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微生物学(びせいぶつがく、英語: microbiology)は、微生物を対象とする生物学の一分野。
微生物とは(真正)細菌、古細菌、原生生物、真菌類など、顕微鏡的大きさ以下の生物を指す。しかし、微生物学という用語を用いられる場合、主として原核生物(細菌、古細菌)をその対象とする場合が多い。また、ウイルスをその対象に含める場合もある。
主に生化学的な解析を行う。現在は地球科学的因子の一つとして微生物を含めた微生物生態学のようなラージスケールでの解析も行っている。
目次
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微生物学の最も基本的な実験ないし手法としては、微生物の純粋培養技術(分離)がある。環境下では様々な種類の微生物同士が種間相互作用を行っており、これらの相互作用を除いて個々の種類の性質を探るには、微生物を純粋に培養する技術が最も基本的なところとなる。なお、純粋培養には器具の滅菌、ならびに培地の組成など微生物のみならず、細胞を扱う学問の基礎となる技術が伴う。
培地の組成や温度、培養時間などによって分離できる菌が異なる。例:
純粋培養に基づく研究は微生物学の王道となってきたが、未知の因子を要求するものなど、純粋培養が不可能もしくはきわめて困難な微生物も多く、これらは難培養性微生物と呼ばれる。土壌など、自然界に存在する微生物の大半は、このような難培養性微生物であるといわれており、PCRやDNAマイクロアレイなどの新技術を用いた、純粋培養によらない研究手法も模索されている。
細胞の基礎代謝については、真核生物を用いたものよりも、個々の細胞クローンが得られる微生物から多くの知見が得られた。異化、同化はもちろん、タンパク質や脂質、核酸の生合成などは微生物学からえられたものといっても過言ではない。
微生物の増殖に関する実験からは、細胞の栄養要求性や、遺伝子発現の調節などといった事柄が理解されている。また、栄養要求性のみならず、環境因子の要求(温度、pH、酸素など)についてもその知見が得られている。
アントニー・ファン・レーウェンフックの発明した顕微鏡は微生物の概念をもたらしたが、顕微鏡を用いた細胞の観察は現在でも必要欠くべからざるものである。現在は、電子顕微鏡をはじめ多くの高性能な顕微鏡が開発されているが、その結果微生物表面に存在する鞭毛運動やタンパク質の挙動などが明らかになってきている。
微生物の培養から元株の完全なクローンが通常得られるが、一定の確率で性状のやや異なる株が得られる。突然変異の概念をもたらしたのは微生物学の成果の一つでもあり、突然変異の誘導をはじめ、相同組み換え、形質転換、接合、F因子の伝達、形質導入といった、現在の分子生物学にきわめて重要な多くの方法を提供してきた。
微生物は形が小さいために形態が単純であり、多細胞生物のようにその表現型から分類を行うことは難しい。が、上記の微生物学的知見を駆使して分類を行うことは不可能ではない。また、表現型の評価が難しいことから16S rRNA系統解析のような遺伝子を用いて分類を行うことが考え出されている。
藻類や原生動物においては、形態が重要視されるが、電子顕微鏡レベルでの構造が明らかになるに連れ、外形よりも鞭毛装置などの微細構造が重視されるようになった。菌類では、生理作用による判別と形態が共に重視され、原核生物では、外見的な形態での分類はほとんど望めないため、生理作用、たとえば様々な物質の分解能などが重視されたが、これらも次第に分子遺伝学的形質等に重点を移しつつある。
炭素、窒素をはじめ多くの物質が生態系の中を循環しているが、中には微生物にユニークな反応も存在し、物質循環に果たす微生物の役割は想像以上に大きいことが示唆されている。この学問は特に微生物生態学といわれている。また、微生物間の種間相互作用も研究が進んでいる。
