- 英
- rectal cancer, cancer of the rectum
- ラ
- carcinoma recti
- 関
- 大腸癌、直腸、colorectal cancer
治療
-
- 1. 経肛門的にイレウス管を挿入・減圧後、一期的手術 ← 増えてきている。
- 2. 人工肛門造設、腫瘍摘出の二期的手術
手術療法
国試
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大腸癌 |
胃と直腸と結腸の図
|
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
C18-C20 |
ICD-9 |
153.0-154.1 |
ICD-O |
M8140/3 (95%の事例) |
OMIM |
114500 |
DiseasesDB |
2975 |
MedlinePlus |
000262 |
eMedicine |
med/413 med/1994 ped/3037 |
Patient UK |
大腸癌 |
大腸癌(だいちょうがん、英:Colorectal cancer[1])は、大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生する癌腫である。肛門管に発生するものを含めることもある。
正式には部位別に盲腸癌(もうちょうがん、Cecum cancer)、結腸癌(けっちょうがん、Colon cancer)、直腸癌(ちょくちょうがん、Rectum cancer)と称される。
目次
- 1 疫学
- 2 危険因子
- 3 予防の可能性
- 4 病態
- 5 病理
- 6 症状
- 7 検査・診断
- 8 病期
- 8.1 TNM分類
- 8.2 AJCC病期分類
- 8.3 大腸癌取り扱い規約による分類
- 8.4 その他の有名な分類
- 9 治療
- 9.1 内視鏡治療
- 9.2 手術療法
- 9.3 化学療法
- 9.4 放射線療法
- 10 脚注
- 11 参考文献
- 12 関連項目
- 13 外部リンク
疫学
日本では女性のがんの死亡率の1位、男性では3位を占め、2015年には男性でも2位に上昇すると予想されている[2][3]。アメリカ合衆国においては、3番目に多い癌で、癌死の原因として2番目に多く、生涯に大腸癌に罹患する確率は約7%である。日本でも胃癌を追い越し肺癌についで2番目に多くなっている。
- 2014年の「がんの統計」では、男女合わせた罹患数では、胃癌・肺癌に次いで3番目である[4]。
危険因子
各国民の肉の消費量と大腸癌の発生率には高い相関がある。横軸は1人1日あたりの肉の消費量、縦軸は10万人あたりの患者数。
以下のものが報告されている。
- 大腸癌に罹る家系
- 特に55歳以前の罹患や癌の多発の場合、顕著である。
- 年齢
- 大腸癌に進行するリスクは年齢とともに増加する。その多くは60歳代から70歳代で後期がんが発見されるが、早期発見のためには35[5]歳以降は定期的な検診が必要であるとされる。
- 癌の既往歴
- 卵巣癌、子宮癌、乳がんに罹患した婦人は、大腸癌に進行するリスクが増大する。
- 家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)(Familial adenomatous polyposis;FAP)
- 全大腸切除を施されない場合はほぼ100%が癌に進行する。
- 潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis)
- 長期罹患で寛解がコントロールされていない症例に多く、全大腸切除を施されない場合には25年後でおよそ30%が大腸癌となる。
- 腸内細菌である硫化水素産生菌が産生する硫化水素が潰瘍性大腸炎の原因ではないかとの指摘がある。大腸の粘膜に硫化水素を代謝する酵素が存在するが、その処理量以上の硫化水素に大腸がさらされることが潰瘍性大腸炎の原因となるのではないかとの指摘がされている[6][要高次出典]。硫化水素はミトコンドリアに所在するシトクロムcオキシダーゼを阻害することにより毒性を発現する。高濃度の硫化水素に曝露されることでアポトーシス関連蛋白質であるcaspase3の活性化、ミトコンドリアからのシトクロムcの遊離が見られ、ミトコンドリアを介したアポトーシスが誘導される可能性がある[7][要高次出典]。大腸粘膜を傷害するおそれのある有害な物質の発生を制御するためシソ科を中心としたいくつかの植物の抽出物を動物にあたえることで硫化水素やメタンチオールの発生を抑制することが報告されている[8][要高次出典]。
- 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Hereditary nonpolyposis colorectal cancer;HNPCC)
- 大腸癌や他臓器癌の高リスク群であるため定期的なスクリーニングが推奨される。
- 過体重・肥満
- リスクが高まる事が確実視されている。
- 男性で肥満だと大腸癌になりやすい[9]。
- 赤肉、加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージ)
- 赤肉の摂取と大腸がんのリスクの増加が指摘されている[10]。がん予防10か条(世界がん研究基金)では「赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。ゴール:赤肉は週300g以下に。推奨:赤肉は週500g以下に。」と指摘されている。
- 飲酒
- 確実なリスク
- 1日平均1合以上の飲酒者は、お酒を飲まない人に比べて、大腸癌になりやすい[11]。
- 喫煙
- 喫煙は特に直腸癌のリスク上昇となる。
- たばこを吸う人は、吸わない人に比べて、大腸癌になりやすい[11]。
- 食事バランス
- 食物繊維をとり、動物性の食肉を減らすと大腸癌のリスクが低減すると言われており、食物繊維の摂取量が少ない(平均約6g)人のリスクが高くなる事は再確認されたが、食物繊維を多く摂取している人の肉食でリスクが高まるかは不明である。臨床的にはバランスの取れた食事は大切であるとされている[12][13]。
- 食物繊維摂取量の非常に少ない人で大腸癌リスクが高くなる可能性があるという報告がある[14]。
- 米国国立がん研究所の公開資料によると、「(脂肪に富んだ)大量の肉と大量のカロリーを摂取する人々は、特に大腸がんにおいて、がんの危険が増大することが図より見て取れる。」と指摘している[15]。
- 女性では、「欧米型」の食生活と大腸癌との関連が示唆されるという報告がある[16]。
- リトコール酸
- リトコール酸(Lithocholic acid)は、脂質を可溶性にして吸収を高める界面活性剤の役割をする胆汁酸の一種である。体内で生成された一次胆汁酸であるケノデオキシコール酸から大腸内における微生物の活動により二次胆汁酸としてリトコール酸が発生する。リトコール酸は、人や実験動物に発がんをもたらすとされている[17]。食物繊維は、リトコール酸を吸着し、大便として排出することを促進するとしている[18]。しかし、後述するように食物繊維には大腸がんのリスクの減少の効果はほとんど認められないとしている。
- なお、代表的な界面活性剤である石鹸は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合して石鹸かすになって界面活性力を失い毒性もなくなる。二次胆汁酸にカルシウムが結合することで無毒化されて便中に排泄されるという説がある[19]。興味深いことに、カルシウムとカルシウムの吸収に密接な関わりのあるビタミンDについては後述のような報告もあり、また、マグネシウム摂取量が多いグループの男性の大腸がんリスクが低いとの報告がある[20]、との報告がある。
