- 英
- mesalazine
- 商
- アサコール、ペンタサ
- 関
- メサラミン, 5-アミノサリチル酸、その他の消化器官用薬
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メサラジン
|
IUPAC命名法による物質名 |
5-amino-2-hydroxybenzoic acid |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
B(US) |
法的規制 |
℞-only (US) |
投与方法 |
経口・坐剤 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
orally: 20-30% absorbed
rectally: 10-35% |
代謝 |
Rapidly & extensively metabolised intestinal mucosal wall and the liver |
半減期 |
5 hours after initial dose.
At steady state 7 hours |
識別 |
CAS登録番号 |
89-57-6 |
ATCコード |
A07EC02 |
PubChem |
CID 4075 |
DrugBank |
APRD01098 |
ChemSpider |
3933 |
KEGG |
D00377 |
化学的データ |
化学式 |
C7H7NO3 |
分子量 |
153.135 g/mol |
|
メサラジン(英Mesalazine)とは抗炎症薬の一つで、潰瘍性大腸炎、クローン病の炎症を治療するのに使用される。
5-アミノサリチル酸:5-ASAとも言われる。結核の治療薬パラアミノサリチル酸(4-アミノサリチル酸、PAS)の位置異性体。
商品名は「ペンタサ® Pentasa(杏林製薬)」「アサコール® Asacol(ゼリア新薬工業)」 。
概要
元来使われていたサラゾスルファピリジンの副作用を解消するために開発された。 サラゾスルファピリジンの成分のうち副作用の原因となっていたスルファピリジンを除き、有効成分5-アミノサリチル酸のみを取り出した治療薬。
大腸に届く前に小腸で吸収されてしまうことも多いため、ペンタサでは腸溶性の被膜コーティングを、アサコールではpH依存型の被膜コーティングを施行し、胃では溶けずに小腸から大腸にわたって徐々に溶けて、大腸に到達してから5-ASAが放出されるように工夫されている。
5-ニトロサリチル酸を水酸化カリウム/ラネーニッケル触媒と反応させる事によって合成。[1]
副作用
一般的な副作用:
稀に起こる副作用:
- 頭痛
- 症状の悪化
- 超過敏反応 (吹き出物、蕁麻疹等)
- 脱毛
- 急性膵炎
- 肝炎
- ネフローゼ症候群
- 血液疾患 (無顆粒球症、再生不良性貧血、白血球減少症、好中球減少症、血小板減少症等)
サラゾスルファピリジンより副作用は少ないが、稀に以下の副作用がおこる。
- アレルギーの肺の反応
- アレルギー性心筋炎
- メトヘモグロビン血症
出典
- ^ G.Breviglieri, B.Giacomo, C.Sergio, A.Cinzia, E.Campanab, M.Panunzio: "Reduction of 5-Nitrosalicylic acid in water to give 5-Aminosalicylic acid". Molecules 2001, 6, M260.
