- 英
- phospholipid PL
- 同
- ホスファチド phosphatide
- 関
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/11/05 19:29:27」(JST)
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リン脂質(リンししつ、Phospholipid)は、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質の総称。両親媒性を持ち、脂質二重層を形成して糖脂質やコレステロールと共に細胞膜の主要な構成成分となるほか、生体内でのシグナル伝達にも関わる。
リン脂質の1種、ホスファチジルコリン(レシチン)の構造式。2つの脂肪酸(オレイン酸・パルミチン酸)・グリセリン・リン酸・コリンが複合した構造をもつ。
目次
- 1 構造
- 2 分類
- 3 生合成経路
- 4 役割
- 5 主なリン脂質
- 6 出典
- 7 関連項目
- 8 参考文献
構造[編集]
一般的なリン脂質は、 グリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、さらにリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつ。アルコールには通常何らかの形で窒素が含まれる。脂肪酸やアルコールには様々な種類があるため、組み合わせによってきわめて多くの種類が存在する。
リン酸は3価の酸であるため、3つのヒドロキシル基のうち2箇所が骨格ならびにアルコールとエステル結合を形成しても、残り1個所は電離してアニオンが生じる。構造中に疎水性の脂肪酸エステル部位と親水性のリン酸アニオン部位が共存するために、リン脂質は界面活性剤のような両親媒性を示し、水中では外側に親水性部を向けて疎水性部同士が集まることでベシクル状の安定な脂質二重層を形成する。
分類[編集]
リン脂質は、大きく分けてグリセリンを骨格とするグリセロリン脂質と、スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質の2つが存在する。
グリセリンのC1、C2位に脂肪酸が、C3位にリン酸がそれぞれエステル結合した分子をホスファチジン酸、ホスファチジン酸からC2位の脂肪酸が外れた分子をリゾホスファチジン酸という。C1には飽和脂肪酸が、C2位には不飽和脂肪酸が結合している場合が多い。古細菌の細胞膜では、脂肪酸がエステル結合でなくエーテル結合をしたエーテル型脂質も存在している[1]。アルコールの種類としてはコリン・エタノールアミン・イノシトール・セリン・グリセリンなどを取りうる。
スフィンゴシンはパルミチン酸とセリンから合成される物質で、グリセリンのC2位のヒドロキシ基がアミノ基で置き換わり、さらにC1位に長鎖アルキル基が結合した構造を持つ。このため、C2位は脂肪酸とアミド結合を形成する。スフィンゴリン脂質としてはスフィンゴミエリンが知られる。
生合成経路[編集]
グリセロリン脂質では、まずアルコールがキナーゼとアデノシン三リン酸 (ATP) によってリン酸エステル化される。次にシチジン二リン酸 (CTP) と反応し、活性アルコールとなる。これが1,2-ジグリセリドと反応することによって、グリセロリン脂質が生成する。ホスファチジルセリンはホスファチジルエタノールアミンのメチル化によっても生じる。[2]。
スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)は、以前は スフィンゴシンのアミノ基がアセチルCoAによってアセチル化されてセラミドが生じ、次にヒドロキシル基がCTPによって活性化されたコリンと反応してスフィンゴミエリンが生成するものと考えられていた。しかし、現在では中間生成物としてスフィンゴシンを経由しない経路が提唱されている[3], [4] 。
役割[編集]
リン脂質は自己組織化によって脂質二重層を形成し、細胞膜の主要な構成要素となる他、細胞膜内外の物質移動に用いられる小さな脂質ベシクル(リポソーム)を形成する。脂質二重層は浸透性があり、柔軟で、流体のような特性をもつため、中のリン脂質やタンパク質は面内方向に比較的自由に動くことができる。
また、リン脂質がホスホリパーゼA2などの酵素によって分解されて生じるホスファチジン酸やリゾホスファチジン酸、あるいはアラキドン酸などの各種脂肪酸は、シグナル伝達において重要な役割を担っていることが明らかにされつつある[5]。
主なリン脂質[編集]