- ラットで、各種ポリフェノール(カフェ酸、カテキン、クルクミン、エラグ酸)の摂取がリトコール酸の生成を減少させたとの報告がある[21][要高次出典]。
- C-ペプチド
- C-ペプチドは、インスリン生成の際、インスリンの前駆体であるプロインスリンから切り放された部分を指すが、男性では、C-ペプチド値が高いと大腸癌リスクが高くなる。C-ペプチドは男性の結腸癌と関連がある[22]。
- 高感度CRP
- 炎症の程度を示す高感度CRP(C反応性蛋白)の値が高いと、大腸癌リスクが高くなる[23]。
予防の可能性
- 検診
- 人の血液にのみ反応する免疫便潜血検査[24]は、スクリーニングとしての精度(感度)は低いが安価で検査への負担の少ない検診の方法として、現在日本では概ね(自治体や各企業により違いがあるが)35歳から40歳以上の人に対して推奨されている。健康診断の「大腸がん検診」は殆どの場合これをさす。
- 便潜血は単回検査では感度は低いが、複数年に渡り毎年施行した場合の「プログラム感度」は95%以上であり、早期大腸癌発見・大腸癌死の減少に有用である[25]。
- 血液検査による腫瘍マーカー(CA19-9やCEA)による検診・人間ドックの方法もあるが、病期が進行するまで異常値を示さない場合が多く[26]早期発見にはつながりにくい。そのため、年齢や生活習慣および病歴などからみたハイリスクグループには、大腸内視鏡による検診が推奨[27]されている。
- 大腸癌検診を受けている人では、大腸癌による死亡率が低い[28]。
- 検査
- ハイリスクグループや何らかの症状のある人は検査を受けるべきである。ほとんどの大腸がんは、腺腫性ポリープから発生する。これらの病変は大腸内視鏡検査で検知可能で除去可能である。50歳から始めて5年か10年毎に一度のこの内視鏡検査と病変の除去で、がん死のリスクを80%以上減少させることができる[29]。
- 米国全国総合がんネットワークによる現在のガイドラインにおける限り、大腸がんの家族歴がなく、腺種や炎症性腸疾患の病歴がない平均的な対象者で、5年毎のS字結腸の内視鏡検査と毎年の便潜血反応検査、あるいは、バリウム注腸二重造影検査は、10年毎の内視鏡検査よりも望ましい検査方法であるとされている。
- 生活習慣及び栄養
- 様々な国々での大腸がんの発生を比較すると、すわり作業で、高カロリー食品の食べ過ぎ、多量の赤肉又は加工肉の摂取は大腸がんの発生のリスクを高めることを強く示唆している。反面、健全な体重、適度な運動、良い栄養は一般的にがんのリスクを下げる。生活習慣を変えることにより大腸がんのリスクを60-80%下げることができると言われている[30]。
- 身体活動量の多い人で大腸癌リスクが低くなるという報告がある[31]。
- 便通は、大腸癌リスクと関係ない。下痢便は、直腸癌リスクと関連があるかもしれないという報告がある[32]。
- 野菜・果物をたくさん食べても大腸癌リスクは変わらず[33]。
- 果物、野菜、シリアルその他の食物繊維の多量の摂取は、大腸がんと腺種のリスクを下げると考えられてきた。この理論を検証するため16年にわたる88,757人を対象とした調査では、食物繊維の多い食事は大腸がんのリスクを下げてはいなかった[34]。2005年の別の調査でもその結果を支持している[35]。
- ハーバード大学公衆衛生学部は、「食物繊維の摂取は、健康効果のある健全な食事としてもてはやされ、心臓病、糖尿病、憩室疾患、便秘を含む様々な疾患のリスクを減少させていた。多くの人が信じていたにも関わらず、食物繊維には大腸がんのリスクの減少の効果はほとんど認められなかった。」と発表している[36]。
- WHOと国際がん研究機関 (IARC) による、「生活習慣とがんの関連」についてのリスクを下げるもの、リスクを上げるものに関する報告がある[37]。
生活習慣とがんの関連[37][38]
(WHO/IARC)
関連の強さ |
リスクを下げるもの(部位) |
リスクを上げるもの(部位) |
確実 |
身体活動(結腸) |
たばこ(口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺、膵臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、骨髄性白血病)
他人のたばこの煙(肺)
過体重と肥満(食道<腺がん> 、結腸、直腸、乳房<閉経後>、子宮体部、腎臓)
飲酒(口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、乳房)、
アフラトキシン(肝臓)、
中国式塩蔵魚(zh:鹹魚)(鼻咽頭) |
可能性大 |
野菜・果物(口腔、食道、胃、結腸、直腸)
身体活動(乳房) |
貯蔵肉(結腸、直腸)
塩蔵品および食塩(胃)
熱い飲食物(口腔、咽頭、食道) |
可能性あり データ不十分 |
食物繊維、大豆、魚、ω-3脂肪酸、
カロテノイド、ビタミンB2、ビタミンB6、
葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、
ビタミンE、カルシウム、亜鉛、セレン、
非栄養性植物機能成分
(例:アリウム化合物、フラボノイド、イソフラボン、リグナン) |
動物性脂肪 複素環式アミン 多環芳香族炭化水素 ニトロソ化合物 |
2004年における10万人毎の大腸がんによる死亡者数(年齢標準化済み)[39]
データなし
2.5以下
2.5-5
5-7.5
7.5-10
10-12.5
12.5-15
15-17.5
17.5-20
20-22.5
22.5-25
25-27.5
27.5以上
- ビタミンD
- アメリカ国立癌研究所は、ビタミンDの摂取が大腸がん及びその他のがんの予防効果について限定されているか証拠が不十分なので、大腸がん及びその他のがんの予防のためにビタミンDサプリメントの摂取を勧奨はしないとしている[40]。
- ビタミンDの摂取が少ないと直腸がんのリスクが高かったとの報告がある[41]。
- カルシウム
- 2つの無作為化比較試験[42][43]の国際コクラン共同計画によるメタ分析[44]によると、カルシウムは大腸腺腫性ポリープをある程度抑制し得るかもしれないことが発見された。
- カルシウムとビタミンDの両方を多く摂取するグループで大腸癌のリスクが低下したとの報告がある[45]。
- ある無作為化比較試験は、1000mgのカルシウム成分と400IUのビタミンD3は大腸癌に何も効果を示さなかった[46]。
- ω-3脂肪酸
- 魚由来のω-3脂肪酸およびトータルのω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの結腸癌リスクは低い。ω-6脂肪酸およびω-3/ω-6比は大腸癌のリスクと関連がみられない[47]。魚を食べても大腸癌のリスクが低下しないとの研究がある[48]。
- アスピリン
- 後述の#化学療法を参照のこと。
- ビタミンB6
- ビタミンB6を多く摂取するグループで大腸癌のリスクが低下したとの報告がある[49]。
- コーヒー
- コーヒーは女性の浸潤結腸がんを予防したとの報告がある[50]。
病態
多くの大腸癌の発生に関する機序については大きく以下の2つが論じられている。
- Adenoma carcinoma sequence(腺腫-癌 発生)
- 腺腫(大腸ポリープ)から癌が発生し発展していくと考えられている。