- ^ “Lialda Side Effects & Safety Information”. Shire US (2007年10月). 2008年1月7日閲覧。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 船隠 恵子,堀田 修次,濱岡 照隆,田阪 武志,立花 広志,村上 敬子,豊川 達也,佐藤 英治,友田 純
- 岡山医学会雑誌 125(1), 29-33, 2013-04-01
- Ulcerative proctitis (UP) is a prevalent condition associated with increased morbidity, and topical mesalazine (5-aminosalicylic acid [5-ASA]) is known to inhibit the inflammatory processes in UP. We …
- NAID 120005232680
- Lymphoid follicular proctitisをともなった潰瘍性大腸炎の1例
- 新井 修,飯田 貴之,阿部 仁郎,渡邊 文利,中村 眞一,花井 洋行
- Nippon Shokakibyo Gakkai Zasshi 110(8), 1439-1446, 2013
- … 症例は便潜血陽性の42歳女性.下部消化管内視鏡検査で,上行結腸・直腸にびらんをともなう粗造粘膜と,直腸下部に全周性の顆粒状小隆起集簇像を認めた.内視鏡的・組織学的にlymphoid follicular proctitis(LFP)をともなう区域性潰瘍性大腸炎(UC)と診断した.経過中,UCの典型的内視鏡像と症状が出現し,メサラジンで改善した.LFPとUCの関連性が示唆され,慎重な経過観察が必要である. …
- NAID 130003364412
- 石川 卓哉,春田 純一,山口 丈夫,土居崎 正雄,山 剛基,亀井 圭一郎,澤田 つな騎,水谷 泰之,村上 義郎,服部 峻
- Nippon Shokakibyo Gakkai Zasshi 110(5), 875-882, 2013
- … 症例は45歳,女性.主訴は左上腹部痛と下血.横行結腸に縦走潰瘍を多発して認め,生検所見と合わせてクローン病と診断しメサラジンの内服を開始した.大腸病変は改善傾向であったが,その後の血液検査にて肝胆道系酵素の上昇を認めた.ERCPでは主膵管のびまん性狭細像と下部胆管の狭窄を認めた.ステロイド投与により膵病変は改善し,2型自己免疫性膵炎と診断した. …
- NAID 130003364379
Related Links
- ペンタサ,アサコールとは?メサラジンの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる(おくすり110番:薬事典版) ... 用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。 すべての副作用を掲載しているわけではありません。
- メサラジンとは。効果、副作用、使用上の注意。ペンタサは大腸粘膜の炎症を鎮め、炎症性細胞の活動を抑える作用があり、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)(重症を除く)、クローン病の治療に用いられます。 注腸剤は ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
メサラジン錠250mg「ケミファ」
組成
- メサラジン錠250mg「ケミファ」は、1錠中にメサラジンを250.0mg含有する。
添加物
- 添加物として、ポビドン、エチルセルロース、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する。
禁忌
- 重篤な腎障害のある患者
[腎障害が更に悪化するおそれがある。]
- 重篤な肝障害のある患者
[肝障害が更に悪化するおそれがある。]
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
[「重要な基本的注意」の項参照]
- サリチル酸エステル類又はサリチル酸塩類に対する過敏症の既往歴のある患者
[交叉アレルギーを発現するおそれがある。]
効能または効果
- 潰瘍性大腸炎
通常、成人にはメサラジンとして1日1500mgを3回に分けて食後経口投与するが、寛解期には、必要に応じて1日1回の投与とすることができる。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日2250mgを上限とする。
ただし、活動期には、必要に応じて1日4000mgを2回に分けて投与することができる。
通常、小児にはメサラジンとして1日30〜60mg/kgを3回に分けて食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日2250mgを上限とする。
- クローン病
通常、成人にはメサラジンとして1日1500〜3000mgを3回に分けて食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜減量する。
通常、小児にはメサラジンとして1日40〜60mg/kgを3回に分けて食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- 1日4000mgへの増量は、再燃寛解型で中等症の潰瘍性大腸炎患者(直腸炎型を除く)に対して行うよう考慮すること。
- 1日4000mgを、8週間を超えて投与した際の有効性及び安全性は確立していないため、患者の病態を十分観察し、漫然と1日4000mgの投与を継続しないこと。
慎重投与
- 腎機能の低下している患者
[排泄が遅延し副作用があらわれるおそれがある。]
- 肝機能の低下している患者
[代謝が遅延し副作用があらわれるおそれがある。]
- サラゾスルファピリジンに対する過敏症のある患者(「重要な基本的注意」2.の項参照)
重大な副作用
間質性肺疾患(頻度不明)
