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パニック障害 | |
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分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | F41.0 |
ICD-9 | 300.01, 300.21 |
OMIM | 167870 |
DiseasesDB | 30913 |
MedlinePlus | 000924 |
eMedicine | article/287913 |
Patient UK | パニック障害 |
MeSH | D016584 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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パニック障害(パニックしょうがい、英語: Panic disorder ; PD)とは、定期的なパニック発作に特徴付けられる不安障害の一種である。それはまた、少なくとも一ヶ月は継続している意味のある行動上の変化と、新たな発作に対する不安やその影響への絶え間ない心配を含んでいる。
パニック障害は、強い不安感を主な症状とする精神疾患のひとつとして、不安神経症と呼ばれていた疾患の一部である(不安神経症の方が広い疾患概念であり、不安神経症と呼ばれていたものの全てがパニック障害には当たらない)。パニック障害の原因として複数のルートが存在すると考えられているが、近年の研究によってその多くは心理的葛藤によるものではなく、脳機能障害として扱われるようになってきている(ただし、純心理学的問題に起因するものもある)。かつては全般性不安障害とともに不安神経症と呼ばれていたが、1980年に米国精神医学会が提出したDSM-IIIで診断分類の1つに認められ、1992年には世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)によって独立した病名として登録された[1]。
定型的なパニック障害は、突然生じる「パニック発作」によって始まる。本能的な危険を察知する扁桃体が活動しすぎて、必要もないのに戦闘体制に入り、呼吸や心拍数を増やしてしまう[2]。続いてその発作が再発するのではないかと恐れる「予期不安」と、それに伴う症状の慢性化が生じる。さらに長期化するにつれて、症状が生じた時に逃れられない場面を回避して、生活範囲を限定する「広場恐怖症」が生じてくる。
パニック障害患者は、日常生活にストレスを溜め込みやすい環境で暮らしていることが多く、発作は、満員電車などの人が混雑している閉鎖的な狭い空間、車道や広場などを歩行中に突然、強いストレスを覚え、動悸、息切れ、めまいなどの自律神経症状と空間認知(空間等の情報を収集する力)による強烈な不安感に襲われる。症状や度合は、患者によって様々だが軽度と重度症状がある。しかし軽・重度患者ともに発作が表れる時に感じる心理的(空間認知など)印象としては、同じような傾向が見られ、漠然とした不安と空間の圧迫感や動悸、呼吸困難等でパニックに陥り、「倒れて死ぬのではないか?」などの恐怖感を覚える人が少なくない。先に挙げた自律神経症状以外にも手足のしびれやけいれん、吐き気、胸部圧迫のような息苦しさなどがあるが、それ自体が生命身体に危険を及ぼすものではない。
患者は、パニック発作に強烈な恐怖を感じる。このため、発作が発生した場面を恐れ、また発作が起きるのではないかと、不安を募らせていく。これを「予期不安」という。そして、患者は神経質となりパニック発作が繰り返し生じるようになっていく。
パニック発作の反復とともに、患者は発作が起きた場合にその場から逃れられないと妄想するようになる。さらに不安が強まると、患者は家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもある。このような症状を「広場恐怖(アゴラフォビア)」という[3]。広場恐怖の進展とともに、患者の生活の障害は強まり、社会的役割を果たせなくなっていく。そして、この社会的機能障害やそれに伴う周囲との葛藤が、患者のストレスとなり、症状の慢性化を推進する。
50~65%に生涯のいつの時点かにうつ病が併存し、また全般性不安障害25%、社交恐怖15~30%、特定の恐怖症10~20%、強迫性障害8~10%の併存があるといわれている。[1]
原因についてはそれぞれ異なるが、当人のそれまでの経験から心理的あるいは身体的に危険だと察知した状態の場合、潜在意識が「発作」を起こす事で顕在意識に再認識させるために起こす症状。 その要因としては、脳の病気や心の病などではなく「思い込み」や「思い違い」による発作であるために投薬では寛解までは可能でも完治する事は不可能だと言える。