- 腺腫(大腸ポリープ)を経ずに何らかの要因によって癌が発生していくと考えられている。
病理
大腸癌で最も多く見られるものは腺癌で、全体の95%も占める。他についても様々に存在する。
詳細は「大腸ポリープ」を参照
症状
一般に早期大腸癌であれば自覚症状はなく、健康診断や人間ドックで発見される。まったく症状が現れない場合も少なくない。進行大腸癌でも環周度が1/4以下ならば症状はほとんどない。1/2周を超えると腸内容の通過障害を起こす場合がある。
左側結腸に存在すると便通異常、腹痛、腹部膨満感などがあり、血便を伴うこともある。しかし、右側結腸ではこれらの症状は乏しく貧血、体重減少、腫瘤触知などの症状となる。これは上行結腸では内容物がまだ液体であるからであると説明されている。左側結腸の全周性病変になると排便困難、便秘、イレウスを起こすこともある。
検査・診断
大腸癌は早期に発見できれば完全治癒の可能性が大きくなる。集団健診では普通「便潜血反応」が行われる。潜血反応が陽性であった場合、貧血などの異常がある場合、その他の大腸癌のハイリスクの場合は、癌をはじめとする大腸疾患の確定のため大腸内視鏡検査が行われる。
- 便潜血反応検査(Fecal occult blood test;FOBT)
- 「化学的便潜血検査」と「免疫学的便潜血検査」がある。化学的便潜血検査は鉄分を含む食事によって検査結果が変化してしまうため、現在は免疫学的の「ヒトヘモグロビン法」が主流。多くの大腸癌検診の1次スクリーニングとして広く行われている。
- 大腸内視鏡(Colonoscopy)
- 内視鏡で直腸から回盲部まで挿入し病変を観察する。最近ではほぼ多くの場合に2次スクリーニングの確定診断目的に施行される。
- バリウム注腸二重撮像法(Double contrast barium enema;DCBE)
- 肛門からバリウム溶液を注入し、ついで空気を注入し、大腸や直腸の形状をX線で撮像する。
-
直腸RSに発生した2型腫瘍の注腸バリウム像(高分化型管状腺癌)。
-
- コンピュータ断層撮影法 (CT)
- X線診断法で進行癌の周囲への進展度合や他臓器(特に肝臓)転移の有無を検査するのに行われる。他の理由で実施されたCT断層撮影で進行大腸癌が発見されることもある。また内視鏡や透視とは異なり、腹部の断層撮影がなされていることから腸管の粘膜下病変を検出し、スキルスや粘膜下腫瘍、虫垂病変などの評価を行える。
- 現在、コンピューターの情報処理能力の進歩に伴いCT colonographyと呼ばれる仮想大腸内視鏡が普及しつつある。この方法は大腸をガスで膨らませ、肛門からカメラを入れ込むことなく、大腸部分を精密な3次元CT画像にする装置である。但し、事前の食事制限や下剤処理を受けることは同じ。唯一陰性反応適中度が低いことが欠点とされる[51]が、これも科学的な根拠はないとされる。腸管に障害のあるばあいこの検査法は、内視鏡検査の代替検査として有効である[52]。
- 血液検査
- 進行大腸癌があると貧血を来すことがよくある。貧血自体はありふれた疾患であるが、大腸がんがその原因の場合は進行がんのおそれがある。
- 腫瘍マーカーを計測することで進行癌の存在を推定することができる。癌胎児性抗原(CEA)が代表的であるが、ほとんどが進行ガンでしか陽性にならず、早期ガンや前ガン病変(大腸ポリープ)の発見はできない上、費用がかかる。
- アミノインデックス[53]やマイクロアレイ[54]などが大腸癌の早期発見に有効なこともある。
- 直腸指診(Digital rectal examination;DRE)
- 医師が、潤滑剤を付けた手袋をした指で直腸に異常がないか触診する。簡単に実施できるが、肛門からその医師の指の届く範囲数センチの所までしか診断できない。
病期
大腸癌の病期分類は主に局所浸潤の度合い、リンパ節浸潤の度合いあるいは遠隔転移の有無によって決定される。今日においては、日本では「大腸癌取り扱い規約」に基づく独自の病期分類を行っている。国際的にはTNM分類が病期分類に使用される。あるいは医者によっては以前から使用されていたデューク分類(Duke's system)を使用する者もいる。
TNM分類
UICCのTNM分類の定義を次に示す。
- T - 腸壁への浸潤度合い
- T0 - 癌の兆候は見出されない
- Tis- 癌は粘膜内にある(腫瘍は存在しているが、浸潤はない)
- T1 - 腫瘍は存在しているが、浸潤は最小限である
- T2 - 浸潤は粘膜下組織に達している
- T3 - 浸潤は筋固有層に達している
- N - リンパ節浸潤の度合い
- N0 - リンパ節に浸潤は見られない
- N1 - 1ないし3つのリンパ節に浸潤が見られる。
- N2 - 4つ以上のリンパ節に浸潤が見られる
- M - 転移の度合い
例えば患者が癌に罹患していなければT0N0M0となる。
AJCC病期分類
- Stage 0
- Stage I
- Stage IIA
- Stage IIB
- Stage IIIA
- Stage IIIB
- Stage IIIC
- Stage IV
大腸癌取り扱い規約による分類
まずは肉眼的分類として以下がある。
- 0型 表在型(詳しくは大腸ポリープの項目を参照)
- 病変の肉眼的形態が軽度な隆起や陥凹を示すに過ぎないもの。
- 1型 腫瘤型
- 明らかに隆起した形態を示し、周囲粘膜との境界が明瞭なもの。
- 2型 潰瘍限局型
- 潰瘍を形成し、潰瘍をとりまく胃壁が肥厚し周堤を形成し、周堤と周囲粘膜との境界が比較的明瞭なもの。
- 3型 腫瘍浸潤型
- 潰瘍を形成し、腫瘍をとりまく胃壁が肥厚し周堤を形成するが、周堤と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの。
- 4型 びまん浸潤型
- 著明な潰瘍形成も周堤もなく、胃壁の肥厚・硬化を特徴とし、病巣と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの。
- 5型 分類不能
- 上記分類に当てはまらないもの。
という分類がある。これは胃癌の分類とまったく同じである。大腸癌取り扱い規約によると壁深達度(いわゆるT)がTNM分類よりはるかに細かくなる。
- 漿膜を有する部位の壁深達度
- m:癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない。
- sm:癌が粘膜下層にとどまり、固有筋層に及んでいない。
- mp:癌が固有筋層にとどまり、これをこえていない。
- ss:癌が固有筋層を超えているが漿膜表面に出ていない。
- se:癌が漿膜表面に露出している。
- si:癌が直接他臓器に浸潤している。
- 漿膜を有しない部位の壁深達度
- m:癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない。
- sm:癌が粘膜下層にとどまり、固有筋層に及んでいない。
- mp:癌が固有筋層にとどまり、これをこえていない。
- A1:癌が固有筋層を超えているが、さらに深くは浸潤していない。
- A2:癌が筋層を越えてさらに深く浸潤しているが他臓器に浸潤していない。
- Ai:癌が直接他臓器に浸潤している。
- リンパ節転移
- n(-):リンパ節転移を認めない。
- n1(-):第1群リンパ節に転移を認めない。
- n1(+):第1群リンパ節に転移を認める。
- n2(-):第2群リンパ節に転移を認めない。
- n2(+):第2群リンパ節に転移を認める。
- n3(-):第3群リンパ節に転移を認めない。
- n3(+):第3群リンパ節に転移を認める。
- n4(-):第4群リンパ節に転移を認めない。
