支配神経根 | 責任椎間高位 | 深部反射 | 感覚領域 | 支配筋 | 支配運動 |
C5 | C4-5 | 三角筋腱反射、上腕二頭筋腱反射 | 上腕外側 | 三角筋 | 肩の外転 |
C6 | C5-6 | 上腕二頭筋腱反射、腕橈骨筋腱反射 | 前腕外側、1-2指 | 上腕二頭筋 | 肘屈曲、手関節背屈 |
C7 | C6-7 | 上腕三頭筋腱反射 | 3指 | 上腕三頭筋 | 肘伸展、手関節掌屈 |
C8 | C7-C8 | なし | 4-5指 | 指屈筋 | 手指開閉 |
支配神経根 | 責任椎間高位 | 深部反射 | 感覚領域 | 支配筋 |
L4 | L3-4 | 膝蓋腱反射 | 膝蓋骨の内側近辺 | 大腿四頭筋 |
L5 | L4-5 | 膝蓋骨下外側から母趾にかけて下方に斜行 | 前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋 | |
S1 | L5-S1 | アキレス腱反射 | 小趾 | 下腿三頭筋、長母趾屈筋、長趾屈筋 |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/12/02 00:36:04」(JST)
脊髄神経(せきずいしんけい、英語:spinal nerves、ラテン語:nervi spinales)とは、末梢神経のうち、脊髄から分かれて出るものを指す。末梢神経は脊髄神経と脳神経に分かれるが、脳神経は迷走神経を除いて頭頸部にしか分布しないから、四肢・体幹を支配する神経はほぼすべて脊髄神経である。狭義には脊柱管から前根と後根が出て合わさるところから、前枝と後枝に分かれるまでの部分を指す。
脊髄神経は、脊椎の椎間孔ごとに一対ずつ出ている。頚椎の間から出るものを頚神経(cervical nerve)、胸椎の間から出るものを胸神経(thoracic nerve)、腰椎の間から出るものを腰神経(lumbar nerve)、仙骨の仙骨孔から出るものを仙骨神経(sacral nerve)、第1尾椎と第2尾椎の間から出るものを尾骨神経(coccygeal nerve)と呼ぶ。これらは上から順に番号をつけた略号で、C1~C8(第1頚神経~第8頚神経)、Th1~Th12(T1~T12とも表記する:第1胸神経~第12胸神経)、L1~L5(第1腰神経~第5腰神経)、S1~S5(第1仙骨神経~第5仙骨神経)と呼ばれる。後頭骨と第1頚椎(環椎)の間からC1、第7頚椎と第1胸椎の間からC8が出て、以下、第1胸椎と第2胸椎の間からTh1、第1腰椎と第2腰椎の間からL1、第1前仙骨孔・後仙骨孔からS1が出る。なお、これらの略称は神経ではなく骨に対しても(第3頸椎=C3という具合に)使われることがある。この項ではもっぱら脊髄神経に対してのみ使う。
脊髄神経は脊髄から分かれたのち、脊柱管の中でいくらか下に走ってから椎間孔を抜ける。これはより低い位置の脊髄神経について顕著であり、C8が第7頸椎あたりの高さから起こる(脊髄から根が出る)一方、すべての腰神経は第12胸椎から第1腰椎あたりの高さから起こる。このため脊髄の本幹は第2腰椎あたりの高さで終わるのに、脊柱管の中ではその下にも長く脊髄神経の根が束になって走る。この部分を馬尾という。
脊髄神経の根は、脊髄前面の前外側溝から出る前根と、脊髄後面の後外側溝から出る後根の2つである。前根はおもに骨格筋を支配する運動線維、後根はおもに皮膚などの知覚を伝える感覚線維を入れているので、後根は後外側溝「に入る」と言ったほうが正確ともいえる。前根と後根は合わさって脊柱管を出るが、後根は合流する少し根元で後根神経節(脊髄神経節)と呼ばれるふくらみを作っている。脊髄神経節には神経節細胞と呼ばれる神経細胞の細胞体が入っている。神経節細胞は知覚の一次線維である。すなわち、神経節細胞から延びた線維が皮膚や筋紡錘で知覚の受容器を作り、受容した刺激の信号をシナプスを介することなく脊髄神経節まで送る。神経節細胞は脊髄の中にある細胞とシナプスを作って知覚伝導路をなす。
