出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/11/16 18:27:56」(JST)
ニューキノロン (英語: New Quinolone) とは、合成抗菌薬の系列の一つである。DNAジャイレースを阻害することにより、殺菌的に作用する薬剤である。キノロン系をもとに人工的に合成・発展させたものであり、作用機序はキノロンと同一である。また、化学構造からフルオロキノロン(英: fluoroquinolone)とも称される。
経口投与が可能で比較的副作用が少ないということで頻用されている。しかし感染症学の知識を用いて診断を行えば、ほとんどの場合ニューキノロン薬なしで治療は可能である。結核菌に効果があるため、軽はずみに処方すると診断が遅れる。
なお、第IIb世代以降のキノロン系薬剤は、特に呼吸器系感染症への抗菌作用が増強されていることから、レスピラトリーキノロンと通称されている。
ニューキノロンに比較的特徴的な副作用を列記する。
NSAIDsとの併用で痙攣がおこることがあると言われているが近年は論争中である。テオフィリンやワルファリンの血中濃度を上昇させる。また、制酸剤(Mg製剤)や(Al含有の)胃粘膜保護薬、鉄剤を併用するとニューキノロンの吸収が阻害されるので、ニューキノロンと併用する場合は服用する時間を2~3時間空ける。酸化マグネシウム(マグミット、マグラックス等)を用いる場合は、ニューキノロンを朝にまとめて服薬し、夕方に酸化Mgを用いるという方法もある。痛みを伴う場合、ロルカムやフルカムといったCOX-2選択的阻害薬を用いれば、添付文書上は禁忌にはならない。
よく用いられる薬としてはオフロキサシン(OFLX、商品名タリビッド®)、シプロフロキサシン(CPFX、商品名シプロキサン®)、レボフロキサシン(LVFX、商品名クラビット®)があげられる。オフロキサシンやシプロフロキサシンは細菌が一回変異しただけで耐性化する。CPFX耐性化≒ニューキノロン耐性化がほとんどである。
これらの薬は好気性・グラム陰性菌には著効するが、それ以外の効果には差がある。ガチフロキサシンやモキシフロキサシンは肺炎球菌に効果的でシプロフロキサシンは黄色ブドウ球菌によく効くと言われている。前述のようにシプロフロキサシンは耐性化しやすいのでリファンピシンを併用することもあるが、一般に臨床使用での併用で耐性化率の有意差があるとの報告はない。
よく用いられるシプロフロキサシンとレボフロキサシンの使い分けに関してまとめる。シプロフロキサシンは1日2回投与でありレボフロキサシンは1日1回投与である。緑膿菌など好気性グラム陰性菌に対してはシプロフロキサシンの方が活性が高く、肺炎球菌にはレボフロキサシンの方が活性が強い。レボフロキサシンはレスピラトリーキノロンであるがシプロフロキサシンはそうではない。
シプロキサン®400~500mg 1日2回投与やクラビット®500mg 1日1回投与などがよく行われる。しかしST合剤より有効性が高いわけではない。
レスピラトリーキノロンであるクラビット®500mg 1日1回7日間または解熱後3日までで投与がされることがあるがセフェム系とマクロライド系の併用などで代用できる。その場合はメイアクト®200mg 1日3回投与とジスロマック®500mg 1日1回投与を行う。
旅行者下痢症の原因は腸管毒素原性大腸菌(ETEC)が多いため、症状が出現したらクラビット®500mg 1回、シプロキサン®400~500mg 1日2回3日間、ジスロマック®1000mg 1日1回やリファキシミンなどが用いられる。
クラビット®500mg 1日1回7日間などで用いられる。
なおキノロン系薬剤は、濃度依存性の薬物なので、例えばクラビット®100mg 3錠を処方するときは、100mg1錠を三回飲むよりもを3錠を一回飲むよう指示する方が効果は高かったが、以前は国内では認められていなかった。しかし、他国に遅れ、日本でもこの事が次第に認知され、クラビット®250mg/500mgが上市されたため、クラビット100mg錠は製造終了となった。PK/PDパラメータとしては AUC/MIC または Peak/MIC(Cmax/MIC) を指標とする。しかし、実際の臨床の場での投与方法にそぐわないという意見もあるので、注意が必要である。
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