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世界の海の年間平均塩分濃度
[1]。海水1kg中に溶けている塩分のグラム数を色で表したもの。青が低濃度、緑が平均的、赤が高濃度であることを示している。
塩分濃度(えんぶんのうど、英語: Salinity(サリニティ))は水に溶けている塩の量。塩化ナトリウムだけでなく、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素塩などの塩類を含めて言うことが多い。オーストラリアや北アメリカではSalinityの語が土壌に含まれる塩分を指すことも多い。
目次
- 1 定義
- 2 定義の歴史
- 3 塩分濃度で見た水の区分
- 4 周囲への影響
- 5 関連項目
- 6 参考文献
- 7 外部リンク
定義
水の塩分濃度 |
淡水 |
汽水 |
食塩水 |
塩水(ブライン) |
< 0.05 % |
0.05 – 3 % |
3 – 5 % |
> 5 % |
< 0.5 ‰ |
0.5 – 30 ‰ |
30 – 50 ‰ |
> 50 ‰ |
水中の塩分濃度の指標として、水中に溶けている陰イオンの中で最も濃度が高いハロゲン化合物、特に塩化物の濃度に着目することも多く、これをハリニティ(halinity)と言う。なお、「halo-」は「塩の」「海の」を表す接頭語であり、塩分濃度と同じ意味で使われることも多い。
世界の海水の塩分濃度を色で表すと(冒頭図参照)、同じ塩分濃度の場所が等高線のように現れる。この「等高線」を等塩分線(isohale)と呼ぶ。
塩分濃度は、水に溶解している塩分(正確には溶解している固形物質全て)の量である[2]。水1リットルに溶けている量を意味する場合と、水1kgに溶けている量を表す場合とがあり、値にそれほど大きな違いは無いが、正確な値が必要な場合にはその区別に注意する必要がある。
海洋学では伝統的に、塩分濃度を海水1キログラムに塩分が何グラム溶けているかで表す(これを絶対塩分という)。つまり、単位はg/kgまたはパーミル(‰)である。(パーミルの単位記号に「ppt」parts per thousandを使うことも多いが、現在ではpptは1兆分の1を意味するparts per trillionの意味で使われることが多いので注意。)そのほか伝統的には、物理化学では溶媒1キログラムに溶けている溶質が何グラム溶けているか(g/kg 溶媒)、分析化学では溶液1リットルに溶質が何グラム溶けているか(g/L 溶液)で表すことが多かった[3]。海洋学では塩分の「分」の文字に「濃度」の意味が含まれていることから「塩分濃度」という言葉を使っておらず、塩分または塩濃度という言葉を使っている。
定義の歴史
昔は塩分濃度を硝酸銀滴定、あるいは蒸発残渣の量で求めることが多かったが、これはいずれも手数がかかり、正確に測定するのも難しかった。1960年代になって液体用の電気伝導率計が発達したため、それ以降しばらくはコペンハーゲンの研究所が濃度を測定した海水「コペンハーゲン水」(Copenhagen water)を標準海水として、それとの電気伝導率の比較で求めることが多くなった(標準海水の塩分濃度は従来どおり硝酸銀滴定で求めた)[3][4]。
1978年、海洋学者は標準海水の代わりに、塩化カリウムの標準液を作り、それとの電気伝導率の比率で表すことを提案した。この値をPractical Salinity Scale (PSS) という。単位はパーミル(つまり無次元数)である[5][6]。パーミルの代わりに単位PSU(Practical Salinity Unit、日本語では実用塩分単位という。単位はつかない)を使うこともあるが、正式なものではない[3]。
塩分濃度で見た水の区分
|
海水区分 |
>300 |
-------------------- |
|
hyperhaline(超塩層) |
60 - 80 |
-------------------- |
|
metahaline(高塩層) |
40 |
-------------------- |
|
mixoeuhaline(混合塩層) |
30 |
-------------------- |
|
polyhaline(多塩層) |
18 |
-------------------- |
|
mesohaline(中間塩層) |
5 |
-------------------- |
|
oligohaline(少塩層) |
0.5 |
-------------------- |
