- 関
- ST合剤
スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6290100D1088_1_01/6290100D1088_1_01?view=body
- ニューモシスチス肺炎予防のためのスルファメトキサゾール・トリメトプリム投与量の検討
- http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/006020053j.pdf
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/03/11 10:31:42」(JST)
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ST合剤(STごうざい)とはサルファ剤であるサルファメソキサゾール(SMX or SMZ)とトリメトプリム(TMP)という抗菌薬を5対1の比率で配合した合剤である。作用機序としては葉酸の合成を阻害することであり、2種類の葉酸合成拮抗薬を用いることで相乗効果を得ている。腸内細菌の葉酸合成も阻害するので副作用に葉酸欠乏がある。
目次
- 1 相乗効果
- 2 特徴
- 3 市販製剤
- 4 副作用
- 5 脚注
- 6 参考文献
- 7 関連項目
|
相乗効果
スルファメトキサゾールとトリメトプリムの併用療法がST合剤の組み合わせである。スルファメトキサゾール(スルホンアミド系薬物)はジヒドロプテロイン酸シンターゼ阻害薬(葉酸合成阻害)であり、トリメトプリムはジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬(DHFR阻害薬、葉酸活性化阻害)である。ジヒドロプテロイン酸シンターゼは細菌にはあるがヒトには存在しない。DHFR阻害薬は、葉酸を活性化させたテトラヒドロ葉酸の細胞内供給を決定的に不足させ、結果的にプリンとチミジンの新たな合成停止させることによってDNA合成とRNA合成を阻害する。スルホンアミド系薬物はジヒドロ葉酸の細胞内濃度を減少させることでDHFR阻害薬の効果を増強させる。また併用することで耐性菌の出現を抑えることができる。
- メソトレキセートもジヒドロ葉酸レダクターゼを阻害するため併用に注意が必要。
特徴
ニューモシスチス肺炎(旧:カリニ肺炎)の治療薬として有名であるが、ST合剤には様々な特徴がある。
- 細菌以外の微生物にも効果がある。
- 真菌の仲間であるカリニに効果がある以外にも原虫であるトキソプラズマなどにも効果がある。
- 多くのグラム陽性菌、グラム陰性菌に効果がある。
- 緑膿菌や嫌気性菌には効果がないが、肺膿瘍を起こすノカルジアや髄膜炎をおこすリステリア(ただし第一選択はアンピシリン)といった特殊な細菌から肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラといった肺炎の起因菌にも効果がある。よってニューモシスチス肺炎か診断が十分につかない段階からも積極的に治療を行うことができる(呼吸苦の改善にはステロイドの方が効果的である)。非定型肺炎はカバーできないのでマクロライド、ミノサイクリン、ニューキノロン系を併用することもある。
- 消化管からの吸収が非常によくバイオアベイラビリティが高い。
- あらゆる器官の移行性に優れている。
- 特に尿路への移行性が高く、尿路感染症では第一選択となる。βラクタム薬が移行しない前立腺にも分布するため前立腺炎の治療にも用いることができる。
以上の特徴から岩田健太郎教授は
- 排尿時痛、頻尿あるいは肉眼的血尿のいずれかが認められれば50%の確率で膀胱炎とされている。膀胱炎ではバクタ®4錠分2などで3日ほどの投与が目安とされている。セフェム系で治療する場合は約7日の投与が必要である。
- セフェム系耐性の皮膚・軟部組織感染症(蜂窩織炎など。また市中獲得型MRSA (=CA-MRSA) もカバーする。)
- バクタ®4~8錠分2の投与がされることがある。これは改善するまで投与が必要である。抗菌活性自体はST合剤はセフェム系より弱いため、感染症内科と相談後の治療が望ましい。
- バクタ®1錠分1の投与が慣習で行われている。PSL20mg以上を1カ月以上投与している場合、高容量の免疫抑制剤を使用している場合、移植後6~12カ月、免疫不全やHIVでCD4陽性細胞が減少している場合などに予防投与は行われる。
での処方を推奨している。[1]
市販製剤
経口薬のバクタ®錠・顆粒(塩野義製薬)やバクトラミン®錠・顆粒、注射としてはバクトラミン®注(中外製薬)が有名である。トリメトプリムとしてどれくらい必要であるという書き方をされている場合が必要なので処方には注意が必要である。カリニ肺炎の治療では目安として60kgの成人ならばバクトラミンは一回3Aの一日4回投与が必要である。HIV感染者の肺炎ではカリニ肺炎を疑わなければならないが典型的には1週間くらいかけて進行する亜急性の高熱と労作時に増悪する呼吸苦が特徴である。しかし乾性咳嗽を伴う気道感染の頻度としては、非定型肺炎(マイコプラズマやクラミドフィラ)の方が多いので初期治療としてはST合剤とマクロライド併用が多い。
副作用
- 発疹
- 3~4%の割合で発生する。まれにスティーブンス・ジョンソン症候群に至ることもある。ペンタミジンなどへの処方の変更ができない場合は、専門家のもとで脱感作を行うべきである。
- 高カリウム血症
- 腎不全時は慎重投与が必要である。また高血圧治療薬であるアンジオテンシンI変換酵素阻害薬(ACE-I)やアンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)との併用は高カリウム血症のリスクを持つため、避けるべきである。[2] また利尿薬スピロノラクトンも同様の機序から高齢者での高カリウム血症が出現しやすく、注意を要する。[3]
