下垂体後葉
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/04/12 16:54:17」(JST)
[Wiki ja表示]
脳下垂体後葉(のうかすいたいこうよう、英: Posterior pituitaryもしくはNeurohypophysis)または神経性下垂体、下垂体神経葉、後葉は下垂体後部の内分泌器官である。
目次
- 1 発生および命名
- 2 構成
- 3 ホルモンの合成部位
- 4 ホルモンの作用
発生および命名
脳下垂体を大きく分けると、脳が突出して形成される神経部と、口蓋上皮に由来する腺性部に分けられる。神経部は脳下垂体「神経葉」と呼ばれるほか、ヒトなどの霊長目では腺性部の後方に位置する事から、脳下垂体「後葉」とも呼ばれる。これに対して腺性部は後葉の直前に中葉、更に最前方に前葉が存在する。四足獣では後葉は上方に存在し、この直下に中葉、そして最下方に前葉が形成され、上中下の関係になるが、このような位置関係を無視して「後葉」の名で呼ばれる。
構成
脳下垂体後葉には、ホルモンを産生する細胞の核はなく、その軸索のみが存在しており、この点で前葉と異なる。この軸索の途中や終末にはホルモンやその担体タンパク質であるニューロフィジンを含む膨大部があり、ヘリング小体(Hering body)と呼ばれる。ヘリング小体は染色すると光学顕微鏡でも見ることができる。このような軸索が多い後葉であるが、細胞の核も多数認められる。これは後葉細胞(pituicyte)と呼ばれる一種のグリア細胞で神経軸索と毛細血管に細胞突起を伸ばしホルモンの分泌を助けているとされる。
なお、後葉を流れる毛細血管は下下垂体動脈から分岐したもので、血管壁は有窓型である。
ホルモンの合成部位
後葉には前葉や中葉と異なりホルモン産生細胞が認められず、また神経分泌の概念そのものが無かったために、初期にはホルモンが含まれていないと考えられた。しかし神経分泌物染色法の開発に伴う神経分泌の概念の確立により、間脳のニューロンで合成されたホルモンが軸索輸送され、神経末端に多量に蓄えられていることが解った。この事実は合成部位となる間脳のニューロン群(視束上核、室傍核)に標識されたS含有アミノ酸を取り込ませる実験により確認された。
ホルモンの作用
早くから行われた後葉抽出物投与実験、脳と後葉をつなぐ下垂体茎の切断実験や、また神経変性病例から、後葉には異なる二つの神経ホルモンが含まれる事が確立されている。その一つは、視束上核から輸送されるバソプレッシンで、このホルモンは腎臓の尿細管での水再吸収を促進するとともに、血管収縮の作用を持つ。他の一つは、室傍核から輸送されるオキシトシンで、子宮平滑筋、乳腺筋上皮細胞の収縮をひきおこす作用を持つ。バソプレッシンは腎臓へ作用し、尿量を減少させる事から、抗利尿ホルモンと呼ばれ、このホルモンの低下によって起こる尿崩症は頻度が高い。神経性と上皮由来線性の異なる組織が、なぜ一体となって脳下垂体を形成しているかという疑問は、発生中の腺性部の細胞増殖および分化に神経性の要素が誘導作用を果たしている実験事実によって次第に氷解しつつある。
内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
|
視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部
|
GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
|
|
脳下垂体後葉
|
バソプレッシン - OXT
|
|
脳下垂体中葉
|
MSH(インテルメジン)
|
|
脳下垂体前葉
|
αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - エンドルフィン - リポトロピン)
|
|
|
副腎 |
副腎髄質
|
副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドーパミン)
|
|
副腎皮質
|
副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA)
|
|
|
甲状腺 |
甲状腺
|
甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
|
|
副甲状腺
|
PTH
|
|
|
生殖腺 |
精巣
|
テストステロン - AMH - インヒビン
|
|
卵巣
|
エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
|
|
|
その他の内分泌器 |
膵臓
|
グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン
|
|
松果体
|
メラトニン
|
|
|
内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
|
|
誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 分泌機構と解剖学的特徴 視床下部・下垂体 (内分泌腺腫瘍--基礎・臨床研究のアップデート) -- (内分泌腺の解剖学と生理学)
- 神経性下垂体に発生した顆粒細胞腫の細胞像(頭頸部2, 第46回日本臨床細胞学会総会(春期大会))
- 小林 忠男,植田 正己,西野 俊博,村松 美津江,馬場 正道,金子 千之,九嶋 亮治,森谷 鈴子
- 日本臨床細胞学会雑誌 44(Suppl.1), 93, 2005-03-22
- NAID 110004046754
Related Links
- 主に前下方にある部分は、腺性下垂体(下垂体腺葉)と呼ばれ、発生過程で口蓋の上皮 が増殖してできた、ラトケ嚢と呼ばれる袋状のくぼみに由来する上皮性細胞塊からなる。 一方、主に後上方にある部分は、神経性下垂体(下垂体神経葉または後葉)と呼ば ...