海水の塩分濃度は大体が30~35パーミルであるが、内陸には海水よりも塩分濃度が濃い水、薄い水がある。塩分の濃淡を表す区分方法はいろいろあるが、よく使われるものの一つにhaline(塩分量)がある。halineの区分に日本語の定訳は無いが、海水と同じ30~35パーミルの水をeuhaline sea(同塩海)、これよりも薄い0.5~30パーミルの水(いわゆる汽水)をmixohaline sea(混合塩海)、36~40パーミルの水をmetahaline sea(高塩海)と呼ぶ。右の表は1959年に定義され、1972年にPorにより修正された[7]ヴェニス系と呼ばれる区分である[8]。
塩分濃度が季節を通じて海水とほぼ同じ水はhomoiohaline(類似塩層)と呼ばれる。homoiohalineの湖は、海と常に繋がっている場合がほとんどである。これに対して塩分濃度が変化する水はpoikilohaline(乱鹹層 らんかんそう)と呼ばれ、その塩分濃度は0.5から300超までさまざまである。poikilohalineが生物環境に与える影響は大きい[9]。塩分の変化は1年ごとの周期を持っていたり、それよりも長期であったりとさまざまである。
周囲への影響
塩分濃度の大小は、周りに住む生物にとって重要である。まず、陸上植物に影響する。植物に影響するのは地表の水溜りだけではなく、地下水もである。塩分濃度が高い環境に適している植物は、塩生植物と呼ばれている。また、極端に高い塩分濃度で生きられる生物は極限環境微生物と呼ばれ、とりわけ好塩菌が重要である。また、塩分濃度が大きく変化しても生きていける生物は好塩性 (euryhaline) であると言われる。
人間が飲用に使う場合、水から塩分を取り除くのは非常に困難であり、コストがかかる。この意味でも塩分濃度は重要である。
関連項目
- 淡水
- 海水
- 塩害
- 熱塩循環 中深層での海流の動き
- 海水淡水化
- Soil salinity control 土壌の塩分量調整
- Sodium Adsorption Ratio カルシウムイオン、マグネシウムイオンに対するナトリウムイオンの比率
- en:Stenohaline 塩分濃度変化に弱い生物
- en:Euryhaline 塩分濃度変化に強い生物
参考文献
- ^ World Ocean Atlas 2005.
- ^ 中村泰男 海水の物性と水塊分布
- ^ a b c 角皆静男 海水の塩分の定義と単位
- ^ Lewis, E.L. (1980). The Practical Salinity Scale 1978 and its antecedents. IEEE J. Ocean. Eng., OE-5(1): 3-8.
- ^ Unesco (1981a). The Practical Salinity Scale 1978 and the International Equation of State of Seawater 1980. Tech. Pap. Mar. Sci., 36: 25 pp.
- ^ Unesco (1981b). Background papers and supporting data on the Practical Salinity Scale 1978. Tech. Pap. Mar. Sci., 37: 144 pp.
- ^ Por, F. D. (1972). Hydrobiological notes on the high-salinity waters of the Sinai Peninsula. Mar. Biol., 14(2): 111–119.
- ^ Venice system (1959). The final resolution of the symposium on the classification of brackish waters. Archo Oceanogr. Limnol., 11 (suppl): 243–248.
- ^ Dahl, E. (1956). Ecological salinity boundaries in poikilohaline waters. Oikos, 7(I): 1–21.
- Mantyla, A.W. 1987. Standard Seawater Comparisons updated. J. Phys. Ocean., 17: 543-548.
- 中内清文 英和海洋辞典 一部の訳語
外部リンク
- Equations and algorithms to calculate fundamental properties of sea water.
