出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/08/24 10:13:05」(JST)
脳: 青斑核 | |
---|---|
ノルアドレナリン神経の分布。画像中央、緑色の楕円形が青斑核。"Locus coeruleus" と書かれている。
|
|
名称 | |
日本語 | 青斑核 |
英語 | Locus ceruleus |
ラテン語 | Locus caeruleus, Locus coeruleus |
略号 | LC |
関連構造 | |
上位構造 | 脳幹、橋 (脳)、橋被蓋 |
画像 | |
Digital Anatomist | 水平断(黒質) |
関連情報 | |
Brede Database | 階層関係、座標情報 |
NeuroNames | 関連情報一覧 |
NIF | 総合検索 |
MeSH | Locus+Coeruleus |
グレイの解剖学 | 書籍中の説明(英語) |
テンプレートを表示 |
青斑核(せいはんかく)は脳幹にある神経核である。ノルアドレナリン作動性ニューロンを多数含む神経核として有名。 モノアミン含有ニューロンの分類では、A6細胞群[1]とも呼ばれる。ストレスとパニックに対する生理学的反応に関与している。18世紀にFélix Vicq-d'Azyrが発見した。
青斑核は脳内ノルアドレナリン生合成の基点である。青斑核とノルアドレナリンに影響を受ける部位はまとめてlocus coeruleus-noradrenalin systemまたはLC-NA systemと呼ばれる[2]。またノルアドレナリンは副腎髄質から血中に直接分泌される。
その名前はラテン語の"coeruleus"と"locus"に由来する。これは”青い点”を意味し、青く染まらない脳組織の中の青く見える部分に由来している。その色はノルアドレナリン神経細胞体内のメラニンによる。アルファベットのスペリングについては、caeruleus が古典ラテン語のスペルであるが、 より現代的なcoeruleusの方がよく用いられる。 二重母音を詰めた形のceruleusはアメリカ英語におけるスペルである。
青斑核(LC)は橋上部背側、第4脳室底の外側に位置している。多くは中程度のサイズのニューロンで構成されている。ニューロン内のメラニン顆粒が青色の根源である。神経メラニンはノルアドレナリンの重合により合成され、黒質のドーパミンに存在する黒い神経メラニンと似ている。 ヒト成人ではLCは31000から60000μ㎥のサイズの、22000から51000個のニューロンで構成されている[3]
この核は、例えば脊髄、脳幹、小脳、視床下部、視床中継核、扁桃体、終脳、大脳皮質などに遠く広く投射している。LCから分泌されるノルアドレナリンは多くの脳部位を興奮させ、ニューロンを活性化させる。体内の恒常性の重要なセンターとして、LCは視床下部から入力を受けている。帯状回や扁桃体もLCに投射し、感情的な痛みとストレッサーによるノルアドレナリン反応を起こす。小脳と縫線核からの入力がLCに投射している。
LCは多くの脳から入力を受ける。
LCは鬱病、パニック障害、不安に関係している。ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(レボキセチン、アトモキセチン)、セロトニンーノルアドレナリン再取り込み阻害剤(ヴェンラファキシン)、ノルアドレナリンードーパミン再取り込み阻害剤(ブプロピオン)などの内服薬はLCに対して作用し効果を発揮すると考えられている。またREM睡眠に強く関連している。
精神医学的研究では、LCから起こり扁桃体のbasolateral nucleusに終わる神経回路(brain circuit)においてノルアドレナリンシナプス後の反応が、多くのストレス誘発性恐怖疾患や特に外傷後ストレス障害(PTSD)の病態生理に大きく関わっている。"Combat-related PTSD (2005年の第2次世界戦争からの減少するアメリカ軍隊のベテラン研究)では死後に右側のLCニューロンの数が減少していることを示している[4]。このことはPTSDにおいて2つの薬剤、プロプラノロールとプラゾシンがそれぞれPTSDの2次予防、治療に非常に有効であることを説明できるかもしれない。
LCはストレス時の多くの交感神経の反応を仲介するのに重要な役割を担っている。この核はストレスで活性化され、ノルアドレナリンを分泌することで反応する。それにより前前頭皮質を介して認知機能を変え、nucleus accumbensを介してモチベーションをあげ、視床下部ー下垂体ー副腎系を活性化し、脳幹を介して交感神経の活動を上げ、副交感神経の活動を抑制する。視床下部ー下垂体ー副腎系の活性化に特異的に、ノルアドレナリンは視床下部からのコルチコトロピン放出因子(CRH)、さらに下垂体からACTHの分泌を刺激し、副腎でのコルチゾールの合成を促進する。LCから放出されたノルアドレナリンはその産生を抑制し、CRHはその産生を抑制するフィードバックを形成する。一方LCにはノルアドレナリン産生を増加させる[5]。