原因についてはまだ完全に解明されていないが、脳内不安神経機構の異常によって起きるものだと考えられている。ヒトの脳には無数の神経細胞(ニューロン)があり、その間を情報が伝わることで、運動、知覚、感情、自律神経などの働きが起きる。パニック発作や予期不安、恐怖などもこの脳の機能のあらわれで、そこに何らかの誤作動が生じるために起こっていると考えられている。神経細胞間の情報を伝える化学物質(神経伝達物質)や、それを受けとめる受容体(レセプター)の機能の異常が関係しているのではないか、という研究が進められている。
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パニック障害の患者のうち、喫煙者と非喫煙者を比べると、喫煙者のほうが予期不安や広場恐怖の症状が強くあらわれ、マイナス思考も強く、ストレスをより感じやすくなっていることがわかっています。 また、タバコはパニック障害の症状の引き金になり、症状を悪化させるばかりか、パニック障害が改善された後にも悪影響を及ぼすことがわかっています。[要出典]
カフェインのような覚醒作用を持つ物質の摂りすぎは、パニック発作の一般的な原因である[4]。パニック障害を持つ人は、カフェインの不安誘導作用に敏感である[5]。
米国のデータでは、パニック障害患者の30%がアルコールを摂取し、17%がその他の向精神薬を使用している[3]。これは米国では一般的に61%がアルコールを使用し、[1] 7.9%がその他の向精神薬 [2]を使用していることと比較してである。娯楽薬物の使用やアルコールの使用は、症状を悪化させる[6]。カフェイン、ニコチン、コカインなどの覚醒作用を持つ薬物は心拍数などのパニック症状を増加させるので症状を悪化させる。
アルコールは初期のパニック症状を緩和させる一方、中長期のアルコール使用はパニック障害を引き起こしたり悪化させ、とりわけアルコール離脱症候群では顕著である[7]。この現象はアルコールに限らず、同様の作用機序を持つ薬物でも同じである。とくにベンゾジアゼピンはアルコール問題のある患者に対し、精神安定剤として多く処方されている[7]。慢性的なアルコール乱用が症状を悪化させるのは、脳内化学機能の変化のためである[8][9][10]。
ベンゾジアゼピンの断薬時に患者の10%が遷延性離脱症候群を経験し、それにはパニック障害も含まれる。遷延性離脱症候群は、離脱時の最初の数ヶ月間の間に見られるものと似ている傾向にあり、たいてい離脱当初の2-3ヶ月の間に見られる症状に比べて亜急性の水準の重症度である。 [11]
精神保健サービスに参加する患者においては、彼らのパニック障害や社会恐怖などの不安障害は、アルコール乱用または鎮静薬乱用によるものであった。アルコールや鎮静薬は、元来の不安を継続させたり悪化させる。アルコール乱用者や慢性的な鎮静薬使用者は、そういった薬物乱用が根底にあるため、症状の根本原因に対応しなければ、その他の治療や薬物によって利益を得られていない可能性がある。鎮静状態からの回復は、アルコール離脱症候群やベンゾジアゼピン離脱症候群のため一時的に悪化する[12][13][14][15]。世界不安評議会は、ベンゾジアゼピンによる長期の不安治療については、耐性、精神機能障害、認知や記憶障害、身体的依存、ベンゾジアゼピン離脱症候群のために推奨していない[16]。
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疫学的には、生涯有病率1.6%–2.2%と言われる。日本では0.8%であった。[1]日本の患者数の少なさについては、受診率の低さが上げられる。[17]
従来は心理的な葛藤が根本にあると思われてきた。しかし近年、認知行動療法の有効性が明確となり、心理的「原因」よりも、症状に対する患者の対処が症状進展のメカニズムとしては重視されるようになった。また薬物療法の有効性も確認されており、生物学的因子があるという意見も強くなっている。
パニック障害の重症度は様々であり、軽度の患者もいれば重度の患者もいる。重症例では、適切な治療を受けないまま経過すると、数年間にわたって外出できないなど、日常生活や社会生活に大きく支障をきたす場合もある。
なお、パニック障害にうつ病が併発する場合が少なくはなく、日本では約5–6割[1]、欧米では約5–6割といった統計も出されている。
「予期しないパニック発作」が繰り返し発生し、それらに対する予期不安が1か月以上続く場合、パニック障害の可能性が疑われる。突然のパニック発作で始まり、予期不安を生じ、症状が持続するようになり、広場恐怖に進んでいくという経過の確認も、臨床診断においては、重要であるとされる。実際の臨床場面では、パニック障害は、広場恐怖を伴う慢性化したものと、広場恐怖を伴わない軽症例の2つに区分される。
