出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/12/03 00:51:15」(JST)
悪性リンパ腫(あくせいリンパしゅ、ML: Malignant Lymphoma)は、血液のがんで、リンパ系組織から発生する悪性腫瘍である。
リンパ系組織は全身を巡っているため、肉腫及び癌腫の癌とは異なり、外科手術による切除は行わず(但し、腫大による圧迫などを緩和するため姑息手術を行うことはある)、主に放射線療法および化学療法を適応する。リンパ腫には「良性」はない為、必ず「悪性」ということになるが、日本語の病名としては明示的に「悪性リンパ腫」と呼び習わしている。診療科目は血液内科や耳鼻咽喉科などである。
悪性リンパ腫は、単一ではなく、多様な病型のリンパ系組織のがんの総称である。(その疾患分類については今でも分類作業が進行中である。)病型を大別すると、ホジキンリンパ腫(Hodgkin's lymphoma, HL、あるいはHodgkin's disease, HD)と非ホジキンリンパ腫 (non Hodgkin's lymphoma, NHL) がある。欧米ではホジキンリンパ腫が多数を占めるが、日本人のホジキンリンパ腫は約10%であり、日本では殆どが非ホジキンリンパ腫で占めている。病型によって治療方針及び予後が大きく異なるので、リンパ腫では自己の病型を知ることが重要である。日本人の2000年における年間推定患者数は約1万3000人、発生率は10万人に約10人程(欧米人は10万人に約20人)で近年増加傾向にある。
リンパ腫は全身に発生するというその性質上、治療を行ってもがん細胞が完全に消えたことを証明することはできない。そのため「完治」という表現はせず、腫瘍を検出できなくなった時点で「緩解(寛解)」したと表現する。これは、同じ血液のがんである白血病と同様の扱いである。緩解に至ってもがん細胞が残存していることがあって、再発するケースもある。
原因はわかっていないが、ウイルス説・カビ説・遺伝説などがある。小児白血病、絨毛癌などと並んで、悪性腫瘍の中では、比較的抗がん剤が効きやすいとされる。抗がん剤は活発な細胞を攻撃する為、一般に、がんの進行が早い悪性度の高いものほど抗がん剤に対する感受性が強く、進行の遅い低悪性度は感受性が低いとされている。
頸部(首)、鼠径部(股の付け根)、腋窩などのリンパ節が腫大する(腫れる)ことが多い。リンパ節が1cmを超え肥大が進行したり、腫瘤の数が短期間で増加する場合は、慢性リンパ節炎、結核性リンパ節炎、亜急性壊死性リンパ節炎などがある。また、腫脹の原因が不明な場合は一度感染したEBウイルスが再活性化、病症が慢性化していないか調べることも重要である。
各臓器に発生するリンパ腫の場合にはレントゲンや内視鏡による検査で発見される場合もある。また全身の倦怠、発熱、盗汗(ねあせ)、体重の減少などがみられる場合もあり、これらの全身症状はB症状と呼ばれる。B症状は、予後不良因子とされている。
進行すると全身の衰弱、DIC、多臓器不全などから死に至る。
リンパ腫を疑う場合は触診、血液検査、造影CT検査などを行い病変の部位を検索するが、確定診断はリンパ節生検を行うことにより病理組織分類や遺伝子異常の検索もおこなうことがある。針生検での診断は難しいため、リンパ節を切り取って組織を調べることが多い。
リンパ腫の病期分類としては、次のAnn Arbor分類が世界的に用いられている。通常の癌と異なり、0期という分類はない。
国際予後因子 (international prognosis index: IPI) が有名である。予後因子の数で患者を層別化し、予後を判定する。予後因子として、
が挙げられている。標準治療(CHOP療法など)を行った場合の予後は、5年生存率が25%程度。
非ホジキンリンパ腫は、ホジキンリンパ腫に該当しない多様なリンパ系組織のがんの総称であるので、世界的に統一された分類というのはなかったが、1999年に発表されたWHO分類が現在有効である。非ホジキンリンパ腫は、B細胞ががん化するか、T細胞あるいはNK細胞ががん化するかによって大きく2つに分類される。前者をB細胞性腫瘍と言い、後者をT/NK細胞性腫瘍と言う。
リンパ球の腫瘍としては急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性リンパ性白血病 (CLL)、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫を始め各種ある。それぞれ、正常リンパ球のどの段階で発癌したかによって性質が異なると考えられている。そのためリンパ球の成熟過程を知っておくことが理解の助けとなる。