- 間質性肺疾患(好酸球性肺炎、肺胞炎、肺臓炎、間質性肺炎等等)が報告されているので、発熱、咳、呼吸困難、胸部X線異常等があらわれた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
心筋炎、心膜炎、胸膜炎(頻度不明)
- 心筋炎、心膜炎、胸膜炎があらわれることがあるので、胸水、胸部痛、心電図異常等があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
間質性腎炎、ネフローゼ症候群、腎機能低下、急性腎不全(頻度不明)
- 間質性腎炎、ネフローゼ症候群、腎機能低下、急性腎不全があらわれることがあるので、投与期間中は腎機能検査値に注意するなど、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少症(頻度不明)
- 再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少症があらわれることがあるので、投与期間中は血液検査を行うなど患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
肝炎、肝機能障害、黄疸(頻度不明)
- 肝炎、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、投与期間中は肝機能検査値に注意するなど、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
膵炎(頻度不明)
- 膵炎があらわれることがあるので、投与期間中は血清アミラーゼの検査を行うなど患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
動物モデルに対する障害抑制効果3)
- 潰瘍性大腸炎類似モデル:メサラジン錠250mg「ケミファ」を粉砕し、酢酸誘発大腸炎モデルラットへ1日1回、100mg/kgを10日間反復経口投与した結果、有意な障害抑制効果が認められた。
- クローン病類似モデル:メサラジン錠250mg「ケミファ」を粉砕し、TNB誘発大腸炎モデルラットへ1日1回、100mg/kgを10日間反復経口投与した結果、有意な障害抑制効果が認められた。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
分子式
分子量
性状
- メサラジンは灰白色〜微灰黄色の針状結晶又は結晶性の粉末である。
本品は水に溶けにくく、メタノール又はエタノール(99.5)に極めて溶けにくい。
融点
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、58~60の問いに答えよ。
- 57歳の男性。便潜血検査で異常を指摘され精査のため来院した。
- 現病歴:50歳時に大腸ポリープで内視鏡的切除術を受けた。その後、特に症状を認めないためそのままにしていた。先日、同僚が大腸癌で手術を受けたため、自分も癌ではないかと気になり自宅近くの診療所を受診した。尿検査、血液検査および腹部超音波検査で異常はなく、便潜血検査で陽性を指摘され受診した。
- 既往歴:28歳時に急性虫垂炎で手術。
- 生活歴:喫煙は20本/日を25年間。飲酒はビール350ml/日を35年間。2年前から禁煙、禁酒している。
- 家族歴:父親が大腸癌のため89歳で死亡。
- 現症:身長165cm、体重67kg。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧130/84mmHg。呼吸数14/分。右下腹部に軽度の圧痛と手術後の瘢痕とを認める。筋性防御と反跳痛とを認めない。腫瘤を触知しない。
- 検査所見:血液検査:赤血球420万、Hb 13.4g/dl、Ht 42%、白血球8,200、血小板28万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dl、アルブミン3.8g/dl、総コレステロール230mg/dl、AST 36IU/l、ALT 36IU/l。CRP 0.03mg/dl。これまでの臨床経過と既往歴から下部消化管内視鏡検査を行った。下行結腸の内視鏡像(別冊No.6)を別に示す。
- 適切な治療はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [107B058]←[国試_107]→[107B060]
[★]
- 47歳の女性。下痢と体重減少とを主訴に来院した。Crohn病に対して6年前までに計3回の小腸部分切除術が施行され.約90cmの空腹と20cmの終末回腸が残存していた。カテーテルによる発熱を繰り返し、右鎖骨下静脈の血栓性狭窄も起こしたため、4年前から中心静脈栄養は行っていなかった。経腸栄養にて排便回数が5-6回/日程度に落ち着いてきたため、約2年前に本人の希望で経口食に変更した。薬物はメサラジンのみを内服していた。2週前から下痢が10回/日以上となり、体重も2週間で約3kg減少したため来院した。意識は清明。身長156cm、体重34kg。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧90/52mmHg。腹部に圧痛を認めない。腸雑音は亢進している。血液所見:赤血球 323万、Hb 11.4g/dl、Ht 34%、白血球 5,200、血小板 17万。血液生化学所見:アルブミン 3.2g/dl、尿素窒素 20mg/dl、クレアチニン 0.8mg/dl、AST 26IU/l、ALT 38IU/l、ALP 863IU/l(基準115-359)、Na 138mEq/l、K 3.2mEq/l、Cl 108mEq/l、Ca 8.0mg/dl。CRP 0.6mg/dl。腹部造影CTで残存小腸の軽度拡張と回盲部近傍の小腸壁肥厚とを認める。本人は外来での治療を希望している。
- まず行う栄養管理として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105E050]←[国試_105]→[105E052]
[★]
- 45歳の女性。左下腿の皮疹を主訴に来院した。 1か月前に左下腿に紅斑が生じ、急速に拡大してきたという。 30歳時に潰瘍性大腸炎と診断され、自宅近くの診療所でメサラジンの内服治療を受けている。
