出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/09/26 23:38:21」(JST)
心不全 | |
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分類及び外部参照情報 | |
主な心不全の兆候
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ICD-10 | I50. |
ICD-9 | 428.0 |
DiseasesDB | 16209 |
MedlinePlus | 000158 |
eMedicine | med/3552 emerg/108 radio/189 med/1367150 ped/2636 |
MeSH | D006333 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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心不全(しんふぜん、heart failure)は、心臓の血液拍出が不十分であり、全身が必要とするだけの循環量を保てない病態を指す。そのような病態となるに至った原因は問わず、端的に述べると「心臓の収縮力が低下」した状態である。
心不全の症状は、主に鬱血によるものである(鬱血性心不全)。左心と右心のどちらに異常があるかによって、体循環系と肺循環系のどちらにうっ血が出現するかが変わり、これによって症状も変化する。このことから、右心不全と左心不全の区別は重要であるが、進行すると両心不全となることも多い。
また、治療内容の決定に当たっては、急性と慢性の区別も重要である。急性心不全に当てはまるのは例えば心筋梗塞に伴う心不全であり、慢性心不全に当てはまるのは例えば心筋症や弁膜症に伴う心不全である。 念のため付け加えると、急性心不全が終末期状態としての心不全を指しているわけではない(急性心不全は治療により完全に回復する可能性がある)。 最近では、心臓の収縮機能は正常であるが拡張期機能が低下した心不全(HF-PEF:ヘフペフ)が、高齢女性に多いことがわかって来ており病態や治療方法の確立が急がれている。
症状を来たす原因が、主に左心室の機能不全によるものなのか、右心室の機能不全によるものなのかによって、心不全を大きく2つに分類する方法である。厳密に区別することができない場合も多いが、病態把握や治療方針決定に有用であるため、頻繁に使用される概念であるので後述する。
左心不全 | 右心不全 | |
うっ血による所見 | 左房圧上昇による肺うっ血 | 中心静脈圧上昇による静脈うっ血 |
• 急性肺水腫(労作時呼吸困難や起座呼吸、湿性ラ音など) • 左房圧上昇 |
• 下腿浮腫 • 静脈怒張 |
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心拍出量低下 による所見 |
• 血圧低下 • 全身倦怠感 |
• 肺血流量低下による心拍出量低下 |
その他の所見 | • 心濁音界の拡大 • III音、IV音(奔馬律) |
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左心不全(さしんふぜん、left heart failure)は、左心系の機能不全にともなう一連の病態のことである。左心系は体循環を担当することから諸臓器の血流低下が発生するほか、心拍出量低下による血圧低下、左房圧上昇による肺うっ血が生じる。肺うっ血は、肺が左心系の上流に位置することから出現するものである。
胸部X線画像においては、
が見られる。
左心不全は、さらに肺血流の停滞を経由し、右心系へも負荷を与えるため、左心不全を放置したとき、右心不全を合併するリスクが高くなる。特に心不全における呼吸困難は、横になっているよりも座っているときの方が楽である、という特徴を持つ(これを起座呼吸(きざこきゅう、orthopnea)という)。
右心不全(うしんふぜん、right heart failure)は、右心系の機能不全にともなう一連の病態のことであり、静脈系のうっ血が主体となる。この場合、液体が過剰に貯留するのは体全体、特に下肢であり、心不全徴候としての下腿浮腫は有名である。その他、腹水、肝腫大、静脈怒張など、循環の不良を反映した症状をきたす。
