スティル病
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成人スティル病 |
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
M06.1 |
ICD-9 |
714.2 |
DiseasesDB |
34295 |
MedlinePlus |
000450 |
MeSH |
D016706 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
成人スティル病(せいじんスティルびょう、Adult Still's disease; ASD、または成人発症型スティル病、Adult Onset Still's Disease; AOSD、成人スチル病とも)はもともと小児に起こる原因不明の炎症性疾患であるスティル病(全身型若年性関節リウマチ)が成人に発症したものである。とはいえその病像は小児のスティル病とはやや異なっている。不明熱の重要な原因の一つである。
目次
- 1 概念
- 2 病因
- 3 症状
- 4 検査
- 5 診断
- 6 治療
- 7 脚注
- 8 外部リンク
概念
原因不明に弛張熱、関節炎、前胸部のサーモンピンク疹、肝脾腫、リンパ節腫脹を来たす全身性の炎症性疾患である。
病因
不明である。
- 近年、IL-18を産生する活性化マクロファージの関与が示唆されている[1]。フェリチンをマクロファージや組織球が産生することも傍証と言われるが、正確な機序は不明である。
症状
- 発熱
- 一般に膠原病では発熱がおこるものだが、本症における発熱は特徴的で、数時間の経過で39℃を軽く超えるスパイク熱をきたす。スパイクの間には、解熱していることもあれば微熱が持続している事もある。そういった発熱状態が1週間以上続く。
- 関節炎
- 単関節炎から多発関節炎まで見られ、関節リウマチと似た滑膜炎でびらん性である。
- 皮疹
- きわめて特徴的とされる前胸部のサーモンピンク色の皮疹が重要で、これは発熱と一致して増悪、改善する。[2]
- 咽頭痛
- 小児のスティル病と異なる特徴的な所見であり、そのうえ成人スティル病ではほぼ必発である。
- リンパ節腫脹
- 全身性のリンパ節腫脹が高い頻度で見られる。
- 肝障害
- 肝酵素の上昇がみられ、病勢と一致して増悪・改善する。
- 脾腫
- 脾腫はよくみられ、リンパ節腫脹と同じ病因によると考えられている。
- 筋肉痛
- 心膜炎
検査
白血球上昇、CRP上昇、フェリチン上昇がみられる。特にフェリチンの著増は特徴的ではあるが、診断的とまでは言えない。
むしろ、慢性の炎症性疾患で関節炎を伴いながら抗核抗体、リウマチ因子などの自己抗体が陰性であるということが、本症を支持する所見となる。
血算において汎血球減少が見られた場合、本症に血球貪食症候群の合併の可能性が考えられ、緊急の診断と治療計画の検討が必要となる。
診断
上記のような特徴的な所見があることと、その他の疾患に診断されないということが重要である。すなわち本症は除外診断によって診断される疾患である。 以下の疾患の除外が必要となる。
- 感染症
- 厚生省の成人スティル病研究班は、敗血症と伝染性単核球症を挙げている。敗血症が鑑別に挙がる事はあまりないようにも思われる(成人スティル病の患者は通常熱以外は元気だが、敗血症では著明に活力がおちている)。むしろパルボウイルスB19や慢性EBウイルス感染などのほうが鑑別であろう。
- 悪性腫瘍
- 成人スティル病研究班は悪性リンパ腫を挙げている。
- 膠原病
- 成人スティル病研究班は結節性多発動脈炎と悪性関節リウマチを挙げているが、このほか全身性エリテマトーデスも鑑別に挙がるものと思われる。
これらの疾患の除外は、特定疾患の認定を受ける際にも必要である。
治療
疾患の経過を予測することは難しいが、軽度の病態であれば自然寛解はありうる。従って最初は、著明な発熱(患者はひどい不快感をおぼえる)に対する対症療法としてNSAIDsが用いられる。しかしそれでおさまらないようなら、ステロイドや免疫抑制剤を使用せざるを得ないことになる。IL-6に対する治療(抗IL-6抗体トシリズマブ)が奏効することもある。
- シクロスポリンAの有効例もしばしば見られる[3]。メトトレキサート,タクロリムスも同様に用いられる。シクロフォスファミドの処方例は減少傾向にある。
脚注
- ^ Arthritis Rheum 44: 550-560, 2001.