- 脳下垂体を大きく分けると、脳が突出して形成される神経部と、口蓋上皮に由来する腺 性部に分けられる。神経部は脳下垂体「神経葉」と呼ばれるほか、ヒトなどの霊長目では 腺性部の後方に位置する事から、脳下垂体「後葉」とも呼ばれる。これに対して腺性部は ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- vasopressin VP
- 同
- バゾプレッシン, arginine vasopressin AVP、抗利尿ホルモン antidiuretic hormon ADH
- 商
- ピトレシン Pitressin
- 関
- デスモプレシン、尿細管
[show details]
分類
性状
産生組織
- PED. 1328
標的組織
- 腎臓の集合管
- 腎臓の細い上行脚、太い上行脚、接合尿細管にも作用する (SP.816)
生理作用
- 血管平滑筋の収縮(V1受容体)
- V1受容体は抗利尿作用を示すより大用量で動作(SAN.189) ← 生理的な量では血管収縮による血圧上昇はない。
- 髄質内層集合管で尿素の再吸収を高める(SP.817)
作用機序
抗利尿作用
|
集合管上皮細胞
|
V2R
|
血管平滑筋収縮(昇圧作用)
|
血管内皮
|
V1R
|
分泌調節
- 血漿浸透圧↑、循環血漿量↓→分泌↑ ( 出血 )
- 血漿浸透圧↓、循環血漿量↑→分泌↓ ( 水の大量摂取 )
ADH分泌促進/作用増強する薬物
- QB.D-331
ADHの作用を修飾する物質
- 糖質コルチコイド:水代謝作用(水利尿):GFR↑させたりADHに拮抗することで細胞内への水移動を抑制する
癌患者とADH
- 日腎会誌 2012:54(7):1016-1022
- Ellison DH, Berl T. Clinical practice. The syndrome of inappropriate antidiuresis. NEJM. 2007;356:2064-2072. PMID 17507705
- 異所性ADH産生腫瘍、抗悪性腫瘍薬の副作用、手術侵襲、嘔気・嘔吐、疼痛
分子機構
ここまで、2007後期生理学授業プリント&想像 でまとめた
- 集合管の上皮の基底側に発現していると思われるV(75%){2};Rを介して、アクアポリン2(AQP2)が発現して尿細管腔側に局在、アクアポリン2から水を細胞内に取り込み、アクアポリン3を介して細胞基底側(血管腔)に水が移動する (2007後期生理学授業プリント, SP.817 図12-63)
- 以下の記述と矛盾する気がする・・・
- 水輸送体apuaporin1(AQP1)に作用して集合管における水透過性を高める(SP.817)。
効能又は効果
- ピトレシン注射液20
薬効薬理
- ピトレシン注射液20
- 遠位尿細管における水の再吸収を促進することにより、抗利尿作用を発揮する1)。
- 腹部内臓の細動脈を収縮させ、門脈血流を減少させるので、一時的に門脈圧が下降するため、門脈圧亢進による食道出血時に止血作用を発揮する。
副作用
- ピトレシン注射液20
- 血管収縮による血圧上昇、狭心症、腹痛がありうる。(QB.D-357)
- 重大な副作用:ショック、横紋筋融解症、心不全・心拍動停止、精神錯乱・昏睡、水中毒、中枢神経障害(中心性橋脱髄症)、無償、心室頻拍
禁忌
- ピトレシン注射液20
- 1. 本剤の成分に対しアナフィラキシー又は過敏症の既往歴のある患者
- 2. 冠動脈硬化症 (心筋梗塞症、狭心症等) の患者[心筋虚血を延長させることがある。]
