- 英
- nicotinamide adenine dinucleotide, NAD, NAD+
- 関
- ビタミン、ビタミンB3、ナイアシン、ニコチン酸、ニコチンアミド、NADP
機能
補酵素
- 酸化還元酵素の補酵素 プロトンのキャリアー(あるいは電子受容体)と考えることができる。
- NAD+ + H+ + 2e- → NADH
- NAD+ + AH2 → NADH + H+ + A
- TCA回路や脂肪酸のβ酸化で用いられる。
- ニコチンアミドに由来するピリジン環でプロトンを受容する。
基質
- NAD and NADP are active in adenine diphosphate–ribose transfer reactions involved in DNA repair and calcium mobilization(HIM.443)
生合成
- 1. トリプトファン → キノリン酸 →
- 2. ニコチン酸、ニコチンアミド →
NADとNADHの比
- 組織が十分に酸素を得ているとき:↑NAD/NADH ← 生成された還元力が酸化的リン酸化によるATPの産生に十分使われている状態
- 梗塞や運動時:↓NAD/NADH
NADHとNADPHの比
- NADH:異化:各種の基質の還元剤 → 基質を脱水素しエネルギーを得る
- NADPH:同化:合成反応の還元剤
臨床関連
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/12/01 00:51:11」(JST)
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ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド |
|
別称
ジホスホピリジンヌクレオチド(DPN+)、補酵素I
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
53-84-9 |
PubChem |
925 |
KEGG |
C00003 |
ChEBI |
CHEBI:13389 |
- C1=CC(=C[N+](=C1)C2 C(C(C(O2)COP(=O)([O-])OP(=O) (O)OCC3C(C(C(O3)N4C=NC5=C 4N=CN=C5N)O)O)O)O)C(=O)N
|
特性 |
化学式 |
C21H27N7O14P2 |
モル質量 |
663.425 |
外観 |
白色粉末 |
融点 |
160 ℃
|
危険性 |
主な危険性 |
Not hazardous |
NFPA 704 |
|
RTECS番号 |
UU3450000 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (nicotinamide adenine dinucleotide) とは、全ての真核生物と多くの古細菌、真正細菌で用いられる電子伝達体である。さまざまな脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型 (NAD+) および還元型 (NADH) の2つの状態を取り得る。二電子還元を受けるが、中間型は生じない。略号であるNAD+(あるいはNADでも同じ)のほうが論文や口頭でも良く使用されている。
かつては、ジホスホピリジンヌクレオチド (DPN)、補酵素I、コエンザイムI、コデヒドロゲナーゼIなどと呼ばれていたが、NAD+に統一されている。別名、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドなど。
目次
- 1 NAD+の構造や諸特性
- 2 NAD+およびNADHの生理学的意義
- 3 NAD+の合成系
- 4 関連項目
NAD+の構造や諸特性
NAD+はニコチンアミドヌクレオチドおよびアデノシンからなる物質であり、ヌクレオチドの5'がそれぞれリン酸結合によって結合している構造を取る。アデノシンの2'には-OH基が付属しており、これがリン酸基に置換されると、NADP+となる。
酸化還元反応に関与しているのは、ニコチンアミドであり、酸化型および還元型の構造は図の通りである。(還元型は4位の炭素に立体特異性がみられる。)
ヌクレオチドが基本骨格となるために、DNAの光吸収極大域である波長260nmの紫外線を良く吸収する。また、波長340nmの紫外線をNADHのみが良く吸収し、NAD+ ⇔ NADHの変化は波長340nmあるいは339nmの吸光度の測定によって容易に調べることができる。脱水素酵素活性測定にはこの方法が良く用いられている。
NAD+およびNADHの二電子酸化還元反応については以下の通りである。
- NAD+ + 還元物質 (2e- + 2H+) ⇔ NADH + H+ + 酸化物質
NADHのニコチン酸アミドの還元状態では一見、水素原子(1電子+1つのプロトン)が1つだけ付加されたように見えるが、ニコチン酸アミドのN+が電子によって還元されるために、結果として2つの水素原子を運搬しているのと同じ状態となる。
酸化還元電位 (Eo') は-0.32Vである。
NAD+およびNADHの生理学的意義
NAD+は生物のおもな酸化還元反応の多くにおいて必須成分(補酵素)であり、好気呼吸(酸化的リン酸化)の中心的な役割を担う。解糖系およびクエン酸回路より糖あるいは脂肪酸の酸化によって還元物質NADHが得られる。還元物質NADHを生産する好気呼吸反応系は以下の通りである。なお、酸化物質および還元物質を太字で表記する。
エムデン-マイヤーホフ経路
- グリセルアルデヒド3リン酸 + NAD+ → 1,3-ジホスホグリセリン酸 + NADH (グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素、EC 1.2.1.12)
- ピルビン酸 + SH-CoA + NAD+ → アセチルCoA + NADH + CO2 (ピルビン酸脱水素酵素複合体、EC 1.2.4.1))
クエン酸回路
- イソクエン酸 + NAD+ → α-ケトグルタル酸 + NADH + CO2(イソクエン酸脱水素酵素、EC 1.1.1.41)
- α-ケトグルタル酸 + NAD+ + SH-CoA → スクシニルCoA + NADH + CO2(α-ケトグルタル酸脱水素酵素、EC 1.2.4.2.)
