- 英
- granuloma
- 関
- 肉芽腫症
分類
- NDE.34
肉芽腫を形成する疾患
- 抗酸菌(結核、、らい菌)
- 真菌(クリプトコッカス、アスペルギルス、ヒストプラズマ、ブラストミセス、コクシジオイデスなど)
- トレポネーマ(梅毒)
- その他の菌(ネコひっかき病など)
- 炎症性疾患(サルコイドーシス、クローン病、血管炎・膠原病、過敏性肺臓炎など)
- 異物(ベリリウム、バリウム、縫合糸)
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/05/27 05:03:37」(JST)
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クローン病患者の非乾酪性肉芽腫(ヘマトキシリン-エオジン染色)
肉芽腫(にくがしゅ、慣習的に「にくげしゅ」とも[1]、英: granuloma)は、炎症反応による病変のひとつであり、顕微鏡的に類上皮細胞、マクロファージ、組織球、巨細胞などの炎症細胞が集合し、この周囲をリンパ球、形質細胞と線維組織が取り囲んでいる巣状病変のことである。免疫刺激の少ない異物により惹起される異物性肉芽腫と免疫反応を引き起こす不溶性粒子により惹起される免疫性肉芽腫に分類される。
目次
- 1 原因
- 2 形成のしくみ
- 3 肉芽腫を形成する代表的疾患
- 3.1 結核
- 3.2 ハンセン病
- 3.3 肉芽腫性血管炎
- 4 関連項目
- 5 注
- 6 参考文献
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原因 [編集]
生体内に異物(それは感染源をはじめとして、有害であることが多い)が入り込んだ際に、それに対する防御反応として炎症が起きる。その結果異物の有害性(生体にとって不利益な刺激)そのものをうまく弱体化できればよいが、それができない場合には、刺激を和らげるために異物を「隔離」してしまえばよい。この「隔離」によって最大の効果を得ようとする活動が肉芽腫形成である。このように異物を分解したり除去できるのか、それとも「隔離」するしかないのかは、宿主の免疫能と異物の性質の相互関係にかかっている。十分な免疫力があれば肉芽腫は、細胞内に感染して殺すことのできない病原体を終生無症状のままコントロールすることも可能である。また肉芽腫性反応は、異物だけでなく腫瘍細胞に対しても有効なコントロールをできることがある。
肉芽腫反応を起こしうる原因は非常に多いが、ヒトの肉芽腫の原因になるものには、肝生検のデータなどからわかるものとして以下のものがある[2](以下の疾患あるいは物質で起こる可能性があるだけで、必ずしも普通に肉芽腫形成が起こるわけではない)。重要な疾患については後に詳述する。
-
- 寄生虫:住血吸虫症、内臓および皮膚リーシュマニア症、アメーバ赤痢、内臓幼虫移行症、回虫症
- 細菌:腸チフス、ブルセラ症、野兎病、リステリア症、エルシニア症、アクチノマイセス症、猫ひっかき病、心内膜炎、ウィップル病、ノカルジア症、腹部膿瘍
- マイコバクテリウム属:結核、非定型抗酸菌症、類結核型ハンセン病
- ウイルス:サイトメガロウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、B型インフルエンザウイルス、センダイウイルス
- 真菌:ヒストプラズマ症、コクシジオイデス症、ブラストミセス症、クリプトコッカス症、アスペルギルス症、カンジダ症、ニューモシスチス肺炎
- その他:Q熱、鼠径リンパ肉芽腫、梅毒
- 腫瘍:ホジキン病、リンパ腫、腺癌、腎細胞癌、慢性骨髄性白血病
- 炎症:サルコイドーシス、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、血管炎および結合組織病(ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、側頭動脈炎、関節リウマチ、アレルギー性血管炎など)、過敏性肺臓炎、痛風を合併した乾癬、結節性紅斑
