一般感覚性 | 臓性感覚性 | 特殊感覚性 | 体性運動性 | 臓性運動性 | 鰓弓運動性 | 神経細胞 | ○-< 節後ニューロン | 分布と機能 | ||||
中枢神経外 | 中脳 | 橋 | 延髄 | 脊髄 | ||||||||
○ | 膝神経節 | 外耳道の皮膚の感覚 | ||||||||||
○ | 膝神経節 | 舌の2/3,口腔底、口蓋の味覚 | ||||||||||
○ | ○ | 翼口神経節、顎下神経節 | 副交感神経:顎下腺、舌下腺、涙腺、鼻と口蓋の腺 | |||||||||
○ | ○ | 支配筋:顔の表情筋、中耳のアブミ骨、茎突舌骨筋、顎二腹筋の後腹、広頚筋 |
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/04 21:18:24」(JST)
脳神経 |
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第I脳神経 – 嗅神経 |
第II脳神経 – 視神経 |
第III脳神経 – 動眼神経 |
第IV脳神経 – 滑車神経 |
第V脳神経 – 三叉神経 |
第VI脳神経 – 外転神経 |
第VII脳神経 – 顔面神経 |
第VIII脳神経 – 内耳神経 |
第IX脳神経 – 舌咽神経 |
第X脳神経 – 迷走神経 |
第XI脳神経 – 副神経 |
第XII脳神経 – 舌下神経 |
表・話・編・歴 |
顔面神経(がんめんしんけい、facial nerve)は、12ある脳神経の一つで第七脳神経(CNVII)とも呼ばれる。
狭義の顔面神経は、顔面に分布し主として表情筋の運動を支配する。この神経と内耳神経の間に中間神経と呼ばれる神経があり、広義にはこれを含めて顔面神経と呼ぶ。内耳神経と一緒に側頭骨の錐体を貫き、さらに単独で顔面神経管という弓状の骨の管を通り、茎乳突孔から出てきて顔面全体に分岐する。顔面神経管を通る途中から涙腺、唾液腺の分泌、味覚(舌の前部3分の2)などに関係する枝が出て骨の細管を通り抜け関連する神経節や舌神経などに入っていく。顔面神経の神経線維には4種類あり、特殊内臓遠心性線維(special visceral efferent fiber, SVE) 、一般内臓遠心性線維 (general visceral efferent fiber, GVE) 、特殊内臓求心性線維 (special visceral afferent fiber, SVA) 、一般体性求心性線維 (general somatic afferent fiber, GSA) と呼ばれる。
運動神経線維であり、顔面表情筋、広頸筋、頬筋、アブミ骨筋、顎二腹筋後腹などを支配する。この神経線維の細胞体は橋尾側にある顔面神経運動核に存在する。顔面神経運動核はさらに背内側核・腹内側核・中間核・外側核に分けられ、それぞれ異なる筋群を支配している。背内側核からの線維は後耳介神経となって耳介筋と後頭筋(前頭後頭筋の一部)を支配する。腹内側核から出た繊維は顔面神経頸枝として広頸筋を支配している。内側核の中にはアブミ骨筋を支配するものもあると考えられている。顔面神経側頭枝と頬骨枝は中間核から出て前頭筋(前頭後頭筋の一部)と眼輪筋、皺眉筋および頬骨筋を支配する。外側核からの線維は顔面神経頬枝となって頬筋と頬唇筋を支配している。他の動物と比較すると、ヒトの顔面神経運動核では頬唇筋を支配する外側核が顕著に発達しており、一方内側核群はかなり小さくなっている。
これらの遠心性線維は顔面神経運動核から出てまず第四脳室底面のある背内側に向かう。正中を走る内側縦束とやや外側にある外転神経核の間を通り、外転神経核を巡るように鋭角に折れ曲がる(ここが第四脳室底の顔面神経丘の直下である)。ここから腹外側に向かい、三叉神経脊髄路の内側、上オリーブ核の外側を通り、橋の最尾側(小脳橋角部と呼ばれる)で脳幹から外に出る。外転神経を巡るループの事を運動神経内膝 (internal genu of facial nerve) という。末梢に出た繊維は顔面神経管に入って顔面神経外膝で折れ曲がり、はじめ外側へ走行した後に下行する。顔面神経管の中でアブミ骨筋への枝を分枝し、茎乳突孔から顔面に出てそれぞれの支配筋へと分枝する。