- ^ 岡田 定 編. 「最速!聖路加診断術」 pp 145-150
- ^ 長澤浩平 日内会誌 99: 2460-2466, 2010.
外部リンク
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P4-3-8 難治性成人スチル病にトシリズマブが著効した1例(P4-3自己免疫,自己免疫性疾患2,一般演題,第22回日本アレルギー学会春季臨床大会)
- IL-6ブロッカー (特集 膠原病--病態への新たなアプローチと治療展開) -- (新たな分子標的治療と新展開)
Related Links
- 1. 成人スティル病とは スティル病(スチル病ともいわれる)は、そもそも小児において、関節症状のほかに発熱や、皮膚の発疹、リンパ節の腫脹などの全身症状を示す病気につけられた病名ですが、同様の症状が成人にも認められる ...
- 家庭医学館 成人発症スチル病の用語解説 - [どんな病気か] 若年性関節(じゃくねんせいかんせつ)リウマチ(「若年性関節リウマチ」)のうち、全身型(スチル病)が成人に生じた病気です。16~35歳で発病することが多く、患者さん ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- fever of unknown origin FUO
- 同
- 原因不明熱
- 関
- 発熱、体温
- ジェネラリスト診療が上手になる本 p.9
定義
- 3週間以上の発熱。38.3℃以上、1週間の入院精査でも原因不明
鑑別疾患
3大疾患
- 1. 感染症(深部腫瘍、心内膜炎、結核、寄生虫、腸チフスなど)
- 2. 悪性疾患(悪性リンパ腫、白血病など)
- 3. 膠原病(血管炎、側頭動脈炎、成人still病など)
- 4. その他:薬剤性など
- ジェネラリスト診療が上手になる本 p.9
- (各種病原体)感染性心内膜炎、骨髄炎、伝染性単核球症、副鼻腔炎、齲歯
- (細菌)結核、腸チフス、リケッチア感染症
- (ウイルス)HIV感染症、サイトメガロウイルス感染症
- (真菌)ニューモシスチス肺炎、クリプトコッカス症
- (寄生虫)マラリア
- UCSF.44
- 感染症26%, 腫瘍13%, 非感染性炎症疾患24%
- 感染症:背臥位結核、心内膜炎、膿瘍(肝臓、脾臓、腎臓、後腹膜、骨、脳、耳、脊椎)、HIV感染症、サイトメガロウイルス感染症、カンジダ感染症、その他(尿路感染症、副鼻腔、骨髄炎)、入院患者(尿路感染、カテーテル感染症、偽膜性腸炎、褥瘡、蜂窩織炎)
- 腫瘍:悪性リンパ腫、白血病、腎細胞癌、肝癌、心房粘液腫、VAHS(ウイルス関連性血球貪食症候群)、LAHS(リンパ腫関連性血球貪食症候群)
- 非感染性炎症疾患:成人スティル病、SLE(全身性エリテマトーデス)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)/多発性結節性動脈周囲炎(PN)/高安病、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)
- その他:薬剤熱、詐熱、肺塞栓症/深部静脈血栓症、脊椎損傷/頭蓋内疾患、副腎機能不全/甲状腺機能亢進症、家族性地中海熱、組織球性壊死性リンパ節炎(菊地病)
- 感染症専門医テキスト 第1部 解説編 p.53
- 不明熱の最終診断
診断
|
診断診断例 n=192
|
早期診断例 n=67
|
中期診断例 n=38
|
後期診断例 n=87
|
感染症
|
|
57(29.7)
|
25(37.3)
|
12(31.6)
|
20(23.0)
|
細菌性
|
|
43
|
1.8
|
8
|
17
|
心内膜炎
|
11
|
9
|
1
|
1
|
結核
|
8
|
0
|
0
|
8
|
尿跨感染症(1)
|
6
|
3
|
1
|
2
|
腹腔内膿瘍
|
5
|
2
|
2
|
1
|
骨・関節感染
|
4
|
2
|
1
|
