されたものである。ヒトから分離される15種のブドウ球菌のうちでは、最も病原性が高い黄色ブドウ球菌だけがコアグラーゼ陽性であるため、この菌であるかどうかの判定に利用可能だからである。この他、ヒトを宿主としない、動物由来のブドウ球菌のうち、S. intermediusがコアグラーゼ陽性、S. delphiniとS. hyicusには菌株によってコアグラーゼ陽性または陰性のものがある。これらを除いた31種はすべてコアグラーゼ陰性で、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Coagulase -negative staphylococci, CNS)と総称される。ただし臨床の現場ではCNSはヒトから分離されることのある、黄色ブドウ球菌以外の種(約14種)を指し、なかでも検出される頻度が高い表皮ブドウ球菌を意味するものとして使われることがある。
ブドウ球菌はヒトから分離されることが多い常在細菌であり、特に健常人の鼻腔内には100%存在する。大部分は非病原性で、体表面(皮膚)、鼻咽腔、消化管(腸)、膣などの常在細菌として、常在細菌叢(あるいは正常フローラ)(腸内細菌)を形成し、むしろ外部からの病原体の侵入を防ぐバリヤーの役割の一端を担っている。ただし、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌の3種は、ヒトに対する病原性を持つ。
一般に、ヒトはブドウ球菌による病気の発症に対しては抵抗性が強く、ある種の自然免疫が備わっていると考えられている。またブドウ球菌によって感染巣が化膿しても、白血球の働きによって病巣部は限局的になり容易に蔓延することはない。しかし他の原因によって白血球の機能が低下した患者などでは、この機構が働かずに重症化することもある。
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リンク元 | 「ブドウ球菌」「アジスロマイシン」「ミクロコッカス科」「スタフィロコッカス属」「Staphylococcus saprophyticus」 |
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