顔面神経運動核への投射には以下のようなものがある。三叉神経脊髄路核からの二次性ニューロン、これは角膜反射などの三叉神経顔面反射にかかわる。皮質延髄路からの直接投射、これは左右両側性に投射する。皮質延髄路から網様体を経由した間接投射も存在する。交叉性の赤核延髄路からの投射は背内側核と中間核(すなわち上部顔面筋を支配する部位)にのみ投射している。中脳の網様体からも同側性に投射がある。聴神経の二次あるいは三次ニューロンも顔面神経核に投射すると考えられている。これは聴性顔面神経反射(突然大きな音を聞いたときに目をつぶったり、アブミ骨筋が収縮して耳小骨の振動を抑制する反射)に関係している。
小脳橋角部から狭義の顔面神経と内耳神経(より正確には前庭神経)の間を走行して末梢に出てくる。この神経はSVA、GSA、GVEの各繊維を含んでいる。SVA・GSAの各求心性神経線維は膝神経節 (geniculate ganglion) に神経細胞体を持つ。
SVAは舌の前3分の2からの味覚を鼓索神経 (chorda tympani nerve) を通って伝達する(後ろ3分の1については舌咽神経の支配)。中枢でこの線維は延髄の孤束核 (solitary nucleus、味覚中枢とも呼ばれる) に投射する。
GSAは外耳道や耳介、耳の後ろ部分の表在感覚を伝達する。中枢では三叉神経脊髄路核に投射する。
副交感線維である。橋背外側の網様体に散在するアセチルコリン作動性ニューロンからなる上唾液核から出る。このニューロン群は橋から延髄まで続いており、延髄では下唾液核(舌咽神経の核)や迷走神経背側運動核につながっている。副交感節前線維は末梢に出ると顔面神経外膝の近傍で二つに分岐する。一方は大錐体神経となって翼口蓋神経節に達する。他方は顔面神経管内で顔面神経から分岐して鼓索神経となり、舌神経(三叉神経第III枝下顎神経のさらに枝神経)の枝として顎下神経節に達する。各神経節で節後線維とシナプスを形成し、節後線維は翼口蓋神経節から涙腺・鼻粘膜・口腔粘膜の分泌および血管作動線維になる。また顎下神経節からの節後線維は、顎下腺および舌下腺に達する(より詳しい機能については自律神経系を参照)。
末梢性の顔面神経麻痺は病変の部位によって顔面筋の運動麻痺、知覚障害、自律神経障害などを起こす。
特発性末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺、運動成分のみが麻痺する疾患)の病因はほとんどわかっていないが、顔面神経管内での何らかの原因による神経の腫脹によるものと考えられている。
中枢性の顔面神経麻痺は、皮質延髄路や皮質網様体路など上位運動ニューロンの病変で起こる。中枢性と末梢性の顔面神経麻痺の最大の鑑別点は、中枢性の場合は額のしわ寄せが保持でき、眼輪筋の麻痺も程度が軽いことである。これは顔面神経のうち顔面の上半分の表情筋だけは両側の大脳皮質に支配されているため、一側の中枢に病変があっても麻痺が起こらないのである。そのため、顔面神経麻痺がある場合、額のしわ寄せができなければ、鑑別診断の中から、大脳および中脳における脳梗塞などの脳血管障害はまず除外してよいことになるが、小脳橋角部から顔面神経運動核に至るまでの間で脳血管障害が起きた場合は、小脳橋角部は膝神経節よりも中枢側に位置するため、額のしわ寄せができなくなる上に、前述したような末梢性顔面神経麻痺の種々の症状が発現し得る。ただし、この場合はウイルス感染ではないため、ラムゼイ・ハント症候群にみられる外耳道や耳介の水疱形成は生じない。また顔面神経には情動性支配というものがあり、経路は未知であるが運動野とは別の中枢にも支配されているため、皮質延髄路の途中に病変がある場合でも感情的刺激には反応して健側と同じように表情筋が動かせることがある。
