出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/10/21 14:25:40」(JST)
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メタンフェタミン | |
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IUPAC名
(S)-N-メチル-1-フェニルプロパン-2-アミン |
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別称
N-メチルアンフェタミン
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 537-46-2 |
KEGG | D08187 |
特性 | |
化学式 | C10H15N |
モル質量 | 149.24 |
沸点 |
212[1] |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
メタンフェタミン(英語:Methamphetamine, Methylamphetamine)とは、アンフェタミンの窒素原子上にメチル基が置換した構造の有機化合物である。間接型アドレナリン受容体刺激薬としてアンフェタミンと同様の中枢興奮作用を持つ[2]。同様の作用機序により中枢興奮作用を持つメチルフェニデートは注意欠如、多動症、ナルコレプシーの治療薬として用いられる[2]。また、強い中枢興奮作用および精神依存、薬剤耐性により、反社会的行動や犯罪につながりやすいため、日本では『覚せい剤取締法』により、覚醒剤に指定されている[2]。
1893年(明治26年)、日本の薬学者・長井長義によりエフェドリンから合成されて生まれた[2]。1919年(大正8年)、緒方章がその結晶化に成功した。
アンフェタミンより強い中枢神経興奮作用をもつ覚醒剤であり、日本では覚せい剤取締法により規制されている[2]。医療の現場においては現在、昏睡、手術後の虚脱状態、統合失調症における遅鈍症、ナルコレプシー等に対し施用されることがある。
第二次世界大戦当時には連合国軍と枢軸国軍の双方で、航空機や潜水艦の搭乗員を中心に、士気向上や疲労回復の目的で用いられた。21世紀初頭の近年、世界各国においてその蔓延の急速な進行が確認されており、一例としてアメリカ合衆国では、「最も危険なドラッグ」として語られるものとなっている。
日本語では、シャブ、エス(s)、スピード(speed)などの俗称で呼ばれる。ヒロポンの名でも知られるが、これは商品名である(ヒロポン参照)。
英語ではice(アイス)、meth(メス)、crystal meth(クリスタル・メス)などの俗称がある。
諸言語における俗称としては、冰毒(中国語)、tina(フランス語)、shaboo(イタリア語)、tik(フランス語)が挙げられる。
異称、the queen of ice(氷の女王)。
中枢神経を刺激して覚醒させる作用があるため、欝病・精神病などの虚脱状態や各種の昏睡・嗜眠状態などの改善・回復に用いられる。神経終末からノルアドレナリン、ドパミン、セロトニンなどのアミン類を遊離させ、間接的に神経を興奮させる。さらに、モノアミントランスポーターの阻害作用によるアミン類の神経終末への再取り込み阻害作用と、モノアミン酸化酵素の阻害作用によって、シナプス間隙におけるアミン類の濃度を上昇させる作用を持つ。
不安、興奮、頭痛、不眠、手のふるえ、動悸などが起こったり、味覚の異常やじんま疹などの過敏症状が起こることがある。
「覚醒剤#歴史」も参照
ヒロポン®(Philopon®)とは、大日本住友製薬(旧:大日本製薬)によるメタンフェタミンの商品名であり、同社の登録商標(第364236号の1)である。成分名は塩酸メタンフェタミン錠。剤型はアンプルおよび錠剤である。「ヒロポン®」の名は、「疲労をポンと取る」にも掛けているが、英文綴りに見られるように、ギリシア語のΦιλόπονος(ピロポノス/労働を愛する)を由来としている。
日本では、太平洋戦争以前より製造されており、「除倦覺醒劑」として販売されていた。その名の通り、疲労倦怠感を除き眠気を飛ばすという目的で、軍・民で使用されていた。2014年現在でこそ、覚醒剤の代名詞であるヒロポン®だが、当時はメタンフェタミンの副作用について、まだ知られていなかったため、規制が必要であるという発想自体がなく、一種の強壮剤として利用されていた。当時の適応症は、「過度の肉体および精神活動時」「夜間作業その他睡気除去を必要とする時」「疲労二日酔乗り物酔い」「各種憂鬱症」であった。大日本帝国軍では、長距離飛行を行う航空兵などに支給されている。ヒロポン®の注射薬は「暗視ホルモン」と呼ばれ、B-29の迎撃にあたる夜間戦闘機隊員に投与された。中には、一晩で5機のB29を撃墜した例もあった(黒鳥四朗を参照)。ヒロポン®は「本土決戦兵器」の一つとして量産され、終戦時に大量に備蓄されていた。
大東亜戦争終戦により、大日本帝国軍の備蓄品が一気に市場へ流出すると、酒やタバコといった嗜好品の欠乏も相まって、人々が精神を昂揚させる手軽な薬品として蔓延した。その薬物依存症者即ち「ポン中」が大量発生し、中毒患者が50万人を超えるなど社会問題となった。加えて、中毒者が行う不潔な注射器の使い回しは、肝炎ウィルスの伝染機会を増加させ、輸血後肝炎が感染拡大する遠因となった。この時期芸能界にも蔓延し、多くの芸能人が常用していたことが、のちに明らかになっている。当時芸能界で活動したコロムビア・トップが、参議院議員に転身後国会において、ヒロポン®が蔓延した当時の芸能界を証言したことがある[3]。
1949年(昭和24年)、日本国政府はヒロポン®を劇薬に指定、製造業者に対し、覚醒剤としての製造を禁止するよう勧告し、1951年(昭和26年)に覚せい剤取締法を施行したことに伴い、日本国内では、「限定的な医療・研究用途での使用」を除き、覚醒剤の使用・所持がすべて禁止されている[4]。
2014年(平成26年)現在、処方薬として「ヒロポン錠®」「ヒロポン注射液®」の二種類が製造されているが、医療機関が覚醒剤を治療に使用する場合には、都道府県知事への事前の届け出義務があるなど、極めて管理が厳しい処方せん医薬品である。
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リンク元 | 「薬物濫用」「メタンフェタミン」 |
精神依存 | 身体依存 | |
コカイン、アンフェタミン類(アンフェタミン、メチルフェタミン)、大麻 | ○ | |
麻薬(モルヒネ、ヘロイン、コデイン)、バルビツール酸系(フェノバルビタール、チオペンタール)、アルコール | ○ | ○ |
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