- リンゴ酸 + NAD+ → オキサロ酢酸 + NADH(リンゴ酸脱水素酵素、EC 1.1.1.37)
なお、嫌気呼吸時はグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素の関与する反応系でのみNADHが発生する。NADHの好気呼吸時における酸化経路については以下の通りである。 呼吸鎖複合体I(NADH脱水素酵素複合体)
- NADH → NAD+ + H+ + 2e-(プロトン濃度勾配形成)
嫌気呼吸時の酸化経路は以下の通りである。
- ピルビン酸 + NADH → 乳酸 + NAD+(乳酸脱水素酵素、EC 1.1.1.27)
- アセトアルデヒド + NADH → エタノール + NAD+(アルコール脱水素酵素、EC 1.1.1.1.)
- ジヒドロキシアセトンリン酸 + NADH → グリセロール3リン酸 + NAD+(グリセロール3リン酸脱水素酵素、EC 1.1.1.8)
還元的クエン酸回路が作動した場合、上記のクエン酸回路NADH生産反応の逆反応となる。還元的クエン酸回路の作動はNADHの回路への添加によるところが大きく、そのまま炭酸固定反応の駆動力となる。
エネルギー代謝以外にもNADHは多くの機能を持っている。代表的なものでは一部の真正細菌と古細菌が持つDNAリガーゼはATPの代わりにNADHを用いる活性中間体を生じる。
NAD+の合成系
NAD+はヌクレオチド骨格であるために、ヌクレオチド合成系を基本とするがニコチンアミドの付加については、
- ニコチンアミドヌクレオチド + ATP → NAD+ + ピロリン酸 (PPi)
- ニコチンアデニンジヌクレオチドのアミド化(ATP、グルタミン存在下)
の二つの経路が考えられる。ニコチンアミド自体はビタミンB群のナイアシンを原料としている。
関連項目
- 電子伝達体
- 補酵素
- 酸化還元酵素
- 脱水素酵素
- 電子伝達系
- NADP
- サーチュイン遺伝子
補因子 |
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補酵素 |
ビタミン: NAD+ (B3) - NADP+ (B3) - 補酵素A (B5) - THF / H4F (B9), DHF, MTHF - アスコルビン酸 (C) - メナキノン (K) - 補酵素F420
非ビタミン: ATP - CTP - SAM - PAPS - GSH - 補酵素B - 補酵素M - 補酵素Q - メタノフラン - BH4 - H4MPT
|
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有機補欠分子族 |
ビタミン: TPP / ThDP (B1) - FMN, FAD (B2) - PLP / P5P (B6) - ビオチン (B7) - メチルコバラミン, コバラミン (B12)
非ビタミン: ヘム - α-リポ酸 - モリブドプテリン - PQQ
|
|
金属補欠分子族 |
Ca2+ - Cu2+ - Fe2+, Fe3+ - Mg2+ - Mn2+ - Mo - Ni2+ - Se - Zn2+
|
|
主要な生体物質:炭水化物(アルコール、糖タンパク質、配糖体) · 脂質(エイコサノイド · 脂肪酸/脂肪酸の代謝中間体 · リン脂質 · スフィンゴ脂質 · ステロイド) · 核酸(核酸塩基 · ヌクレオチド代謝中間体) · タンパク質(タンパク質を構成するアミノ酸/アミノ酸の代謝中間体) · テトラピロール · ヘムの代謝中間体 |
|
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- ジヒドロキシベンズアルデヒド修飾電極によるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの電気化学的酸化
- 有機相中の各種キノンアニオンラジカルによる水相中のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン類酸化体の液液界面還元反応
- チオニン吸着カーボンフェルトを用いるフロースルー型電気化学検出器による還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドのフローインジェクション分析(<特集>流れを利用する新しい分析技術)
- 長谷部 靖,白井 貴行,長島 知宏,顧 〓,内山 俊一
- 分析化学 54(12), 1197-1204, 2005-12-05