- 意識は清明。身長158cm、体重52kg。体温36.2℃。脈拍76/分、整。血圧134/80mmHg。呼吸数16/分。左下腿に巨大な潰瘍を認める。潰瘍面の細菌培養は陰性である。左下腿の写真(別冊No. 23)を別に示す。
- 診断として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106A048]←[国試_106]→[106A050]
[★]
- 英
- Crohn disease, Crohn's disease
- 同
- Crohn病
- 限局性回腸炎 regional ileitis、回腸末端炎、終末回腸炎 terminal ileitis
- 関
- 潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患 inflammatory bowel disease
- first aid step1 2006 p.113,140,276,280,283,326,427
- see also 消化器系チュートリアルの材料.xls
まとめ
- 特定疾患治療研究事業に含まれる疾患である(特定疾患)。消化管のあらゆる部位に非連続性に起こる原因不明・全層性の慢性肉芽腫性炎症疾患である。10歳後半から20歳代の若年者に多く、また男性に多い(男女比2:1)。病因は不明であるが、炎症反応の亢進であるかもしれない。病理学的にはリンパ球、形質細胞浸潤を伴う全層性炎症像がみられる。また、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が特徴的である。症状は腹痛、下痢、発熱、体重減少などあり、肛門病変(痔瘻や裂肛)が初発することがある。血液検査では炎症所見(WBC,CRP上昇、赤沈亢進)が見られ、貧血、低栄養の所見、またα1アンチトリプシン試験で異常となる。画像検査では、非連続性の病変が認められ、またアフタ状潰瘍、腸間膜付着側の縦列潰瘍、敷石像、瘻孔形成、肛門病変が認められる。治療は内科的治療が中心である。絶食、栄養療法(成分栄養剤による経腸栄養療法、経静脈栄養。小腸ok)、薬物療法(サラゾスルファピリジン(大腸only)、メサラジン(小腸・大腸ok)。ステロイド(栄養療法・5-アミノサリチル酸不応例)、インフリキシマブ、免疫抑制薬、顆粒球吸着療法(GCAP)が行われる。外科療法は狭窄、膿瘍、肛門病変に対して行われる。(SSUR.535 YN A-62)
比較
Table 15-10. Distinctive Features of Crohn Disease and Ulcerative Colitis*
|
Feature
|
Crohn Disease (Small intestine)
|
Crohn Disease (Colon)
|
Ulcerative Colitis
|
Macroscopic
|
Bowel region
|
Ileum ± colon†
|
Colon ± ileum
|
Colon only
|
Distribution
|
Skip lesions
|
Skip lesions
|
Diffuse
|
Stricture
|
Early
|
Variable
|
Late/rare
|
Wall appearance
|
Thickened
|
Variable
|
Thin
|
Dilation
|
No
|
Yes
|
Yes
|
Microscopic
|
Pseudopolyps
|
None to slight
|
Marked
|
Marked
|
Ulcers
|
Deep, linear
|
Deep, linear
|
Superficial
|
Lymphoid reaction
|
Marked
|
Marked
|
Mild
|
Fibrosis
|
Marked
|
Moderate
|
Mild
|
Serositis
|
Marked
|
Variable
|
Mild to none
|
Granulomas
|
Yes (40% to 60%)
|
Yes (40% to 60%)
|
No
|
Fistulas/sinuses
|
Yes
|
Yes
|
No
|
Clinical
|
Fat/vitamin malabsorption
|
Yes
|
Yes, if ileum
|
No
|
Malignant potential
|
Yes
|
Yes
|
Yes
|
Response to surgery‡
|
Poor
|
Fair
|
Good
|
概念
- 原因不明の炎症性疾患
- 腸壁全層に肉芽腫形成が見られる
- 小腸や大腸に縦走潰瘍、敷石像、アフタの形成
病型
- 病変の存在部位により分類(小腸型、小腸大腸型、大腸型、特殊型など)
- 頻度:小腸大腸型>小腸型>>大腸型
病理
病因
- 遺伝的因子 + 環境因子(食餌抗原や細菌、ウイルス感染など) → 免疫異常 → 腸管に慢性炎症性変化
症状
- 主要症状:腹痛、下痢、発熱、体重減少 ← 水様性下痢が一般的で血便が見られることは少ない(QB.A-142)
- 腹痛(臍周囲部および回盲部痛)、間欠性発熱、下痢、嘔吐、肛門部病変。体重減少、貧血
合併症
- 1. 消化管合併症:狭窄、瘻孔、痔瘻、肛門周囲膿瘍
- 2. 消化管外合併症
続発症
検査
- 腹部単純X線写真:イレウスを疑う症例ではニボーの確認のために重要。クローン病の確定診断にはやくにたたない。
- 上部消化管内視鏡
- 下部消化管内視鏡
- 小腸造影:小腸病変の評価。特に回腸末端の病変、程度、潰瘍、狭窄、瘻孔
- 腹部造影CT:TNFα阻害薬やステロイドを用いる際には、腹部から触知下腫瘤が腸管の癒着か、膿瘍の合併によるものかを評価する必要がある(QB.A-144)
- 注腸造影:大腸病変の描出
[show details]
[show details]
- 左:縦走潰瘍。右:cobble stone appearance
診断
[show details]
- (1)
臨床所見
消化管病変
- (a)縦走潰瘍(注1)
- (b)敷石像(注2)
- (c)腸管の狭小,狭窄
- (d)非連続性又は区域性病変(いわゆるskip lesion)
- (e)内瘻(腸-腸瘻,腸-膀胱瘻,直腸-腟瘻など)