- n4(+):第4群リンパ節に転移を認める。
- 腹膜播種転移
- P0:播種性転移を認めない。
- P1:近接腹膜のみ播種性転移を認める(合併切除可能なもの)。
- P2:遠隔腹膜に少数の転移を認めるもの。
- P3:遠隔腹膜に多数の転移を認めるもの。
- 肝転移
- H0:肝転移を認めない。
- H1:一葉のみに肝転移を認める。
- H2:両葉に少数散在性(4個以内)に転移を認める。
- H3:両葉にわたり多数散在性(5個以上)に転移を認める。
- 肝以外の遠隔他臓器転移
- M(-):遠隔他臓器転移が認められないもの。
- M(+):遠隔他臓器転移が認められるもの。
その他の有名な分類
上記以外の有名な分類をあげる。どの分類を用いるか悩むときはなぜ分類するのかを考える。結局、治療の選択をしたいことが多いので自分がベストと思う治療法を選択する根拠となる分類を用いればよい。なお腸壁とは固有筋層までのことである。
- Dukes分類
- A:癌腫が腸壁内に限局するもの。
- B:癌腫が腸壁を貫いて浸潤するがリンパ節転移がないもの。
- C:リンパ節転移のあるもの。
- Astler&Coller分類
- A:癌腫が粘膜にとどまるもの。
- B1:癌腫が固有筋層に及ぶがリンパ節転移のないもの。
- B2:癌腫が固有筋層を穿通するが、リンパ節転移のないもの。
- C1:癌腫が腸壁内に限局し、リンパ節転移のあるもの。
- C2:癌腫が腸壁を穿通して外部に達し、リンパ節転移のあるもの。
治療
他の癌の治療と同様に、治療方針は癌の病期によって変わってくる。主に以下にあげられる治療を集学的に行っていく。また、近年では臨床診断が進み、大腸ポリープ・大腸癌を含めて「大腸腫瘍」として一括に取り扱うことで評価・治療を行っていく。本稿では大腸癌(進行)について主に記述。
内視鏡治療
主に大腸ポリープ・早期大腸癌(進達度が粘膜下層(sm)の浅層にとどまり、=リンパ節転移の無いと思われる病変)に対し、内視鏡を用いてEMR・ESDによって病変切除による根治治療が施行される。内視鏡治療は原発巣の切除は可能であるが、リンパ節郭清は外科的手術でしか行えないため、リンパ節転移の無いと思われる病変に対し選択される。 大腸ポリープの項目記述を参照。
手術療法
旧来より、外科手術による癌病変切除・リンパ節郭清は根治術の根幹である。個々の術式に関しては消化器外科学を参照。
他の悪性腫瘍と異なり、大腸や胃等の管腔臓器の癌は、癌による消化管閉塞(腸閉塞)・出血を生じることが多く、遠隔転移等も認める進行癌であっても、比較的全身状態良好なうちに食事摂取困難となる場合も多くあり、根治的ではなく対症療法的に原発巣切除・バイパス術施行等が行われることも多い。
化学療法
以下の種類があり、単独または複合し投与する。
抗癌剤
- 5-FU+フォリン酸
- イリノテカン
- オキサリプラチン
- カペシタビン
- S-1 (TS-1)
- トリフルリジン(LONSURF)
- UFT + フォリン酸
- UFT + フォリン酸 + イリノテカン(FOLFIRI)
- UFT + フォリン酸 + オキサリプラチン(FOLFOX)
- マイトマイシンC
分子標的治療薬
- ベバシズマブ:VEGFに対する抗体
- セツキシマブ:EGFRに対する抗体
- パニツムマブ:EGFRに対する抗体
- レゴラフェニブ
従来、アスピリンの作用としてシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の活性阻害作用を持つことが知られていた。この事から、大腸癌予防効果が期待されていた。
米マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏らよる2009年5月の米国消化器学会で発表された臨床研究報告によれば、約17万人を対象としステージⅠ~Ⅲの大腸癌患者1279人を約12年間調査したところ、大腸癌と診断された後にアスピリンを定期的に服用した患者は、服用していない場合に比べ死亡率が29%低下した。また、診断前から定期的に服用していた場合は死亡率が47%低下した。特に、COX-2が過剰発現している大腸癌患者では大幅な減少があった。としている但し、研究者自身が「データが不足しており、より規模の大きな検証が必要とされる」ともしている[55]。
放射線療法
大腸癌の多くは腺癌であるため、あまり施行されない場合が多いが、必ずしもそれは正しくなく、術前化学療法において局所再発率を下げるLancetで報告がされている。(経験則として扁平上皮癌には放射線が有効であり、腺癌には効かないとされている。)
脚注
- ^ 大腸がん研究会によれば Colorectal cancer を「結腸直腸癌」と訳す場合があるが、ほとんど使用されない用語のため、日本では「直腸癌」と訳すことが多い。
- ^ がん統計白書2004
- ^ http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/press_release_20150428_shiryo_01.pdf 2015年のがん統計予測
- ^ http://ganjoho.jp/professional/statistics/backnumber/2014_jp.html 国立がん研究センターがん対策情報センター「がんの統計'14」
- ^ 自治体や保険組合によって異なる。東京都墨田区の場合は35歳[1]からだが、大阪府の場合は40歳[2]
- ^ アボット感染症アワー ラジオNIKKEI 2009年7月31日放送 腸内細菌と回腸嚢褒炎 広島大学病院消化器外科 診療講師 大毛宏喜
- ^ 「硫化水素の細胞毒性の機構の解明」 2009年度~2011年度 (科学研究費助成事業データベース)
- ^ 大腸機能と大腸細菌の話
- ^ 肥満指数・身長と大腸がんの関係についてJPHC Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)
- ^ 赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて JPHC Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)
- ^ a b お酒・たばこと大腸がんの関連について JPHC Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)
- ^ 野菜・果物をよく食べると答えた人の大腸がん発症リスク
- ^ 肉を良く食べると答えた人の、大腸がん発症リスク
- ^ 食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連について JPHC Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)
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参考文献
- 『大腸癌治療ガイドライン2005年版』 大腸癌研究会 (Minds医療情報サービス)
- 『大腸癌治療ガイドライン医師用2010年版』 大腸癌研究会 (Minds医療情報サービス)
- 『有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2005年版』 厚労省がん研究班編 (Minds医療情報サービス)
- 『大腸がん標準化学療法の実際 改訂第2版』 金原出版 (2009/01) ISBN 978-4307101431