学問的には急性白血病という概念などなくして骨髄球性疾患とリンパ球性疾患に分けたほうがすっきりする。しかし、ALLは臨床経過が急性骨髄性白血病 (AML) に非常に近く、そのような単純な分類は臨床家が受け入れることができない。急性と慢性の違いに関しても、骨髄性とリンパ性とは随分印象が異なる。AMLと慢性骨髄性白血病 (CML) は確かに鑑別が重要だが、ALLとCLLは鑑別することはまずない。教科書で急性白血病と慢性白血病の違いは分化障害の有無とかといった項目が並ぶが、これは骨髄性のみ気にするべき事項であってリンパ性では問題にならない。CMLは原発性骨髄線維症や本態性血小板血症といった骨髄増殖性疾患に分類され、さらにAMLとなる「急性転化」があるので区別が重要なのだ。
二次性白血病としてはMDS、アルキル化薬によるものも知られている。また白血化という言葉があるが、これは末梢血に腫瘍細胞が見られることで、急性白血病ならば芽球、リンパ腫ならば異型リンパ球やOtherでカウントされることが多い。これらは自動測定機では見逃すことが多いので、鏡検する必要がある。
Bリンパ球の幹細胞は骨髄に存在する。ここでVDJ領域の再構成を行いIgMを発現し成熟B細胞となる。骨髄内の抗原と反応してしまうB細胞はこの時点でアポトーシスされる。成熟B細胞は骨髄を離れてリンパ組織へ行く。リンパ組織では各種相互作用に応じて分化する。T細胞非依存抗原と相互作用できた場合はIgM産出細胞(形質細胞、一部B細胞)となり、T細胞依存性抗原としか相互作用ができないと胚中心に移行し、クラススイッチを起こし、IgG産出細胞となる。これで形質細胞または記憶B細胞になる。クラススイッチを起こした形質細胞は短命のものと長命のものに分かれる。短命のものはリンパ組織内に留まり、長命のものは前駆形質細胞となり骨髄循環に適応し、抗体を産出しつづける。これらのどの段階で発癌したかによって腫瘍の性質が異なるのではないかというのが近年の考え方である。幸いなことにこれらの分化成熟過程における抗原の変化はよく知られている。多発性骨髄腫で形質細胞が骨髄に留まるのが不思議だが、長命の形質細胞は骨髄循環に適応しているので、骨髄で増殖してもおかしくない。M蛋白血症を起こすもののうち、IgM産生場合だけ特に問題ないのもIgM分泌は分化過程が違うということで多少は説明できる。しかしなぜ予後まで違うのかは、今のところ説明できない。
T細胞はまず骨髄の造血幹細胞から生じる。リンパ球前駆細胞の状態で胸腺に達することで正の選択、負の選択をうけていく。胸腺皮質から胸腺髄質へいたる過程で成熟、また不適切なものはアポトーシスに導かれる。胸腺髄質に達することにはCD4系とCD8系に分かれる。成熟T細胞のマーカーとしてはTCRやCD3が知られている。
治療法は抗がん剤化学療法、放射線療法を単独で、もしくは組み合わせて行う。造血幹細胞移植を行うこともある。疾患毎に、病期や予後因子等によって推奨される治療法は異なるので、詳細は各疾患の治療の項目を参照されたい。
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国試過去問 | 「102D004」 |
リンク元 | 「不明熱」「100Cases 78」「続発性骨粗鬆症」「リンパ節腫脹」「網膜中心動脈閉塞症」 |
拡張検索 | 「NK細胞リンパ腫」「血管内悪性リンパ腫症」「EBウイルス関連T細胞リンパ腫」「リンパ腫様丘疹症」 |
関連記事 | 「リン」「腫」「リンパ」 |
A
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診断 | 診断診断例 n=192 |
早期診断例 n=67 |
中期診断例 n=38 |
後期診断例 n=87 | ||
感染症 | 57(29.7) | 25(37.3) | 12(31.6) | 20(23.0) | ||
細菌性 | 43 | 1.8 | 8 | 17 | ||
心内膜炎 | 11 | 9 | 1 | 1 | ||
結核 | 8 | 0 | 0 | 8 | ||
尿跨感染症(1) | 6 | 3 | 1 | 2 | ||
腹腔内膿瘍 | 5 | 2 | 2 | 1 | ||
骨・関節感染 | 4 | 2 | 1 | 1 | ||
その他の細菌感染 | 9 | 2 | 3 | 4 | ||
ウイルス性 | 10 | 5 | 3 | 2 | ||
CMV | 6 | 2 | 3 | 1 | ||
EpsteinーBarrウイルス | 3 | 3 | 0 | 0 | ||
HIV | 1 | 0 | 0 | 1 | ||
寄生虫性(2) | 4 | 2 | 1 | 1 | ||