- (f)外瘻(腸-皮膚瘻)
- (g)不整形潰瘍
- (h)多発アフタ(注3)
- (a)難治性痔瘍
- (b)肛門周囲膿瘍
- (c)裂肛
- (d)潰瘍
- (e)肛門皮垂(skip tag)など
- (a)多発アフタ
- (b)潰瘍
- (c)狭窄など
- (d)敷石像など
消化管外病変
- 血液:貧血,低蛋白血症
- 関節:腸性関節炎,強直性脊椎炎
- 皮膚:口内アフタ,結節性紅斑,壊死性膿皮症,多形滲出性紅斑など
- 眼:虹彩炎,ぶどう膜炎など
- 栄養代謝: 成長障害,微量元素欠乏,ビタミン欠乏(ビタミンB12,葉酸など),アミロイ ドーシスなど
- 悪性腫瘍:腸癌など
- その他:原発性硬化性胆管炎
病理学的所見
切除標本肉眼所見
- 縦走潰瘍(注1)
- 敷石像(注2)
切除標本組織所見
- 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(局所リンパ節にもみられることがある)(注4)
- 全層性炎症(注5)
- 裂溝
- 潰瘍
生検組織所見
- 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(注4)
- --------------------------------------------------------------------------------
- (注1)腸管の腸軸方向に4~5cm以上の長さを有する潰瘍で活動期潰瘍では,近傍に炎症性ポリープや敷石像を伴うことが多い。虚血性大腸炎で縦走潰瘍を認めることがあるが,炎症性ポリポーシスや敷石像を伴うことは稀である。潰瘍性大腸炎で縦走潰瘍を認めることがあるが,その周辺粘膜は潰瘍性大腸炎に特徴的な所見を呈する。
- (注2)縦走潰瘍とその周辺小潰瘍間の大小不同の密集した粘膜隆起であり,密在した炎症性ポリポーシスもこれに含める。虚血性大腸炎の場合,肉眼標本上で浮腫や残存粘膜等が敷石 像類似の所見を呈することがあるが,その高さは低く,発赤調が強い。
- (注3)クローン病では縦列することがある。
- (注4)非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は腸結核でも認められることがある。
- (注5)主にリンパ球からなる集簇巣が消化管壁全層にみられるもの。
- --------------------------------------------------------------------------------
診断の基準
(1)主要所見
- A. 縦走潰瘍
- B. 敷石像
- C. 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
(2)副所見
- a. 縦列する不整形潰瘍又はアフタ
- b. 上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍又はアフタ
-
- 確診例 1 主要所見のA又はBを有するもの(注6,7)。
- 2 主要所見のCと副所見のいずれか1つを有するもの。
-
- 疑診例 1 副所見のいずれかを有するもの(注8)。
- 2 主要所見のCのみを有するもの(注9)。
- 3 主要所見のA又はBを有するが虚血性大腸炎,潰瘍性大腸炎と鑑別ができないもの。
- --------------------------------------------------------------------------------
- (注6)縦走潰瘍のみの場合,虚血性大腸炎や潰瘍性大腸炎を除外することが必要である。
- (注7)敷石像のみの場合,虚血性大腸炎を除外することが必要である。
- (注8)副所見bのみで疑診とした場合は同所見が3カ月恒存することが必要である。
- (注9)腸結核などの肉芽腫などを有する炎症性疾患を除外することが必要である。
- --------------------------------------------------------------------------------
鑑別診断
- IMD
治療
YN.A-66
外科療法
- 狭窄、瘻孔形成、痔瘻の場合に適応となる。
- 腸切除の後遺症:吸収障害(脂肪>蛋白>糖)、[回盲部切除]胆汁酸・ビタミンB12の吸収不良、小腸内細菌異常増殖(結腸からの侵入?)
USMLE
参考
- http://jsp.umin.ac.jp/corepictures2007/09/c01/index.html
- http://www.jimro.co.jp/ibd/index_ibd.htm
- http://mimibukuro.org/cd/medical-guideline08/2/
- アフタ病変
- http://www.ajronline.org/content/179/4/1029/F14.expansion
- 縦走潰瘍
- http://www.ajronline.org/content/179/4/1029/F12.expansion
- 偽ポリープ
- http://rfs.acr.org/gamuts/data/images/ID1143.htm
国試
[★]
- 英
- ulcerative colitis, UC
- ラ
- colitis gravis, colitis chronica gravis, colitis ulcerosa
- 関
- 炎症性腸疾患 inflammatory bowel disease、クローン病、難病
まとめ
- (免疫応答の異常?)大腸粘膜までを侵し、びらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症である。長期にわたって増悪寛解を繰り返す特定疾患治療研究事業の対象疾患である。男女差無く、若年者(25歳)と中年(50歳)に多い。病変は全大腸、左側結腸、もしくは直腸を侵す物に分類されるが、全大腸型が最も多い。症状は「下痢、血便、腹痛」が中心であり、発熱、体重減少、貧血などの全身症状も伴う。重症度は下痢、血便、発熱、脈拍、ヘモグロビン、血沈が指標となる。合併症としては、中毒性巨大結腸症、原発性硬化性胆管炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、強直性脊椎炎、口内アフタなどがある。血液検査では炎症所見(CRP,WBC,ESR上昇)が認められる。注腸造影検査ではハウストラの消失、鉛管状の結腸が、また内視鏡検査では、連続病変、粘膜血管の不明瞭化、シュードポリープが認められる。組織像では粘膜下層までの炎症像、陰窩膿瘍がみられる。治療はサラゾスルファピリジン、メサラジン、ステロイド、免疫抑制剤、ATM療法などがある。手術療法は中毒性巨大症、穿孔・出血、大腸癌合併の時に適応となる。長期的には大腸癌のリスクが高くフォローが必要である。