- 松野正紀監修『改訂版 消化器外科手術のため解剖学 小腸・大腸、肛門部疾患、肝臓・胆嚢・胆道系、膵臓・脾臓』メジカルビュー社 2007年 ISBN 978-4-7583-0323-1
関連項目
- 悪性腫瘍
- 腫瘍学
- 消化器学
- 直腸粘膜逸脱症候群...鑑別診断が必要となることがある
外部リンク
- がん検診ガイドライン 大腸がん 国立がんセンター
- がん情報サイト Cancer Information Japan (米国国立がん研究所によるPDQの日本語版)
- 財団法人 癌研究会
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Japanese Journal
- 腹腔鏡下大腸切除術後に発生したポートサイトヘルニアの2手術例
- 富永 哲郎 [他]
- 長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi 85(4), 350-355, 2011-12-25
- … 直腸癌の診断で,腹腔鏡補助下に低位前方切除術を施行した。 …
- NAID 110008454129
- 直腸癌術後の骨盤内リンパ節転移に対し臀筋群切離反転によるアプローチで切除した1例
- 清水 尚,荻野 美里,濱野 郁美,五十嵐 隆通,榎田 泰明,富澤 直樹,荒川 和久,田中 俊行,安東 立正,小川 哲史,池谷 俊郎,伊藤 秀明,坂元 一葉,竹吉 泉
- The Kitakanto medical journal 61(2), 256-256, 2011-05-01
- NAID 120003272627
- 濱野 郁美,富澤 直樹,小川 哲史,荻野 美里,清水 尚,五十嵐 隆通,榎田 泰明,荒川 和久,田中 俊行,安東 立正,池谷 俊郎,伊藤 秀明,坂元 一葉,竹吉 泉
- The Kitakanto medical journal 61(2), 255-256, 2011-05-01
- NAID 120003272626
- P2-13-7 妊娠中に経肛門的手術を行い生児を得た直腸癌の一例(Group93 合併症妊娠(症例)5,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 林 由梨,坂田 麻理子,芝田 恵,平嶋 洋斗,浅尾 有紀,廣瀬 典子,澁谷 裕美,根津 幸穂,伊藤 雄二,今野 良
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 771, 2011-02-01
- NAID 110008509735
Related Links
- 大腸癌(だいちょうがん, Colorectal cancer )とは、大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生する 癌腫であり、肛門管に発生するものを含めることもある。 正式には部位別に盲腸癌( cecum cancer)、結腸癌(Colon cancer)、直腸癌(rectum cancer)と称される。 ...
- 2009年12月28日 ... 大腸がんは、早期であればほぼ100%近く完治しますが、一般的には自覚症状は ありません。したがって、無症状の時期に発見することが重要となります。大腸がんの スクリーニング(検診)の代表的なものは、地域、職域で普及してきた大便の ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 72歳の女性。消化管出血で緊急入院し、精査の結果、直腸癌と診断された。手術の方針とし、術前放射線療法とともにリハビリテーションを行うこととした。既往歴は10年前から高血圧症で、降圧薬を内服している。意識は清明。身長 152cm、体重 41kg。体温 36.7℃。脈拍 88/分、整。血圧 118/78mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 97%(room air)。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。眼振を認めない。閉眼で睫毛徴候を認めない。鼻唇溝は対称だが流涎を認め、ろれつが回らない。舌の萎縮を認めない。四肢に筋力低下を認めない。つぎ足歩行は可能で、片脚での立位保持時間は10秒。血液所見:赤血球 341万、Hb 10.7g/dL、白血球 3,700、血小板 17万。血液生化学所見:アルブミン 3.0g/dL、総ビリルビン 0.4mg/dL、AST 14U/L、ALTU/L、ALP 174U/L(基準 115~359)、γ-GTP 23U/L(基準 8~50)、CK 92U/L(基準 30~140)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、Na 143mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 108mEq/L。CEA 6.3ng/mL(基準 5以下)、CA19-9 73U/mL(基準 37以下)。CRP 0.7mg/dL。頭部MRIのT2強調像別冊No. 22を別に示す。
- 周術期のリハビリテーション計画の立案に際し必要な検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113D051]←[国試_113]→[113D053]
[★]
- 次の文を読み、51~53の問いに答えよ。
- 65歳の男性。血便を主訴に来院した。
- 現病歴:2か月前から排便異常と便の細小化とが持続し、1週前から下血(鮮紅色)が出現している。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 現症:身長168cm、体重61kg。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧120/62mmHg。眼瞼結膜に貧血を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見:血液所見:赤血球310万、Hb9.1g/dl、Ht27%、白血球9,200、血小板21万、血液生化学所見:総蛋白6.2g/dl、アルブミン3.3g/d/、AST25IU/l、ALT25IU/l。免疫学所見:CRP2.8mg/dl、CEA7.6ng/ml(基準5以下)。注腸造影写真を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [102B050]←[国試_102]→[102B052]
[★]
- 75歳の男性。腹部膨満と嘔吐とを主訴に来院した。65歳から高血圧症で降圧薬を服用中である。腹部手術の既往はない。半年前から排便困難と便柱狭小とがあり、時々血便も認めていた。1週前から便秘が続き、昨日から排ガスが消失した。腹部は全体に膨隆しているが、圧痛や筋性防御は認めない。直腸診で全周性の腫瘤を触知する。血液所見:赤血球380万、Hb10.2g/dl、Ht33%、白血球8,600、血小板38万。血清生化学所見:総蛋白6.2g/dl、アルブミン3.8g/dl、尿素窒素20mg/dl、尿素窒素20mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl。免疫学所見:CRP0.5mg/dl、CEA15ng/ml(基準5以下)。
- 治療として最も適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100F033]←[国試_100]→[100F035]
[★]