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脳神経 | 同側の脳神経症状 | 代表的症候群 | ||||
中脳 | III | IV | 内転筋の麻痺、眼球の外方変異 | Weber症候群、MLF症候群、Benedikt症候群 | ||
橋 | V | VI | VII | VIII | 顔面の麻痺 | Millard-Gubler症候群 |
延髄 | IX | X | XI | XII | 嚥下障害、構音障害 | Wallenberg症候群 |
CN# | 一般感覚性 | 臓性感覚性 | 特殊感覚性 | 体性運動性 | 臓性運動性 | 鰓弓運動性 | 神経細胞(中枢神経外) | 神経細胞(中脳) | 神経細胞(橋) | 神経細胞(延髄) | 神経細胞(脊髄) | ○-< 節後ニューロン | 頭蓋からの出口 | 分布と機能 | ||
CN I | 嗅神経 | ○ | 嗅上皮 | 篩骨の篩板の穴 | 左右の鼻腔の天井、鼻中隔の上部、上鼻甲介の粘膜からの嗅覚 | |||||||||||
CN II | 視神経 | ○ | 網膜 | 視神経板 | ||||||||||||
CN III | 動眼神経 | ○ | ○ | 上眼窩裂 | 支配筋:上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋 | |||||||||||
○ | ○ | 毛様体神経節 | 上眼窩裂 | 副交感神経:瞳孔収縮筋、毛様体筋 | ||||||||||||
CN IV | 滑車神経 | ○ | ○ | 上眼窩裂 | 支配筋:上斜筋 | |||||||||||
CN V | 三叉神経 | |||||||||||||||
V1 | 眼神経 | ○ | 三叉神経節 | 上眼窩裂 | 角膜、前頭部、頭皮、眼瞼、鼻の皮膚、鼻腔と副鼻腔の粘膜からの感覚 | |||||||||||
V2 | 上顎神経 | ○ | 三叉神経節 | 正円孔 | 上唇を含む上顎部の顔の皮膚、上顎の歯、鼻粘膜、上顎洞、口蓋の感覚 | |||||||||||
V3 | 下顎神経 | ○ | 三叉神経節 | 卵円孔 | 下唇を含む下顎と顔の外側部の皮膚、下顎の歯、顎関節、口の粘膜、舌の2/3の感覚 | |||||||||||
○ | ○ | 支配筋:咀嚼筋、顎舌骨筋、顎二腹筋の前腹、口蓋帆張筋、膨膜張筋 | ||||||||||||||
CN VI | 外転神経 | ○ | 上眼窩裂 | 支配筋:外側直筋 | ||||||||||||
CN VII | 顔面神経 | ○ | 膝神経節 | 内耳道、顔神経管、茎乳突孔 | 外耳道の皮膚の感覚 | |||||||||||
○ | 膝神経節 | 舌の2/3,口腔底、口蓋の味覚 | ||||||||||||||
○ | ○ | 翼口神経節、顎下神経節 | 副交感神経:顎下腺、舌下腺、涙腺、鼻と口蓋の腺 | |||||||||||||
○ | ○ | 支配筋:顔の表情筋、中耳のアブミ骨、茎突舌骨筋、顎二腹筋の後腹 | ||||||||||||||
CN VIII | 内耳神経 | |||||||||||||||
前庭神経 | ○ | 前庭神経節 | 内耳道 | 半規管、球形嚢、卵形嚢からの前庭感覚 | ||||||||||||
蝸牛神経 | ○ | ラセン神経節 | ラセン器からの聴覚 | |||||||||||||
CN IX | 舌咽神経 | ○ | 脳神経IXの下神経節 | 頚静脈孔 | 外耳からの皮膚感覚 | |||||||||||
