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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/04/18 05:25:54」(JST)
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相貌失認(そうぼうしつにん、Prosopagnosia[1])とは脳障害による失認の一種で、特に「顔を見てもその表情の識別が出来ず、誰の顔か解らず、もって個人の識別が出来なくなる症状」[2]を指す。 俗に失顔症とも呼ばれる。 頭部損傷や脳腫瘍・血管障害等が後天的に相貌失認を誘発する要因となる。
目次
- 1 歴史
- 2 症状
- 2.1 認知機能障害
- 2.2 脳機能障害
- 2.3 先天性相貌失認
- 3 相貌失認の判定
- 4 相貌失認とされる著名人
- 5 フィクションへの登場
- 6 脚注
- 7 参考文献
- 8 関連項目
- 9 外部リンク
歴史
親しい知人の顔が突然認識できなくなるという、典型的な症状は古くから確認されており、トゥキディデスの歴史書にはペロポネソス戦争に参加し、頭部を負傷した兵士の症例が記述されており、その後も同様の症例が数多く報告されてきた。1947年に、一連の症状をドイツの神経学者Bodamerが、「他の認知機能には支障がない」選択的な障害としてとりまとめ、相貌失認と命名した。
症状
認知機能障害
視覚失認などの他の失認と同様、相貌失認の発症者も目・鼻・口といった個々の顔のパーツや輪郭などを知覚することはできている。しかしこれを全体として「一つの顔」として正しく認識することができないため、人間の顔の区別がつかない、覚えられないといったもの、男女の区別、表情がわからないといった症状を訴える。よって、発症者は個人の認識を着衣や声といった、顔以外の情報により行っているケースが多い。ただし障害の程度によってはごく近しい人間は識別できている[3]ケースもあり、事例によりかなり差異がある。
なお、同じカテゴリーにあるものを区別することが困難であるため、たとえば車の車種の区別などがつかないという症例を併発する事例も報告されているが、これを相貌失認と同一視すべきかについては議論がある。
脳機能障害
人間の顔を認識・識別する機能は側頭葉・後頭葉に偏在する「顔領域[4]」と呼ばれる部位に依存しているとされ、この脳神経が何らかの原因で機能障害を生じることにより相貌失認に至ると考えられている。
先天性相貌失認
先天的に相貌失認を発症する確率は2%程度と推定されており、一般的に想像されるよりかなり多い[5]。
人間の個体識別は顔の認識だけでなく声や着衣、体格、振る舞いなど様々な情報を総合して行われており、顔の認識に障害があっても他の機能で代償し、日常生活に支障をきたしていないため、相貌失認を自覚していない人が相当に存在すると考えられる。
なお、遺伝による生得的症例である可能性も否定できず、1999年には父親と2人の娘にのみ障害があらわれ,母親と息子には障害がみられないという家族が報告されている。
相貌失認の判定
各種の顔認知検査により判定される。代表的なものとしては
- 有名人の顔と見知らぬ人の顔およびその名前を写真を見せて答えさせる
- 喜び、悲しみ、怒り、普通の顔の4種類の写真から表情を判定する
等がある。発症者は正答率に有意な差が見られる。
相貌失認とされる著名人
- ロバート・ガスコイン=セシル (第3代ソールズベリー侯)
- ポール・ディラック
- ヒューバート・ドレイファス
- ジェーン・グドール
- オリバー・サックス
- ケン・ナカヤマ - ハーバード大学の相貌失認リサーチセンター代表[6]
- ブラッド・ピット - 本人による申告[7]
- 池谷裕二
フィクションへの登場
- かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜
- 9時間9人9の扉
- 狂骨の夢
- フェイシズ- 映画。
- 玻璃の家
- 東風(不)見聞録
- リッチマン、プアウーマン (作中では、心因性認識不全症候群と称されるが、作品オリジナル設定。心因性の失顔症) - テレビドラマ。
- ケルベロスの肖像 - 映画。
- アイ'ム ホーム - ドラマ(2015年)
- 匂いを見る少女 - 韓国ドラマ(2015年)
- ひとりのクオリア - ゲーム
脚注
- ^ ギリシャ語の「prosopon(顔)」と「失認(agnosia)」の合成語
- ^ 通信用語の基礎知識より
- ^ London のMcConachie(1976)で報告された12歳9か月の少女の事例等。
- ^ 紡錘状回(Fusiform Face Area 相手の顔を識別する)、上側頭溝(Superior Temporal Sulcus 相手の表情や視線を解釈する)、扁桃体(Amygdala 相手の表情によって情動・感情を喚起する)等
- ^ First Report of Prevalence of Non-Syndromic Hereditary Prosopagnosiaによる報告では689名中17名2.47%、なお発症者の一親等にも高確率で発症例が確認されている。
- ^ Prosopagnosia Research center
