ビスホスフォネート
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ビスホスホネート(bisphosphonate;BP ビスフォスフォネートとも)は、破骨細胞の活動を阻害し、骨の吸収を防ぐ医薬品。骨粗鬆症[1]、変形性骨炎(骨ページェット病)、腫瘍(高カルシウム血症の有無にかかわらず)の骨転移、多発性骨髄腫、骨形成不全症、その他骨の脆弱症を特徴とする疾患の予防と治療に用いられる。
上記疾患に有効な医薬品と信じられており、近年急速に使用している患者が増えてきているが、リスク開示なく投与されている患者に顎骨の難治性壊死(BRONJ)が発生することが問題となっている。(ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死参照) また、逆説的な非定形大腿骨折の発生も、世界的に問題視されるようになっている。
目次
- 1 歴史
- 2 化学と分類
- 3 薬物動態
- 4 作用機序
- 4.1 窒素を含まないビスホスホネート
- 4.2 窒素を含むビスホスホネート
- 5 用途
- 6 副作用
- 7 脚注
- 8 参考文献
歴史
ビスホスホネートが最初に開発されたのは1865年のドイツであった[2] が、最初に骨代謝の疾患の調査が行われたのは1960年代である[2]。医学以外の用途としてはオレンジ畑での灌漑システムで軟水を作る事などに使われていた。人体に使われた最初の目的は骨塩の主要な物質であるハイドロキシアパタイトの溶解を防ぐことで、骨の損失を防ぐことであった。それが証明されたのは1990年代に入ってからであった[3]。
化学と分類
すべてのビスホスホネートは、P-C-P 構造を基本骨格とする[2]。
この基本骨格で、2個のホスホン酸アニオン基(ホスホネート)が炭素と共有結合していることが「ビスホスホネート」の名称と、薬の作用の由来である。長いほうの側鎖(略図でR2)は化学的性質、動作の形式、ビスホスホネートの薬としての強さを決定する。短いほうの側鎖(R1)はおもに化学的性質と薬物動態に影響する。
薬物動態
ビスホスホネートは経口投与されるか、静脈内注射によって体内に入る。およそ50%は変化せずに腎臓から排出される[4]。残りは骨組織に強い親和性を持ち、骨の表面に吸着する。
作用機序
骨組織に付着すると、ビスホスホネートは破骨細胞に取り込まれる[5]。ビスホスホネートは窒素を含むタイプと含まないタイプの二種類があり、それぞれ異なる作用機序を持つ[6]。
窒素を含まないビスホスホネート
第一世代
- エチドロネート - ダイドロネル®(経口製剤・大日本住友製薬)[7]
- クロドロネート
- チルドロネート
窒素を含まないビスホスホネートは細胞の中で代謝され、アデノシン三リン酸(ATP)末端のピロリン酸構造を機能しない形の分子に置き換え、細胞のエネルギー代謝の中でATPを競合的に阻害する。これにより破骨細胞はアポトーシスに至る。このため、骨の減少は遅くなる[8]。
窒素を含むビスホスホネート
- 第二世代
- パミドロネート - アレディア®(注射用製剤・ノバルティスファーマ)[9]
- ネリドロネート
- オルパドロネート
- アレンドロネート - オンクラスト®(注射用製剤・万有製薬 2009年販売中止)[10]・テイロック®(注射薬・帝人ファーマ)[11]・フォサマック®(経口製剤・MSD)[12]・ボナロン®(経口製剤[13]・点滴静注バッグ[14], 帝人ファーマ)
- イバンドロネート
- 第三世代
- チルドロネート
- インカドロネート - ビスフォナール®(注射用製剤・アステラス製薬・販売中止)[15]
- リセドロネート - アクトネル®(経口製剤:味の素/エーザイ)[16]・ベネット®(武田薬品工業/ワイス)[17]
- ミノドロネート - リカルボン®(経口製剤:小野薬品)[18]・ボノテオ®(経口製剤:アステラス製薬)
- ゾレドロネート - ゾメタ®(注射用製剤・ノバルティスファーマ)[19]
窒素を含むビスホスホネートの骨代謝での活動はメバロン酸経路内でのファルネシル二リン酸合成酵素(FPPS)の結合と阻害である[20][21]。
FPPSによるメバロン酸経路の遮断はファルネソールとゲラニルゲラニオールという二つの代謝産物の産生を防ぐ。これらは、細胞膜を作るいくつかの小さなタンパク質を結合させる際に必要となる。この現象はプレニル化として知られていて、亜細胞タンパク質の輸送に重要である[22]。
プレニル化の阻害により破骨細胞内の多くのたんぱく質に影響を与えている上に、Ras,Rho,Racの脂質修飾の崩壊が、ビスホスホネートの作用の基礎にあると考えられている。これらのたんぱく質は、破骨細胞形成・生存・細胞骨格の動態それぞれに影響を与えている。特に、細胞骨格は "ruffled border"を保つ上で重要である。
用途
- ビスホスホネートは骨粗鬆症、変形性骨炎(骨ページェット病)、腫瘍(高カルシウム血症の有無にかかわらず)の骨転移[23]、多発性骨髄腫その他骨の脆弱症を特徴とする疾患に対し用いられる。