- 薬剤:スルホンアミド、アロプリノール、フェニルブタゾン、フェニトイン、イソニアジド、ペニシリン、メチルドーパ、ヒドララジン、プロカインアミド、ハロタン、セファレキシン、プロカルバジン、ジアゼパム、メトトレキサート、経口避妊薬
- 化学物質:デンプン、タルク、Freund完全アジュバント、ベリリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、硫酸バリウム、油(鉱物油、パラフィン、造影剤)、炭素、脂質、縫合糸、カバーガラス
- 肝胆道疾患:原発性胆汁性肝硬変、特発性肝硬変、肝炎(C型急性肝炎、慢性活動性肝炎、アルコール性肝炎)、胆管周囲炎、脂肪肝、脂肪肉芽腫
形成のしくみ [編集]
組織に侵入した異物や感染源あるいはそれらに起因する炎症反応の残骸は、通常は組織マクロファージや単球などの貪食細胞によって貪食、分解される。しかし感染源の中には貪食細胞そのものに感染し、細胞内で増殖するものもある。感染された貪食細胞は、活性化T細胞の放出するサイトカインによって一酸化窒素を産生し、感染した生物を殺す。また感染源を抗原提示し、これを認識した細胞傷害性T細胞 (CTL) が貪食細胞そのものを殺すこともある。
こうして貪食をしたが異物を分解できないマクロファージが類上皮細胞となる。またこれらの貪食細胞がT細胞由来のインターロイキン-4やインターフェロンγなどのサイトカインによって遊走能を抑制され、融合して巨細胞となる。線維化、瘢痕化はマクロファージ由来のインターロイキン-1などによって起こる。
感染源ではないが、多量の異物や分解不可能な異物を貪食した場合にも肉芽腫が形成されることがある。
肉芽腫を形成する代表的疾患 [編集]
結核 [編集]
肉芽腫は結核のもっとも特徴的な病変のひとつである。初期感染の後、完全治癒した場合は肺および肺門リンパ節の感染巣に瘢痕が見られ、これは治癒性肉芽腫と呼ばれる。また完全治癒せずに潜行感染している場合は、炎症反応が続くため、肉芽腫が成長を続ける。この肉芽腫の中心は壊死を起こして炎症反応が及ばず、結核菌が多数存在している。壊死部分はカッテージチーズ状に見えるため乾酪壊死と呼ばれ、乾酪壊死を中心に持つ肉芽腫を乾酪性肉芽腫という。進行性感染では乾酪性肉芽腫が肺全体に拡がる。
感染の初期には非特異的細胞傷害性T細胞 (CTL) のみが活性化しているが、感染が長引くと主要組織適合抗原 (MHC) クラスIの抗原提示による特異的CTLの活性化とMHCクラスIIの抗原提示による遅延型過敏反応型T細胞(Th1細胞)がともに活性化される。活性化CTLは感染したマクロファージを殺し、これによって肉芽腫中心の壊死が起こる。Th1細胞はリンホカインの分泌を行ってさらにマクロファージを活性化し、結核菌を貪食、分解して感染が拡がるのを防ぐ。しかしマクロファージの活性化が弱いと、浸潤してきたマクロファージがさらに感染してしまい、結果的に肉芽腫ができることになる。
ハンセン病 [編集]
ハンセン病の臨床像は、被感染者の免疫反応の強さによって異なっている。細胞性免疫による遅延型過敏反応があると潜行感染(T型、類結核型)となり、抗体産生が行われると進行性感染(L型、らい腫型)となる。少菌型(PB型)では類上皮細胞性肉芽腫に、多菌型(MB型)では組織球性肉芽腫となる。
肉芽腫性血管炎 [編集]
血管炎は、肉芽腫形成を含むさまざまな炎症反応を起こすが、その詳しい原因は不明であり、また結節性多発動脈炎のように肉芽腫をほとんど形成しない[3]ものから、好酸球性肉芽腫症のように肉芽腫病変が主な病変となるものまで、さまざまである。アレルギー性肉芽腫性血管炎は壊死性血管炎、血管壁および血管外肉芽腫性病変、好酸球増加と組織への好酸球浸潤、気管支喘息からなる疾患であるが[4]、このような病変を合併するのは、単一の抗原に対してさまざまな免疫反応(免疫複合体反応、アナフィラキシー反応、肉芽腫形成反応といった)が起こっていることが示唆される[5]。
関連項目 [編集]
- ウェゲナー肉芽腫症
- アレルギー性肉芽腫性血管炎
- 鼠径リンパ肉芽腫
- 血管炎
- サルコイドーシス
- 肉刺、胼胝
注 [編集]
- ^ 日本大腸肛門病学会ホームページ内の用語集(ナ行)
