①末梢神経系ニューロン、脳神経節(知覚性、副交感性)、脊髄神経節(知覚性)、交感神経節(交感性)、消化管の副交感神経節 ②神経鞘芽細胞(シュワン細胞) ③グリア細胞 ④髄膜細胞(軟膜、クモ膜、硬膜) ⑤副腎髄質細胞(内分泌) ⑥メラニン芽細胞(皮膚の色素細胞) ⑦顔面・頭部の軟骨・骨と結合組織、軟骨芽細胞、頭蓋骨、ゾウゲ芽細胞、鰓弓の骨と骨格筋、顔面・頚部(鰓弓由来)の真皮、大動脈弓壁
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/12/23 01:53:23」(JST)
神経堤(しんけいてい、neural crest)は、脊椎動物の胚(ヒトでは胎芽と呼ぶ)に過渡的に存在し、神経管が形成される時期に神経管と表皮(あるいは神経襞の自由縁)の間に位置する組織の名称。神経冠ともいう。神経堤細胞は神経胚形成期からその直後にかけて、急速な遊走を行う。
神経堤はその重要性から第四の胚葉と呼ばれてきた。神経堤から自律神経系の神経細胞や神経膠細胞、骨格の一部、腱や平滑筋、軟骨細胞、骨細胞、メラニン細胞(メラノサイト)、クロム親和性細胞、一部のホルモン産生細胞などが分化する。神経堤幹細胞も参照のこと。
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1868年にスイスの発生学者ヴィルヘルム・ヒスは、ニワトリの神経胚にある背側外胚葉と神経管の間にある細胞の列を’zwischenstrang'(中間にあるひも)として記述している[1]。
その後1950年代まで、神経堤についての研究はほとんど両生類胚で行われた(スウェーデンの発生学者スヴェン・ヘルスタディウスによる総説[2])。魚類を研究したニュースは、神経堤を「胚期の注目すべき構造」と記述した[3]が、その後10年間その起源は謎のままだった。
1960年代にチミジン三重水素化による細胞ラベリング法がシボン[4]とウェストン[5]によって開発されたことにより、両生類と鳥類でこの分野の大きな進展が見られた。しかしこの方法が使われたのは一時的であり、ニワトリとウズラのキメラを作ることによって、確かな結論が得られた。1970年代に行われた精力的な諸研究についてはニコル・ル=デュアランによる概説書に詳しい[6]。
神経堤細胞という名称は、両生類や鳥類における神経胚形成期での外胚葉吻側部(これを神経堤と呼んだ)からの遊走を明らかにした研究によって名づけられたものである。ヒトでは、実際に遊走するのは神経管外側縁からであるが、同じ神経堤という名称が使われている。ドイツ語の "Neuralleiste"、もしくは英語の "neural ridge" を語源とする。
なお、英語の "neural crest" からの直訳である「神経冠」という訳語も使用されている。"neural crest"というのは、神経管が閉じた後に背側で移動を開始する神経堤細胞を、トサカ(鶏冠)に見立てたものである(神経管が閉じる以前に神経堤細胞が移動する場合も多い)。
2008年現在、研究者や書籍によって両方の用語が使用されている。しかし「神経冠」の語を使用した場合、文章上ではいいが口頭では、「しんけいかん」「しんけいかんさいぼう」が「神経管」「神経幹細胞」ときわめて紛らわしく、意思の疎通に支障を生ずるので、「神経堤」の方が妥当という指摘がある[7][8]。
神経堤組織となる細胞は、骨形成タンパク質 (Bone morphogenetic proteint, BMP4, BMP7)、Wnt、繊維芽細胞成長因子 (Fibroblast growth factor, FGF) に誘導され、Fox3D、RhoBおよびSlugの各タンパクを発現し、またNカドヘリンの発現を抑制する。
神経堤細胞の運命を決定するのはPax3とZic1でこれらが協調的に働くことによって神経堤細胞のマーカーであるFoxd3などが発現する[11]。
神経堤は、その機能によって大きく分類される[12]。
神経堤細胞が遊走するには、細胞外マトリックスであるインテグリン、フィブロネクチン、ラミニンの相互作用が必要である。エフリンは椎板後方部に発現し、腹側経路にある体幹部神経堤細胞に対する抑制性のリガンドであり、細胞内のチロシンキナーゼを活性化させて細胞移動にかかわる重要な細胞骨格であるアクチンの阻害タンパクをリン酸化する。その結果これらの細胞が椎板前方に遊走するようになる。トロンボスポンジンは椎板前方部への遊走を促進する。これらが間違った場所で発現してしまうと、色素細胞がその場所に遊走、増殖する。
神経堤細胞はさまざまな程度の可塑性を示す。体幹部神経堤細胞の中には、多能性を持つものがある。頭部神経堤細胞は、体幹部に移植すると体幹部神経堤細胞となる。しかし心臓神経堤細胞は、遊走前から役割が決定されている(心臓神経堤細胞だけがPax3を発現する)。
神経堤の誘導、形成、遊走の欠陥に起因する疾患を 神経堤症(ニューロクリストパチーneurocristopathy) といい、このうち限局性白皮症やヒルシュスプルング病を引き起こす遺伝子がマウスやラットのモデルでクローンされている[13]。
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頭文字 | 特徴 | |
A | Asymmetry | 不規則形 |
B | Borderline irregularity | 境界不鮮明 |
C | Color variegation | 色調多彩 |
D | Diameter enlargement | 拡大傾向(直径6mm以上) |
E | Elevation of surface | 表面隆起 |
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