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 山中 正朗,杉浦 公彦
- 日本高専学会誌 : journal of the Japan Association for College of Technology 16(3), 39-44, 2011-07-31
- … や味噌といった高塩分濃度の調味料の製造時に発生する廃棄物・副産物の処理方法が問題になっている.この醤油製造時に発生する廃棄物・副産物のほとんどは醤油粕であり,塩分や硫黄分を豊富に含んでいる.近年この醤油粕の無害化処理・処分方法の需要が高まっており,これらの問題を解決するために,当研究室では熱触媒に溶融塩を用いることで有害な塩分や硫黄分を取り込 …
- NAID 110008686630
- 009 塩分量測定計を用いた硬化コンクリート中の塩化物イオン量簡易測定法(材料施工,講演研究論文、計画・技術報告)
Related Links
- 塩がないと人間は生きていけません。一定の塩分が血液や体液には必要だからです。かといってとり過ぎるのも問題です。塩分のとりすぎは高血圧症の原因になると考えられています。 でも、ほとんどの料理には塩を使っています。
- 現在日本人の平均塩分摂取量は1日12~13gです。しかし高血圧を予防するためには1日10g以下(小さじ1と2/3)にする必要があります。すでに高血圧症や糖尿病などの生活習慣病の方は1日7g以下(このうち調味料などで添加するのは4g ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ミネラリン注
組成
本剤は1管(2mL)中に下記の成分を含有する。
有効成分
- 塩化第二鉄:9.460mg
塩化マンガン:0.1979mg
硫酸亜鉛水和物:17.25mg
硫酸銅:1.248mg
ヨウ化カリウム:0.1660mg
元素量
- 鉄(Fe) :35 μmol
マンガン(Mn) :1 μmol
亜鉛(Zn) :60 μmol
銅(Cu) :5 μmol
ヨウ素(I) :1 μmol
添加物
- コンドロイチン硫酸エステルナトリウム:9.774mg
水酸化ナトリウム(pH調整剤):適量
禁忌
胆道閉塞のある患者
- [排泄障害により、マンガンの全血中濃度、及び銅などの微量元素の血漿中濃度を上昇させるおそれがある。]
本剤又は本剤配合成分に過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- 経口、経腸管栄養補給が不能又は不十分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない場合の亜鉛、鉄、銅、マンガン及びヨウ素の補給。
- 用法・用量
通常、成人には1日2mL(本剤1管)を高カロリー静脈栄養輸液に添加し、点滴静注する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。
本剤は、経口・経腸管栄養補給が十分になった場合には、速やかに投与を中止すること(通常、経口・経腸管栄養により微量元素は補給される)。
高カロリー輸液用基本液等には微量元素が含まれた製剤があるので、それらの微量元素量に応じて適宜減量すること。
黄疸がある場合、又は本剤投与中にマンガンの全血中濃度の上昇が認められた場合には、マンガンが配合されていない微量元素製剤の投与を考慮すること。また、銅などの微量元素の血漿中濃度の上昇が認められた場合には、休薬、減量もしくは中止等を考慮すること。
- 全血中マンガン濃度の基準値1)
Mn(μg/dL) 0.52〜2.4
血漿中微量元素濃度の基準値2)
中央値(下限値〜上限値)※
Fe(μg/dL) 103(35〜174)
Zn(μg/dL) 97(70〜124)
Cu(μg/dL) 94(62〜132)
I(μg/dL) 5.7(3.7〜14.0)
※健常成人男女各20名より求めた。
慎重投与
肝障害のある患者
- [微量元素の血漿・全血中濃度を上昇させるおそれがある。]
腎障害のある患者
- [微量元素の血漿・全血中濃度を上昇させるおそれがある。]
薬効薬理
