- 英
- social phobia、social fear
- 関
- 社会恐怖症、社会不安障害、社会的恐怖
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/08/21 21:16:15」(JST)
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社交不安障害(しゃこうふあんしょうがい、Social Anxiety Disorder、SAD)とは、「社交場面」でネガティブ(否定的)な評価を受けたり、他人に辱められる事に対する強い不安を主な症状とする精神疾患。日本では英語名の「Social Anxiety Disorder」を直訳した「社会不安障害」と呼ばれていたが、「社会不安」という言葉には誤解も多いことから、2008年に日本精神神経学会において、より実態に近い表現の「社交不安障害」という名称に変更された[1]。
目次
- 1 概要
- 2 主な症状
- 3 診断基準
- 4 治療
- 5 脚注
- 6 関連書籍
- 7 関連項目
- 8 外部リンク
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概要
人から注目を集める場面において、誰しも不安を感じる事があり、それをあがり症と呼んだり、特にあがりやすい人をシャイと呼んだりする。しかし、それが原因で日常生活に支障をきたすような事はなく、通常はそういった場面に慣れるうちにあがりにくくなるものであり、身体的な症状はあまり発現しない。
これに対して社交不安障害は強い不安を感じるあまり、震え・吐き気などの身体症状が強く発現し、そういった場面にはなかなか慣れないため、たとえしなければならない事であっても次第に避けるようになり、日常生活に多大な影響を及ぼす点が異なる。ニートや引きこもりの背景因子にあるといわれ、近年注目されている。
主な症状
社交不安障害患者が強い不安を感じる場面として、最も多いのが『見知らぬ人や、少し顔見知りの人との会話』と『人前での発言・スピーチ』、次いで、『権威がある人(社会的立場が上の人)との面談・会話』、『会社で電話をとる』、『受付で手続きをする』、『人前で文字を書く』、『人前でご飯を食べる』、『会食やパーティに参加する』『自宅(ストレスとなる因子がある場合)』などである。
このような場面で社交不安障害患者には、さまざまな症状が身体に現れる。強い不安を感じる、強い緊張を感じる、頭が真っ白になり何も答えられない、声が震える、声が出ない(選択緘黙)、手足の震え、めまい、動悸、口が渇く、赤面する、汗が出る、吐き気がする、胃のむかつき等の症状がある。
こうした強い不安を避けるため、また人に知られたくないと考えるあまり、社交不安障害患者は周囲の人々との接触や、人前での活動を避けるようになり、日常生活に支障を及ぼす事になる。また、症状が慢性化すると、うつ病やパニック障害なども併発する危険性があるので、早期の治療を要する。
『自殺を考えたことがある』人の割合はうつ病の人よりも多く、実際周囲の人が思っている以上に患者達は悩んでいるといわれる。
生涯有病率は3 - 13%と言われており決して稀な病気ではない。5歳以下など世代を問わず発症するが、特に15歳頃の思春期に多く、不安障害の中で最も発病年齢の低い病気と言われている。しかし、30 - 40代あたりに管理職につき、人前で話す機会が多くなり発症するといったケースもめずらしくない。頻度に特筆すべき男女差はないが、若干男性の割合が多い。
なお、症状はパニック障害と似ているが、パニック障害が「死」や「精神的におかしくなってしまうこと」に対する強い不安であり発作的に症状が発現するのに対し、社交不安障害では「人」や「社交場面」に対する強い不安であるところなどが異なっている。
診断基準
DSMをもとに作成された簡易構造化面接法(M.I.N.I.)によれば、以下のすべての項目に当てはまる場合、社交不安障害の可能性がある[2]。
- 人前で、話をしたり食事をしたり文字を書いたりするときに他人から注目されていると思うと、怖くなったり戸惑ったりする
- それは、自分でも怖がりすぎていると思う
- それは、わざわざ避けたり、じっと我慢したりしなければならないほどである
- それによって職業・社会生活が妨げられているか、または著しい苦痛を感じている
治療
社交不安障害は単なる内気や恥ずかしがり屋といった性格の問題ではなく、精神科などの医療機関での治療を必要とする精神疾患である。
治療としては、精神科において薬物療法および精神療法を併用又はどちらか単独で行われる。薬物療法ではSSRIを使った治療が効果的であるといわれている。精神療法では認知行動療法などが有効でSSRIと同等の効果があるといわれているが、臨床では効果が認められないこともままあるので注意が必要。
脚注
- ^ 小さなことが気になるあなたへ OCDと社交不安障害(SAD)
- ^ Sheehan D.V. et al, "The Mini International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I.): The Development and Validation of a Structured Diagnostic Psychiatric Interview," Journal of Clinical Psychiatry, 1998;59(suppl 20):22-33. 表現は簡略化してある。
関連書籍
- 『臨床精神薬理 第13巻4号 <特集>社交不安障害(SAD)を再考する』(伊豫雅臣ほか 2010)
- 『さかながこわいクジラ(こころの病気がわかる絵本-社交不安障害)』(富田雄吾ほか 2010)
- 『対人関係療法でなおす社交不安障害』(水島広子 2010)
関連項目
- 不安障害
- 対人恐怖症
- 場面緘黙症
- 回避性パーソナリティ障害
- パニック障害
- 広場恐怖
- 過干渉
- 季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder) - 社交不安障害とは別の精神疾患だが、その頭文字を取り、同じくSADと呼ばれる。
- 精神科医
- 臨床心理士
外部リンク
- SAD(社会不安障害・社交不安障害)総合情報サイト SAD NET
- (百科事典)「Social Phobia」 - Medpediaにある「社交不安障害」についての項目。(英語)
精神と行動の疾患 (ICD-F - 290-319) |
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器質的 |
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認知症
