- 英
- linezolid LZD
- 商
- ザイボックス Zyvox
- 関
- 抗菌薬
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/12/21 16:38:45」(JST)
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リネゾリド
|
IUPAC命名法による物質名 |
(S)-N-[[3-(3-fluoro-4-morpholinophenyl)-
2-oxooxazolidin-5-yl]methyl]acetamide |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
C (オーストラリア), C (アメリカ合衆国) |
法的規制 |
S4 (オーストラリア), POM (イギリス), ℞-only (アメリカ合衆国) |
投与方法 |
IV, oral |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
~100% (oral) |
血漿タンパク結合 |
31% |
代謝 |
Hepatic 50–70% |
半減期 |
4.2–5.4 時間 |
排泄 |
Renal 80–85% |
識別 |
CAS登録番号 |
165800-03-3 |
ATCコード |
J01XX08 |
PubChem |
CID 441401 |
DrugBank |
APRD01073 |
KEGG |
D00947 |
化学的データ |
化学式 |
C16H20FN3O4 |
分子量 |
337.346 g/mol |
リネゾリド (linezolid) は抗生物質の一種で、バンコマイシンに対する薬剤耐性を獲得したバンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant Enterococci, VRE)および黄色ブドウ球菌 (Vancomycin-resistant Staphylococcus aureus, VRSA) に有効な新薬として登場した。
まったく新しい系統の薬剤で、その抗菌作用は静菌的である。また、MRSA/VRSAという観点では、クリンダマイシン(ダラシン)と同様に毒素産生の抑制効果を持つ。
アメリカでは2000年4月に VRE感染症や院内肺炎などを適応とした治療薬として承認されたが、そのおよそ1年後にこの抗生物質に対する耐性菌登場が報告されている。耐性化のメカニズムとしては、23S rRNAのG2576U変異が原因のひとつとして明らかとなっている。
根拠に基づく医療の観点からは、リネゾリドはVREによる肺炎、菌血症、腹腔内感染症、髄膜炎に有意な効果を示したが、VREによる腸球菌性感染性心内膜炎に対しては効果を証明できていない。MRSAに対しては、バンコマイシンに勝るとも劣らないことが三つのランダム化比較試験で証明されている。(VRSA感染症については、臨床試験を行うほどの患者数はいない)
副作用として、骨髄抑制が重大で、2週間以上の使用で著明に頻度が増大することがわかっている。キヌプリスチン・ダルホプリスチン(シナシッド)では、これはおこらない。
日本では、2001年(平成13年)4月に、バンコマイシン耐性腸球菌を適応として承認された。その後、2006年(平成18年)4月20日付でリネゾリド製剤についてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 感染症の効能・効果の追加が承認された。
外部リンク
- ファルマシア社の新規抗菌薬リネゾリド
- ファイザー株式会社、効能追加を取得
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- リネゾリドの用量調整は必要か? 血小板減少と腎機能との関連
- リネゾリド耐性ブドウ球菌感染症が集中治療室内で集団発生した
- MRSA肺炎におけるリネゾリドの適応 (特集 注目される抗菌薬・抗菌薬療法)
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ザイボックス錠600mg
組成
有効成分(含量)(1錠中)
添加物(1錠中)
- カルナウバロウ
デンプングリコール酸ナトリウム
結晶セルロース
酸化チタン
ステアリン酸マグネシウム
トウモロコシデンプン
ヒドロキシプロピルセルロース
ヒプロメロース
マクロゴール400
禁忌
効能または効果
適応菌種
- 本剤に感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