- 微量元素欠乏ラット及び正常ラットに、1週間、マンガン20μmol配合微量元素製剤を添加した高カロリー輸液施行群と微量元素製剤を添加しない高カロリー輸液施行群における微量元素製剤の補給効果を比較検討した9)。その結果、微量元素製剤を添加しない群では血漿あるいは組織中の微量元素濃度は低下し、また微量元素欠乏に基づくと考えられる貧血症状、アルカリフォスファターゼ活性の低下、トリヨードチロニン及びチロキシン濃度の低下などが認められたが、微量元素製剤を添加した群ではこれらの変化は正常レベルに回復あるいは回復する傾向が認められた。
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、7~9の問いに答えよ。
- 66歳の男性。腹部膨満感を主訴に来院した。
- 現病歴 : 20年前から慢性肝炎の診断で近医に通院中であった。3週前から下腹部が張る感じがあり、最近増強した。この1か月で体重が5kg増加した。
- 既往歴 : 25歳の時に十二指腸潰瘍の出血で輸血を受けた。
- 現症 : 意識は清明。身長166cm、体重60kg。体温36.7℃。脈拍76/分、整。血圧146/60mmHg。眼球結膜に黄染を認める。手掌紅斑と胸部のクモ状血管腫とを認める。腹部は全体的に膨隆し、緊満している。肝は触知せず、脾濁音界は拡大し、脾辺縁を触知する。下肢に浮腫を認める。
- 検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ウロピリノゲン2+、ビリルビン1+、潜血(-)。血液所見:赤血球380万、Hb11.9g/dl、Ht37%、白血球3,500、血小板6万、プロトロンビン時間67%(基準80~120)。血清生化学所見:空腹時血糖92mg/dl、総蛋白5.3g/dl、アルブミン2.1g/dl、γ-グロブリン35.5%、尿素窒素8.3mg/dl、クレアチニン0.7mg/dl、アンモニア42μg/dl(基準18~48)、総コレステロール130mg/dl、総ビリルビン4.7mg/dl、直接ビリルビン2.9mg/dl、AST89単位、ALT45単位、ALP366単位(基準260以下)、γ-GTP392単位(基準8~50)、Na136mEq/l、K3.9mEq/l、Cl103mEq/l。免疫学所見:CRP0.1mg/dl、HBs抗原(-)、HCV抗体(+)、AFP16ng/ml(基準20以下)。腹部超音波検査では大量の腹水の貯留を認め、肝辺縁は鈍化し、表面は不整、肝実質も不均一である。結節像は認めない。
[正答]
※国試ナビ4※ [100C007]←[国試_100]→[100C009]
[★]
- 52歳の男性。会社の健康診断でメタボリックシンドロームを指摘され来院した。事務系の管理職でデスクワークがほとんどであり、仕事上の会食や飲酒の機会が多い。喫煙歴はなく、飲酒はほぼ毎日で、会食がある時は量が増える。運動はしない。父親が高血圧。身長 172 cm、体重 79 kg、腹囲 89 cm。血圧 142/90 mmHg。身体所見に異常を認めない。 AST 33 IU/l、ALT 38 IU/l、 γ -GTP 75 IU/l(基準 8~50)、空腹時血糖 102 mg/dl、トリグリセリド 185 mg/dl、HDLコレステロール 68mg/dl、LDLコレステロール 148 mg/dl。食事内容を記載し再診した。 3日分の食事内容を表に示す。
- a 「エネルギー摂取量を減らしましょう」
- b 「塩分はもう少し摂っても大丈夫です」
- c 「野菜の摂取もバランスがいいですね」
- d 「この程度のアルコールなら問題はありません」
- e 「蛋白質をもう少し摂取するようにしましょう」
[正答]
※国試ナビ4※ [108G042]←[国試_108]→[108G044]
[★]
- 47歳の男性。事務職員。健康診断後の保健指導のため社内診療室に来室した。身長165cm、体重70kg。脈拍68/分、整。血圧 128/82mmHg。喫煙歴はない。飲酒はビール大瓶2本/日を27年間。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液生化学所見:空腹時血糖 105mg/dl、総コレステロール 230mg/dl、トリグリセリド 150mg/dl、HDL-コレステロール40mg/dl、AST 35IU/l、ALT 20IU/l、γ-GTP 80IU/l(基準8~50)。心電図に異常を認めない。摂取エネルギー量:2,800kcal/日、脂質摂取量120g/日、塩分摂取量7.5g/日、食物繊維摂取量10g/日。