- 骨粗鬆症やページェット病に対してはアレンドロネートやリセドロネートが第一選択薬として一般的である。これらが効果がない場合や消化器官の異常を訴えるのならばパミドロネートの静脈注射が利用される。ラネル酸ストロンチウムやテリパラタイドが難病に、選択的エストロゲン受容体モジュレーターのラロキシフェンが閉経後の女性にビスホスホネートに投与されることもある。
- 高用量ビスホスホネートの静脈注射はいくつかの種類の癌特に乳癌の骨転移の進行を抑える効果がある。
- メドロネートやオキシドロネートは放射性テクネチウムに混ぜることで、骨疾患を調べることに用いられる。
- さらに、ビスホスホネートは骨形成不全症の子供の骨折率を下げるのに使用されるようになった。
副作用
もっとも問題となる副作用はビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死とされていた。このほか、最近では大腿骨の非定形骨折などの報告例が激増している。
- 経口ビスホスホネートは胃の不調や食道の炎症、びらんを引き起こす。これらはおもに窒素を含むビスホスホネートで主に発生する。これらは内服後30から60分間まっすぐに座っていることで予防できる。
- ビスホスホネートの静脈注射は初回に発熱やインフルエンザ様の症状が出る。これはビスホスホネートが人のγδT細胞の活性化を引き起こすためであると考えてられている。これらは以後は発生しない。
- 電解質平衡異常をわずかに増加させるリスクがある。しかし、定期的なモニタリングが必要なほどではない。
- 慢性腎不全の場合、排出の速度の低下があるため、投与量の調整が必要となることがある。
- 高度の骨や関節、筋骨格系疼痛の報告が多数されている。[24]
- 最近の研究で、ビスホスホネート(厳密に言うとゾレドロネートとアレンドロネート)は女性の心房細動のリスクファクターと報告された。[25][26][27] 炎症反応やカルシウムの血中濃度の増減がその原因と考えられる[26]。ある研究は、心房細動の3%はアレンドロネートの使用によるものであると評価している。しかしながら、たとえ心房細動の高いリスクを持っている集団(心不全・冠動脈疾患・糖尿病などの患者)でも、今のところビスホスホネートの利益はこのリスクを上回っていると信じられている[26]。また、この研究を否定し、リスクファクターであるとのエビデンスは得られなかったとする研究も存在する。[28]
- 長期間にわたるビスホスホネートの使用が特に大腿骨の転子下で骨代謝回転の過剰な抑制を引き起こすことが懸念されている。これにより骨の小さなひびが治らず[29]、最終的にはそのひびがつながり、非定型の骨折をすると考えられている。この種の骨折の治療は極めて困難で、自家骨移植などの治療は全身骨が既にビスホスホネートに侵されているため適応がない。現在なお、この合併症は一般的でなく、骨折の減少の利益の方が大きいと信じられている。
脚注
- ^ 折茂 他
- ^ a b c 米田, p.13
- ^ Fleisch H
- ^ 米田, p.14
- ^ 米田, pp.14-15
- ^ 福本, p.38-42
- ^ “ダイドロネル錠200”. 大日本住友製薬. 2012年1月19日閲覧。
- ^ Frith J, et al.
- ^ “アレディア点滴静注用”. ノバルティスファーマ. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “1ヶ月以内に更新された添付文書情報”. 医薬品医療機器情報提供ホームページ. 医薬品医療機器総合機構 (2009年4月1日). 2012年1月20日閲覧。
- ^ “テイロック注射液5mg/テイロック注射液10mg”. 医薬品医療機器情報提供ホームページ. 医薬品医療機器総合機構. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “骨粗鬆症治療薬 フォサマック®錠35mg”. MSD. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “ボナロン錠35mg”. 医薬品医療機器情報提供ホームページ. 医薬品医療機器総合機構. 2012年1月20日閲覧。
- ^ http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3999419G1024_1_04/
- ^ “新規採用医薬品”. 国立病院機構南和歌山医療センター. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “アクトネル錠17.5mg”. エーザイ. 2012年1月20日閲覧。
- ^ “ベネット錠17.5mg”. 武田薬品工業. 2012年1月20日閲覧。
- ^ リカルボン錠50mg.小野薬品.2012年1月20日閲覧。
- ^ “ゾメタ点滴静注用4mg”. ノバルティスファーマ. 2012年1月20日閲覧。
- ^ van Beek E, et al.(2003)
- ^ 福本, p.40-41
- ^ van beek E, et al.(1999)
- ^ 米田, pp.22-23
- ^ Wysowski D, et al.