前根と後根が合流した先で、脊髄神経は細い硬膜枝と交通枝を出したのち、体の前面に向かう前枝と後面に向かう後枝に分かれる(前根・後根と混同しないよう注意されよ)。硬膜枝は硬膜の知覚を伝え、交通枝は交感神経幹の神経節に入る。一部の前枝は神経叢を作って異なる高さからの線維を交換し、さまざまな高さからの線維を含んだ神経になって末梢へ向かう。この型の神経叢は人体に4箇所あり、C1~C4の前枝は頚神経叢、C5~Th1の前枝は腕神経叢、L1~L4の前枝は腰神経叢、L4~S3の前枝は仙骨神経叢を作る。頚神経叢と腕神経叢は鎖骨付近で一部の根を共有していて関係が深いので、まとめて頚腕神経叢とも呼ばれる。腰神経叢と仙骨神経叢は一部の根を共有していて関係が深いので、まとめて腰仙骨神経叢とも呼ばれる。
神経叢にかかわらない脊髄神経はおおむね一様な分布を示す。後枝は固有背筋の運動と背部の皮膚知覚を支配する。前枝は肋間神経として肋骨の間を走り、体壁の筋肉と皮膚知覚を支配する。前枝の支配域は背部まで及んでおり、後枝の支配域よりもかなり広い。
C1は痕跡的である。おのおのの脊髄神経が支配する皮膚領域をデルマトームと呼ぶ。
脊髄の障害、特にブラウン・セカール症候群は傷害された部分より下に由来する脊髄神経に麻痺を起こす。このような障害はデルマトームに沿って現れる。
帯状疱疹はデルマトームに沿って現れる。
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関連記事 | 「神経」「脊髄」 |
脳神経 | 同側の脳神経症状 | 代表的症候群 | ||||
中脳 | III | IV | 内転筋の麻痺、眼球の外方変異 | Weber症候群、MLF症候群、Benedikt症候群 | ||
橋 | V | VI | VII | VIII | 顔面の麻痺 | Millard-Gubler症候群 |
延髄 | IX | X | XI | XII | 嚥下障害、構音障害 | Wallenberg症候群 |
CN# | 一般感覚性 | 臓性感覚性 | 特殊感覚性 | 体性運動性 | 臓性運動性 | 鰓弓運動性 | 神経細胞(中枢神経外) | 神経細胞(中脳) | 神経細胞(橋) | 神経細胞(延髄) | 神経細胞(脊髄) | ○-< 節後ニューロン | 頭蓋からの出口 | 分布と機能 | ||
CN I | 嗅神経 | ○ | 嗅上皮 | 篩骨の篩板の穴 | 左右の鼻腔の天井、鼻中隔の上部、上鼻甲介の粘膜からの嗅覚 | |||||||||||
CN II | 視神経 | ○ | 網膜 | 視神経板 | ||||||||||||
CN III | 動眼神経 | ○ | ○ | 上眼窩裂 | 支配筋:上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋 | |||||||||||
○ | ○ | 毛様体神経節 | 上眼窩裂 | 副交感神経:瞳孔収縮筋、毛様体筋 | ||||||||||||
CN IV | 滑車神経 | ○ | ○ | 上眼窩裂 | 支配筋:上斜筋 | |||||||||||
CN V | 三叉神経 | |||||||||||||||
V1 | 眼神経 | ○ | 三叉神経節 | 上眼窩裂 | 角膜、前頭部、頭皮、眼瞼、鼻の皮膚、鼻腔と副鼻腔の粘膜からの感覚 | |||||||||||
V2 | 上顎神経 | ○ | 三叉神経節 | 正円孔 | 上唇を含む上顎部の顔の皮膚、上顎の歯、鼻粘膜、上顎洞、口蓋の感覚 | |||||||||||
V3 | 下顎神経 | ○ | 三叉神経節 | 卵円孔 | 下唇を含む下顎と顔の外側部の皮膚、下顎の歯、顎関節、口の粘膜、舌の2/3の感覚 | |||||||||||