概念
- 大腸粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症
- 粘膜下組織まで炎症が見られる
- 特定疾患治療研究事業の対象疾患である。
疫学
- 日本では、1年間人口10万人対0.3人前後
- 30歳以下の成人に多い。
病因
症状
- 急性・慢性に発症し、寛解と再発を繰り返す。
- 下痢、血便、腹痛
- 食欲不振、体重減少、易疲労感
合併症
腸管症状
- 腸管出血・穿孔・狭窄・膿瘍・瘻孔形成、貧血、低蛋白血症。重大なものは中毒性巨大結腸症と大腸癌
- 中毒性巨大結腸症
- 腸管の運動低下のために拡張をきたした状態。腹部は腸管拡張により膨隆し、腸管運動は減少または消失。
- 若年発症、全大腸型、10年以上の長期経過例で発生頻度が高い。
- 低分化癌が多い ⇔ (通常の大腸癌は高分化癌が多い)
腸管外症状
- 皮膚粘膜系:壊疽性膿皮症、結節性紅斑 ←最も多い
- 肝:脂肪肝、肝硬変、胆管周囲炎
- 膵:膵炎、高アミラーゼ血症
- 関節:強直性脊椎炎
- 泌尿生殖系:尿路結石
- 橋本病
- 大動脈炎症候群
検査
- 赤沈、CRP 上昇
- 白血球 基準値以上
- 赤血球 基準値以下
- 血清総蛋白 基準値以下
内視鏡
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注腸検査
生検
診断
臨床的重症度分類
- 参考1
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軽症
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中等症
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重症
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分布
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関連
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1) 排便回数
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≦4回
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重症と軽症との中間
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≧6回
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腸管症状
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2) 顕血便
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(+)~(-)
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(+++)
|
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3) 発熱
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<37.5℃
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≧37.5℃
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全身症状
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炎症
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4) 頻脈
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<90/分
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≧90/分
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3)発熱,4)貧血による。
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5) 貧血
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>Hb 10g/dl
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≦Hb 10g/dl
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炎症あるいは2)血便による
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6) 赤沈
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正常
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≧30 mm/h
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炎症
|