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Mild cognitive impairment - アルツハイマー型認知症 - Multi-infarct dementia - Pick's disease - クロイツフェルト・ヤコブ病 - ハンチントン病 - パーキンソン病 - AIDS dementia complex - Frontotemporal dementia - Sundowning - Wandering
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その他
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せん妄 - Post-concussion syndrome - Organic brain syndrome
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向精神薬・薬物乱用・薬物に関する障害 |
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薬物中毒/オーバードース - 身体依存 - 薬物依存症 - リバウンド効果 - 二重リバウンド - 離脱
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統合失調症 - 妄想 |
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精神病 |
統合失調感情障害 - 統合失調症様障害 - 短期反応性精神病
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|
統合失調症 |
破瓜型統合失調症 - Delusional disorder - Folie a deux
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気分障害 (affective) |
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躁病 - 双極性障害(I型 - II型 - 気分循環症) - うつ病(大うつ病 - 気分変調症 - 季節性情動障害 - 非定型うつ病 - メランコリー型うつ)
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神経症 - ストレス関連 - 身体表現性障害 |
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不安障害
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恐怖症
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広場恐怖症 - 社会恐怖/社交不安障害 (Anthropophobia) - 単一恐怖(閉所恐怖症) - 単一社会恐怖
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その他
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パニック障害 - 全般性不安障害 - 強迫性障害 - ストレス(急性ストレス障害 - PTSD)
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適応障害
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うつ症状を伴う適応障害
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身体表現性障害
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身体化障害 - 身体醜形障害 - 心気症 - 疾病恐怖 - Da Costa's syndrome - 精神痛 - 転換性障害(ガンザー症候群 - 咽喉頭異常感症) - 神経衰弱 - Mass Psychogenic Illness
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解離性障害
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解離性同一性障害 - 解離性健忘 - Fugue state - 離人症性障害
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生理的・身体的 |
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摂食障害
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神経性無食欲症 - 神経性大食症 - Rumination syndrome - NOS
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非器質性
睡眠障害
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過眠症 - 不眠症 - 睡眠時随伴症(レム睡眠行動障害 - 夜驚症 - 悪夢)
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性的機能不全
|
sexual desire - (Hypoactive sexual desire disorder - Hypersexuality) - sexual arousal - (Female sexual arousal disorder) - Erectile dysfunction - orgasm - (Anorgasmia - Delayed ejaculation - Premature ejaculation - Sexual anhedonia) - pain - (Vaginismus - Dyspareunia)
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産後
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産後うつ病 - Postnatal psychosis
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成人のパーソナリティ及び行動 |
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Sexual and