○ | ○ | 支配筋:咀嚼筋、顎舌骨筋、顎二腹筋の前腹、口蓋帆張筋、膨膜張筋 | ||||||||||||||
CN VI | 外転神経 | ○ | 上眼窩裂 | 支配筋:外側直筋 | ||||||||||||
CN VII | 顔面神経 | ○ | 膝神経節 | 内耳道、顔神経管、茎乳突孔 | 外耳道の皮膚の感覚 | |||||||||||
○ | 膝神経節 | 舌の2/3,口腔底、口蓋の味覚 | ||||||||||||||
○ | ○ | 翼口神経節、顎下神経節 | 副交感神経:顎下腺、舌下腺、涙腺、鼻と口蓋の腺 | |||||||||||||
○ | ○ | 支配筋:顔の表情筋、中耳のアブミ骨、茎突舌骨筋、顎二腹筋の後腹 | ||||||||||||||
CN VIII | 内耳神経 | |||||||||||||||
前庭神経 | ○ | 前庭神経節 | 内耳道 | 半規管、球形嚢、卵形嚢からの前庭感覚 | ||||||||||||
蝸牛神経 | ○ | ラセン神経節 | ラセン器からの聴覚 | |||||||||||||
CN IX | 舌咽神経 | ○ | 脳神経IXの下神経節 | 頚静脈孔 | 外耳からの皮膚感覚 | |||||||||||
○ | 脳神経IXの上神経節 | 耳下腺、頸動脈小体、頸動脈洞、咽頭、中耳からの臓性感覚 | ||||||||||||||
○ | 脳神経IXの下神経節 | 舌の後ろ1/3からの味覚 | ||||||||||||||
○ | ○ | 耳神経節 | 副交感神経:耳下腺 | |||||||||||||
○ | ○ | 支配筋:茎突咽頭筋(嚥下を助ける) | ||||||||||||||
CN X | 迷走神経 | ○ | 脳神経Xの上神経節 | 頚静脈孔 | 耳介、外耳道、後頭蓋窩からの感覚 | |||||||||||
○ | 脳神経Xの上神経節 | 舌底、咽頭、喉頭、器官、気管支、心臓、食道、胃、腸の臓性感覚 | ||||||||||||||
○ | 脳神経Xの下神経節 | 喉頭蓋と口蓋の味覚 | ||||||||||||||
○ | ○ | 内臓近傍のニューロン | 副交感神経:平滑筋(気管、気管支、消化管)、心筋(心臓) | |||||||||||||
○ | ○ | 支配筋:咽頭収縮筋、口蓋帆張筋を除く口蓋の筋、食道上2/3の横紋筋 | ||||||||||||||
CN XI | 副神経 | |||||||||||||||
延髄根 | ○ | ○ | 頚静脈孔 | 支配筋:軟口蓋、咽頭の横紋筋、喉頭(いずれも脳神経Xに加わる神経を経由) | ||||||||||||
脊髄根 | ○ | ○ | 支配筋:胸鎖乳突筋と僧帽筋 | |||||||||||||
CN XII | 舌下神経 | ○ | ○ | 舌下神経管 | 支配筋:舌筋(口蓋舌筋を除く) |
C3 | C4 | C5 | C6 | C7 | C8 | T1 | ||
横隔神経 | ○ | ● | ○ | |||||
肩甲背神経 | ○ | ● | ||||||
長胸神経 | ● | ● | ● | |||||
上神経幹 | ● | ● | ||||||
鎖骨下筋神経 | 上 | 上 | ||||||
肩甲上神経 | 上 | 上 | ||||||
中神経幹 | ● | |||||||
下神経幹 | ● | ● | ||||||
外側神経束 | ● | ● | ● | |||||
外側胸筋神経 | 外 | 外 | 外 | |||||
内側神経束 | ● | ● | ||||||
内側胸筋神経 | 内 | 内 | ||||||
内側上腕皮神経 | 内 | 内 | ||||||
内側前腕皮神経 | 内 | 内 | ||||||
後神経束 | ● | ● | ● | ● | ● | |||
上肩甲下神経 | 後 | 後 | ||||||
胸背神経 | 後 | 後 | 後 | |||||
