- 英
- beriberi
- 関
- ビタミン、ビタミンB1、チアミン
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脚気(かっけ、英: beriberi)はビタミン欠乏症の一つであり、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって心不全と末梢神経障害をきたす疾患である。心不全によって下肢のむくみが、神経障害によって下肢のしびれが起きることから脚気の名で呼ばれる。心臓機能の低下・不全(衝心(しょうしん))を併発したときは、脚気衝心と呼ばれる。
ほかのビタミンB1欠乏症による代表疾患には、ウェルニッケ脳症や高ピルビン酸血症がある。
目次
- 1 概要
- 2 歴史
- 3 病態
- 4 検査
- 5 歴史上の有名死亡者
- 6 脚注
- 7 関連項目
- 8 参考文献
概要[編集]
日本では平安時代以降、京都の皇族や貴族など上層階級を中心に脚気が発生している。
特に江戸時代の江戸では、精米された白米を食べる習慣が広まり、将軍をはじめとした上層武士に脚気患者が多かった。将軍徳川家定は脚気が原因で死亡したとも言われている。
脚気は、元禄年間には一般の武士にも発生し、やがて裕福な地方の上流層、また文化・文政には、白米から栄養の多くを摂取していた江戸などの町人にも大流行し、「江戸患い(えどわずらい)」とも呼ばれた。領地では貧しく白米を食することのできなかった地方の武士も、江戸勤番では体面上白米を主食としたため、江戸在住期間が長引くとこの病いに罹る例が多かった。
経験的に米にかえて蕎麦(ビタミンB1を含む)を食べると、快復に向かうことが分かっていたため、漢方医学では療法として用いられていた。このことから江戸時代中期以降、江戸では蕎麦が流行した。江戸では麺類に関し、うどんよりも蕎麦が主流となった背景には、「江戸わずらい」と呼ばれた脚気を、ビタミンB1を多く含む蕎麦を食べることで防止できたことにもよる[1]。
明治から大正期以降、(ビタミンB1を含まない)精米された白米が普及するとともに、安価な移入米が増加し、当時、白飯は庶民の間で高級感のある主食として歓迎されたため[2]、ますます副食を充分に摂取しなかったことで多くの患者を出し、結核とならぶ二大国民病といわれた。
国民の脚気死亡者数は、大正末期に年間2万5千人を超え、昭和期に入っても日中戦争拡大などで食糧事情が悪化する1938年(昭和13年)まで毎年1万人~2万人の間で推移した。1千人を下回ったのは、栄養ドリンクのアリナミンとその類似品が浸透する1950年代後半であった(1950年(昭和25年)3,968人、1955年(昭和30年)1,126人、1960年(昭和35年)350人、1965年(昭和40年)92人)。しかし国民の栄養状態の問題が解決された1975年(昭和50年)ごろから、栄養成分の偏ったジャンクフードの普及により、脚気が再発してきた。アルコール依存症患者にも多く、アルコール分解の際にビタミンB1が消費されることと、偏食もかかわっている。高齢社会(超高齢社会)をむかえた最近では、ビタミンB1を含まない高カロリー輸液での発症も問題視されている。
歴史[編集]
詳細は「日本の脚気史」を参照
病態[編集]
本症は多発神経炎、浮腫(むくみ)、心不全(脚気心、脚気衝心)を三徴とする。
分類[編集]
乾性脚気[編集]
多発神経炎を主体とし、表在知覚神経障害からしびれ、腱反射低下などを来たす。
湿性脚気[編集]
末梢動脈は拡張し、血管抵抗の低下から高拍出性心不全を呈して浮腫になる[3]。
検査[編集]
膝蓋腱を弛緩させた状態で叩くと大腿四頭筋が収縮し膝関節が伸展する膝蓋腱反射は末梢神経障害の有無を見ている。脚気の多発していた1960年代頃までは健康診断の必須項目であった。
歴史上の有名死亡者[編集]
- 豊臣秀吉(尿毒症説などもあり確定した死因ではない)
- 桜町天皇
- 徳川家定
- 徳川家茂
- 和宮
- 小松帯刀
脚注[編集]
- ^ そば|日本文化いろは事典
- ^ 日本の脚気史参照
- ^ http://www.qqct.jp/seminar.php?id=292
関連項目[編集]
- 鈴木梅太郎 - 米糠と脚気の研究から、チアミン(ビタミンB1)、すなわち「オリザニン(のちのビタミン)の概念」を発見した。
- 壊血病
- ジャンクフード
- ビタミン欠乏症
- 香川綾 - ビタミンB1と脚気の研究並びに胚芽米の普及に寄与。
- 高木兼寛
- 森鴎外
参考文献[編集]
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- 住田実 『現代によみがえった「江戸の病」の食生活』 東山書房、1995年。ISBN 978-4-8278-1038-7。OCLC 170112900。
- 山下政三 『脚気の歴史』 東京大学出版会、1983年。OCLC 674475521。
- 山下政三 『明治期における脚気の歴史』 東京大学出版会、1988年。ISBN 4130661027。OCLC 24981589。
- 山下政三 『鴎外森林太郎と脚気紛争』 日本評論社、2008年。ISBN 9784535983021。OCLC 271433832。
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Japanese Journal
- 四肢の筋力低下を主症状として発症したビタミンB1欠乏症の思春期例
- 川崎 悠,松原 康策,内田 佳子 [他]
- 日本小児科学会雑誌 = The journal of the Japan Pediatric Society 116(12), 1903-1908, 2012-12