- 次の文を読み、51~53の問いに答えよ。
- 65歳の男性。血便を主訴に来院した。
- 現病歴:2か月前から排便異常と便の細小化とが持続し、1週前から下血(鮮紅色)が出現している。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 現症:身長168cm、体重61kg。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧120/62mmHg。眼瞼結膜に貧血を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見:血液所見:赤血球310万、Hb9.1g/dl、Ht27%、白血球9,200、血小板21万、血液生化学所見:総蛋白6.2g/dl、アルブミン3.3g/d/、AST25IU/l、ALT25IU/l。免疫学所見:CRP2.8mg/dl、CEA7.6ng/ml(基準5以下)。注腸造影写真を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [102B051]←[国試_102]→[102B053]
[★]
- 28歳の経産婦。肛門から腫瘤状のものが脱出するようになったと訴えて来院した。3年前から排便時に同様なことが時々あったが、自分で還納できたため放置していた。10日前から脱出が頻回となった。来院時の背面からの写真と側面からの写真とを以下に示す。考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097A025]←[国試_097]→[097A027]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [098H034]←[国試_098]→[098H036]
[★]
- 疾患と術後早期に起こり得る合併症の組合せで正しいのはどれか。 2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [105A017]←[国試_105]→[105A019]
[★]
- a 直腸癌の合併が多い。
- b 排便時痛が特徴である。
- c 歯状線の肛門側に発生する。
- d 基本術式は痔核核出術である。
- e 3時、 7時、 11時方向に好発する。
[正答]
※国試ナビ4※ [108D010]←[国試_108]→[108D012]
[★]
- 若年者の難治性痔瘻の原因で最も可能性が高いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I017]←[国試_105]→[105I019]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [114B003]←[国試_114]→[114B005]
[★]
- 英
- large bowel cancer
- 同
- 結腸直腸癌, colorectal cancer, CRC, colorectal carcinoma、直腸結腸癌
- 関
- 結腸癌 colon cancer colonic cancer。大腸
- first aid step1 2006 p.277
概念
- 大腸に発生した悪性腫瘍の総称
- 結腸癌、直腸S状部癌、直腸癌を含む。
疫学
死亡率
- 男性:第4位(肺>胃>肝>大腸)
- 女性:第1位(大腸>胃>肺>肝>乳房>子宮)
リスクファクター(first aid step1 2006 p.277)
- ×Peutz-Jeghers syndromeはリスクファクターではない
好発部位
- 直腸・S状結腸 > 上行結腸・盲腸 > 横行結腸 > 下行結腸
- 直腸が50%、S状結腸25% (出典不明)
頻度
肉眼分類
早期癌
- 0-I型(隆起型):Ip(隆起型)、Isp(亜有茎型)、Is(無茎型)
- 0-II型(表面型):IIa(表面隆起型), IIc(表面陥凹型)
進行癌
- 1型(腫瘤型)
- 2型(潰瘍限局型)
- 3型(潰瘍浸潤型)
- 4型(びまん浸潤型)
頻度
- 進行癌:2型(潰瘍限局型) > 3型(潰瘍浸潤型) > 1型(腫瘤型) > 4型(びまん浸潤型)
- 早期癌を含めると、2型(潰瘍限局型)(80%)に次いで0型(表在型)が多い。
- 2型で外周の2/3週以上となると、注腸造影でapple core sign として認められる。
病期分類
Dukes分類
- A. 癌腫が腸管壁内に限局するもの ← 固有筋層まで(MP。つまりT2)
- B. 癌腫が腸壁を貫いて浸潤するが、リンパ節転移のないもの
- C. リンパ節転移があるもの
進行病期分類
stage
|
定義
|
治療
|
0
|
癌が粘膜にとどまっている。(M)
|
内視鏡
|
I
|
癌が大腸壁にとどまっている。(SM,MP)
|
SM軽度浸潤(<2cm)では内視鏡、それ以外は手術療法
|
II
|
癌が大腸壁の外まで浸潤している。(SS,SE)
|
手術療法
|
III
|
リンパ節転移がある。
|
手術療法+補助化学療法
|
IV
|
肝転移、肺転移または腹膜播種がある。
|
手術療法 and/or 化学療法 and/or 放射療法
|
大腸癌取り扱い規約 第7版(2009年)
壁深達度
- M:粘膜内まで
- SM:粘膜下層まで
- MP:固有筋層まで
漿膜を有する部位
- SS:MP越えているが漿膜下にとどまる
- SE:漿膜表面に露出
- SI:他臓器に直接浸潤
漿膜を有しない部位
進行度
|
N0
|
N1
|
N2
|
H1,H2,H3,M1 P1,P2,P3
|
M
|
0
|
|
SM MP
|
I
|
IIIa
|
IIIb
|
IV
|
SS,A SE SI,AI
|
II
|
リンパ節郭清
- 1群リンパ節郭清:D1:腫瘍付近のリンパ節(傍リンパ節)を切除
- 2群リンパ節郭清:D2:癌のある腸管を栄養する血管に沿うリンパ節(中間リンパ節)までを切除
- 3群リンパ節郭清:D3:栄養血管の根元にあるリンパ節(主リンパ節)までを切除
病理
症状
腫瘍の局在
|
右側結腸
|
左側結腸
|
S状結腸・直腸
|
症状
|
自覚症状に乏しい(貧血、腹部腫瘤、腹痛、まれに腸重積)
|
イレウス多い、左下腹部痛
|
血便/粘結弁
|
下痢
|
便秘、便通過障害(下血・血便)
|
便通異常(下痢・便秘、腹部膨満感、しぶり腹、輪状狭窄、糞柱の狭小化)
|
検査
血液検査
腫瘍マーカー
便潜血
単純X線検査
診断
治療
- 原則として以下の治療を選択するが、必要に応じて、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせる。(SSUR.550)
- Stage0,StageIの一部:内視鏡的切除
- StageI,II:手術療法
- StageIII:手術療法+化学療法
- StageIV:手術療法、化学療法、および放射線療法の組み合わせ
早期癌
内視鏡的治療
原則
病期
- stage 0 ~ stage I and SM軽度浸潤 and 最大径 2cm以下
適応基準
- ( M or SM ) and ( 最大経≦2cm ) and ( 肉眼型は問わない )
進行癌
-
- FOLFIRI療法 → FOLFOX療法 、 FOLFOX療法 → FOLFIRI療法 。一次治療にはベバシズマブ、二次治療にはセツキシマブの併用を推奨
- stage I~IVで行われる。
- 原発巣の切除とリンパ節の郭清を行う
- 転移巣(肝臓、肺)、局所再発に対して:根治性が得られるなら切除。得られないのであれば姑息的治療(肝転移の場合なら、経カテーテル的肝動脈塞栓術