診断基準としてはアメリカ精神医学会『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版DSM-IVが用いられることが多い。
なお、PTSD・うつ病・強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合があるが、この場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われ、パニック障害とは診断されない。また身体疾患が原因になっている場合もパニック障害とは診断しない。
治療的には、心理療法と薬物療法があり、様々な治療が有効性を認められている。なお有害・依存性のある薬物乱用を併発している場合、まず先にそちらを治療しなければならない[18]。
最も基礎的で重要なものが、「疾患に対する医師の説明」「心理教育」である[19]。パニック障害は、発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患であり、医師が明確に症状について説明し、心理教育を行うことが全ての治療の基礎となる。
心理療法の中で有効性について最もよく研究されているのが、認知行動療法である。認知行動療法では「恐れている状況への暴露」「身体感覚についての解釈の再構築」「呼吸法」などの訓練・練習が行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう練習を行う。
NICEは、パニック障害に対しては認知行動療法を用いなければならない(should be used)[19]、その治療期間は妥当なものでなければならない(総計7~14時間)[19]、多くの人では毎週一回1~2時間のセッションを最大4か月にになると勧告している[19]。
NICEは、患者に対し認知行動療法理論に基づく読書療法を提案しなければならない[20]、アクセス可能な自助グループの情報を提供しなければならない[20]、またエクササイズの一般的な有効性について情報提供しなければならないとしている[20]。
薬物療法では、発作の抑制を目的に抗うつ薬(SSRIや三環系抗うつ薬・スルピリド)が用いられ、また不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系抗不安薬が用いられることもある。
アメリカ精神医学会(APA)では、ベンゾジアゼピンはパニック障害の治療に対し効果的であり、ベンゾジアゼピン、抗パニック作用を持つ抗うつ薬、心理療法のうちどれを使うかは患者の病歴と体質を元に決めるべきだと勧告している。APAではパニック障害では特定の治療法を勧めるには証拠が乏しいと報告している。またAPAではベンゾジアゼピンには速攻作用というアドバンテージがあるが、ベンゾジアゼピン依存症のリスクが存在すると付記している[21]。
英国国立医療技術評価機構(NICE)では、薬物療法を選択する場合はSSRIであり、その第一選択肢はセルトラリンを推奨し、それが効果を示さない場合は他のSSRI/SNRIを検討するとしている[22]。ベンゾジアゼピンは長期的に良い結果をもたらさないために(短期間の救済ケースを除いて[22])処方すべきでない(should not)[23]、抗ヒスタミン薬および抗精神病薬は処方してはならない[24]と勧告している。また薬物療法を行う前には必ず、患者に利益・リスク・副作用について書面および口頭にて説明するよう[22]、30歳以下の患者へのSSRI/SNRI処方には自殺リスクについて警告するよう勧告している[22]。
アイルランド、オーストラリア、オランダ、カナダ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドなどでは、ベンゾジアゼピンを第一選択肢として推奨せず、投与は短期間に留めるべきだとしている(ベンゾジアゼピン薬物乱用#各国の状況を参照)。
日本では、パニック障害の治療ではSSRIとベンゾジアゼピン系の抗不安薬の両方が使用されている。[25][1]。
イノシトールは、パニック障害や強迫性障害の患者が服用することで、その症状を緩和する作用が報告されており、不安感の発生頻度とや、その程度を顕著に低下させる効果があるとされる。また、イノシトールの高用量摂取が、フルボキサミンより症状の軽減に効果があったとする論文報告もある[26][27]。
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