○ | 脳神経IXの上神経節 | 耳下腺、頸動脈小体、頸動脈洞、咽頭、中耳からの臓性感覚 | ||||||||||||||
○ | 脳神経IXの下神経節 | 舌の後ろ1/3からの味覚 | ||||||||||||||
○ | ○ | 耳神経節 | 副交感神経:耳下腺 | |||||||||||||
○ | ○ | 支配筋:茎突咽頭筋(嚥下を助ける) | ||||||||||||||
CN X | 迷走神経 | ○ | 脳神経Xの上神経節 | 頚静脈孔 | 耳介、外耳道、後頭蓋窩からの感覚 | |||||||||||
○ | 脳神経Xの上神経節 | 舌底、咽頭、喉頭、器官、気管支、心臓、食道、胃、腸の臓性感覚 | ||||||||||||||
○ | 脳神経Xの下神経節 | 喉頭蓋と口蓋の味覚 | ||||||||||||||
○ | ○ | 内臓近傍のニューロン | 副交感神経:平滑筋(気管、気管支、消化管)、心筋(心臓) | |||||||||||||
○ | ○ | 支配筋:咽頭収縮筋、口蓋帆張筋を除く口蓋の筋、食道上2/3の横紋筋 | ||||||||||||||
CN XI | 副神経 | |||||||||||||||
延髄根 | ○ | ○ | 頚静脈孔 | 支配筋:軟口蓋、咽頭の横紋筋、喉頭(いずれも脳神経Xに加わる神経を経由) | ||||||||||||
脊髄根 | ○ | ○ | 支配筋:胸鎖乳突筋と僧帽筋 | |||||||||||||
CN XII | 舌下神経 | ○ | ○ | 舌下神経管 | 支配筋:舌筋(口蓋舌筋を除く) |
# | 鰓弓 | 神経 | 筋 | 骨格 | 動脈* |
1 | 顎弓(上顎隆起、下顎隆起) | CN V 三叉神経: 上顎枝、下顎枝(第一鰓弓の筋を支配) |
咀嚼筋(側頭筋、咬筋、内側翼突筋・外側翼突筋)、顎舌骨筋、顎二腹筋前腹、口蓋帆張筋と鼓膜張筋 | 上顎突起(顎前骨、上顎骨、頬骨、側頭骨の一部)、メッケル軟骨(下顎骨、キヌタ骨、ツチ骨、前ツチ骨靱帯、蝶下顎靱帯) | 消失し一部残存(顎動脈) |
2 | 舌骨弓 | CN VII 顔面神経 |
顔面表情筋(頬筋、耳介筋、前頭筋、広頚筋、口輪筋および眼輪筋)、顎二腹筋後腹、茎突舌骨筋、アブミ骨筋 | アブミ骨、茎状突起、茎突舌骨靱帯、舌骨小角と舌骨体の上部 | 消失し一部残存(舌骨動脈、アブミ骨動脈) |
3 | CN IX 舌咽神経 |
茎突咽頭筋 | 舌骨大角と舌骨体の下部 | 総頚動脈、内頚動脈の基部。外頚動脈が出芽 | |
4 | CN X 迷走神経 |
輪状甲状筋、口蓋帆挙筋 | 喉頭軟骨(甲状軟骨、輪状軟骨、披裂軟骨、小角軟骨、および楔状軟骨 | 大動脈弓の一部 | |
5 | 上喉頭神経(第四鰓弓支配神経) | 咽頭収縮筋 | 消失 | ||
6 | 反回神経(下喉頭神経)(第六鰓弓支配神経) | 喉頭内の筋 | 動脈管と肺動脈の基部 |
味蕾 | 顔面神経 | 舌咽神経 | 迷走神経 | 顔面神経 | 部位 | 特異性 |
鼓索神経 | 舌枝 | 上喉頭神経 | 大錐体神経 | |||
茸状乳頭 | ○ | 舌の前2/3 | 味覚・酸味 | |||
葉状乳頭 | ○ | ○ | 舌の前2/3で外側端 | |||
有郭乳頭 | ○ | 舌の後1/3 | 苦味 | |||
咽頭喉頭部 | ○ | |||||
口蓋部 | ○ |
舌体 |[有郭乳頭] 舌根 前2/3 | ▼[分界稜] 後1/3 | ▼ 感覚神経(特殊) 顔面神経(CN VII)| 舌咽神経(CN IX )、最後方は迷走神経(CN X) 感覚神経(一般) 三叉神経(CN V )| 舌咽神経(CN IX )、最後方は迷走神経(CN X) 運動神経 舌下神経(CN XII)| 舌下神経(CN XII) 発生学的起源 第一鰓弓 第二・三・鰓弓+四鰓弓の一部
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