1
|
その他の細菌感染
|
9
|
2
|
3
|
4
|
ウイルス性
|
|
10
|
5
|
3
|
2
|
CMV
|
6
|
2
|
3
|
1
|
EpsteinーBarrウイルス
|
3
|
3
|
0
|
0
|
HIV
|
1
|
0
|
0
|
1
|
寄生虫性(2)
|
|
4
|
2
|
1
|
1
|
悪性新生物
|
|
29(15.1)
|
5(7.5)
|
6(15.8)
|
18(20.7)
|
血液疾患
|
|
22
|
2
|
6
|
14
|
非Hodgkinリンパ腫
|
9
|
0
|
2
|
7
|
Hodgkin病
|
5
|
1
|
1
|
3
|
白血病
|
6
|
0
|
3
|
3
|
血管免疫芽球性リンパ酔症
|
2
|
1
|
0
|
1
|
固形癌
|
|
7
|
3
|
0
|
4
|
腺癌
|
5
|
2
|
0
|
3
|
その他(3)
|
2
|
1
|
0
|
1
|
非感染性炎症性疾患
|
|
68(35.4)
|
22(32.8)
|
.6)
|
34(39.1)
|
結合織疾患
|
|
35
|
15
|
6
|
14
|
成人Still病
|
18
|
5
|
4
|
9
|
SLE
|
8
|
5
|
1
|
2
|
リウマチ性多発性筋痛症
|
3
|
3
|
0
|
0
|
関節リウマチ
|
2
|
0
|
0
|
2
|
Sjogren症候群
|
2
|
1
|
0
|
1
|
その他(4)
|
2
|
1
|
1
|
0
|
血管炎症候群
|
|
19
|
5
|
3
|
11
|
巨細胞性動脈炎
|
11
|
4
|
3
|
4
|
Wegener肉芽腫症
|
2
|
1
|
0
|
1
|
結節性多発性動脈炎
|
2
|
0
|
0
|
2
|
その他(5)
|
4
|
0
|
0
|
4
|
肉芽腫性疾患
|
|
14
|
2
|
3
|
9
|
サルコイドーシス
|
10
|
0
|
2
|
8
|
Crohn病
|
4
|
2
|
1
|
1
|
その他
|
|
39(18.1)
|
15(22.4)
|
8(21.1)
|
15(17.2)
|
亜急性甲状腺炎
|
6
|
3
|
1
|
2
|
Addison病
|
2
|
0
|
1
|
1
|
心筋梗塞後症候群
|
2
|
1
|
0
|
1
|
肺動脈塞栓症
|
2
|
1
|
0
|
1
|
習慣性高体温症
|
11
|
6
|
3
|
2
|
薬剤熱
|
4
|
3
|
0
|
1
|
詐熱
|
1
|
1
|
0
|
0
|
その他(6)
|
10
|
0
|
3
|
7
|
- 数値は症例数で( )内は比率. %表示
- 1) 膿瘍を除く実質感染
- 2) マラリア(2例)、ジアルジア症、トリパノソーマ症を含む
- 3) germinoma, hypernephromaを含む
- 4) Reiter症候群, 多発性筋炎を含む
- 5) Behcet病, Schönlein-Henoch紫斑病, Schnitzler症候群, 分類不能型血管炎を含む
- 6) Sweet症候群, 原発性硬化性胆管炎, アルコール性肝炎, 出血を伴う巨大肝血管腫, 間質性肺炎, 特発性胸膜心膜炎, 特発性好酸球増多症候群, リンパ節の炎症性偽腫瘍, 後腹膜線維症, 線状IgA水疱症
- (Vanderschueren S. Knockaert D. et al. : From prolonged febrile illness to fever of unknown origin: the challenge continues. Arch Intern Med. 2003 : 163 : 1033-1041)
診断
問診
- 既往歴、家族歴、職業歴、旅行歴、薬剤歴、sick contact、動物との接触、同性とのまたはハイリスクな性的接触の有無、現病歴と発熱パターン、輸血歴
診察
- リンパ節腫脹、肝脾腫、心雑音、圧痛