- ^ Black DM, et al.
- ^ a b c Heckbert SR, et al.
- ^ Cummings SR, et al.
- ^ Henrik Toft Sørensen, et al.
- ^ 米田, p.30
参考文献
- Dennis M. Black; Pierre D. Delmas, Richard Eastell, Ian R. Reid, Steven Boonen, Jane A. Cauley, Felicia Cosman, Péter Lakatos, Ping Chung Leung, Zulema Man, Carlos Mautalen, Peter Mesenbrink, Huilin Hu, John Caminis, Karen Tong, Theresa Rosario-Jansen, Joel Krasnow, Trisha F. Hue, Deborah Sellmeyer, Erik Fink Eriksen, Steven R. Cummings (May 2007). "Once-yearly zoledronic acid for treatment of postmenopausal osteoporosis.". New England journal of medicine (Boston, United States: Massachusetts Medical Society.) 356 (18): 1809–22. doi:10.1056/NEJMoa067312. ISSN 0028-4793. PMID 17476007. Retrieved 2012-01-19.
- Steven R. Cummings; Ann V. Schwartz, Dennis M. Black (May 2007). "Alendronate and atrial fibrillation". New England journal of medicine (Boston, United States: Massachusetts Medical Society.) 356 (18): 1895–1896. doi:10.1056/NEJMc076132. ISSN 0028-4793. PMID 17476024. Retrieved 2012-01-19.
- Herbert Fleisch (2002). "Development of bisphosphonates". Breast cancer research (London, England: BioMed Central Ltd) 4 (1): 30–34. doi:10.1186/bcr414. ISSN 1465-5411. PMID 11879557. Retrieved 2012-01-19.
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- Henrik Toft Sørensen; Steffen Christensen, Frank Mehnert, Lars Pedersen, Roland D Chapurlat,Steven R Cummings, John A Baron (April 2008). "Use of bisphosphonates among women and risk of atrial fibrillation and flutter: population based case-control study". BMJ (London, England: British Medical Association) 336 (7648): 813–816. doi:10.1136/bmj.39507.551644.BE. ISSN 0959-8138. PMID 18334527. Retrieved 2012-01-19.
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- Wysowski DK; Chang JT (February 2005). "Alendronate and risedronate: reports of severe bone, joint, and muscle pain.". Archives of internal medicine (Chicago, United States: American Medical Association) 165 (3): 346–347. doi:10.1001/archinte.165.3.346-b. ISSN 0003-9926. PMID 15710802.
- 『ゾレドロン酸のEBM』 監修 尾形悦郎、メディカルレビュー社、大阪市中央区、2006年6月1日、第1版第1刷。ISBN 4-89600-978-9。
- 米田俊之 「第1章ゾレドロン酸の概要 1.癌と骨病変の分子細胞生物学 -ビスホスホネート治療の理論的基盤-」『ゾレドロン酸のEBM』、13-35頁。
- 福本誠二 「第1章ゾレドロン酸の概要 2.ビスホスホネートの基礎」『ゾレドロン酸のEBM』、36-45頁。
- 代表 折茂肇 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版』 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会、ライフサイエンス出版。ISBN 978-4897752280。2009年8月26日閲覧。
- “医薬品医療機器情報提供ホームページ”. 医薬品医療機器総合機構. 2012年1月20日閲覧。
