Clostridium tetani
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破傷風菌 |
顕微鏡で見た破傷風菌
|
分類 |
ドメイン |
: |
細菌 Bacteria |
門 |
: |
フィルミクテス門
Firmicutes |
綱 |
: |
クロストリジウム綱
Clostridia |
目 |
: |
クロストリジウム目
Clostridiales |
科 |
: |
クロストリジウム科
Clostridiaceae |
属 |
: |
クロストリジウム属
Clostridium |
種 |
: |
C. テタニ
Clostridium tetani |
|
学名 |
Clostridium tetani (Flügge 1886) Bergey et al. 1923 |
北里柴三郎博士による破傷風菌に関する論文原稿(明治22年)
コッホと思われる書き込みが認められる。
東大医科研・近代医科学記念館
破傷風菌(はしょうふうきん、英: Clostridium tetani)は、クロストリジウム属の真正細菌で、破傷風の病原体である。グラム陽性、嫌気性の大型桿菌。世界中の土壌や汚泥に芽胞として存在している。
1889年にエミール・フォン・ベーリングと北里柴三郎が初めて純粋培養に成功した。
目次
- 1 毒素
- 2 特徴
- 3 症状
- 4 診断
- 5 予防
- 6 治療
- 7 その他
毒素[編集]
破傷風菌が引き起こす運動障害は破傷風毒素(テタノスパスミン)によって引き起こされる。
破傷風毒素の毒性は極めて強く、世界最強の毒素の一つとして知られている。マウスの最小致死量はわずか数十pgである。
毒素は神経筋接合部(英語版)から神経終末(英語版)膜を介して神経内に取り込まれる。毒素は逆行性輸送され、脊髄前角に到達し、細胞膜を通過しシナプス前膜を通りさらに上位の中枢へ運搬される。そこで抑制性シナプスを遮断し、痙性麻痺を引き起こす。ついで興奮性シナプスも遮断し、筋は拘縮した状態となる。これはストリキニーネの作用と同一である。
ちなみにこれはボツリヌストキシンの作用と逆となる。ボツリヌストキシンは筋の弛緩を発生させる。
破傷風菌はこのほかに溶血毒のテタノリジン(英語版)も生産するが、こちらの病原的意義は薄いとされる。
特徴[編集]
大きさは0.3〜0.6μm×3〜6μmである。芽胞は円形で端在性であり、太鼓の撥状と呼ばれる形態を示す。この芽胞の形態はクロストリジウム属の中で破傷風菌だけが持つ特徴である。
鞭毛を持つため運動性を有し、寒天平板上で膜状に広がるのを見ることができる。
クロストリジウム属で唯一インドール産生が見られる。
症状[編集]
詳細は「破傷風」を参照
診断[編集]
基本的には症状から推測するしかない。発症したときには外傷が治癒してわからなくなっていることがあるため、外傷がないからといって破傷風の可能性を除外しないことが必要である。そのため、受傷歴がないか問診することが重要となる。創傷部位や膿から菌を分離できることもある。
予防[編集]
三種混合ワクチンを接種する。
治療[編集]
早期診断し、速やかに破傷風免疫グロブリン(TIG)を筋肉注射し毒素を中和する。神経細胞に毒素が結合すると中和は不可能となるため、早期診断・治療が非常に重要である。
また抗生物質としてペニシリン系薬剤を投与するほか、気管切開、ジアゼパムなどの抗痙攣薬、ベクロニウム(英語版)などの筋弛緩剤投与などといった対症療法をいつでもできるようにしておく必要がある。
その他[編集]
北里大学の校章は破傷風菌を図案化したものである。これは学祖北里柴三郎の破傷風菌研究に由来する。
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- 非ウイルス性感染症 破傷風菌 (広範囲 血液・尿化学検査 免疫学的検査(第7版・3)その数値をどう読むか) -- (免疫学的検査 感染症関連検査(抗原および抗体を含む))
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- 破傷風菌は毒素として、神経毒であるテタノスパスミンと溶血毒であるテタノリジンを産生 する。テタノスパスミンは、脳や脊髄の運動抑制ニューロンに作用し、重症の場合は全身 の筋肉麻痺や強直性痙攣をひき起こす。この作用機序、毒素(および抗毒素) ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
沈降破傷風トキソイド“化血研”
組成
製法の概要
- 本剤は、破傷風菌(Harvard A-47株)を純培養し、得られた毒素液を精製濃縮し、かつ、ホルマリンを加えて無毒化したトキソイド原液に、アルミニウム塩を加えてトキソイドを不溶性にし、リン酸塩緩衝塩化ナトリウム液で希釈し、規定濃度に調製した液剤である。
- なお、本剤は製造工程でウシの乳由来成分(スキムミルク、ポリペプトン)、ウシの肝臓、ウシの肉、ブタの胃由来成分(ペプトン)、ブタの膵臓由来成分(パンクレアチン)及びクジラの心臓由来成分(ハートエキス)を使用している。