- ^ Murray (1999)
- ^ 三田村忠行 (1999)。
- ^ 山木戸道郎 (1999)。
- ^ Sell, Stewart & Wisecarver, James L. (1996), p.585
参考文献 [編集]
- 日本獣医病理学会編集 『動物病理学総論 第2版』 文永堂出版 2001年 ISBN 4830031832
- Murray, Henry W. (1999), “Granulomatous inflammation: Host antimicrobial defense in the tissues in visceral Leishmaniasis”, Inflammation Basic principles and clinical correlates 3rd ed., Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins, pp. 977-994
- 三田村忠行「結節性多発動脈炎」杉本、小俣編『内科学』第七版、朝倉書店、1999年、pp.1129-1131
- 山木戸道郎「アレルギー性肉芽腫性血管炎」杉本、小俣編『内科学』第七版、朝倉書店、1999年、p.732
- Sell, Stewart; Wisecarver, James L. (1996), “Immunopathologic Mechanisms”, Anderson's pathology 10th ed., St. Louis: Mosby, pp. 582-586, ISBN 0801672368
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Japanese Journal
- 非血縁臍帯血移植後にサイトメガロウイルス網膜炎の治療中に免疫回復ぶどう膜炎を生じた1例
- 内村 英子/豊口 光子/園部 愛/三宮 瞳/堀 貞夫
- 東京女子医科大学雑誌 82(E1), E234-E238, 2012-01-31
- … 初診時、左眼に豚脂様角膜後面沈着を認め肉芽腫性虹彩炎をきたし、鼻側網膜に血管炎と出血を伴った黄白色滲出斑、硝子体細胞を認めた。 …
- NAID 110008767983
- 出雲 令子/豊口 光子/島川 眞知子/篠崎 和美/高村 悦子/堀 貞夫
- 東京女子医科大学雑誌 82(E1), E173-E177, 2012-01-31
- … また6例(14%)が強膜炎から全身疾患(MPO-ANCA関連血管炎、再発性多発性軟骨炎、Wegener肉芽腫)の診断に至った。 …
- NAID 110008767970
- ぶどう膜炎に伴う虹彩結節-サルコイドーシスとVogt-小柳-原田病の比較
- 陳 麗理/林 殿宣/豊口 光子/島川 眞知子/堀 貞夫
- 東京女子医科大学雑誌 82(E1), E96-E100, 2012-01-31
- … ,結論:サルコイドーシスとVKHは、肉芽腫性虹彩結節を生じる代表的な疾患である。 …
- NAID 110008767959
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★リンクテーブル★
[★]
- 3か月の乳児。発熱とチアノーゼとを主訴に来院した。1か月前から肺炎として治療されていたが、軽快しないため紹介された。体温38.5℃。呼吸数38/分。栄養状態は不良である。血液所見:白血球22,000(桿状核好中球20%、分葉核好中球33%、単球9%、リンパ球38%)。血清生化学所見:IgG1,730mg/dl(基準280~700)、IgA60mg/dl(基準10~60)、IgM198mg/dl(基準30~120)。CRP4.0mg/dl。白血球のNBT還元試験/nitroblue tetrazolium還元試験は陰性。胸部エックス線写真を以下に示す。
- この疾患について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a. 女児に多い。
- b. ウイルス感染が重症化する。
- c. 胸腺の形成不全がある。
- d. 肉芽腫を形成する。
- e. 白血球の殺菌能が欠損している。