- NAID 40019533337
- 臨床試験はどこまで未来を予見しうるのか? (第109回日本内科学会講演会) -- (シンポジウム 我が国の内科領域のトランスレーショナルリサーチとEBM)
Related Links
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- 日本の脚気史(にほんのかっけし)では日本(大日本帝国)で脚気の流行が国家的問題 となった明治期から、脚気死亡者数が1千人を下まわった1950年代後半までを主として 、「脚気の原因」をめぐる医学界の混乱とその収束、軍事上の要請が「特効薬の開発」に ...
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- 次の文を読み、 59~ 61の問いに答えよ。
- 22歳の男性。全身の筋力低下のため搬入された。
- 現病歴: 5日前に下痢と悪心とがあった。昨日の起床時に歯ブラシをしっかり握れず、朝食時には箸を使えなかった。昼には両腕を持ち上げることができなくなり、夕食時には舌がもつれて話しにくく、むせるようになった。今朝は起き上がれず、母親が救急車を要請し、即日入院となった。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 生活歴:大学 4年生。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:意識は清明。身長 168 cm、体重 63 kg。体温 36.8℃。脈拍 64/分、整。血圧 150/96 mmHg。呼吸数 18/分。 SpO2 96% ( room air)。認知機能に異常を認めない。両眼の[[睫毛徴候[[を認め、鼻唇溝は浅く、口笛を吹くまねができない。構音はやや不明瞭で、軽度の嚥下障害を認める。顔面の感覚には異常を認めない。臥位での頭部挙上ができない。徒手筋力テストで上肢は 1~ 2に低下し、下肢も 3に低下している。握力は両側 0 kgである。上下肢とも筋萎縮と感覚障害とを認めない。腱反射は上下肢とも消失し、病的反射を認めない。自力歩行はできない。排尿と排便とに異常を認めない。
- 検査所見:尿所見と血液所見とに異常を認めない。血液生化学所見:総蛋白 7.0g/dl、アルブミン 3.9 g/dl、総ビリルビン 0.9 mg/dl、AST 33 IU/l、ALT 26 IU/l、CK 86 IU/l(基準 30~140)、尿素窒素 18 mg/dl、クレアチニン 0.8 mg/dl、血糖 86 mg/dl、Na 138 mEq/l、K 4.4 mEq/l、Cl 97 mEq/l。CRP 0.8 mg/dl。動脈血ガス分析 ( room air)に異常を認めない。呼吸機能検査:% VC 73.1%、 FEV1% 94.5%。心電図と胸部エックス線写真とに異常を認めない。脳脊髄液所見:初圧 155 mmH2O(基準 70~170)、細胞数 2 /mm3(基準 0~ 2)(単核球 100% )、蛋白 83 mg/dl(基準 15~45)、糖 69 mg/dl(基準 50~75)。
- この患者の筋力低下の原因はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [108B058]←[国試_108]→[108B060]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [098G099]←[国試_098]→[098G101]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [106H018]←[国試_106]→[106H020]
[★]
- 糖質の過剰摂取と肉体労働が発症のリスクとなるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111B062]←[国試_111]→[111C002]
[★]
- 英
- blood pressure, BP
- 同
- 動脈圧 arterial pressure AP
- 関
- 血圧測定
成人の血圧
- 至適血圧:<120mmHg かつ <80mmHg
- 正常血圧:130mmHg かつ 85mmHg
- 正常高値血圧:130~139mmHg または 85~89mmHg
- I度高血圧(軽症):140~159mmHg または 90~99mmHg
- II度高血圧(中等症):160~179mmHg または 100~109mmHg
- III度高血圧(重症):≧180mmHg または ≧110mmHg
- 収縮期高血圧:≧140mmHg かつ <90mmHg
糖尿病性腎症
- 管理目標: 130/80 mmHg
- 尿蛋白1g/日以上:125/75 mmHg
冠血管と血圧
- In the normal state, autoregulatory mechanisms adjust coronary tone tomatch myocardial oxygen supply with oxygen requirements. In the absence of obstructive coronary disease, thesemechanisms maintain fairly constant rate of coronary flow, as long as the aortic perfusion pressure is approximately 60 mmHg or greater.