- a. 減塩
- b. 節酒
- c. 低脂肪食
- d. 野菜摂取
- e. 摂取エネルギー量制限
[正答]
※国試ナビ4※ [103C016]←[国試_103]→[103C018]
[★]
- ■症例
- 72歳 女性
- 現病歴:胸部の感染症にドキシサイクリンをGPに処方された。関節リウマチに長期間罹患しており、9年間、1日7mgのプレドニゾロンを服用している。関節痛のため時々パラセタモールを服用。GPが測定した血圧は138/82mmHgであった。抗菌薬を服用し始める2日前からはじまって5日間熱っぽく、食欲不振であり、ベットから動けないでいる。水は十分に飲ませている。5日目に傾眠傾向となり、起こすことが困難になったため、救急車で救急部に連れてきた。
- 主訴:傾眠
- 生活歴:単身。退職した娘が世話をするために引っ越してきている。
- 家族歴:なし。
- 身体所見 examination
- 小柄である(50kgと評価された)が、最近になって体重が減少したということはない。体温38.8℃。眠たそうであり、命令には応じる。簡単な質問にしか答えない。全身性に筋緊張低下。局所神経症状無し。脈拍:118/min。血圧:104/68mmHg。頚静脈圧上昇せず。足首に腫脹無し。肺底部にcrackles(ラ音)とwheezes(笛音)を認める。関節にわずかに活動性の炎症と変形が認められる。これは関節リウマチの既往と合う所見である。
- 検査 investigation
- ヘモグロビン:軽度低下。MCV:正常。白血球増多。ナトリウム低下。カリウム正常。尿素上昇。クレアチニン上昇。
- 問題0. □と○に入る言葉を述べよ
- 1) 傾眠とは□□障害に含まれる
- 2) 傾眠とは、刺激を与えなければ□□が低下するが、刺激を与えれば○○する状態である。
- 問題1. 患者に関連する以下の事項のうち何が傾眠と関係あるのだろうか?2つ選べ。
- 1) ドキシサイクリンの副作用
- 2) 関節リウマチの重症化
- 3) プレドニゾロンの服用歴
- 4) パラセタモールの服用歴
- 5) 胸部感染症
- 問題2. 異常な検査所見をどう説明しますか?口頭で述べてください。ぶっちゃけ、やや低血圧であることと、ナトリウム低値が着目点です。腎機能低下は二次的なものです。
- ■意識障害
- 意識障害 (PSY.38)
- 単純な意識障害
- 明識困難状態 < 昏蒙 < 傾眠 < 昏眠 < 昏睡
- ■傾眠
- 昏睡状態の分類の一つ
- ・somnolence
- 放置すれば意識が低下し、眠ったようになるが、刺激で覚醒する。病的な場合にのみ用いられる。(BET.130)
- sleepiness; also, unnatural drowsiness. A depressive mental state commonly caused by encephalitis, encephalomalacia, hepatic encephalopathy, hypoxia and some poisonings, e.g. Filix mas, the male fern.
- (Saunders Comprehensive Veterinary Dictionary, 3 ed. c 2007 Elsevier, Inc. All rights reserved)
- ・drowsiness
- 正常、病的の区別無く眠り込む状態(BET.130)
- a decreased level of consciousness characterized by sleepiness and difficulty in remaining alert but easy arousal by stimuli. It may be caused by a lack of sleep, medications, substance abuse, or a cerebral disorder.
- (Mosby's Medical Dictionary, 8th edition. c 2009, Elsevier.)
- ■意識障害を呈する患者に対してどのような疾患を鑑別に挙げるべきか?