右心不全の多くは、左心不全に続発して生じるかたちとなる。左心不全で肺うっ血が進行し、肺高血圧をきたすまでに至ると、右室に圧負荷がかかり、右心不全を起こす。
右心不全のみを起こすのは、肺性心、肺梗塞など、ごく限られた疾患のみである。
急性・慢性心不全の区別は、主として、治療内容の決定に使用される。
急性心不全においては、心機能の低下が代償可能な範囲を上回り、急激な低下を示すことから、血行動態の異常は高度となる。なお、左心不全が多い。
症状としては、呼吸困難、ショック症状といった急性症状が出現する。
治療方針としては、血行動態の正常化を図る(心臓負荷を軽減し、心拍出量を増加させる)ことが優先され、迅速な処置が求められる。
長期にわたって進行性に悪化するため、代償された状態が長期間持続したのちに破綻する。これによって、収縮能および拡張能は低下し、また、代償機構の破綻によって、増大した体液が貯留することとなる。
この結果、倦怠感と呼吸困難の持続が出現し、運動耐容能が低下する。
治療は、心機能の改善やQOLの向上と生命予後の改善を目的として、自覚症状の軽減を主眼とするものとなる。
前述のような臨床症状から疑われ、心エコー検査によって診断される。エコーによって、心不全の原因疾患の検索がなされ、心臓の動きは十分か、拍出量がどの程度かなどを定量的に把握することができる。胸部X線写真や心電図、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)などの血液生化学検査が参考になることもあるが、通常はエコーが最も多くの情報をもたらす。観血的には肺動脈カテーテルを挿入し心拍出量や肺動脈楔入圧(PCWP)、中心静脈圧(CVP)の測定を行う。
心不全の病期分類には臨床症状から分けた分類, カテーテルによる計測値から分けた分類などさまざまな分類がある NYHA分類(ニハ分類、またはナイハ分類と発音される)は、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association: NYHA)が定めた心不全の症状の程度の分類であり、以下のように心不全の重症度を4種類に分類するものであるが、簡便でありよく使用される。
killip分類は急性心筋梗塞での心機能障害の重症度を分類したものである.純粋な心不全の分類とは異なるかもしれない
Forrester分類はカテーテルによる計測値を使った分類である 治療法との相関で実際の現場ではよく使われる分類法であるが,カテーテルを挿入しないと計測できないといった不便さがある
心拍出 係数 |
2.2以上 | Ⅰ | Ⅱ |
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2.2以下 | Ⅲ | Ⅳ | |
肺動脈契入圧 | |||
18以下 | 18以上 |
Nohria分類はNohriaらが提唱した, Forrester分類のカテーテルを挿入しないと計測できないといった不便さを改善した分類である
うっ血所見 | |||
---|---|---|---|
なし | あり | ||
組織灌流 の低下 |
なし | A warm-dry |
B warm-wet |
あり | L cold-dry |
C cold-wet |
なおここで言う低灌流所見(=cold)は末梢まで血液が行きわたっていない状態,四肢が冷たいといった所見である 鬱血所見(=wet)は肺鬱血の所見,つまり夜間呼吸困難,起座呼吸,kerley B line(+)といった所見である
原則として、静脈うっ滞を改善するには利尿薬が、心臓の拍出量改善のためには強心薬が使われる。 その他血管拡張薬を併用することもある。遺伝子組み換えヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)も用いられる。ただし、心不全は様々な原因によって起こるので、原疾患によって治療法も大きく異なる。
心不全の予後を改善する目的として、交感神経β受容体遮断薬やアンジオテンシン変換酵素、また利尿薬の一つであるスピロノラクトンなどの抗アルドステロン薬の併用による治療が推奨されている[1]。
急性期治療においては、CS(Clinical Scenario)分類を用いることが提唱されている。これは収縮期血圧(sBP)をベースにしたもので、急性心不全発症時のsBPが高いほど心予備能が高い、すなわち予後良好である、という知見に基づいている。CS分類においては、まず来院直後のsBPをもとに下記の3分類、また明らかに治療戦略の異なるものを独立させて、合計5分類を行なう。