- (姑息的に?結腸癌の進展による直腸の狭窄が考慮される場合には)Hartmann手術をおこなう。
- (大腸癌の肝転移例に対する手術適応)原発巣が根治的に処理されている場合には積極的に肝切除を行う。肝切除ができない場合は経カテーテル的冠動脈塞栓術を施行(QB.A-194)
術式
結腸癌
- 結腸部分切除術
- 回盲部切除術
- 結腸右半切除術
- 結腸左半切除術
- S状結腸切除術
- 結腸全摘術
検診
スクリーニング
- USPSTF
- 50-75歳の成人に便潜血・大腸内視鏡を推奨する(A)
- 85歳以上の高齢者には推奨しない(D)
- リスクが有る患者には40歳、ないし発症した親族の年齢の10年前から大腸内視鏡を5年ごとに行う
- リスク:2人の大腸癌ないし腺腫性ポリープの家族歴あり
- 大腸内視鏡であれば10年毎でよいが、これをやらない場合には毎年の便潜血を。
参考
- 1. がん情報 - 結腸および直腸 Colon and Rectum(C18-C20)
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- 2. 大腸低分化腺癌,印環細胞癌の臨床病理学的検討
- 山形県立中央病院外科
- 平井 一郎 池田 栄一 飯澤 肇 佐藤 敏彦 岡部 健二 石田 卓也 太田 陽一
- 最近11年間の大腸癌手術症例1,260例のうち,低分化腺癌(por)93例,印環細胞癌(sig)7例を臨床病理学的に検討した.また間質結合織の多寡で髄様型(med),中間型(int),硬性型(並1)に3分類した。por,sigはs(a2)以深の進行例が多く,早期癌203例中1例のみであり,癌発生直後より急速に進展すると考えられた。5生率は高分化:67.9%,中分化:423%,por,sig:37.4%で,por,sigは有意に予後不良であった。間質別5生率はmedで79.6%と極めて予後良好だったが,sciには3年生存例がなく,med,int,並i間に有意差が認められた。組織発生の検討では,intは分化型腺癌の浸潤先進部の分化度が低下し低分化部分が優勢となったもので,med,sciは発生初期から低分化腺癌の形態をとる症例が存在すると考えられた。大腸低分化腺癌,印環細胞癌の間質組合織の多寡による3分類は予後,癌組織発生の点で重要である。
- http://journal.jsgs.or.jp/pdf/028040805.pdf
- http://www.jsco-cpg.jp/guideline/13.html
ガイドライン
- http://www.jsco-cpg.jp/guideline/13.html
- 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2010年版 - 大腸癌研究会 JSCCR
- http://www.jsccr.jp/guideline2010/guideline02.html
[★]
- 英
- melena
- ラ
- melaena
- 同
- タール便 tarry stool
- 関
- 消化管出血(上部消化管出血、下部消化管出血)、黒色便、赤色便。吐血
定義
- (広義)便の中に血液が含まれている状態:黒色便、タール便、粘血便、鮮血便 (ただし潜血便は含まれない)
- (狭義)タール便
狭義
下血
分類
頻度
- IMD.566
出血部位と便の性状
- IMD.567
[★]
- 英
- cytokeratin 19 fragment
- 同
- シフラ21-1、サイトケラチン19フラグメント, cytokeratin 19 fragment
- 関
- CYFRA シフラ、サイトケラチン19、サイトケラチン
- 肺扁平上皮癌などの腫瘍マーカー
- 細胞骨格中間径フィラメントを形成するサイトケラチン19を抗原とするモノクローナル抗体で認識される。
- 肺扁平上皮癌の約70-80%で陽性となる。
- 肺癌のマーカーとしては感度・特異度ともにSCCより優れている。SCCと違って喫煙による影響を受けにくい。
- 偽陽性:肝障害の20%の、呼吸器炎症性疾患の10-15%、高齢者で上昇しうる。また腎機能障害でも上昇しうる。
- 男性は女性と比べて高値となりうる。肺の良性疾患でも高値となることがある。
基準値
- ECLIA, ELISA:3.5ng/ml以下
- RIA:2ng/ml以下
判断基準
[★]
- 英
- anus (Z)
臨床関連
- クローン病、潰瘍性大腸炎、放射線照射性直腸炎、薬剤性大腸炎、アメーバ赤痢、直腸粘膜脱症候群、急性出血性直腸潰瘍
-
- 直腸癌
- 肛門癌
- 組織型別(悪性黒色腫、カルチノイド、基底細胞癌、類基底細胞癌、Paget病、Bowen病)
肛門疾患の好発部位
- 内痔核:3時、7時、11時
- 痔瘻:6時 肛門中心線より後方に外瘻孔のある場合、6時の位置の肛門陰窩が原発口となる
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
[★]
- 英
- low anterior resection LAR
- 関
- 前方切除術、直腸癌、高位前方切除術
- 肛門括約筋を温存する直腸切断術で、経腹的に結腸直腸吻合を行う。
- 腹膜反転部より下方で吻合を行うものを低位前方切除術という。
- Ra, Rbの腫瘍に対して行う???(出典不明) Ra、あるいはRbの一部(STEP消化器外科 第1版 p.132)
参考
- http://www.biosas.com/daityogan/colorectal.htm
[★]
- 英
- metastatic colorectal cancer
[★]
- 英
- cancer
- 関
- 悪性腫瘍
種類
- 癌腫(carcinoma):上皮性
- 肉腫(sarcoma):間葉系
- carcinoma:腺癌(adenocarcinma)、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、移行上皮癌(transitional cell carcinoma)
- sarcoma:骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫
Neoplasm
|
Causes
|
Effect
|
Small cell lung carcinoma
|
ACTH or ACTH-like peptide
|
Cushing’s syndrome
|
Small cell lung carcinoma and intracranial neoplasms
|
ADH
|
SIADH
|
Squamous cell lung carcinoma, renal cell carcinoma, breast carcinoma, multiple myeloma, and bone metastasis (lysed bone)
|
PTH-related peptide, TGF-β, TNF-α, IL-1
|
Hypercalcemia
|
Renal cell carcinoma, hemangioblastoma
|
Erythropoietin
|
Polycythemia
|
Thymoma, small cell lung carcinoma
|
Antibodies against presynaptic Ca2+ channels at neuromuscular junction
|
Lambert-Eaton syndrome (muscle weakness)
|
Leukemias and lymphomas
|