- 培養
- 胸部XP
- 抗核抗体,C3,C4,RF,赤沈
- 抗HIVコウタイ
- 皮膚生検
- ツベルクリン反応/クオンティフェロン
- 腹部エコー
- 造影CT
- 心エコー:心内膜炎を最も疑えば経食道心エコーを。
- ガリウムシンチ
- 骨髄生検
- 腰椎穿刺
- 頭部CT
- 大腸ファイバー
- 肝生検
[★]
- 英
- juvenile idiopathic arthritis, JIA
- 同
- 若年性関節リウマチ juvenile rheumatoid arthritis JRA、小児特発性関節炎
- 関
- 関節リウマチ
概念
- 15歳以下の小児に発病する慢性関節リウマチである。成人の関節リウマチに比べて全身症状が強く、リウマチ因子陽性率が低い。
- 若年性関節リウマチには3病型有り、スチル病は小児の関節リウマチ、つまり若年性関節リウマチの亜型のことである。(REU.228)
- 若年性特発性関節炎という病名でまとめようというのが最近の流れ。(uptodate; Classification of juvenile arthritis (JRA/JIA))
病型
- 1. 多関節型:40%:慢性多発性関節炎をきたす
- 2. 単関節型:40%:関節炎症はせいぜい4つくらいまでの関節にとどまる。眼に虹彩炎/虹彩毛様体炎をきたし、抗核抗体(ANA)陽性例が多い。
- 3. 全身型 :20%:軽度の関節痛、著明な発熱、一過性のサーモンピンクの皮疹、リンパ節腫脹、脾腫、心外膜 →スチル病
症状
- 多関節型:
- 単関節型:虹彩毛様体炎が合併しやすい(SOP.220)
- 全身型 :
検査
- 多関節型:関節リウマチに似てMMP-3高値となる
- 単関節型:
- 全身型 :フェリチン上昇
若年性関節リウマチ診断の手引き
- 旧厚生省研究班,1981
- 1.6週間以上続く多関節炎
- 2.6週間未満の多関節炎(または単関節炎、少関節炎)の場合には次の1項目を伴うもの
- 3.下記疾患と確定したものは除外し、鑑別不能の場合は「疑い」とする
注意すべき点
- 1) 関節炎は移動性でなく、固定性であること。
- 2) リウマトイド疹とは直径 数 mm ~1cm の鮮紅色の紅斑で、発熱とともに出現し、下熱時に消退することもある。
- 3) 弛張熱とは、日差が3~4℃で、下降時は平熱またはそれ以下となることがあり、1週間以上続くこと。
- 4) リウマトイド因子(RAテスト)は、肝疾患や、他の自己免疫疾患でも陽性となることがある。
参考
- 1. 若年性特発性関節炎初期診療の手引き(2007年)
- http://www.wam.go.jp/wamappl/bb13gs40.nsf/0/358654b9c68ddf7a492572fa0025fab9/$FILE/20070614_1shiryou3.pdf
- http://mymed.jp/di/ifa.html
- http://www9.ocn.ne.jp/~ginzamed/ginzamed/tisiki/disease/answer/child_RA_diag.htm
- http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm120/kouza/jra.html
国試
[★]
- 英
- Still's disease, Still disease
- 同
- スチル病、Still病
- 関
- アレルギー性亜敗血症、若年性関節リウマチ
[show details]
[★]
- 英
- subsepsis allergica, subsepsis hyperergica
- 同
スチル病 Still's disease、ビスラー・ファンコニー症候群 Wissler-Fanconi's syndrome
- 関
- スチル病、成人スチル病
[★]
- 英
- disease、sickness
- 関
- 疾病、不調、病害、病気、疾患