- ホスファチジルコリン(Phosphatidylcholine) - レシチンともいう。コリン神経系でのアセチルコリン生合成経路におけるコリンの供給源となる。
- ホスファチジルエタノールアミン(Phosphatidylethanolamine) - セファリン(ケファリン、Cephalin)ともいう。
- ホスファチジルイノシトール - 細胞膜中の存在量は多くないが、PI3キナーゼなどの基質となり、シグナル伝達におけるセカンドメッセンジャーなどとしてはたらく。リン酸化の程度が異なる数種類が存在する。
- ホスファチジルセリン(Phosphatidylserine) - ホスファチジルエタノールアミンをカルボキシル化した構造を持つ。
- ホスファチジルグリセロール(Phosphatidylglycerol) - 植物の葉などに多く含まれる。
- ジホスファチジルグリセロール(Diphosphatidyl glycerol) - カルジオリピン(Cardiolipin) ともいう。
- スフィンゴミエリン - 髄鞘に多く含まれる。
出典[編集]
- ^ http://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/ikagaku/research_j.html
- ^ http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/triglyc.htm
- ^ http://bio.takara.co.jp/catalog/pdfs/8570.pdf
- ^ Progress in Lipid Research 2002, 41 (1), 66-97. DOI:10.1016/S0163-7827(01)00020-0
- ^ http://www.rinshoken.or.jp/P/project_j.htm
関連項目[編集]
- 抗リン脂質抗体症候群 - 自己免疫疾患のひとつ。
- 糖脂質 - リン脂質と同じ複合脂質の1種。
- 脂質ラフト - 細胞膜に存在する部分構造。
参考文献[編集]
- 全般:『生体分子科学 第六部 細胞膜脂質の特徴』(京都大学)
脂質 |
|
一般 |
- 飽和脂肪
- 不飽和脂肪
- 一価不飽和脂肪
- 多価不飽和脂肪
|
|
配置 |
- トランス脂肪酸
- ω-3脂肪酸
- ω-6脂肪酸
- ω-9脂肪酸
|
|
主な脂肪酸 |
- ラウリン酸
- パルミチン酸
- ミリスチン酸
- ステアリン酸
- カプリル酸
|
|
リン脂質 |
- ホスファチジルセリン
- ホスファチジルイノシトール
- ホスファチジルエタノールアミン
- カルジオリピン
- ジパルミトイルホスファチジルコリン
|
|
コレステロール/ステロイド |
|
|
スフィンゴ脂質 |
|
|
エイコサノイド |
- アラキドン酸
- プロスタグランジン
- プロスタサイクリン
- トロンボキサン
- ロイコトリエン
|
|
主要な生体物質:炭水化物(アルコール、糖タンパク質、配糖体) · 脂質(エイコサノイド · 脂肪酸/脂肪酸の代謝中間体 · リン脂質 · スフィンゴ脂質 · ステロイド) · 核酸(核酸塩基 · ヌクレオチド代謝中間体) · タンパク質(タンパク質を構成するアミノ酸/アミノ酸の代謝中間体) · テトラピロール · ヘムの代謝中間体 |
|
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Japanese Journal
- Xk-Related Protein 8 and CED-8 Promote Phosphatidylserine Exposure in Apoptotic Cells
- Suzuki Jun,Denning Daniel P,Imanishi Eiichi,Horvitz H Robert,Nagata Shigekazu
- Science, 2013-07-11
- … アポトーシス時のリン脂質暴露に関与する因子の同定. …
- NAID 120005300357
- 皮膚型結節性多発動脈炎とリベド血管症患者における抗リン脂質抗体(第一報)
- 若林 奈津子/石黒 直子/葉山 愛弥/山中 寿/清水 悟/川島 眞
- 東京女子医科大学雑誌 83(2), 86-94, 2013-04-25
- … 臨床的にリベドを呈し血管障害を認める疾患には、皮膚型結節性多発動脈炎、リベド血管症、抗リン脂質抗体症候群などがある。 … 病理組織学的な所見は、皮膚型結節性多発動脈炎では真皮脂肪織境界部の小動脈炎を、リベド血管症、抗リン脂質抗体症候群では毛細血管〜細血管の血栓像を呈するという違いがあるものの、3疾患の臨床症状には共通点が多くみられる。 …