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- “アレディア点滴静注用”. ノバルティスファーマ. 2012年1月20日閲覧。
- 宇宙飛行中のビスフォスフォネート投与による骨減少の防止 2011年11月30日 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
薬理学:医薬品の分類 |
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消化器/代謝(A) |
- 胃酸中和剤
- 制吐薬
- 瀉下薬
- 止瀉薬/止痢薬
- 抗肥満薬
- 血糖降下薬
- ビタミン
- ミネラル
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|
血液、血液生成器官(B) |
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循環器系(C) |
- 心臓療法/狭心症治療薬
- 高血圧治療薬
- 利尿薬
- 血管拡張薬
- 交感神経β受容体遮断薬
- カルシウム拮抗剤
- レニン-アンジオテンシン系
- ACE阻害薬
- アンジオテンシンII受容体拮抗薬
- レニン阻害薬
- 脂質降下薬
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皮膚(D) |
- 皮膚軟化剤
- 瘢痕形成剤
- 鎮痒薬
- 乾癬治療薬
- 他の皮膚薬
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泌尿生殖器系(G) |
- ホルモン避妊薬
- 排卵誘発治療
- SERM
- 性ホルモン
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内分泌器(H) |
- 視床下部脳下垂体ホルモン
- 副腎皮質ホルモン
- 性ホルモン
- 甲状腺ホルモン/抗甲状腺薬
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感染(J、P、QI) |
- 抗菌薬
- 抗真菌薬
- 抗ウイルス薬
- 抗寄生虫薬
- 外部寄生虫駆除剤
- 静注用免疫グロブリン
- ワクチン
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悪性腫瘍(L01-L02) |
- 抗がん剤
- 代謝拮抗薬
- 抗腫瘍性アルキル化薬
- 紡錘体毒
- 抗悪性腫瘍薬
- トポイソメラーゼ阻害薬
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免疫系(L03-L04) |
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筋肉、骨、関節(M) |
- アナボリックステロイド
- 抗炎症薬
- 抗リウマチ
- 副腎皮質ホルモン
- 筋弛緩剤
- ビスホスホネート
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脳、神経(N) |
- 鎮痛剤
- 麻酔剤
- 食欲低下薬
- ADHD治療
- 中毒医学
- 抗てんかん薬
- アルツハイマー治療
- 抗うつ薬
- 片頭痛治療
- 抗パーキンソン病薬
- 抗精神病薬
- 抗不安薬
- 抑制剤
- エンタクトゲン
- エンセオジェン
- 陶酔薬
- 幻覚剤
- 催眠薬/鎮静薬
- 気分安定薬
- 神経保護
- スマートドラッグ
- 神経毒
- 食欲促進
- セレニック
- 精神刺激薬
- 覚醒促進物質
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呼吸器(R) |
- 鬱血除去薬
- 気管支拡張薬
- 鎮咳去痰薬
- 抗ヒスタミン薬
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感覚器(S) |
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その他ATC(V) |
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 骨転移 (特集 進行・再発婦人科がんの治療と管理)
- 副甲状腺腫瘍の治療 薬物治療 (内分泌腺腫瘍--基礎・臨床研究のアップデート) -- (副甲状腺腫瘍)
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[★]
- 82歳の女性。傾眠状態のため家族に連れられて来院した。生来健康だったが先月から血尿、口渇、便秘、悪心および食欲不振が出現していた。昨日から傾眠傾向となり増悪するため同居する息子夫婦が自家用車に乗せて連れてきた。身長 152cm、体重 40kg。体温 36.2℃。脈拍 80/分、整。血圧 142/56mmHg。呼びかけると開眼するが、すぐに閉眼する。眼瞼結膜は貧血様である。口腔内は著明に乾燥している。頸部と腋窩のリンパ節を触知しない。心尖部を最強点とするⅢ/Ⅵの収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟。右鼠径部に径約4cm、弾性硬、可動性不良の腫瘤を触知する。尿所見:赤色調、蛋白1+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球多数/1視野、異型性の強い上皮細胞多数/1視野。血液所見:赤血球 380万、Hb 10.8g/dL、白血球 8,100、血小板 13万。血液生化学所見:総蛋白 5.1g/dL、アルブミン 3.2g/dL、総ビリルビン 0.7mg/dL、AST 29U/L、LD 283U/L(基準 176~353)、ALP 146U/L(基準 115~359)、尿素窒素 23mg/dL、クレアチニン 1.3mg/dL、尿酸 11.1mg/dL、血糖 198mg/dL、HbA1c 6.4%(基準 4.6~6.2)、Na 140mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 99mEq/L、Ca 15.0mg/dL、P 2.5mg/dL。