組成
有効成分
破傷風トキソイド
添加物
チメロサール
添加物
ブドウ糖
添加物
ホルマリン(ホルムアルデヒドとして)
添加物
塩化アルミニウム
添加物
水酸化ナトリウム
添加物
塩化ナトリウム
添加物
リン酸水素ナトリウム水和物
添加物
リン酸二水素ナトリウム
禁忌
(予防接種を受けることが適当でない者)
- 被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合には、接種を行ってはならない。
- 明らかな発熱を呈している者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
- 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
- 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
効能または効果
- ◎初回免疫:通常、1回0.5mLずつを2回、3〜8週間の間隔で皮下又は筋肉内に注射する。
- ◎追加免疫:第1回の追加免疫には、通常、初回免疫後6箇月以上の間隔をおいて、(標準として初回免疫終了後12箇月から18箇月までの間に)0.5mLを1回皮下又は筋肉内に注射する。ただし、初回免疫のとき、副反応の強かった者には、適宜減量する。以後の追加免疫のときの接種量もこれに準ずる。
接種対象者・接種時期
- 初回免疫と追加免疫を完了した者には、数年ごとに再追加免疫として、通常、1回0.5mLを皮下又は筋肉内に注射する。なお、再追加免疫の接種間隔は職業、スポーツ等の実施状況を考慮すること。
- 初回免疫、追加免疫、又は再追加免疫を受けた者で、破傷風感染のおそれのある負傷を受けたときは直ちに本剤を通常、1回0.5mLを皮下又は筋肉内に注射する。
他のワクチン製剤との接種間隔
- 生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日以上、また、他の不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常、6日以上間隔を置いて本剤を接種すること。
- ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接種することができる(なお、本剤を他のワクチンと混合して接種してはならない)。
慎重投与
(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)
- 被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合は、健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種すること。
- 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
- 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
- 過去にけいれんの既往のある者
- 過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
- 本剤の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者
重大な副作用
ショック、アナフィラキシー(0.1%未満):ショック、アナフィラキシー(全身発赤、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- 破傷風の予防には、本剤接種後、血中抗毒素が一定量以上産生される必要がある。破傷風の発症阻止には、0.01IU/mL以上の抗毒素量が必要と考えられている。3)4)
- 一般的には、本剤を2回接種後、4週間で感染防御に必要な抗毒素量が得られるが、経時的に抗毒素量が低下する。感染防御効果を持続(抗毒素量の維持)するためにはさらに6〜12月、あるいは1年半後に3回目の追加免疫を行えば約4〜5年間は免疫状態が続くとされている。5)
★リンクテーブル★
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [099E072]←[国試_099]→[099E074]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [104A006]←[国試_104]→[104A008]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [112B049]←[国試_112]→[112C002]
[★]
- 英
- bacterium,(pl.) bacteria
- 同
- バクテリア
- 関
- 特殊な細菌 、細菌の鑑別、細菌の同定?、細菌の分類?