- ^ ブラピ、人の顔が覚えられない症状? 米誌に告白 CNN.jp, 2013.05.24
参考文献
日本語のオープンアクセス文献
- 鳥居 方策, 玉井 顕 「相貌失認」 失語症研究(現高次脳機能研究) Vol. 5 (1985), No. 2 pp.854-857
- 河村 満 「「街の顔」と「人の顔」」 失語症研究(現高次脳機能研究) Vol. 21 (2001) , No. 2 pp.128-132
- 顔認知の生得的特異性(梅本堯夫)
- 『天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル』(こころライブラリー)
関連項目
外部リンク
- 相貌失認テスト - 正答率65%以下であれば相貌失認の可能性があるとしている。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 先天性相貌失認 : 症候論,認知機能,神経科学的研究について (増大特集 タッチ・ビジョン・アクション)
- 相貌失認・表情認知 (増大特集 タッチ・ビジョン・アクション)
- 顔が覚えられない : 「相貌失認」という障害 (心の迷宮 : 脳の神秘を探る)
Related Links
- 相貌失認では、目、鼻、口など、顔の構成パーツは認識できるものの、それらが合わさって構成される「顔」の全体像が認識できません。いささか不思議な印象を持たれるのではないでしょうか。実は、人の顔を認識するためには ...
- 人の顔がうまく認識できない「相貌失認」という病気があります。意外に多い疾患で、人口の2%近くにこの症状があると言われることもあります。相貌失認の原因、症状、治療法、対処法について、わかりやすく解説します。
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- 次の文を読み、53~55 の問いに答えよ。
- 78歳の男性。異常な言動を心配した家族に伴われて来院した。
- 現病歴:2年前から、前日の出来事を思い出せなかったり、当日の予定を30分おきに確認するようになった。同時期から夜間に大きな寝言を言ったり、手足をバタバタさせていることに家族が気付くようになった。1年前から、家にいるのに、家に帰らないといけない、亡くなった人が来ているというようになった。このころから動作が遅く、食事や着替えに時間がかかるようになった。数日前からは繰り返し、ものをとられた、隣人が自分の悪口を言っているといって騒ぎ立てるようになったため、困惑した家族に伴われて受診した。
- 既往歴:75歳時に両側の白内障手術。
- 家族歴:父親が脳梗塞。母親が胃癌。
- 生活歴:喫煙は65歳まで10本/日を45年間。13年前から禁煙している。飲酒は機会飲酒。76歳の妻と長女夫婦と同居している。
- 現症:意識は清明。身長 168cm、体重 62kg。体温 36.3℃。脈拍 72/分、整。血圧 148/82mmHg。呼吸数 16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。改訂長谷川式簡易知能評価スケール12点(30点満点)、Mini-Mental State Examination(MMSE)14点(30点満点)。脳神経に異常を認めない。四肢で左右対称性に軽度の筋強剛を認める。腱反射は正常で、Babinski徴候は陰性。運動麻痺、感覚障害および運動失調を認めない。歩行はやや不安定でつまずきやすい。
- 検査所見:尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球 418万、Hb 13.2g/dL、Ht 42%、白血球 6,300、血小板 23万、PT 78%(基準 80~120)。血液生化学所見:総蛋白 7.2g/dL、アルブミン 4.0g/dL、総ビリルビン 0.8mg/dL、AST 22IU/L、ALT 38IU/L、LD 328IU/L(基準 176~353)、ALP 254IU/L(基準 115~359)、γ-GTP 26IU/L(基準 8~50)、アミラーゼ 95IU/L(基準 37~160)、CK 96IU/L(基準 30~140)、尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL、尿酸 6.3mg/dL、血糖 102mg/dL、HbA1c 5.8%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 242mg/dL、トリグリセリド 186mg/dL、Na 136mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 98mEq/L、TSH 3.8μU/mL(基準 0.2~4.0)、FT3 2.6pg/mL(基準 2.5~4.5)、FT4 1.0ng/dL(基準 0.8~2.2)。CRP 0.4mg/dL。脳血流SPECT(別冊No. 10A)とドパミントランスポーターSPECT(別冊No. 10B)とを別に示す。
- この患者にみられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
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