適応症
- 敗血症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎
適応菌種
- 本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム
適応症
- 各種感染症
- 通常、成人及び12歳以上の小児にはリネゾリドとして1日1200mgを2回に分け、1回600mgを12時間ごとに経口投与する。
通常、12歳未満の小児にはリネゾリドとして1回10mg/kgを8時間ごとに経口投与する。なお、1回投与量として600mgを超えないこと。
- 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、次のことに注意すること。
- 感染症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導のもとで行うこと。
- 原則として他の抗菌薬及び本剤に対する感受性(耐性)を確認すること。[「薬効薬理」1.(2)の項参照]
- 投与期間は、感染部位、重症度、患者の症状等を考慮し、適切な時期に、本剤の継続投与が必要か判定し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
- 点滴静注、経口投与及び切り替え投与のいずれの投与方法においても、28日を超える投与の安全性及び有効性は検討されていない。したがって、原則として本剤の投与は28日を超えないことが望ましい。なお、本剤を28日を超えて投与した場合、視神経障害があらわれることがある。[「重要な基本的注意」4.の項参照]
- 本剤はグラム陽性菌に対してのみ抗菌活性を有する。したがってグラム陰性菌等を含む混合感染と診断された場合、又は混合感染が疑われる場合は適切な薬剤を併用して治療を行うこと。
注射剤から錠剤への切り替え
- 注射剤からリネゾリドの投与を開始した患者において、経口投与可能であると医師が判断した場合は、同じ用量の錠剤に切り替えることができる。
慎重投与
- 投与前に貧血、白血球減少症、汎血球減少症、血小板減少症等の骨髄抑制が確認されている患者、骨髄抑制作用を有する薬剤との併用が必要な患者、感染症のため長期にわたり他の抗菌薬を本剤の投与前に投薬されていた、あるいは、本剤と併用して投薬される患者、14日を超えて本剤を投与される可能性のある患者[「重要な基本的注意」1.の項参照]
- 高度な腎機能障害のある患者[「薬物動態」1.(3)の項参照]
- 体重40kg未満の患者[臨床試験においての使用経験が限られている。]
- 授乳婦[「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」2.の項参照]
重大な副作用
可逆的な貧血(13.0%)・白血球減少症(7.0%)・汎血球減少症(3.0%)・血小板減少症(19.0%)等の骨髄抑制
- 投与中止によって回復しうる貧血・白血球減少症・汎血球減少症・血小板減少症等の骨髄抑制があらわれることがあるので、血液検査を定期的に実施するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。なお、本剤の臨床試験において、14日を超えて本剤を投与した場合に血小板減少症の発現頻度が高くなる傾向が認められている。
視神経症(頻度不明)
- 視神経症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
ショック(頻度不明)、アナフィラキシー様症状(頻度不明)
- ショック、アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
間質性肺炎(1.0%)
- 間質性肺炎があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
腎不全(2.0%)
- クレアチニン上昇、BUN上昇等を伴う腎不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
低ナトリウム血症(頻度不明)
- 意識障害、嘔気、嘔吐、食欲不振等を伴う低ナトリウム血症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
抗菌作用
抗菌力20,21)
- リネゾリドはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して抗菌力を有する。日本、米国及び欧州で実施された試験における検討で、VRE(Enterococcus faecium, Enterococcus faecalis)及びMRSAに対するリネゾリドのMIC90値は、いずれも≦4μg/mL(Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)の標準法に準ずる)であった。なお、Enterococcus faecalisは臨床経験が少ないため、適応外である。
感受性試験方法及び判定基準22,23)
- VRE及びMRSAのうち本剤感受性菌とする際の試験法・判定基準は、CLSIの標準法に準ずる。
(表6参照)
耐性24)
- VRE及びMRSAに対して、リネゾリドと既存の抗菌薬との間に交差耐性の報告はない。
- In vitro試験において、Staphylococcus aureus及びStaphylococcus epidermidisにおける自然発生変異の頻度は10-8〜10-11であった。また、薬剤の増量的継代培養による試験管内耐性獲得試験におけるEnterococcus faecium及びEnterococcus faecalisを用いた20回の継代培養で、各々の菌種でMICは4μg/mLから8μg/mL及び2μg/mLから64μg/mLに感受性の低下が認められた。また、Staphylococcus aureusでは19回の継代培養で、4μg/mLから>64μg/mLに感受性の低下が認められた。
作用機序25)
- リネゾリドは細菌リボソームと結合し、翻訳過程の70S開始複合体の形成を妨げ、細菌の蛋白合成を阻害する。一方、ポリソームの伸長あるいはペプチド結合の合成は阻害せず、作用機序は従来の抗菌薬と異なる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
略号
化学名
- (-)-N-[[(S)-3-(3-fluoro-4-morpholinophenyl)-2-oxo-5-oxazolidinyl]methyl]acetamide
分子式
分子量
性状
- 白色〜微黄白色の粉末である。
ベンジルアルコールに溶けやすく、アセトニトリルにやや溶けやすく、ジクロロメタンにやや溶けにくく、エタノール(99.5)又は水に溶けにくく、ヘキサンにほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- sepsis, (昔の概念→)septicemia
- 関
定義
- 感染症による全身性炎症反応症候群(SIRS)をセプシス(sepsis, 広義の敗血症?)とする
- 感染症の病原体は、一般細菌(グラム陽性菌・陰性菌)、真菌、寄生虫、ウイルスなど
- 皮膚や粘膜の傷とか、種々の臓器にある感染巣から、細菌がリンパ流から血中に入り、全身に播種されて、新たに転移性の感染巣をつくり、重篤な全身症状を引き起こす。
全身性炎症反応症候群の診断基準
- 1. 体温>38℃ or 体温<36℃
- 2. 心拍数>90bpm
- 3. 呼吸数>20回/min or PaCO2<32mmHg
- 4. (白血球数>12,000/ul or 白血球数<4,000/ul) or ( 幼若好中球>10% ) ← ここでいう幼若好中球とは桿状好中球のことである。
敗血症の周辺疾患概念
- 発熱や白血球増加などの全身の炎症の徴候によって特徴づけられる病態(SIRSの診断基準に合致する病態)
病態生理
- LPSが血液凝固を促進→血小板、フィブリノゲン、凝固因子消費 → 血栓形成 → プラスミノゲンを消費して血栓溶解 (FDP産生) →
- →出血傾向 → 皮下出血、歯肉出血、顕微鏡的血尿(出血性敗血症)
原因となる病原体
症状
- 悪寒、戦慄を伴う発熱、頻脈、頻呼吸、全身倦怠感、呼吸困難、意識障害、ショック、乏尿
- 敗血症による多臓器不全で障害を受けやすい臓器:肺、腎臓、心血管系、中枢神経系
検査
血液検査
- 白血球:12,000/ul以上のことが多い(SIRSの定義)
- 左方移動、重症例では白血球減少
- 血小板数:血管内凝固に伴い低下
- CRP:基準値以上
- 凝固系・線溶系:凝固能低下、線溶系亢進
培養
- 血液培養
- カテーテルの先端(留置カテーテルがある場合)
治療 (ICU.644)
酸素投与
敗血症における組織の酸素化
- 敗血症では細胞の酸素摂取能が損なわれている → 重症敗血症患者の組織酸素濃度がなぜ健常者よりも高くなる (ICU.645)
- 重症敗血症や敗血症性ショックにおいては
敗血症における酸素摂取量(ICU.645)
初期蘇生
- 重症敗血症や敗血症性ショックの患者に対する最初の6時間の管理目標