- NAID 110009581135
- 抗リン脂質抗体症候群モデルラットにおける妊娠転帰についての検討
- 井上 統夫[他]
- 長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi 88(1), 12-16, 2013-03-25
- … 抗リン脂質抗体症候群(APS)は繰り返す流産や死産の原因となることが知られている。 …
- NAID 110009577917
Related Links
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
組成
成分・含量
- 100g中
精製白糖 70.0g
ポビドンヨード 3.0g
添加物
- マクロゴール、グリセリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ヨウ化K、ペクチン、水添大豆リン脂質、クエン酸、水酸化Na
禁忌
(次の患者には使用しないこと)
- 本剤の成分又はヨウ素に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- 症状及び病巣の広さに応じて適量を使用する。
潰瘍面を清拭後、1日1〜2回ガーゼにのばして貼付するか、又は患部に直接塗布しその上をガーゼで保護する。
慎重投与
(次の患者には慎重に使用すること)
- 甲状腺機能に異常のある患者〔甲状腺機能に異常がある場合はポビドンヨード投与により血中ヨウ素値の調節ができず、甲状腺ホルモン関連物質に影響を与える可能性がある。〕
- 腎不全の患者〔腎不全患者ではポビドンヨード投与により血清中総ヨウ素濃度が著しく高くなることが報告されている。〕
- 新生児〔新生児にポビドンヨードを使用し、甲状腺機能低下症を起こしたとの報告がある。〕
重大な副作用
- ショック、アナフィラキシー様症状(頻度不明)(呼吸困難、不快感、浮腫、潮紅、蕁麻疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、直ちに使用を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- 本剤は、白糖による創傷治癒作用及びポビドンヨードによる殺菌作用を有している。
創傷治癒作用16)〜24)
- 1) ラットの欠損創及び皮膚潰瘍モデルで、肉芽新生及び表皮再生促進とともに治癒日数の短縮を、また糖尿病マウスの欠損創において肉芽組織及び血管数の増加を認めた。16)〜19)
- 2) 切創モデルで創耐張力の増加を認めた(ラット)。20)
- 3) ヒト培養細胞においてケラチノサイト・線維芽細胞からのbFGF産生亢進が認められた(in vitro)。21)
- 各モデルともに明らかな創傷治癒作用を示した。
なお、白糖の創傷治癒過程に対する影響は以下のとおりである。
- 1) ラット欠損創治癒過程の検討で、表皮においては分裂期表皮細胞数の増加が、真皮においては創傷早期に線維芽細胞の増殖を促進させるヒアルロン酸の増加が認められた。22)
- 2) ラット切創治癒過程の組織学的検討では、創傷部の浮腫が軽度で、新生血管及び線維芽細胞に富み、膠原線維の再生を伴う発達した肉芽組織が認められた。23)
- 3) 白糖の作用機序として、局所的浸透圧の上昇による浮腫軽減作用及び線維芽細胞の活性化が考えられている。24)
殺菌作用25)26)
- 本剤は、褥瘡・皮膚潰瘍面から分離された臨床分離株〔細菌3種(P.aeruginosa,S.aureus,S.epidermidis)、真菌1種(C.albicans)〕及び保存標準株〔細菌5種(P.aeruginosa,S.aureus,E.coli, K.pneumoniae,B.subtilis)、真菌1種(A.niger)〕に対して十分な殺菌作用を示した。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
- β-D-Fructofuranosyl-α-D-glucopyranoside
分子式
分子量
性状
- 白色の結晶性の粉末、又は光沢のある無色あるいは白色の結晶である。水に極めて溶けやすく、エタノール(95)に溶けにくい。
一般名
化学名
- Poly[(2-oxopyrrolidin-1-yl)ethylene]iodine
分子式
性状
- 暗赤褐色の粉末で、わずかに特異なにおいがある。水又はエタノール(99.5)に溶けやすい。