炭疽菌をはじめ多くの微生物は人間に対して病原性を持っており、疾病の面からも多くの微生物が研究されてきた。人工的免疫法、衛生学的手法といった現在の医学においても欠かせない多くのテクニックが微生物学から生まれている。また、ウイルスについても、病原性(タバコモザイク病)から発展した概念および学問の一つである。なお、日本では病原性の微生物を扱う学問として細菌学という固有の分野を設けている。
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関連記事 | 「微生物」「生物」「生物学」 |
蠕虫類 | 病原体名 | 病名 | 感染経路 | 寄生部位 | 症状 | 診断 | 治療 | |
線虫類 | Ancylostoma duodenale | ズビニ鉤虫 | 鈎虫症/十二指腸虫症 | F型幼虫経口感染、経皮 | 空腸上部 | 皮膚炎、若菜病、貧血 | 飽和食塩水浮遊法、遠心沈降法 | pyrantel pamoate、鉄剤 |
Necator americanus | アメリカ鉤虫 | |||||||
Strongyloides stercoralis | 糞線虫 | 糞線虫症 | F型幼虫経皮感染 | 小腸上部 | Loffler症候群 | 糞便塗沫、普通寒天平板培養による R型、F型幼虫の検出 |
thiabendazole, ivermectin | |
Enterobius vermicularis | 蟯虫 | 蟯虫症 | 虫卵経口感染 | 盲腸~大腸 | 夜間の掻痒、不眠、情緒不安定 | 肛囲検査法「柿の種」 | pyrantel pamoate | |
Ascaris lumbricoides | 回虫 | 回虫症 | 虫卵経口感染 | 小腸孵化→門脈→ 肺発育→食道嚥下→小腸 |
Loffler症候群。急性腹痛 | 糞便虫の虫卵の証明 | pyrantel pamoate | |
Toxocara canis | イヌ回虫 | 幼虫移行症 | 生後1-2ヶ月の感染犬の 糞から経口感染 |
なし | 幼虫移行症→失明 | 免疫診断 | 治療法無し? | |
Wuchereria bancrofti | バンクロフト糸状虫 | フィラリア症/糸状虫症 | アカイエカ | リンパ系 | 急性期:リンパ肝炎、リンパ腺炎を伴う熱発作(filarial fever) 慢性期:乳糜尿、リンパ管瘤、陰嚢水腫、象皮病 |
急性期:夜間のmicrofilariaの検出 慢性期:特有の症状を考慮 |
diethylcarbamazine & ivermectin | |
Brugia malayi | マレー糸状虫 | |||||||
Dirofilaria immitis | イヌ糸状虫 | アカイエカ | なし | 幼虫移行症→肺血管閉塞→胸部X線画像銭形陰影 | ||||
Gnathostoma spinigerum | 有棘顎口虫 | 顎口虫症 | ドジョウ、雷魚、ヘビの生食 | 消化管壁貫通→皮下移動による腫瘤や線状皮膚炎 | 移動性腫瘤、皮膚爬行疹 雷魚やドジョウの生殖の問診 免疫血清診断 |
なし | ||
Gnathostoma hispidum | 剛棘顎口虫 | |||||||
Gnathostoma doloresi | ドロレス顎口虫 | |||||||
Gnathostoma nipponicum | 日本顎口虫 | |||||||
Anisakis simplex, larva | アニキサス幼虫 | アニサキス症 (1)胃アニサキス症、 (2)腸アニサキス症、 (3)異所性アニサキス症 |
経口感染 終宿主:クジラ、イルカ。 中間宿主:オキアミ。 待機宿主:サバ、ニシン、アジ、タラなど |