Hyperuricemia due to excess nucleic acid turnover (i.e., cytotoxic therapy)
|
Gout, urate nephropathy
|
- http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/pub/statistics01.html
●2005年の死亡数が多い部位は順に
|
|
1位
|
2位
|
3位
|
4位
|
5位
|
|
男性
|
肺
|
胃
|
肝臓
|
結腸
|
膵臓
|
結腸と直腸を合わせた大腸は4位
|
女性
|
胃
|
肺
|
結腸
|
肝臓
|
乳房
|
結腸と直腸を合わせた大腸は1位
|
男女計
|
肺
|
胃
|
肝臓
|
結腸
|
膵臓
|
結腸と直腸を合わせた大腸は3位
|
|
●2001年の罹患数が多い部位は順に
|
|
1位
|
2位
|
3位
|
4位
|
5位
|
|
男性
|
胃
|
肺
|
結腸
|
肝臓
|
前立腺
|
結腸と直腸を合わせた大腸は2位
|
女性
|
乳房*1
|
胃
|
結腸
|
子宮*1
|
肺
|
結腸と直腸を合わせた大腸は1位
|
男女計
|
胃
|
肺
|
結腸
|
乳房*1
|
肝臓
|
結腸と直腸を合わせた大腸は2位
|
*1上皮内がんを含む。
|
癌の素因となる遺伝子
- HIM.494
Table 79-1 Cancer Predisposition Syndromes and Associated Genes
|
Syndrome
|
Gene
|
Chromosome
|
Inheritance
|
Tumors
|
ataxia telangiectasia
|
ATM
|
11q22-q23
|
AR
|
breast cancer
|
autoimmune lymphoproliferative syndrome
|
FAS
|
10q24
|
AD
|
lymphomas
|
FASL
|
1q23
|
|
Bloom syndrome
|
BLM
|
15q26.1
|
AR
|
cancer of all types
|
Cowden syndrome
|
PTEN
|
10q23
|
AD
|
breast, thyroid
|
familial adenomatous polyposis
|
APC
|
5q21
|
AD
|
intestinal adenoma, colorectal cancer
|
familial melanoma
|
p16INK4
|
9p21
|
AD
|
melanoma, pancreatic cancer
|
familial Wilms tumor
|
WT1
|
11p13
|
AD
|
pediatric kidney cancer
|
hereditary breast/ovarian cancer
|
BRCA1
|
17q21
|
AD
|
breast, ovarian, colon, prostate
|
BRCA2
|
13q12.3
|
|
hereditary diffuse gastric cancer
|
CDH1
|
16q22
|
AD
|
stomach cancers
|
hereditary multiple exostoses
|
EXT1
|
8q24
|
AD
|
exostoses, chondrosarcoma
|
EXT2
|
11p11-12
|
|
hereditary prostate cancer
|
HPC1
|
1q24-25
|
AD
|
prostate carcinoma
|
hereditary retinoblastoma
|
RB1
|
13q14.2
|
AD
|
retinoblastoma, osteosarcoma
|
hereditary nonpolyposis colon cancer (HNPCC)
|
MSH2
|
2p16
|
AD
|
colon, endometrial, ovarian, stomach, small bowel, ureter carcinoma
|
MLH1
|
3p21.3
|
|
MSH6
|
2p16
|
|
PMS2
|
7p22
|
|
hereditary papillary renal carcinoma
|
MET
|
7q31
|
AD
|
papillary renal tumor
|
juvenile polyposis
|
SMAD4
|
18q21
|
AD
|
gastrointestinal, pancreatic cancers
|
Li-Fraumeni
|
TP53
|
17p13.1
|
AD
|
sarcoma, breast cancer
|
multiple endocrine neoplasia type 1
|
MEN1
|
11q13
|
AD
|
parathyroid, endocrine, pancreas, and pituitary
|
multiple endocrine neoplasia type 2a
|
RET
|
10q11.2
|
AD
|
medullary thyroid carcinoma, pheochromocytoma
|
neurofibromatosis type 1
|
NF1
|
17q11.2
|
AD
|
neurofibroma, neurofibrosarcoma, brain tumor
|
neurofibromatosis type 2
|
NF2
|
22q12.2
|
AD
|
vestibular schwannoma, meningioma, spine
|
nevoid basal cell carcinoma syndrome (Gorlin's syndrome)
|
PTCH
|
9q22.3
|
AD
|
basal cell carcinoma, medulloblastoma, jaw cysts
|
tuberous sclerosis
|
TSC1
|
9q34
|
AD
|
angiofibroma, renal angiomyolipoma
|
TSC2
|
16p13.3
|
|
von Hippel–Lindau
|
VHL
|
3p25-26
|
AD
|
kidney, cerebellum, pheochromocytoma
|
- 癌遺伝子、癌抑制遺伝子
癌の危険因子
- 生活習慣病#生活習慣病などのリスクファクターを改変
[★]
- 英
- rectum (Z)
- 関
- 大腸
概念
- S状結腸に続き肛門に至る長さ約20cmの消化管
- 直腸結腸境界はS3椎体の高さ (M.229)
- 直腸は仙骨と尾骨のカーブに沿って走り、そこで後下方に曲がって肛門管になる (M.229)
- 3つの直腸横ヒダを持つ
直腸・肛門の区分
- SSUR.559
- 直腸S状部:rectosigmoid,RS:岬角の高さより第2仙骨下縁の高さまで
- 上部直腸:rectum above the peritoneal reflection,Ra:第2仙骨下縁の高さから腹膜反転部まで
- 下部直腸:rectum below the peritoneal reflection,Rb:腹膜反転部から恥骨直腸筋付着部上縁まで
- 肛門管:proctos,P:恥骨直腸筋付着部上縁から肛門縁までの管状部
- 肛門周囲皮膚:external skin,E:肛門縁より外側の皮膚
[★]
- 英
- bowel cancer、intestinal cancer、intestinal carcinoma
- 関
- 小腸癌、腸がん、腸腫瘍