gender identity
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Sexual maturation disorder - Ego-dystonic sexual orientation - Sexual relationship disorder - 性的倒錯(窃視症 - フェティシズム)
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Other
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パーソナリティ障害 - 衝動制御障害(窃盗症 - 抜毛症 - 放火癖) - Body-focused repetitive behavior - 虚偽性障害(ミュンヒハウゼン症候群)
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|
小児の精神障害 |
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精神遅滞
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X-Linked mental retardation - (Lujan-Fryns syndrome)
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Psychological development
(発達障害)
|
Specific - 広汎性発達障害
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Emotional and behavioral
|
ADHD - 行為障害 (ODD) - 情動障害 (Separation anxiety disorder) - 社会的機能(場面緘黙症 - 愛着障害 - DAD) - チック症(トゥレット障害) - 言語障害(吃音症 - Cluttering) - Movement disorder (Stereotypic)
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未分類 |
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Catatonia - 想像妊娠 - Intermittent explosive disorder - Psychomotor agitation - 性依存症 - Stereotypy - Psychogenic non-epileptic seizures - Kluver-Bucy syndrome
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- アトピー性皮膚炎への認知行動療法 (特集 リハビリテーションの効果をあげる認知行動療法)
- 筒井 順子
- Monthly book medical rehabilitation 138, 77-81, 2011-11-00
- NAID 40019080661
- 治療者との情緒的交流を否認したがった社会恐怖の女性との面接過程
- 研修症例 治療者との情緒的交流を否認したがった社会恐怖の女性との面接過程[含 研修症例コメント Hard times]
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- neurotic disorder, neurotic disorders
分類
ICD-10
- F40 - F48 Neurotic, stress-related and somatoform disorders
- F40 Phobic anxiety disorders 恐怖症性不安障害
- F41 Other anxiety disorders 他の不安障害
- F42 Obsessive-compulsive disorder 強迫性障害
- F43 Reaction to severe stress, and adjustment disorders
- F44 Dissociative disorders 解離性障害, conversion disorders てんかん性障害
- F45 Somatoform disorders 身体表現性障害
- F48 Other neurotic disorders
比較
- PSY.197
教科書的分類
[★]
- 英
- phobic anxiety disorder, phobic anxiety disorders
- 関
- 神経症性障害
ICD-10
- F40 Phobic anxiety disorders 恐怖症性不安障害
-
- .00 Without panic disorder
- .01 With panic disorder
- F40.1 Social phobias 社会恐怖症
- F40.2 Specific (isolated) phobias
- F40.8 Other phobic anxiety disorders
- F40.9 Phobic anxiety disorder, unspecified
分類
治療
- 薬物療法:抗不安薬(ベンゾジアゼピン系、(重症)フェノチアジン系)。(パニック障害、恐怖症政府案障害、強迫性障害)SSRI。(強迫スペクトラムの疾患)SSRI。
- 森田療法
- 精神分析的精神療法
- 認知療法
- 行動療法
- 認知行動療法
[★]
- 関
- social phobia
[★]
- 英
- social phobia, social phobia
- 同
- (アメリカ精神医学会)社会不安障害, social anxiety disorder, SAD
- 関
- 社会恐怖。(ICD-10 F40)恐怖症性不安障害、神経症性障害
ICD-10
疫学
- 生涯有病率 0.36-10.8%
- 女性が男性の2倍以上らしい
- 20歳代後半で好発
臨床的特徴
- 羞恥恐怖性
- 状況依存性
- 不安喚起性
- 身体表出性
- 性格起因性
- 現実回避性
参考
国試
- 105F004:「人前では緊張して思うように話ができない」
- 101G003
- 100D021:10歳ころから、人前で食事をしたり、話をしたりするのが極端に苦手になった。就職してからは、周囲から見られているようで、電車での通勤が辛かったと言う。
[★]
- 英
- fear、phobia、fright、horror
- 関
- 恐怖症、心配、不安、閉所恐怖症、社会恐怖症、恐れる
[★]
- 英
- society、societal
- 関
- 学会、協会