- 輸液とともに投与すべきなのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [111A054]←[国試_111]→[111A056]
[★]
- 64歳の男性。2週間前から持続する右大腿部痛を主訴に来院した。発症時、痛みは安静時にはなく歩行時のみであったが、3日前から安静時痛も出てきたという。既往歴に特記すべきことはない。血液所見:赤血球 478万、Hb 12.3g/dL、Ht 41%、白血球 4,300、血小板 19万。血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.8g/dL。CRP 0.1mg/dL。右大腿骨エックス線写真(別冊No. 12)を別に示す。
- 初期対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111A031]←[国試_111]→[111A033]
[★]
- 60歳の女性。今朝、突然激しい腰背部痛が出現し、歩けなくなったため搬入された。1年前から側頭動脈炎の治療のためプレドニゾロンを内服している。胸腰椎エックス線写真で腰椎圧迫骨折を認める。
- 急性疼痛が消失した後の対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105G048]←[国試_105]→[105G050]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107F012]←[国試_107]→[107F014]
[★]
- 英
- duodenal ulcer, DU
- ラ
- ulcus duodeni
- 関
- 胃潰瘍、胃十二指腸潰瘍、消化性潰瘍
まとめ
- 十二指腸粘膜にびらん・潰瘍を来した病態であり、攻撃因子(ストレス、薬剤、ゾリンジャー・エリソン症候群、甲状腺機能亢進症)が防御因子(慢性肺気腫、喫煙、肝硬変、関節リウマチ、低栄養、腎不全、糖尿病、ステロイド、NSAID、ビスホスホネート)を上回ったことにより生じると考えられている。20-40歳に多く、十二指腸球部前壁に好発する。空腹時・夜間に心窩部痛を覚え、摂食により軽快、その他胸焼け・悪心嘔吐が認められることがある。吐血よりむしろ下血が認められることがある。治癒後瘢痕性の幽門狭窄による通過障害を来すことがある。再発は胃潰瘍よりも頻繁である。胃酸の分泌過多が原因と考えられているが、血中ガストリンは正常なことが多い。検査上、血清中ペプシノゲンIの上昇が認められる。
病因
- 参考1
-
- ピロリ菌
- 単純ヘルペスウイルス
- サイトメガロウイルス
- Helicobacter heilmanni
- その他:結核菌、淋菌
- NSAID
- アスピリン
- 高用量のアセトアミノフェン
- ビスホスホネート(+NSAID)
- クロピドグレル(+NSAID or 高リスク患者)
- コルチコステロイド(+NSAID)
- シロリムス
- スピロノラクトン
- mycophenolate mofetil
- potassium chloride
- 抗悪性腫瘍薬(
- ガストリノーマ
- 全身性肥満細胞症
- 骨髄増殖疾患における好酸球症
- 前庭部G細胞機能亢進
- crack cocaine使用を含めた血行不全
- (器質的な)十二指腸閉塞(輪状膵など)
- 放射線療法
- 浸潤性疾患
- 特発性過分泌十二指腸潰瘍(ピロリ菌陰性)
- 非NSAID家族性消化性潰瘍, ピロリ菌陰性
- 非NSAID消化性潰瘍, ピロリ菌陰性
- ICUストレス潰瘍
- 肝硬変
- 臓器移植
- 腎不全
- COPD
病態
- ガストリンの分泌を十分に抑制できない。
- 壁細胞が過形成している ←ガストリンの作用
- 胃酸の基礎分泌量が上昇している
- ペプシンの分泌が増加している。
- 空腹時の血中ガストリン濃度は変わっていない
- 十二指腸潰瘍では胃潰瘍より胃酸の過剰分泌が明らかである。
- 好発部位:球部小弯側前壁
- 穿孔・穿通:潰瘍が筋層以下に進展すれば生じうるが、胃潰瘍より多い。→穿通性潰瘍 →穿孔性潰瘍
合併症
- 好発部位:球部前壁潰瘍
- 症状:突然現れる上腹部痛。前屈位・側臥位となる。上腹部腹壁緊張亢進、筋性防御、板状硬をみとめ、Blumberg徴候陽性となる。
検査
- 十二指腸球部は壁が薄いために、潰瘍により容易に変形をきたす。タッシェ(憩室様突出)をともなうクローバー城辺型が認められる。
国試
参考
- 1. [charged] Epidemiology and etiology of peptic ulcer disease - uptodate [1]
[★]
- 英
- hyperphosphatemia
- 同
- 高リン酸血症、高リン酸塩血症
- 関
- リン、低リン血症。
[show details]
病因
QB.D-342
- 参考1
参考
- 1. [charged] 高リン血症の原因および治療 - uptodate [2]
[★]
- 英
- bisphosphonate
- 同
- ビスフォスフォネート、ビスホスホネート、ビスホスホン酸、ビスホスホネート製剤
- 関
- 骨粗鬆症
[★]
ビスホスフォネート
[★]
- 英
- phospho
- 関
- フォスフォ、ホスフォ、リン酸