- 1.中心静脈庄8-12mmHg
- 2.平均動脈庄≧65mmHg
- 3.尿量≧0.5 mL/kg/h
- 4.SVO2≧70% or SCVO2≧70%
- SVO2:混合静脈血酸素飽和度、肺動脈血酸素飽和度
- SCVO2:中心静脈血酸素飽和度、上大静脈血酸素飽和度
輸液負荷
- 1. 500-1,000mLの晶質液 or 300-500mLの膠質液を30分かけて投与
- 2. 初期蘇生の目標値に達するまで、または輸液過多寸前になるまで1)を行う。
昇圧薬(ICU.646)
- 1. 輸液負荷を行っても低血圧が持続する場合、ドパミン or ノルアドレナリンを投与
- ドパミン:5-20 ug/kg/min:心拍出量増加:腹腔内蔵機の血流減少
- ノルアドレナリン:0.2-1.3 ug/kg/min:心拍出量不変、血管収縮
- パソプレシン:0.01-0.04 U/min:血管収縮薬:心拍出量減少→心不全の既往で慎重
経験的抗菌薬治療(ICU.646)
- 重症敗血症や敗血症性ショックと診断したら1時間以内に抗菌薬を静脈内投与する
- 抗菌薬投与前に少なくとも2セットの血液検体を採取 → 血液培養&感受性検査のため
- イミペネム/メロペネムの単剤
- MRSAのリスクリスク有り:イミペネム/メロペネム + バンコマイシン/リネゾリド
コルチコステロイド(ICU.646)
- 昇庄薬を必要とするすべての敗血症性ショック患者に推奨
- ヒドロコルチゾン:200-300mg用を2-3回に分割して静脈内投与もしくは経口投与、7日間継続
- 副腎不全の改善
[★]
- 英
- resistant bacterium
- 同
- 薬剤耐性菌 drug resistance bacterium drug resistant bacterium
- 関
- 菌交代症、R因子
医療系の雑誌より(日経カデット11月?)
表1抗菌薬投与後に出現する可能性か高い耐性菌
表2主な耐性菌と治療薬
[★]
- 英
- serotonin syndrome
- 関
- セロトニン、セロトニン受容体
概念
- 抗うつ薬(特に SSRI と呼ばれる選択的セロトニン再取り込み阻害薬。≒セロトニン受容体作動薬)などのセロトニン系の薬物を服用中に出現する副作用
- 精神症状(不安、混乱する、いらいらする、興奮する、動き回るなど)
- 錐体外路症状(手足が勝手に動く、震える、体が固くなるなど)
- 自律神経症状(汗をかく、発熱、下痢、脈が速くなるなど)
- 服薬開始数時間以内に症状が表れることが多い
- 服薬を中止すれば24時間以内に症状は消失
- 「不安」、「混乱する」、「いらいらする」に加えて以下の症状がみられる場合に医療機関受診を推奨している(参考1)
- 「興奮する」、「動き回る」、「手足が勝手に動く」、「眼が勝手に動く」、「震える」、「体が固くなる」、「汗をかく」、「発熱」、「下痢」、「脈が速くなる」
原因となりうる薬剤
トリプトファン、アンフェタミン、コカイン、MDMA、LSD、レボドパ、カルビドパ、トラマドール、ペンタゾシン、メペリジン、SSRI、SNRI、TCA、MAO阻害薬、リネゾリド、5-HT3阻害薬(オンダンセトロン、グラニセトロン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、バルプロ酸、カルバマゼピン、シブトラミン(やせ薬)、シクロベンザプリン(中枢性筋弛緩)デキストロメルファン、(メジコン)、ブスピロン(5-HT1A阻害薬、抗不安薬)、トリプタン製剤、エルゴタミン、フェンタニル、リチウム
診断基準
- QJM. 2003 Sep;96(9):635-42
Hunter criteria
感度84%, 特異度97%
参考
- http://www.pmda.go.jp/files/000144659.pdf
[★]
- 英
- methicillin-resistant Staphylococcus aureus methicillin resistant Staphylococcus aureus MRSA
- 関
- 黄色ブドウ球菌。VRSA、LRSA
耐性獲得機序
- 多種がもつβ-ラクタムに親和性の低いペニシリン結合蛋白を発現するようになったため
- 細胞壁合成酵素(penicillin-binding protein: PBP) PBP 2'の産生。このペニシリン結合タンパクはmecAにコードされている。
- βラクタム薬の投与により発現が誘導される、らしい。
抗菌薬
- QB.H-178
臨床関連
[★]
- 関
- MRSA、抗菌薬
[★]
- 関
- リネゾリド、腸球菌