胃や腸 | (1)急激な上腹部痛"胃けいれん" (2)腹痛、急性虫垂炎、イレウス様。劇症型と緩和型がある (3)腹腔内の炎症性肉芽腫 |
胃内視鏡検査 | 内視鏡による虫体摘出 | |
Pseudoterranova decipiens | ||||||||
Trichinella spiralis | 旋毛虫 | 旋毛虫症 | 経口感染 豚肉、クマ肉の生食 |
(1)成虫侵襲期:下痢、腹痛 (2)幼虫筋肉移行期:顔面浮腫、心筋障害など (3)幼虫被嚢期:全身浮腫、衰弱 |
急性期:ステロイド 殺虫:mebendazole | |||
鞭虫症 | 盲腸 | 慢性下痢、腹痛、異食症、貧血 | セロファン重層塗沫法、 ホルマリンエーテル法 |
mebendazole | ||||
Spirurin nematode larva | 旋尾線虫 | 旋尾線虫幼虫 | ホタルイカの生食 | なし | 皮膚爬行疹、イレウス様症状 | 予防:-30℃24時間。 生食には-30℃4日間以上 |
摘出 | |
吸虫類 | Shistosoma japonicum | 日本住血吸虫 | 日本住血吸虫症 | 糞便虫の虫卵→ミラシジウム→ ミヤイリガイ体内でセルカリア→ 人畜の皮膚より浸入→循環系→ 門脈に寄生 |
門脈 | (1)潜伏期:侵入部の掻痒性皮膚炎。肺移行期:咳、発熱 (2)急性期:虫卵の門脈系寄生、産卵。住血吸虫性赤痢。 (3)慢性期:虫卵の肝、脳などの塞栓。肝硬変。脾腫、腹水 |
糞便虫の虫卵の検出。 直腸粘膜層掻爬法、 肝穿刺による組織内虫卵の検出。 補助診断として免疫血清学的検査。 |
praziquantel |
Paragonimus westermani | ウェステルマン肺吸虫 | 肺吸虫症/肺ジストマ症 | 経口感染 淡水産のカニ、イノシシ肉の生食 |
肺 | 痰、咳、胸痛、時に喀血 | 痰や便の虫卵検査、 胸部写真、 断層写真で明らかな虫嚢。 免疫学血清検査 |
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Paragonimus miyazakii | 宮崎肺吸虫 | 肺 | 気胸、胸水貯留、膿胸、好酸球増加 | praziquantel | ||||
Clonorchis sinensis | 肝吸虫 | 肝吸虫症/肝ジストマ症 | 経口感染 虫卵→(マメタニシ:セルカリア)→ セルカリア→(魚:メタセルカリア)→ 摂取→(ヒト:成虫)→虫卵 |
胆管 | 胆汁流出障害による肝障害→肝硬変 | 糞便、胆汁(十二指腸ゾンデ法)。 肝吸虫卵の検出。CT像。エコー検査。 |
praziquantel | |
横川吸虫症 | 淡水魚(アユ、フナ、ウグイ、シラウオ)の生食 | 小腸粘膜 | 下痢、腹痛 | 糞便虫の虫卵 | praziquantel | |||
条虫類 | Taeniarhynchus saginatus | 無鉤条虫 | 腸管条虫症 | 経口感染。中間宿主:ウシ | 小腸 | 無症状。下痢。 広節裂頭条虫感染では悪性貧血。 |
糞便虫の虫卵と体節により診断 | praziquantel。 有鉤条虫の場合はガストログラフィン。 有鉤条虫の駆虫の際、 虫体を破壊しない →虫体の融解による嚢虫症 |
Taenia solium | 有鉤条虫 | 経口感染。中間宿主:ブタ | ||||||
Diphyllobothrium latum | 広節裂頭条虫 | 経口感染。中間宿主:サケ、マス | ||||||
日本海裂頭条虫 | 経口感染。中間宿主:サケ | |||||||
腸管外条虫症 | ||||||||
有鉤嚢虫症 | 有鉤条虫の虫卵の経口摂取 | 皮下、筋肉内 脳、脊髄、眼球 |
皮下、筋肉内:小指頭大の無症状腫瘤 脳、脊髄、眼球:Jacksonてんかん。痙性麻痺など |
皮下の虫嚢 | 外科的摘出。 成虫寄生がなければ、praziquantel, albendazole + ステロイド | |||