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軽症
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軽症項目全て満たす
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重症
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( 1 and 2 ) and ( 3 or 4 ) ) and (6項目のうち4項目以上)
|
- 1,2は直腸の症状、3,4は全身症状、5は血便による貧血症状、6は炎症の程度を反映。
鑑別疾患
治療
- YN.A-66
予後
潰瘍性大腸炎とクローン病の比較
Table 15-10. Distinctive Features of Crohn Disease and Ulcerative Colitis*
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Feature
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Crohn Disease (Small intestine)
|
Crohn Disease (Colon)
|
Ulcerative Colitis
|
Macroscopic
|
Bowel region
|
Ileum ± colon†
|
Colon ± ileum
|
Colon only
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Distribution
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Skip lesions
|
Skip lesions
|
Diffuse
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Stricture
|
Early
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Variable
|
Late/rare
|
Wall appearance
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Thickened
|
Variable
|
Thin
|
Dilation
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No
|
Yes
|
Yes
|
Microscopic
|
Pseudopolyps
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None to slight
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Marked
|
Marked
|
Ulcers
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Deep, linear
|
Deep, linear
|
Superficial
|
Lymphoid reaction
|
Marked
|
Marked
|
Mild
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Fibrosis
|
Marked
|
Moderate
|
Mild
|
Serositis
|
Marked
|
Variable
|
Mild to none
|
Granulomas
|
Yes (40% to 60%)
|
Yes (40% to 60%)
|
No
|
Fistulas/sinuses
|
Yes
|
Yes
|
No
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Clinical
|
Fat/vitamin malabsorption
|
Yes
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Yes, if ileum
|
No
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Malignant potential
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Yes
|
Yes
|
Yes
|
Response to surgery‡
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Poor
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Fair
|
Good
|
参考
- http://www.jimro.co.jp/ibd/index_ibd.htm
- http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0029/5/0029_G0000120_CQ.html
- http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0029/1/0029_G0000071_GL.html
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/218
- http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/009_s.pdf
- http://nohira.web.fc2.com/
- interesting!
国試
[★]
商品
[★]
商品名
会社名
成分
薬効分類
薬効
[★]
- 英
- 5-aminosalicylic acid 5-aminosalicylate
- 同
- アミノサリチル酸 aminosalicylic acid aminosalicylate
- 関
- メサラジン、メサラミン