悪性新生物 | 29(15.1) | 5(7.5) | 6(15.8) | 18(20.7) | ||
血液疾患 | 22 | 2 | 6 | 14 | ||
非Hodgkinリンパ腫 | 9 | 0 | 2 | 7 | ||
Hodgkin病 | 5 | 1 | 1 | 3 | ||
白血病 | 6 | 0 | 3 | 3 | ||
血管免疫芽球性リンパ酔症 | 2 | 1 | 0 | 1 | ||
固形癌 | 7 | 3 | 0 | 4 | ||
腺癌 | 5 | 2 | 0 | 3 | ||
その他(3) | 2 | 1 | 0 | 1 | ||
非感染性炎症性疾患 | 68(35.4) | 22(32.8) | .6) | 34(39.1) | ||
結合織疾患 | 35 | 15 | 6 | 14 | ||
成人Still病 | 18 | 5 | 4 | 9 | ||
SLE | 8 | 5 | 1 | 2 | ||
リウマチ性多発性筋痛症 | 3 | 3 | 0 | 0 | ||
関節リウマチ | 2 | 0 | 0 | 2 | ||
Sjogren症候群 | 2 | 1 | 0 | 1 | ||
その他(4) | 2 | 1 | 1 | 0 | ||
血管炎症候群 | 19 | 5 | 3 | 11 | ||
巨細胞性動脈炎 | 11 | 4 | 3 | 4 | ||
Wegener肉芽腫症 | 2 | 1 | 0 | 1 | ||
結節性多発性動脈炎 | 2 | 0 | 0 | 2 | ||
その他(5) | 4 | 0 | 0 | 4 | ||
肉芽腫性疾患 | 14 | 2 | 3 | 9 | ||
サルコイドーシス | 10 | 0 | 2 | 8 | ||
Crohn病 | 4 | 2 | 1 | 1 | ||
その他 | 39(18.1) | 15(22.4) | 8(21.1) | 15(17.2) | ||
亜急性甲状腺炎 | 6 | 3 | 1 | 2 | ||
Addison病 | 2 | 0 | 1 | 1 | ||
心筋梗塞後症候群 | 2 | 1 | 0 | 1 | ||
肺動脈塞栓症 | 2 | 1 | 0 | 1 | ||
習慣性高体温症 | 11 | 6 | 3 | 2 | ||
薬剤熱 | 4 | 3 | 0 | 1 | ||
詐熱 | 1 | 1 | 0 | 0 | ||
その他(6) | 10 | 0 | 3 | 7 |
内分泌性 | |
副甲状腺機能亢進症 | |
甲状腺機能亢進症 | |
性腺機能低下症 | |
クッシング症候群 | |
成長ホルモン欠乏症 | |
糖尿病 | |
アジソン病 | |
カルシトニン欠損症 | |
栄養性・代謝性 | |
慢性消耗性疾患 | |
るいそう | |
重症肝疾患(特に原発性胆汁性肝硬変) | |
胃切除 | |
壊血病 | |
吸収不良症候群(セリアック病を含む) | |
低リン血症 | |
慢性腎疾患 | |
特発性高Ca尿症 | |
ヘモクロマトーシス | |
アミロイドーシス | |
肥胖細胞腫 | |
ナトリウム過剰摂取,カルシウム摂取不足 | |
ビタミンD,A過剰症 | |
炎症性 | |
関節リウマチ | |
傍関節性(炎症性サイトカインによる骨吸収亢進) | |
サルコイドーシス | |
不動性 | |
全身性 | |
臥床安静,麻痺 | |
局所性 | |
骨折後 | |
薬物性 | |
ステロイド | |
メトトレキセート | |
ヘパリン | |
ワーファリン | |
抗痙攣薬 | |
リチウム | |
タモキシフェン | |
血液疾患 | |
多発性骨髄腫 | |
リンパ腫・白血病 | |
血友病 | |
慢性溶血性疾患 | |
先天性 | |
骨形成不全症 | |
マルファン症候群 | |
クラインフェルター症候群 | |
先天性骨髄性ポルフィリア | |
その他 | |
慢性閉塞性肺疾患 | |
肝・腎疾患 | |
関節リウマチ | |
(妊娠) | |
高酸素血症 |
IRE.376改変
解答形式 正答b,c a 強皮症 b 伝染性単核球症 c トキソプラズマ症 d クリプトコッカス症 e 糖尿病
en
NK-cell lymphoma : 約 1,630,000 件 NK cell tumor : 約 679,000 件 natural killer-cell lymphoma : 約 955,000 件 natural killer-cell tumor : 約 288,000 件
近位尿細管 | 70% |
遠位尿細管 | 20% |
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