出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/12/28 02:36:43」(JST)
中性脂肪(ちゅうせいしぼう、neutral fat)ないし中性脂質(ちゅうせいししつ、neutral lipid)とは、脂肪酸のグリセリンエステルを指す。狭義には常温で固体の中性脂質を中性脂肪と呼ぶ[1]。
グリセリン脂肪酸エステルにはモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドが存在するが、血液中に含まれる中性脂肪のほとんどはトリグリセリドである。したがって、中性脂肪はトリグリセリドと同義とする場合も多い。TG、TAGまたはTrigという略号で記されることが多い。脂肪酸とグリセリンが結びついて中性を示すので「中性脂肪」と言う。
中性脂肪の成分である脂肪酸は動物においてはステアリン酸、パルミチン酸など飽和脂肪酸が主であるのに対し植物においてはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸のような不飽和脂肪酸を多く含む。したがって、動物性の中性脂肪は室温で固体であるものが多いのに対して、植物性の中性脂肪は室温で液体の場合がほとんどである。
生体内においては、エネルギー貯蔵物質としての役割が大きい。砂漠に生息するラクダや卵殻内での鳥類では中性脂質を酸化して水分に転化する場面もある。また細胞中では部分的に脂肪酸を失った中性脂質(モノグリセリド、ジグリセリド)が細胞内での情報伝達物質として働くことも分かっている。細胞膜は、中性脂肪から取り出された脂肪酸を原料としたリン脂質から形成されている。
生活習慣病における中性脂肪の扱いは複雑で、一時期は完全に無視されるに至ったこともあった。つまりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)やHDLコレステロール(善玉コレステロール)が重要とされ、中性脂肪は軽視された。人間の体内の中性脂肪が1000mg/dLを超えると、急性膵炎のリスクが上昇すると考えられており、それさえ抑えればよいと考えられた。
現在世界の高脂血症治療の最先端・最高峰を示すATP-IIIというステートメントでは中性脂肪も補正すべき物質へと戻った。特にメタボリックシンドロームの診断基準に取り入れられ注目されている。
また、肝硬変や肝臓がんなどの原因となるC型肝炎ウイルス(HCV)は、細胞内の中性脂肪を利用して増殖しており、さらに、ウイルスの「コア」と呼ばれるたんぱく質の働きで、細胞内の中性脂肪が増加すると報告され、治療に応用されることが期待されている[2][3]。
中性脂肪についての血液検査の参考基準値は以下のとおりである。
項目 | 被験者のタイプ | 下限値 | 上限値 | 単位 | 最適範囲 |
中性脂肪 | 10 – 39 歳 | 54[4] | 110[4] | mg/dL | < 100 mg/dL[5] or 1.1[5] mmol/L |
0.61[6] | 1.2 [6] | mmol/L | |||
40 – 59 歳 | 70[4] | 150[4] | mg/dL | ||
0.77[6] | 1.7[6] | mmol/L | |||
> 60 歳 | 80[4] | 150[4] | mg/dL | ||
0.9[6] | 1.7[6] | mmol/L |
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型分類 | 増加するリポ蛋白 | 血清脂質の変動 | コレステロール (mg/dl) |
トリグリセリド (mg/dl) | ||
正常 | - | - | <220 | <150 | ||
I型高脂血症 | 高カイロミクロン血症 | hyperchylomicronemia | カイロミクロン | 中性脂肪著明増加 | <260 | >1000 |
IIa型高脂血症 | 高コレステロール血症 | hypercholesterolemia | LDL | コレステロール増加 | >220 | >150 |
IIb型高脂血症 | 複合型高脂血症 | combined hyperlipidemia | LDL, VLDL | コレステロールと中性脂肪増加 | >220 | 150-300 |
III型高脂血症 | 異常βリポ蛋白血症 | dysbetalipoproteinemia | IDL | 電気泳動でbroad β | 350-500 | 350-500 |
IV型高脂血症 | 高トリグリセリド血症 | hypertriglyceridemia | VLDL | 中性脂肪増加 | <240 | 200-1000 |