[正答]
※国試ナビ4※ [101A054]←[国試_101]→[101A056]
[★]
- 45歳の女性。発熱、咳嗽および呼吸困難を主訴に来院した。1週間前の7月初めに咳嗽が出現し、3日前から37℃台の発熱があり、昨日から呼吸困難も伴ったため受診した。3年前から毎年6月初旬から8月にかけて同様の症状を起こし、昨年も入院加療している。3年前から築25年のアパートに暮らしており、室内には趣味の観葉植物が多くあるという。両側胸部にfine cracklesを聴取し、胸部エックス線写真ではびまん性散在性粒状陰影を認める。Trichosporon asahii特異抗体が陽性である。
- この患者で認められる可能性が低いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A023]←[国試_113]→[113A025]
[★]
- 42歳の女性。 7か月前から持続する全身倦怠感と腰背部痛とを主訴に来院した。体温36.1℃。脊椎の後屈制限と棘突起の叩打痛とを認める。血液所見:赤血球410万、 Hb12.0g/dl、 Ht35%、白血球6,100、血小板15万。 CRP0.3mg/dl。胸腰椎単純CT(別冊No. 9A)と胸腰椎MRIのT2強調矢状断像(別冊No. 9B)とを別に示す。生検組織で乾酪壊死を伴う肉芽腫を認める。
- 治療薬として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106D028]←[国試_106]→[106D030]
[★]
- 関
- 肝臓、肝炎
病変局在と疾患
特徴的な所見
[★]
- 英
- thrombocytopenia, thrombopenia
- 同
- 血小板減少
- 関
- 血小板、血小板輸血、血小板増加症
分類
原因
-
- UCSF p.307
アプローチ
[★]
- 英
- intracellular organism, intracellular epiphyte
- 同
- 細胞内寄生、細胞外寄生菌
- ファゴソームとリソソームの融合阻止などによりマクロファージの細胞内で増殖できることが特徴であり、細胞外で増殖できないと言うことではない。
分類
偏性細胞内寄生菌と通性細胞内寄生菌
表:細胞内増殖:SMB. 111
- ファゴソーム内で増殖(リソソームの融合を起こさせない)
- リソソームの融合が起きる、あるいはファゴソームを修飾する
[★]
- ラ
- granuloma annulare、annular elastolytic giant cell granuloma
- 関
- 肉芽腫
概念
- 辺縁隆起型の皮疹。病理的では柵状肉芽腫がみられる。全身性に多発する場合、糖尿病の合併が疑われる。
参考
- http://images.medicinenet.com/images/image_collection/skin/granuloma-annulare.jpg
- http://www.skinsight.com/images/dx/webAdult/granulomaAnnulare_42220_lg.jpg
[★]
- 英
- epithelioid cell
- 同
- 傍糸球体細胞、輸入細動脈顆粒細胞、糸球体傍細胞
腎臓
- 輸入細動脈の平滑筋細胞が上皮様に変化した細胞。→「傍糸球体細胞」で覚える
組織学
参考
- http://en.wikipedia.org/wiki/File:Granuloma_mac.jpg
[★]
- 英
- foreign-body granuloma , foreign body granuloma
- 関
- 肉芽腫
[★]
- 英
- foreign-body granuloma
- 英
- silicone granuloma
[★]
免疫芽球性リンパ節症
[★]
- 同
- eosinophilic granuloma
[★]
- 関
- がん、腫瘍、腫瘤、良性新生物
[★]
- 英
- bulbil、brood bud
- 関
- ムカゴ、鱗芽
[★]
- 英
- blastoma
- 関
- 芽細胞腫