- 1. 脳原発の疾患(一次性)
- a. テント上病変(脳幹の圧迫性病変ないし脳ヘルニアをきたす疾患)
- 1) 脳血管障害:脳出血、脳梗塞
- 2) 硬膜下血腫
- 3) 脳腫瘍:原発性、転移性
- 4) 脳膿瘍
- b. テント下病変(脳幹網様体の障害)
- 1) 脳幹出血、脳幹梗塞、小脳出血、小脳梗塞、脳腫痛、多発性硬化症など
- c. びまん性病変
- 1) くも膜下出血、中枢神経感染症:髄膜炎、脳炎、 播種性血管内凝固症候群など
- 2. 全身疾患に伴う病態(二次性)
- a. 代謝性またはびまん性病変
- 1) ショック:心筋梗塞、大出血など
- 2) 薬物、毒物
- 3) 無酸素ないし低酸素血症
- 4) DIC、全身性感染症:敗血症など
- 5) 肝不全、腎不全、糖尿病性高血糖、重症肝炎、内分泌疾患など
- 6) 低血糖、ビタミンB1欠乏: Wernicke脳症
- 7) 脳振盪、てんかん大発作後
- 8) 酸塩基平衡および電解質異常
- 9) 栄養障害
- 10) 低体温症
- b. 心因性無反応
- 1) ヒステリー、統合失調症
- ■低ナトリウム血症
- 血清ナトリウムが134mEq/L以下の病態。(正常の下限は135mEq/Lとされる)
- ・病因 ICU.525
- 循環血減少性低ナトリウム血症
- 利尿・副腎不全 :尿中Na > 20mEq
- 嘔吐・下痢 :尿中Na < 20mEq
- 等容量性低ナトリウム血症:細胞外液は増加していないが、水の方が多くなった状態。臨床的に浮腫が無い。
- SIADH :尿浸透圧 > 100 mOsm/L
- 心因性多飲症 :尿浸透圧 < 100 mOsm/L
- 循環血増加性低ナトリウム血症:細胞外液にナトリウムと水が増加しており、なおかつ水の方が多い病態
- 腎不全 :尿中Na > 20mEq
- 心不全・肝不全 :尿中Na < 20mEq
- ・症状
- 全身 :無力感、全身倦怠感
- 消化器:食欲不振、悪心・嘔吐
- 神経 :意識障害(傾眠、昏睡)
- 筋 :痙攣、腱反射低下、筋力低下
- ■アルドステロン
- 1. 腎の接合尿細管と集合管、唾液腺、乳腺、汗腺等に働いてNa+の再吸収を促進し、K+の排出(分泌)を促進する (SP.791,792 によれば、腎接合尿細管を含む)
- 2. 腎集合管でH+の排出(分泌)を促進する。
- Na+/K+-ATPase活性↑@遠位尿細管・皮質集合管 → 管腔側K↑ → K再吸収/H+分泌 (QB CBT vol2 p.360)
- ■副腎皮質球状層から分泌されるアルドステロンの分泌制御
- 1. レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
- 2. 血清カリウム濃度上昇
- 3. ACTH(寄与は小さい)
- ■低アルドステロン症の症状と臨床検査
- 症状
- 脱水、低血圧、代謝性アシドーシス
- 検査
- 低ナトリウム血症、高カリウム血症
- 尿中ナトリウム高値、尿中カリウム低値
- 血中HCO3-低下
- ■起こっていることは何か?
- ステロイドの突然の中断による急性の副腎不全。特に低アルドステロン症が前面に出た病態。
- 副腎不全の原因(病期による分類)(BPT.793)
- 急性:ウォーターハウス・フリーデリクセン症候群、長期コルチコイド療法の突然の中断、慢性副腎不全患者へのストレス
- 慢性:(major)自己免疫性副腎炎、結核、後天性免疫不全症候群、転移性疾患(metastatic disease)
- (minor)全身性アミロイドーシス、真菌感染、ヘモクロマトーシス、サルコイドーシス
- 症状:
- グルココルチコイドの欠乏 :易疲労感、食欲不振、悪心・嘔吐、体重減少、脱力、嗜眠、低血圧
- ミネラルコルチコイドの欠乏:低血圧、低Na血症、高K血症、味覚の変化(塩分の故意食事を好むようになる)
- ■答え
- (第一パラグラフ)診断とその根拠
- ・二次性急性低アルドステロン症 secondary acute aldosteronism
