出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/01/09 21:06:32」(JST)
グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンしぼうさんエステル)は、グリセリンの持つ3つのヒドロキシ基のうち1つないし2つに脂肪酸がエステル結合したもので、代表的な食品用乳化剤である。
日本の食品衛生法ではモノグリセリド誘導体とポリグリセリン脂肪酸エステルもグリセリン脂肪酸エステルに属するものとして認可されており、本項で併せて述べる。
脂肪酸が1つ結合したものがモノアシルグリセロール、2つ結合したものはジアシルグリセロールであるが、あわせてモノアシルグリセロール(Monoacylglycerol)と通称される。3つ結合したものはトリアシルグリセロールであり、乳化剤としての性質は持たない。
CH2OCOR
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CHOH
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CH2OH
モノグリセリドの構造式
天然の油脂にグリセリン脂肪酸エステルが含まれていることは古くから知られていたが、1854年にフランスのマルセラン・ベルテロが脂肪酸とグリセリンからグリセリン脂肪酸エステルを合成することに成功。1930年頃からマーガリンにグリセリン脂肪酸エステルが添加されるようになった。日本で製造・消費されるようになったのは1950年代に入ってからである。グリセリン脂肪酸エステルは疎水性乳化剤であるためW/O(油中水)型乳化に適しており、マーガリンの水滴分離防止などに使用されるが、他の親水性乳化剤と配合することによりO/W(水中油)型乳化も安定する。 グリセリン脂肪酸エステルは澱粉と複合体を作り、パンが硬くなるのを防ぐ効果がある。このため、油脂を含め製パン分野での使用が多くなっている。この他、低温での起泡性・高温での消泡性によりケーキ用起泡剤や豆腐用消泡剤、脂肪凝集作用によるホイップクリームやアイスクリームの保型性向上、防湿・被覆作用によるキャンディ・キャラメルのべたつき防止などに用いられる。工業的製造法としてはグリセリンと脂肪酸のエステル化、グリセリンと油脂のエステル交換の2通りがある。
CH2OCOR
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CHOH
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CH2OCOCH2
酢酸モノグリセリド(AMG)の構造式
モノグリセリド誘導体はモノグリセリド(モノグリセライド、Monoglyceride)のヒドロキシ基にさらに有機酸をエステル結合させたもので、有機酸モノグリセリドとも呼ばれる。日本では酢酸モノグリセリド(AMG)、クエン酸モノグリセリド(CMG)、コハク酸モノグリセリド(SMG)、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(TMGまたはDATEM)、乳酸モノグリセリド(LMG)が認可されている。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンをアルカリ触媒を用いて200~260度で加熱脱水し重合して得られたポリグリセリンのヒドロキシ基の1つ以上に脂肪酸がエステル化したもので、重合度や脂肪酸の数・種類により親水性のものや疎水性のものなど多様な種類が得られる。耐酸性・耐塩性に優れ、O/WおよびW/O型乳化、粉末の液体への分散、油脂の結晶調整、自動販売機で加温販売される缶コーヒーや缶スープなどの抗菌などに用いられる。
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