血圧の異常
血圧の上肢における左右差
- 大動脈炎症候群:腕頭動脈、鎖骨下動脈の狭窄・閉塞を生じる
- 動脈硬化:鎖骨下動脈領域の病変があるとき、左右の脈拍差や皮膚温の違いを生じる
血圧の上下肢の差(下肢>上肢)
- 大動脈炎症候群:大動脈弓部が冒されやすいが、鎖骨下動脈が冒された場合に上肢の血圧が低下。
- 解離性大動脈瘤:解離腔に生じた血腫が鎖骨下動脈を圧迫すると、上肢の血圧が低下
- 大動脈閉鎖不全症:Hill徴候
収縮期血圧のみ高い。拡張期血圧は高くない
- 拡張期に動脈血流が減少する病態(血流が体循環に押し出されないか、心収縮力のみ上昇している状態?(体循環の血管抵抗が上がっていない?))
- 脈圧が上昇する
- 1. 大動脈基部の血流が逆流やシャントにより減少する場合
ショック
非侵襲的な血圧測定法による血圧の上肢・下肢の差
- 血圧を測定するために駆血帯で血流を遮断する必要がある。このとき、下肢の動脈の方が深部を走行しているため上肢より強く駆血帯で圧迫する必要がある。強く圧迫を要する分だけ下肢の血圧が高く測定されてしまう。
心血管とその周囲の血圧 YN.C-29
- see also PHD.61
中心静脈
|
|
肺動脈楔入圧
|
4~8
|
8~20
|
右心房
|
左心房
|
1~4
|
8~20
|
右心室
|
左心室
|
8~20
|
120~20
|
肺動脈
|
大動脈
|
8~20
|
120~70
|
臓器移植における脳死判定の除外
- 脳死判定#脳死判定の除外規定、臓器の移植に関する法律施行規則#第二条第四項
- 収縮期血圧が以下で定められる数値未満の場合には脳死判定ができない。
- 1歳未満の者 65
- 1歳以上13歳未満の者 年齢x2+65
- 13歳以上の者 90
国試
[★]
- 英
- vitamin
- ビタミン、生物の生存・生育に必要な栄養素のうち、炭水化物やタンパク質、脂質、ミネラル以外の栄養素であり、微量ではあるが生理作用を円滑に行うために必須な有機化合物の総称 wiki
ビタミン
ビタミンと欠乏症、過剰症
[★]
- 英
- vitamine B1
- 同
- チアミン thiamine、塩酸チアミン thiamine hydrochloride、ビタミンB1塩酸塩、アノイリン aneurine
- 商
- アミグランド、パレセーフ、ビーフリード
- 関
- ビタミン、チアミン二リン酸 thiamine pyrophosphate チアミンピロリン酸 TPP
機能
-
-
- 5. 酵母などではアルコール発酵を行うピルビン酸デカルボキシラーゼ(ピルビン酸からCO2を除去してアセトアルデヒドを産生)の補酵素として重要
臨床関連
[★]
- 英
- intravenous hyperalimentation IVH
- 同
- 中心静脈栄養法?、経中心静脈栄養法
- 関
- 経静脈栄養法。完全静脈栄養、経静脈的高カロリー輸液、高カロリー静脈栄養輸液
合併症
- カテーテル関連感染症
- bacterial transloation
- 糖代謝異常
- 肝機能障害
- 電解質異常
- ビタミン欠乏
[★]
- 英
- high output heart failure
- 関
- 心不全
- 脚気:ビタミンB1欠乏により末梢血管平滑筋が弛緩して血管抵抗が低下し、これを補償するために心拍出量が高まるが、それでも末梢の血液需要を満たせない場合に本病態を来す、のであろう。
[★]
- 英
- beriberi heart
- 関
- ビタミンB1、ビタミンB1欠乏症
[★]
- 英
- vital energy, life energy, active energy