細菌の命名
- ラテン語であり、イタリックで表す。
- 「属名 + 種名」で表現される。
グラム染色性と形状による分類と疾患
[★]
- 英
- Clostridium
- 関
- 細菌
- 例外的に酸素に耐性が有るのがC. tertium, C. histolyticum, C.innocuum, C.perfringens
クロストリジウム属
[★]
- 英
- tetanus bacillus
- ラ
- Costridium tetani
- 同
- (国試)破傷風菌
- 関
- クロストリジウム属
- 図:SMB.260
- 芽胞形成
- 嫌気性菌
- グラム陽性桿菌
- 形状:太鼓のバチ状(円形で端在性の芽胞)
- 棲息場所 土壌中に広く分布
- 運動性:寒天平板上で遊走し、辺縁は樹枝状
- 病原性:創傷感染(特に土壌で汚染された挫滅創)により感染。受傷後6時間で毒素(破傷風毒素)を産生し始める。
- 毒素:外毒素(神経毒:テタノスパスミン(破傷風毒素)、破傷風溶血毒:テタノリジン)
- 感染症:破傷風
[★]
- 英
- spore
- 同
- 胞子、エンドスポア endospore
- 関
- 炭疽菌、セレウス菌など
Clostridium属
- 破傷風菌、ボツリヌス菌、ガス壊疽菌群など
- 加熱滅菌:121℃,15分で死滅
- 多くの消毒剤に抵抗性。煮沸消毒無効(100℃,15分以上)
[★]
- 英
- tetanospasmin
- 同
- 破傷風毒素, tetanus toxin、テタヌストキシン
- 関
- 破傷風菌、破傷風
[★]
- 英
- tetanus, lockjaw
- 同
- テタヌス
- 関
- 破傷風菌 Clostridium tetani
概念
- 嫌気性芽胞形成性グラム陽性桿菌である破傷風菌(Clostridium tetani)による感染症であり、破傷風菌が産生した外毒素テタノスパスミン(tetanospasmin)による中枢神経障害(随意筋痙攣)をきたすことが本疾患の病態である。
- 破傷風菌は土壌や塵など環境中に広く、またヒトや動物の消化管にも存在するが、破傷風菌に汚染された環境で外傷を契機に感染が成立する。
- 感染症ではあるが、神経毒による中毒性感染症であある。
病型
- 参考1
- 全身性破傷風:全身の筋の強直性攣縮 + 自律神経症状(早期は易刺激性、不穏、発汗、頻脈。後期には著しい発汗、不整脈、不安定な高血圧・低血圧、発熱)
- 限局性破傷風
- 頭部破傷風
- 新生児破傷風
病態
- SMB.260
- 破傷風毒素(テタノスパスミン)は亜鉛依存性プロテアーゼ活性を有しており、シナプス小胞付随蛋白であり開口分泌に関与するシナプトブレビンを特異的に切断し、シナプスへの神経伝達物質の放出を妨げる。
- 症状の発現は脊髄の抑制ニューロンが遮断される事による。
- 自律神経ニューロンも遮断されるので、自律神経症状も発現する。 → 著しい血圧、脈拍の変動
潜伏期
経過
治療
- SMB.260 YN. H-55 SPE.359
- 創部 :デブリドマン
- 抗毒素:ヒトTIGの投与 → 神経細胞に取り込まれた後では毒素を中和できなくなる。
- 抗菌 :ペニシリンGの大量投与。テトラサイクリン(SPE.359)
- 対症療法:呼吸管理、筋弛緩薬、抗痙攣薬(ジアゼパム)、刺激の軽減(日光の遮蔽)
予防
- 破傷風トキソイドによる能動免疫
- 小児期にジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチンを、それ以外の者は沈降破傷風トキソイド(破傷風トキソイド*)を3回注射しておけば約5年間程度の免疫が得られる。
免疫
予後
- 死亡率:40% (SPE.359)
- 救急救命センターレベルでならば死亡率は10%程度に下げることが可能である。
参考
- 1. [charged] Tetanus - uptodate [1]
国試
[★]
- 英
- fungus、fungi、microbial
- 関
- 菌類、真菌、真菌類、微生物