下肩甲下神経 | 後 | 後 | ||||||
腋窩神経 | 上肢 | 後 | 後 | |||||
筋皮神経 | 外 | 外 | 外 | |||||
正中神経 | 外 | 外 | 内 | 内 | ||||
橈骨神経 | 後 | 後 | 後 | 後 | 後 | |||
尺骨神経 | 内 | 内 |
損傷レベル | 主な動作筋 | 運動機能 |
C1-C3 | 胸鎖乳突筋 | 頭部の前屈、回転 |
C4 | 横隔膜(C3-C5)、僧帽筋 | 呼吸、肩甲骨挙上 |
C5 | 三角筋、上腕二頭筋 | 肩関節屈曲・外転・伸展、肘関節屈曲・回外 |
C6 | 大胸筋、橈側手根伸筋 | 肩関節内転、手関節背屈 |
C7 | 上腕三頭筋、橈側手根屈筋 | 肘関節伸展、手関節掌屈 |
C8-T1 | 指の屈筋群、手内筋 | 指の屈曲、手の巧緻運動 |
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
症状 | 上肢 | 下肢 | ||
脊髄神経 | 上位運動ニューロン | 錐体路症状(痙性麻痺、腱反射亢進、バビンスキー徴候陽性) | 優勢 | |
下位運動ニューロン | 筋力低下、線維束性収縮、筋萎縮、呼吸障害 | 優勢 | ||
脳神経 | 上位運動ニューロン | 偽性球麻痺 | ||
下位運動ニューロン | 球麻痺(構音障害、嚥下障害、舌の萎縮・線維束性収縮)、顔面神経麻痺 |
腱反射 | 病的反射 | クレアチンキナーゼ | 神経伝導検査 | 筋電図 | |
筋萎縮性側索硬化症 | ↑↑ | + | 軽度高値 | 正常 | 神経原性変化 |
重症筋無力症 | → | - | 正常 | 正常 | waning |
多発性筋炎 | → | - | 著明高値 | 正常 | 筋原性変化 |
ギラン・バレー症候群 | ↓ | - | 正常 | 脱髄/ブロック | 神経原性変化 |
名称 |
陰部大腿神経大腿枝 |
外側大腿皮神経 |
大腿神経前皮枝 |
閉鎖神経皮枝 |
伏在神経 |
浅腓骨神経 |
深腓骨神経 |
上殿皮神経 |
中殿皮神経 |
下殿皮神経 |
後大腿皮枝の枝 |
後大腿皮神経の終末枝 |
内側腓腹皮神経 |
外側腓腹皮神経 |
腓腹神経 |
外側足背皮神経 |
臓器 | 栄養血管 | 機能血管 | ||
動脈 | 静脈 | 動脈 | 静脈 | |
食道 | ||||
胃 | ||||
小腸 | 上腸間膜動脈 | 上腸間膜静脈→門脈 | ||
大腸 | 上・下腸間膜動脈 | 上・下腸間膜静脈→門脈 | ||
肝臓 | 固有肝動脈 | 肝静脈→下大静脈 | ||
胆嚢 | 胆嚢動脈 | 胆嚢静脈 | ||
膵臓 | ||||
気管 | ||||
肺 | 気管支動脈 | 気管支静脈 | 肺静脈 | 肺動脈幹→肺動脈 |
腎臓 | ||||
尿管 | ||||
膀胱 | ||||
脾臓 | 脾動脈 | 脾静脈 | ||
精巣 | 精巣動脈 | 蔓状静脈叢 | ||
卵巣 | 卵巣動脈 | 蔓状静脈叢→卵巣静脈 |
筋枝:下腿、足底の屈筋 皮枝:下腿の外側半、足底}
支配神経根 | 責任椎間高位 | 深部反射 | 感覚領域 | 支配筋 |
L4 | L3-4 | 膝蓋腱反射 | 膝蓋骨の内側近辺 | 大腿四頭筋 |
L5 | L4-5 | 膝蓋骨下外側から母趾にかけて下方に斜行 | 前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋 | |
S1 | L5-S1 | アキレス腱反射 | 小趾 | 下腿三頭筋、長母趾屈筋、長趾屈筋 |
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
-図:N.250(腹部)
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