ストレスに関連した認知機能におけるLCの役割は複雑である。青斑核から放出されたノルアドレナリン(NE)はα2受容体に作用し、working memory(ワーキングメモリー)を増加させるが、過剰なNEは低親和性α1受容体を介してworking memoryを減少させる[6]。
オピオイドはLCニューロンの発火を抑制する。オピオイドが止まると、LCの活動が上がり、opiate withdrawalの症状を起こす。α2受容体アゴニストのクロニジンはアドレナリン作用性の神経伝達を減少させることにより、このwithdrawalを止めるために用いられる[要出典]。
転写調節因子MECP2の遺伝的欠損がRett症候群の原因と考えられている[7]。。MECP2欠損はマウスのモデルで自律神経や交感神経に関連したカテコールアミンの機能不全と関連していると考えられている。LCは脳内のノルアドレナリン神経の起源であり、吻側(大脳皮質、海馬、視床下部)や尾側(小脳、脳幹核)に広く投射している[8]。実際、この構造の変化はMECP2欠損マウスで観察されるいくつかの症状に関与している。LCニューロンの細胞体の電気生理学的特性の変化が示されている。過興奮性や機能低下などである。
アルツハイマー病ではLCニューロンの最大70%が失われている[9]。。LC細胞から分泌されるノルアドレナリンは、大脳皮質や海馬のニューロン、グリア細胞、血管周囲の微小環境における内因性の抗炎症物質を供給している[10]。ノルアドレナリンはアミロイドβにより誘導されるサイトカインの産生やアミロイドβの貪食を抑制するマイクログリアを刺激する。それゆえ、LCの変性がアルツハイマー病の脳でのアミロイドβの沈着に関与しているかもしれない。
自閉症の子供は発熱があると、その障害が少なくなることが言われてきた。最近の研究では自閉症の行動はLC-NA系の機能不全によるもので、発熱が一時的にこの系を再賦活するという仮説がある。さらにLC-NA系が機能的に維持されていることは、少なくともいくつかの自閉症のスペクトラムの疾患は可逆性であることを示している。さらにこれらの疾患の原因を追求し、生物学的テストを行い、LC-NA系に焦点を当てた内服薬の研究が行われている。
青斑核は示されていないが colliculus facialis のすぐ近くである。
ウィキメディア・コモンズには、青斑核に関連するカテゴリがあります。 |
この項目は、医学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:医学/Portal:医学と医療)。 |
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
リンク元 | 「解剖学」「モノアミン作動性ニューロン」「脳幹」「locus coeruleus」 |
関連記事 | 「青斑」「核」 |
名称 |
陰部大腿神経大腿枝 |
外側大腿皮神経 |
大腿神経前皮枝 |
閉鎖神経皮枝 |
伏在神経 |
浅腓骨神経 |
深腓骨神経 |
上殿皮神経 |
中殿皮神経 |
下殿皮神経 |
後大腿皮枝の枝 |
後大腿皮神経の終末枝 |
内側腓腹皮神経 |
外側腓腹皮神経 |
腓腹神経 |
外側足背皮神経 |
臓器 | 栄養血管 | 機能血管 | ||
動脈 | 静脈 | 動脈 | 静脈 | |
食道 | ||||
胃 | ||||
小腸 | 上腸間膜動脈 | 上腸間膜静脈→門脈 | ||
大腸 | 上・下腸間膜動脈 | 上・下腸間膜静脈→門脈 | ||
肝臓 | 固有肝動脈 | 肝静脈→下大静脈 | ||
胆嚢 | 胆嚢動脈 | 胆嚢静脈 | ||
膵臓 | ||||
気管 | ||||
肺 | 気管支動脈 | 気管支静脈 | 肺静脈 | 肺動脈幹→肺動脈 |
腎臓 | ||||
尿管 | ||||
膀胱 | ||||
脾臓 | 脾動脈 | 脾静脈 | ||
精巣 | 精巣動脈 | 蔓状静脈叢 | ||
卵巣 | 卵巣動脈 | 蔓状静脈叢→卵巣静脈 |
伝達物質 | 局在 | |
A15 | ドーパミン | 嗅球の糸球体周囲細胞 |
A14 | 視床下部前部 | |
A13 | 不確帯 | |
A12 | 弓状核(漏斗核) | |
A11 | 視床下部後部 | |
A10 | 中脳腹側被蓋野 | |
A9 | 黒質緻密部 | |
A8 | 赤核後核 | |
A7 | ノルアドレナリン | 橋の網様体外側部 |
A6 | 青斑核 | |
A5 | 顔面神経核と上オリーブ核周囲。橋の下橋網様核(SP.423) | |
A4 | 第四脳室の直下で上小脳脚近傍 | |
A3 | 下オリーブ核背側 | |
A2 | 孤束核の周辺 | |
A1 | 外側網様体核周辺 | |
B9 | セロトニン | 内側毛帯近傍 |
B8 | 内中心角 | |
B7 | 背側縫線核 | |
B6 | 上中心角 | |
B5 | 橋縫線核の中 | |
B4 | 舌下神経前位核の背側 | |
B3 | 大縫線核 | |
B2 | 不確縫線核 | |
B1 | 淡蒼縫線核 | |
C3 | アドレナリン | 下オリーブ核と外側網様体の間 |
C2 | 孤束核とその周辺 | |
C1 | 背側縫線核。延髄網様体腹外側領域(SP.423) |
以下3つの中枢が存在し、相互に干渉し合う。
.