- 3. 急速な細胞外水分の増加が危険となるような病態 (心不全、喘息、妊娠中毒症、片頭痛、てんかん等) のある患者[水中毒を起こすことにより、それらの病態を悪化させるおそれがある。]
- 4. 血中窒素貯留のある慢性腎炎の患者[水分貯留を起こすことにより、血中窒素の排泄が抑制されるおそれがある。]
添付文書
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2414402A1035_1_02/2414402A1035_1_02?view=body
臨床検査
基準値
- 0.3-4.2pg/ml (RIA2抗体法) (検査の本)
- 0.3-4.0pg/ml (RIA2抗体法) (LAB.695)
[★]
- 英
- oxytocin OT
- 関
- ホルモン
- 商
- アトニン
性状
分類
産生組織
標的組織
- 1. 乳管周囲の筋上皮細胞の収縮
- 2. 子宮頚部、膣
- 3. 卵管の蠕動運動を高める
作用
- 1. 乳汁分泌
- 2. 子宮頚部や膣の伸展
- 3. 子宮筋の収縮 → 分娩促進、授乳時の子宮収縮(後陣痛)、子宮復古
分泌の調整
分子機構
臨床関連
[★]
- 英
- posterior pituitary (Z), posterior lobe of hypophysis
- ラ
- lobus posterior hypophyseos
- 同
- 神経下垂体 neurohypophysis (Z)、神経性下垂体
- 関
- 下垂体
発生学的由来
- 第三脳室が突出したもの(PT.408)
- 間脳腹側部の神経上皮の一部より生じる
解剖
機能
-神経性下垂体
-neurohypophysis
[★]
- 英
- infundibulum (KL)
- 同
- 下垂体茎 pituitary stalk
- 関
- 下垂体
- 図:L.415(模式図)
- 下垂体の漏斗部と言われる
発生
- 第三脳室が下方に伸び出したところ。この先に下垂体が連なる (KL.724)
- 漏斗は第5週くらいにラトケ嚢と接触する(KAPLAN STEP 1 Q BOOK p.52)
- 漏斗は漏斗柄と下垂体後葉 = 神経性下垂体 を形成する
[★]
- 英
- pituitary gland (Z), hypophysis (Z)
- ラ
- glandula pituitaria
- 同
- 脳下垂体
- 図譜では矢状断のものしか載っていないが、前頭断で見ると意外に横に長い、みたい。
発生学(L.413)
- 胎生第4週に下垂体前葉と下垂体後葉が接する。Rathke嚢の細胞は、活発に分裂して前葉を形成し、内腔は殆ど閉鎖する。成人ではコロイドを満たした小嚢胞として前葉と後葉の間に認められる。
画像
- MRI T1:(高信号)下垂体後葉 > 下垂体前葉 ← 脂肪濃度を反映しているのですかね?軸索が多いでしょ?
[★]
- 英
- nerve
- ラ
- nervus
- 関
- ニューロン
解剖で分類
- 中枢神経 central nervous systen CNS
- 末梢神経 peripheral nervous system PNS
情報で分類
- 感覚神経 sensory nerve = 求心性線維 afferent nerve
- 運動神経 motor nerve = 遠心性線維 efferent nerve
機能で分類
- 体性神経 somatic nervous system SNS
- 自律神経 autonomic nervous system ANS
[★]
- 関
- 神経、神経学、神経学的、神経原性、神経因性、神経型
[★]
- 英
- body
- ラ
- corpus、corpora
- 関
- 肉体、身体、本体、コーパス、ボディー