入院期の治療においては、フォレスター分類(Forrester分類)が用いられてきた。これは、心臓の拍出量を表す心係数(2.2 L/min/m2を境界とする)と、静脈のうっ滞の程度を表す肺動脈楔入圧(18 mmHgを境界とする)とから、心不全の状態を4つに分類し、それぞれに適切な治療法を提案するものであった。しかし、肺動脈楔入圧の測定はかなり侵襲度が大きいこともあり、身体診察のみで分類できるノーリア分類(Nohria分類)の活用が提唱されている。
循環器の専門医が少なかった1960年代までは、心臓病は鍼灸の適応症の一つであった。たんに症状を緩和するだけでなく、弁膜症や狭心症などの治験例もかなりある[2]。現在はうっ血性心不全などの治療でも、針灸を利用する人はほとんどいないが、医療分野で進んでいるのは外科だけで、内科ではまだ治療法が確立されていないばかりか、不快な息切れなどを和らげる薬もあまりなく、針灸による治療をもっと活用すべきである。
くすりでは、高貴生薬のみで作られた強心剤の救心や、それに類似した薬品がいくつか発売されており、動悸や息切れの緩和に利用されている。
原疾患によって異なる。一般的には、心不全に対して適切な治療がなされていれば、長期生存も可能である。
死因としては「心不全=心臓が止まった」としての意味でしかないため、死亡診断書の死因としては認められない。(病理学上の正式な死因が記載される)。
突然死に至ることもある病態であるため、芸能人、実業家、政治家などが自殺や薬物過剰摂取などで急死した場合などにおいて、遺族や関係者の意向、あるいは商業的・政治的な事情などからこの事実をあえて伏せたい場合に、死因を急性心不全として公表する例もある。なお、これと同様のことは急性心筋梗塞、脳出血などにもいえる。[要出典] 実際、著名人の死について、死亡当初は急性心不全として公表されながらも、実際には自殺や薬物の過剰摂取事故であったという事実が、死後一定の期間経った後に遺族や関係者などによって明らかにされた例は存在する[3] [4]。 また、急死時において最後まで死因を特定しにくい時に、検死報告書などに便宜上「急性心不全」と記載されることが時折見られ[5][6]、過去には時津風部屋力士暴行死事件の際にこれが大きな問題となったことがある。
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国試過去問 | 「105E037」 |
リンク元 | 「呼吸困難」「イソプロテレノール」「クリニカルシナリオ」「うっ血性心不全」「ミルリノン」 |
関連記事 | 「心不全」「不全」「急性」 |
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※国試ナビ4※ [105E036]←[国試_105]→[105E038]
慢性呼吸困難 | 急性呼吸困難 | ||
呼吸器疾患 | 閉塞性障害 | 慢性閉塞性肺疾患 肺リンパ脈管筋腫症 びまん性汎細気管支炎 気管支拡張症 |
気管支喘息発作 アナフィラキシー 上気道閉塞 気道内異物 肺炎・細気管支炎 慢性呼吸器疾患の急性増悪 緊張性気胸 |
拘束性障害 | 肺線維症 間質性肺炎 | ||
混合性障害 | 塵肺 | ||
循環器疾患 | 肺高血圧症 慢性心不全 狭心症 |
急性冠症候群 急性心不全 非心原性肺水腫 致死性不整脈 肺血栓塞栓症 慢性呼吸器疾患に伴う右心不全 | |
血液疾患 | 貧血 | 急性出血 | |
神経筋疾患 | 重症筋無力症 ギラン・バレー症候群 筋萎縮性側索硬化症 進行性筋ジストロフィー |
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代謝疾患 | 甲状腺機能亢進症 | 糖尿病性ケトアシドーシス 尿毒症性アシドーシス | |
腎疾患 | 腎性貧血 | 糖尿病腎症に伴う肺水腫 急速進行性糸球体腎炎の肺障害 | |
中枢神経系疾患 | 脳炎 脳腫瘍 髄膜炎 |
||
精神神経系疾患 | 過換気症候群 神経症性障害 心身症 |
呼吸困難の原因となる病態・疾患 | ||
呼吸困難の機序 | 原因 | 病態.疾患 |