- ・病因:本症例では、長期にわたるステロイドホルモンの使用により視床下部-下垂体-副腎軸の不全を来した。ステロイドホルモンを長期に使用している状態でステロイドホルモンの需要が高まったとき(感染、外傷(手術))、あるいは嘔吐などで経口ステロイドを服用できないときに起こる。
- ・症状:本症例では傾眠と低血圧として症状が現れている。
- (第二パラグラフ)
- ・本疾患の低ナトリウム血症の解釈 → (1)ナトリウム摂取の低下、(2)水分摂取による希釈
- ・視床下部-下垂体-副腎軸は障害を受けておらずナトリウムを補充する治療をすべき。
- ・一次性急性低アルドステロン症(addisonian crisis)では、鉱質コルチコイドと糖質コルチコイドの分泌不全がおこり、低ナトリウム血症と高カリウム血症を来す。
- ・二次性急性低アルドステロン症はしばしば間違ってaddisonian crisisと呼ばれる。
- (第三パラグラフ)
- ・感染の拡散も考慮すべき;一次部位が脳で髄膜炎か脳膿瘍を伴っている、あるいは局所的に肺膿瘍あるいは膿胸を起こしている。
- ・高齢とステロイドの服用ということで免疫力がある程度低下している。
- ・ステロイドの量が多いかもしれない。
- (第四パラグラフ)
- ・治療はすぐに経験的治療であるヒドロコルチゾンと生理食塩水の輸液を行う。
- ・患者は(治療に?)反応し、5時間以内に意識レベルは正常となった。そして血圧は上昇し136/78mmHgとなった。胸部X線では両側の肺に肺炎に一致する陰影が見られたが、それ以外に異常は認められなかった。
- ■KEY POINTS
- ・二次性低アルドステロン症はmedical emergency(医学的な緊急事態)である、すぐに経験的治療を行うことが求められる。
- ・長期にわたりステロイドを投与されている患者では、以下の時にステロイドを増量すべき;別の疾患を発症したとき。嘔吐を反復する場合には全身投与に切り替える。
- ■低アルドステロン症ってなによ
- http://enotes.tripod.com/hypoaldosteronism.htm
- ・時々、低アルドステロン症は副腎不全の唯一の、あるいは支配的な徴候である
- ・アルドステロンの生合成の障害 → まれ
- ・アルドステロン生合成の部分的欠損 → 21-ヒドロキシラーゼ欠損による先天性副腎皮質過形成の症状としての低アルドステロン症
- ▲特発性低アルドステロン症 idiopathic hypoaldosteronism
- 症状:高カリウム血症に続発する心ブロック、顕著な低ナトリウム血症の有無を問わず血液量不足に続発する体位性低血圧。
- 検査:血清アルドステロン低値。尿中アルドステロン低値。血清レニン高値。
- ▲低レニン低アルドステロン症
- 特発性低アルドステロン症より一般的な低アルドステロン症
- 疫学:45歳以上の慢性腎臓病。
- 病因:
- ・腎臓病患者において腎臓の間質、尿細管に障害が存在 → レニン分泌能が低下。
- ・レニン分泌が低下する原因は分からないけど傍糸球体装置における障害が常に寄与している。
- ・NSAIDによるプログラスタンジン欠乏は、可逆的な低レニン低アルドステロン症の原因である。SP.793によればレニン分泌刺激 → Na+再吸収を亢進 だそうな。
- ・ヘパリン、カルシウムチャネルブロッカー、βブロッカーも原因となる。
- 症状:
- ・腎臓の障害が原因の低レニン低アルドステロン症患者では糖尿病が一般的みられる所見である。
- ・顕著な特徴は、慢性的で著明な高カリウム血症である。これは高血糖で突然に悪化する。???
- ・高Cl性代謝性アシドーシス+正常or低ナトリウム血症が常に存在
- 増悪因子:ナトリウム制限
- 検査:高カリウム血症、体液量の減少、かつ低ナトリウム血症が存在しているにもかかわらず低レニンであることが特徴的。
[★]
- 英
- salt-losing nephritis
- 同
- ソーン症候群 Thorn syndrome
[★]
- 英
- low-salt diet
- 関
- 低ナトリウム食
[★]
- 英
- salt-losing
- 関
- 塩類喪失性
[★]
- 英
- sodium restriction
- 関
- 減塩