V型高脂血症 | 複合型高トリグリセリド血症 | mixed hypertriglyceridemia | カイロミクロン, VLDL | 中性脂肪著明増加 | <300 | >1000 |
I型 | II型 | III型 | IV型 | V型 | |||
IIa型 | IIb型 | ||||||
高カイロミクロン血症 | 高コレステロール血症 | 複合型高脂血症 | 異常βリポ蛋白血症 | 高トリグリセリド血症 | 複合型高トリグリセリド血症 | ||
増加リポ蛋白 | CM | ++ | + | ||||
VLDL | + | + | + | ||||
IDL | + | ||||||
LDL | + | + | |||||
血漿脂質 | TC | + | +++ | ++ | ++ | /+ | + |
TG | +++ | ++ | ++ | ++ | +++ | ||
TC/TG | <0.2 | >1.6 | 不定 | ≒ | 0.6-1.6 | <0.6 | |
病因 | ・LPL欠損 ・アポCII欠損 (外因性高脂血症) |
LDL受容体異常 | 不明 | アポE異常 (E2/E2など) |
不明 (内因性高脂血症) |
LPL欠損へテロ(一部) (外因性高脂血症 and (内因性混合型高脂血症) | |
臨床所見 | 発症時期 | 小児期 | 小児期~成人 | 成人 | 成人 | 小児期~成人 | |
肝脾肥大 |
+++ | - | + | +++ 脾のみ |
+++ | ||
腹痛 | + | + | + | ||||
膵炎 | + | + | |||||
網膜脂血症 | + | + | |||||
肥満 | + | + | |||||
角膜輪 | + | + | |||||
冠動脈疾患 | まれ | 最も高率 | 高率 | 中程度 | 比較的まれ | ||
黄色腫 | 発疹状 | 黄色板状 結節状 腱黄色腫 |
手掌線 結節状 発疹状 |
発疹状 | |||
耐糖能 | 正常 | 正常 | 正常 | 異常多い | 異常多い | ||
高尿酸血症 | なし | なし | 少ない | 多い | 多い | ||
遺伝 | 劣性遺伝 | 優性遺伝 | 劣性遺伝 | 優性遺伝 | 不明 | ||
頻度 | まれ | 多い 500人中 1人(ヘテロ) 100万人中 1人(ホモ) |
多い 200人中 1人 |
少ない 1万人中 2-3人 |
最も多い | まれ | |
血清静置試験 | 上層:乳濁 | 透明 | わずかに混濁 | 混濁、 時にミルク状 |
混濁 | 上層:乳濁 | |
下層:透明 | 下層:混濁 | ||||||
特徴 | small dense LDL の存在 |
broad β |
血清TG | 血清TC | ||
内分泌代謝疾患 | 甲状腺機能低下症 | +++ | |
クッシング症候群 | + | ++ | |
先端性肥大症 | + | ||
糖尿病 | +++ | +~++ | |
痛風 | + | ||
神経性食思不振症 | ++ | ||
ウェルナー症候群 | ++ | ||
肝疾患 | 閉塞性肝・胆道疾患 | +++ | |
肝癌 | ++ | ||
腎疾患 | ネフローゼ症候群 | ++ | +++ |
慢性腎不全 | +++ | ||
免疫異常 | 全身性エリテマトーデス | +++ | |
骨髄腫 | ++ | + | |
薬剤など | サイアザイド | + | + |
β遮断薬 | + | ||
シクロスポリン | + | ||
経口避妊薬 | +++ |
治療方針の原則 | カテゴリー | 脂質管理目標値(mg/dL) | |||||
リスク群 | LDL-C以外の主要危険因子 | LDL-C | HDL-C | TG | |||
一次予防 | まず生活習慣の改善を 行った後、薬物治療の 適応を考慮する | I | 低リスク群 | 0 | <160 | ≧40 | <150 |
II | 中リスク群 | 1~2 | <140 | ||||
III | 高リスク群 | 3以上 | <120 | ||||
二次予防 | 生活習慣の改善とともに 薬物治療を考慮する | 冠動脈疾患の既往 | <100 |
種類 | 染色法 | 染色結果 |
塩基性色素 | ヘマトキシリン | 青 |
酸性色素 | エオジン | 赤 |
色素 | 染色部位 | ||||
電荷 | 種類 | 例 | 種類 | 電荷 | 例 |
正 | 塩基性色素 | ヘマトキシリン、アズール | 好塩基性 | 負 | 核酸、リボソーム(rRNA)、硝子軟骨 |
負 | 酸性色素 | エオジン | 好酸性 | 正 | 膠原線維 |
高中性脂肪血症 : 約 23,700 件 高トリグリセリド血症 : 約 23,900 件
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