①換気(労作)の増加 | 低酸素血症 (hypoxemia) | チアノーゼをきたすCHD:Fallot四徴症など 高山病 肺動静脈瘻 肺実質病変:肺炎、腫瘍など 無気肺 肺塞栓症 新生児呼吸窮迫症候群 |
高炭酸ガス血症 | 閉塞性肺機能障害、肺胞低換気(「②換気能力の低下」参照) | |
アシドーシス(anaerobic and metabolic acidosis) | 心疾患:肺動脈弁狭窄症、MSによる心拍出量の低下 重症貧血 妊娠 腎不全 糖尿病 | |
発熱 | 感染症など | |
②換気能力の低下 | 閉塞性肺機能障害 | 気道の閉塞:喉頭炎、声帯麻痺、異物など 閉塞性肺疾患:慢性気管支炎、慢性肺気腫、気管支喘息、DPB |
拘束性肺機能障害 | 肺高血圧症:左心不全、MS 肺切除 胸水の貯留 気胸 腫瘍、肺炎 食道裂孔ヘル二ア 胸郭成形、脊柱後弯・脊柱側弯、強直性脊椎炎 間質性肺炎(特発性、続発性) 塵肺、過敏性肺炎、サルコイドーシス、BO 反復性誤嚥性肺炎 Langerhans肉芽腫症 | |
肺胞低換気 | 神経・筋機能不全:ポリオ、多発性神経障害、MG、筋ジストロフィー 低K血症など | |
③心因性呼吸困難 | 不安、抑うつ、医原性 | 過換気症候群 |
CHD:先天性心疾患、MS:僧帽弁狭窄症、DPB:びまん性汎細気管支炎、BO:閉塞性細気管支炎、MG:重症筋無力症 |
CS1 | SBP>140mmHg | ・急激に発症する ・主病態はびまん性肺水腫 ・全身性浮腫は軽度:体液量が正常または低下している場合もある ・急性の充満圧の上昇 ・左室駆出率は保持されていることが多い ・病態生理としては血管性 |
・NPPVおよび硝酸薬 ・容量過負荷がある場合を除いて、利尿薬の適応はほとんどない |
CS2 | SBP100~140mmHg | ・徐々に発症し体重増加を伴う ・主病態は全身性浮腫 ・肺水腫は軽度 ・慢性の充満圧、静脈圧や肺動脈圧の上昇 ・その他の臓器障害:腎機能障害や肝機能障害、貧血、低アルブミン血症 |
・NPPVおよび硝酸薬 ・慢性の全身性体液貯留が認められる場合に利尿薬を使用 |
CS3 | SBP<100mmHg | ・急激あるいは徐々に発症する ・主病態は低灌流 ・全身浮腫や肺水腫は軽度 ・充満圧の上昇 ・以下の2つの病態がある ①低灌流または心原性ショックを認める場合 ②低灌流または心原性ショックがない場合 |
・体液貯留所見がなければ容量負荷を試みる ・強心薬 ・改善が認められなければ肺動脈カテーテル ・血圧<100mmHgおよび低灌流が持続している場合には血管収縮薬 |
CS4 | 急性冠症候群 | ・急性心不全の症状および徴候 ・急性冠症候群の診断 ・心臓トロポニンの単独の上昇だけではCS4に分類しない |
・NPPV ・硝酸薬 ・心臓カテーテル検査 ・ガイドラインが推奨するACSの管理:アスピリン、ヘパリン、再灌流療法 ・大動脈内バルーンパンピング |
CS5 | 右心不全 | ・急激または緩徐な発症 ・肺水腫はない ・右室機能不全 ・全身性の静脈うっ血所見 |
・容量負荷を避ける ・SBP>90mmHgおよび慢性の全身性体液貯留が認められる場合に利尿薬を使用 ・SBP<90mmHgの場合は強心薬 ・SBP>100mmHgに改善しない場合は血管収縮薬 |
左心不全 | 右心不全 |
労作時呼吸困難 | 経静脈怒張 |
発作性夜間呼吸困難 | 肝肥大 |
起坐呼吸 | 下腿浮腫 |
肺水腫 | 胸水 |
肺うっ血 | 腹水 |
湿性ラ音 | |
チェーンストークス呼吸 |
右心不全 | 左心不全 | ||
後方障害 | 前方障害 | 後方障害 | |
自覚症状 | 体重増加 | 易疲労感 | 労作時息切れ |
食思不振 | 食思不振 | 夜間呼吸困難 | |
浮腫 | 動悸 | 浅眠 | |
腹満感 | 乏尿 | 動悸 | |
他覚症状 | 浮腫 | 頻脈 | 起座呼吸 |
肝腫大 | 冷汗 | 喘鳴 | |
頚静脈怒張 | 皮膚蒼白 | 泡沫痰 | |
腹水 | チアノーゼ | 血痰 | |
黄疸 | 乏尿・無尿 | チアノーゼ | |
チアノーゼ | 血圧低下 | 肺野ラ音 | |
不穏 | 胸水 | ||
意識低下 | |||
心臓の身体所見 | 心拡大、P2亢進 | 心拡大、S3亢進、奔馬調律、機械的交互脈、僧帽弁閉鎖不全症、頻脈、脈圧低下 | |
急性期症状 | 慢性期症状 |
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