- … 微小カーボン繊維の3次元集積体である多孔性カーボンフェルト(CF)にチオニン(TN)を吸着固定化し, 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)のフローインジェクション分析(FIA)のための電気化学検出器を作製した.ピーク電流値を指標とするNADHのフローアンペロメトリーの最適条件は, 印加電位+0.2V (vs. Ag/AgCl), キャリヤー流量2.5ml min^<-1>, pH8.0, であり, 試料注入量が200μlのとき, ピーク電流値をもとに作製した …
- NAID 110002973730
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- vitamin
- ビタミン、生物の生存・生育に必要な栄養素のうち、炭水化物やタンパク質、脂質、ミネラル以外の栄養素であり、微量ではあるが生理作用を円滑に行うために必須な有機化合物の総称 wiki
ビタミン
ビタミンと欠乏症、過剰症
[★]
- 英
- pellagra
- 関
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド NAD
- ニコチン酸、ナイアシン、ビタミンB3、ナイアシン欠乏症、ニコチン酸欠乏症
疫学
- 男女比=2:1。これはエストロゲンの代謝産物によってトリプトファンの代謝(つまりナイアシンの生合成?)が阻害される事による。 (HBC.498)
病因
-
- 飢餓状態にあっては、ナイアシン欠乏のみならず、トリプトファンからナイアシンを合成するための補酵素(鉄、リボフラビン、ビリドキシン)の欠乏によっても生ずる
- Hartnup diseaseでは細胞膜上のトリプトファン輸送機構が障害されており、小腸からの吸収、腎尿細管での再吸収が障害されるるため(HBC.498)
pellagra 3D
- 皮膚炎 dermatitis
- 下痢 diarrhea
- 痴呆 dementia
- (死 death)
症状
- 皮膚・粘膜症状:皮膚炎(色素沈着/脱出を残す)、舌炎、口角炎、口内炎
- 神経症状:知覚障害、運動失調
- 消化器症状:
- 精神症状:健忘症、認知症
HIM.443
疫学
- HIM.443
- トウモロコシを主食とした人々に多い:中国、アフリカ、インド。
- 北米では、アルコール中毒、先天的に小腸と腎臓でニコチン酸の吸収が低下しているヒト(Hartnup disease)、カルチノイド症候群(トリプトファンがセロトニンに変換されて消費される)
[★]
- 英
- nicotinamide mononucleotide NMN
- 同
- ニコチンアミドリボヌクレオチド
- 関
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド NAD、ニコチンアミド
[★]
[★]
- 英
- nadide
- 関
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
[★]
- 英
- reduced nicotinamideadenine dinucleotide NADH
- 同
- 還元型NAD reduced NAD
- 関
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド NAD NAD+
v
[★]
- 英
- nicotinamide adenine dinucleotide phosphate NADP
- 同
- NADP+、トリホスホピリジンヌクレオチド triphosphopyridine nucleotide TPN
- 関
- NADPH
[★]
- 英
- reduced nicotinamideadenine dinucleotide phosphate, NADPH
- 関
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
[★]
- 英
- adenine Ade
- 同
- 6-アミノプリン 6-aminopurine
- 商
- ロイコン
- (採血バック):カーミAMAP液、カーミCA液、カーミCリューコトラップMAP、セパセルインテグラC-MAP、セパセルインテグラCA、セパセルインテグラMAP、テルモ血液バッグCPDA、テルモ血液バッグMAP液
- 関
- プリン、プリン塩基
[★]
- 英
- nicotine
- ラ
- nicotinum
- 商
- ニコレット、ニコチネルTTS
- 関
- 他に分類されない治療を主目的としない医薬品
作用
- 自律神経節に作用、、、結果として血圧を上昇させる。
臨床関連