Echinococcus granulosus | 単包虫 | 包虫症/ エキノコックス症 (単包虫症) |
終宿主:イヌ、キツネなど。 中間宿主:ヒト、ブタ、野ネズミなど。 終宿主の糞便虫の虫卵を中間宿主が接種して発症 |
肝、肺、まれに脳、腎、筋肉 | 肝寄生:肝部疼痛、満腹、時に黄疸、下肢浮腫 肺寄生:胸部圧迫感、胸痛、咳、血痰、時に喀血 |
肝や肺の嚢胞形成から疑う。 早期に診断に皮内反応→ CT、エコー→ 生検。免疫血清学的診断法 |
外科的切除。 albendazoleの長期投与 | |
Echinococcus multilocularis | 多包虫 | 包虫症/ エキノコックス症 (多包虫症) |
分類群 | 菌名 | 病名 | 出芽分裂 | 菌体 | 菌糸 | 胞子 | 発芽管 | 寄生性 | 感染経路 | 病原体の特徴 | 病型 | 検査 | 治療 |
不完全菌 | Candida albicans | カンジダ症 | 仮性菌糸 | 厚膜胞子 | 形成 | 常在菌→各所 | 日和見感染症 | ||||||
担子菌 | Filobasidiella neoformans | クリプトコッカス症 | 出芽 | 厚い莢膜 | 通性細胞内寄生体 | 鳩の乾燥糞→空気感染→肺(通性細胞内寄生体) | 日和見感染菌 | 肺クリプトコッカス症、 中枢神経クリプトコッカス症、 皮膚クリプトコッカス症、 全身性クリプトコッカス症 |
墨汁染色 | ( アムホテリシンB or フルコナゾール ) ± フルシトシン | |||
不完全菌 | Trichosporon asahii | トリコスポロン症 | 仮性菌糸 | 分節分生子 | |||||||||
子嚢菌 | Aspergillus fumigatus/ 'Aspergillus flavus |
アスペルギルス症 | 糸状菌 不完全菌 |
有隔菌糸 | 土壌や朽ちた植物、空気中の浮遊胞子 | ||||||||
Mucor/'Rhizopus/ Absidia/Rhizomucor |
ムコール症 | 無隔菌糸 | 血管に親和性 | 土壌や朽ちた植物、空気中の浮遊胞子 → 浮遊胞子の吸入 |
鼻眼脳型ムコール症 侵襲性肺ムコール症 全身播種型ムコール症 |
β-D-グルカン陰性。 喀痰、血培陰性 |
アムホテリシンB | ||||||
子嚢菌 | Pneumocystis jirovecii ('Pneumocystis carini) |
ニューモシスチス・カリニ感染症 | |||||||||||
子嚢菌 | Histoplasma capsulatum | ヒストプラスマ症 | 二形性真菌 37℃酵母型発育 25℃菌糸形成 |
空気感染。肺に一次病変を作り様々な臓器に播種 | AIDS患者に好発 | ||||||||
不完全菌 | Coccidioides immitis | コクシジオイデス症 | 二形性真菌 | 内生胞子 | |||||||||
不完全菌 | Sporothrix schenckii | スポロトリクス症 | 二形性真菌 |
呼吸器粘膜の局所感染 | ライノウイルス |
アデノウイルス | |
コロナウイルス | |
RSウイルス | |
インフルエンザウイルス | |
全身感染 | ムンプスウイルス |
麻疹ウイルス | |
風疹ウイルス | |
ハンタウイルス | |
水痘・帯状疱疹ウイルス | |
ラッサウイルス | |
天然痘ウイルス |
目(order, -virales), 科(family, -viridae), 亜科(subfamily, -virinae), 属(genus, -virus), 種(species)
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