- 薬物相互作用
- 抗痙攣薬のフェニトイン(アレビアチン)や糖尿病治療薬のスルフォニルウレア剤の血中濃度を上昇させ、経口避妊薬の血中濃度を低下させる。
- クレアチニンの上昇
- 腎機能に関係なく、クレアチニンの分泌を障害するため腎機能障害が発生したかのように見えることがある。
脚注
- ^ メディカル朝日 2009年11月号,pp63-65
- ^ Trimethoprim-Sulfamethoxazole–Induced Hyperkalemia in Patients Receiving Inhibitors of the Renin-Angiotensin System, Tony Antoniou and others, Arch Intern Med. 2010;170(12):1045-1049.
- ^ BMJ 2011; 343:d5228 doi: 10.1136/bmj.d5228 (Published 12 September 2011)
参考文献
- 感染症レジデントマニュアル ISBN 4-260-10660-0
- 抗菌薬の考え方、使い方 中外医学社 ISBN 4-498-01758-7
- レジデントのための感染症診療マニュアル ISBN 4-260-10992-8
- Dos&Don'ts! Dr.青木の感染症大原則 ISBN 4-903331-27-X
- サンフォード感染症治療ガイド―日本語版 (2006) ISBN 4-89775-216-7
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第1巻)ISBN 4-903331-41-5
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第2巻) ISBN 4-903331-42-3
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第3巻) ISBN 4-903331-43-1
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第4巻) ISBN 4-903331-44-X
関連項目
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Japanese Journal
- 一般診療所におけるヘリコバクターピロリ除菌療法の検討
- 特発性血小板減少性紫斑病を有した腎不全患者に行った血液型不適合生体腎移植の1例
- 内山 結理,堀田 記世彦,吉田 美穂,高田 徳容,佐藤 択矢,望月 端吾,村橋 範浩,山本 聡,関 利盛,富樫 正樹,平野 哲夫,原田 浩
- 2011-03-31
- … ヘリコバクターピロリ除菌療法を施行したが血小板数の上昇は見られなかった。 …
- NAID 120003145497
Related Links
- バクタとは?ST合剤の効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる(おくすり110番:薬事典版) ... 用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。 すべての副作用を掲載しているわけではありません。
- 塩野義製薬株式会社のバクタ配合錠(化学療法剤)、一般名スルファメトキサゾール(Sulfamethoxazole) トリメトプリム(Trimethoprim) の効果と副作用、写真、保管方法等を掲載。 ... 一般感染症:通常、成人は1回2錠を1日2回服用しますが ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
組成
成分・含量(1錠中):
- スルファメトキサゾール400mg
トリメトプリム80mg
添加物:
- カルメロースカルシウム,ヒドロキシプロピルセルロース,ステアリン酸マグネシウム
禁忌
本剤の成分又はサルファ剤に対し過敏症の既往歴のある患者
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人[「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項参照]
低出生体重児,新生児[「小児等への投与」の項参照]
グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G-6-PD)欠乏患者[溶血を起こすおそれがある。]
効能または効果
適応菌種>
- スルファメトキサゾール/トリメトプリムに感性の腸球菌属,大腸菌,赤痢菌,チフス菌,パラチフス菌,シトロバクター属,クレブシエラ属,エンテロバクター属,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,プロビデンシア・レットゲリ,インフルエンザ菌
適応症>
- ○ 肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染*○ 複雑性膀胱炎,腎盂腎炎*○ 感染性腸炎,腸チフス,パラチフス
他剤耐性菌による上記適応症において,他剤が無効又は使用できない場合に投与すること。
- [錠剤]*通常,成人には1日量4錠を2回に分割し,経口投与する。
ただし,年齢,症状に応じて適宜増減する。*[顆粒]*通常,成人には1日量4gを2回に分割し,経口投与する。
ただし,年齢,症状に応じて適宜増減する。
本剤の使用にあたっては,耐性菌の発現等を防ぐため,原則として感受性を確認し,疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
慎重投与
肝障害のある患者[肝障害を悪化させることがある。]