★リンクテーブル★
[★]
- 遠心分離した血液検体(別冊No. 2)を別に示す。この検体が示唆するのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111E016]←[国試_111]→[111E018]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100G079]←[国試_100]→[100G081]
[★]
- 英
- fungus, (pl.)fungi
- 同
- かび、菌類 Mycota
- 関
- 微生物学、真菌症、抗真菌薬
細菌、真菌、藻類、原虫
- いずれも単細胞生物
- 細菌は核を持たないが、それ以外は核を持つ
- 細胞壁の多糖:細菌はペプチドグリカンなど。真菌はβグルカン、キチン。藻類はセルロース。原虫は細胞壁を持たない
- 栄養獲得様式:藻類は光合成独立栄養生性。
大きさ
細胞膜
細胞壁
線維状多糖
- 細胞壁の骨格となる
- キチンとβ-グルカンからなる。
- 特殊な多糖にキトサンがある
- グルコースのホモ重合体
- β(1→3)結合、β(1→6)結合
- 酵母では細胞壁成分にβ-1,3-グルカンが多い
糖タンパク質
形態による分類
- Coccidioides immitis
- Histoplasma capsulatum
- Sporothrix schenckii
- Candida albicans
培養と感染組織における形態
菌糸の構造
- 接合菌などの下等真菌にのみ見られる
菌糸の機能
-
生殖方式による分類
有性生殖と無性生殖
-
有性胞子形成
無性胞子形成
培養
種類
真菌の染色法(SMB.358)
- 細胞壁の多糖を染色:コットンブルー(cotton blue)、グラム染色(全ての真菌はグラム陽性)
- 真菌細胞壁多糖を特異的に染色:PAS染色、Grocottメテナミン銀染色、ファンギフローラY
参考
病原体としての真菌
[★]
- 英
- Gram stain
- 同
- (国試)Gram染色
- 関
- 染色法
方法
ハッカー変法
- 参考1
- 時間は試薬により変わる
グラム陽性と陰性の区別ができない菌
- 抗酸菌(結核菌、らい菌)、放線菌、スピロヘータ、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアなど (標準予防策実践マニュアル 南江堂 第2刷 p.4)
参考
- http://krawelts.exblog.jp/2887409/
国試
[★]
- 英
- sphingomyelin
- 関
- スフィンゴ脂質、スフィンゴ脂質蓄積症
異化
臨床関連
[★]
- 英
- hepaplastin test, HPT
- 関
- トロンボプラスチン、プロトロンビン時間
- 検体:クエン酸を加えた全血もしくは血漿
- 組織トロンボプラスチン(組織因子とリン脂質)を検体に加え、凝固するまでの時間を計測する。(その時間とコントロールの時間を使って活性の大小を%で表現する、と思われる)
- 外因系を反映、すなわち、第II、VII、X因子を反映する検査である。
- ワルファリンの影響を受ける。
- ビタミンK欠乏症では低下する。
- 組織因子としてウサギ脳トロンボプラスチンを使用 → PIVKAの影響を受けない(トロンボテストとの異差) → 肝実質細胞の合成能を反映 (LAB.416)
[★]
- 英
- phosphatidylcholine PC PtdCho
- 同
- レシチン lecithin, 1,2-ジアシルグリセロホスホコリン sn-1,2-diacylglycerophosphocholine
- 関
- コリン、グリセロリン脂質。L/S比
- 図:FB.154
- グリセロリン脂質の一種で、リン酸を介してコリンが結合している
構造
胎児の肺サーファクタント
[★]
- 英
- phospholipid-dependent protein kinase
- 関
- プロテインキナーゼC
[★]
- 英
- phospholipidosis
- 同
- 泡沫細胞症候群 foamy cell syndrome
[★]
- 英
- phosphoinositide phospholipase C
- 関
- ホスホリパーゼC
[★]
- 英
- negatively charged phospholipids
- 関
- リン脂質
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- quality
- 関
- 品質