腎障害のある患者[血中濃度が持続するので,減量等を考慮すること。]
高齢者[「高齢者への投与」の項参照]
葉酸欠乏又は代謝異常のある患者(既往に胃の摘出術を受けている患者,他の葉酸代謝拮抗剤を投与されている患者,分娩後,先天性葉酸代謝異常症等)[葉酸欠乏を悪化させ,巨赤芽球性貧血を起こすことがある。]
重大な副作用
次のような副作用があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
再生不良性貧血,溶血性貧血,巨赤芽球性貧血,メトヘモグロビン血症,汎血球減少,無顆粒球症(頻度不明)
ショック(0.1%未満),アナフィラキシー様症状(頻度不明)(初期症状:不快感,口内異常感,喘鳴,眩暈,便意,耳鳴,発汗,浮腫等)
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.1%未満),中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)(頻度不明)
急性膵炎(頻度不明)
偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎(頻度不明)(腹痛,頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと。)
重度の肝障害(頻度不明)
急性腎不全(頻度不明)
無菌性髄膜炎,末梢神経炎(頻度不明)
間質性肺炎,PIE症候群(頻度不明)(発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線異常,好酸球増多等)
低血糖発作(頻度不明)
高カリウム血症,低ナトリウム血症(頻度不明):これらの電解質異常があらわれることがある。異常が認められた場合には投与を中止し,電解質補正等の適切な処置を行うこと。
横紋筋融解症(頻度不明):筋肉痛,脱力感,CK(CPK)上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇等を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがある。これに伴い急激に腎機能が悪化し,急性腎不全等の重篤な症状に至ることがある。
薬効薬理
薬理作用
- 抗菌作用
試験管内では,トリメトプリム,スルファメトキサゾールをそれぞれ単独で作用させたときに比べ,両薬の併用時には,相乗的な抗菌作用の増大が認められ,殺菌的に作用する。腸球菌属,大腸菌,赤痢菌,チフス菌,パラチフス菌,シトロバクター属,クレブシエラ属,エンテロバクター属,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,プロビデンシア・レットゲリ,インフルエンザ菌に対して抗菌作用を示す。
作用機序
- スルファメトキサゾールは微生物体内での葉酸生合成を阻害し,トリメトプリムは葉酸の活性化を阻害して抗菌作用を示す。両薬の併用により細菌の葉酸代謝の連続した2ヵ所を同時に阻害するため相乗的な抗菌作用の増大が認められる。
有効成分に関する理化学的知見
1.
- 一般的名称:
スルファメトキサゾール(JAN)[日局]
Sulfamethoxazole
- 化学名:
4-Amino-N-(5-methylisoxazol-3-yl)benzenesulfonamide
- 分子式:
C10H11N3O3S
- 分子量:
253.28
- 化学構造式:
- 性状:
白色の結晶又は結晶性の粉末で,においはなく,味はわずかに苦い。
N,N-ジメチルホルムアミドに極めて溶けやすく,エタノール(95)にやや溶けにくく,ジエチルエーテルに溶けにくく,水に極めて溶けにくい。
水酸化ナトリウム試液に溶ける。
光によって徐々に着色する。
- 融点:
169?172℃
- 分配係数:
7.76[1-オクタノール/水]
2.
- 一般的名称:
トリメトプリム(JAN)[局外規]
Trimethoprim
- 化学名:
2,4-Diamino-5-(3,4,5-trimethoxybenzyl)-pyrimidine
- 分子式:
C14H18N4O3
- 分子量:
290.32
- 化学構造式:
- 性状:
白色の結晶又は結晶性の粉末で,においはなく,味は苦い。
酢酸(100)に溶けやすく,メタノール,希酢酸又はクロロホルムにやや溶けにくく,エタノール(95)又はアセトンに溶けにくく,水に極めて溶けにくく,ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
- 融点:
199?203℃
- 分配係数:
4.37[pH7.4,1-オクタノール/緩衝液]
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- drug-induced hypoglycemia
- 同
- 薬剤性低血糖症
- 関
- 低血糖
低血糖を引きおこす薬剤
- DMR.295
[★]
- 英
- thrombocytopenia, thrombopenia
- 同
- 血小板減少
- 関
- 血小板、血小板輸血、血小板増加症
分類
原因
-
- UCSF p.307
アプローチ
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- 英
- bone marrow transplantation BMT
- 関
- 造血幹細胞移植、拒絶反応
メモ
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- ラ
- Achromobacter denitrificans
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エンテロバクター属