ジフロラゾン
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/10/18 09:22:19」(JST)
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ステロイド外用薬(ステロイドがいようやく、topical steroid)は、ステロイド系抗炎症薬の皮膚外用剤であり、皮膚外用治療で最も一般的に使われる医薬品である。薬効成分として糖質コルチコイドが使用されている。
目次
- 1 ステロイド外用剤の薬効
- 2 ステロイド外用剤の種類
- 2.1 I群
- 2.2 II群
- 2.3 III群
- 2.4 IV群
- 2.5 V群
- 3 ステロイド外用剤の副作用
- 4 ステロイド外用剤適応疾患
ステロイド外用剤の薬効[編集]
白血球の遊走を阻止したり、ヒスタミン・キニンなどの炎症性ペプチド抑制や線維芽細胞増殖抑制など、数多くの作用によって皮膚の炎症を抑える効果がある。
ステロイド外用剤の種類[編集]
外用剤にはランクがあり、「Strongest(最も強い)(I群)」「Very Strong(かなり強い)(II群)」「Strong(やや強い)(III群)」「Medium(普通)(IV群)」「Weak(弱い)(V群)」に分けられる。症状の度合い・炎症の発生部位によって使い分けられる。以下、代表薬剤を挙げるが、日々、薬剤ランクの変更があるため、最新の資料で確認する必要がある。
I群[編集]
- 0.05%プロピオン酸クロベタゾール(商品名:デルモベート、ソルベガ)
- 0.05%酢酸ジフロラゾン(商品名:ジフラール・ダイアコート)
II群[編集]
- 0.1%プロピオン酸デキサメタゾン(商品名:メサデルム)
- 0.05%ジフルプレドナード(商品名:マイザー)
- 0.1%フランカルボン酸モメタゾン(商品名:フルメタ®軟膏・クリーム・ローション)
- 0.1%吉草酸ジフルコルトロン(商品名:ネリゾナ®ユニバーサルクリーム)
- 0.05%酪酸プロピオン酸ベタメタゾン(商品名:アンテベート®軟膏・クリーム・ローション)
- 0.05%フルオニシド(商品名:トプシム®)
- 0.1%酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(商品名:パンデル®軟膏・クリーム・ローション)
III群[編集]
- 0.025%プロピオン酸ベクロムタゾン(商品名:プロパデルム)
- 0.3%プロピオン酸デプロドン(商品名:エクラー)
- 0.12%吉草酸ベタメタゾン(商品名:ベトネベート・リンデロンV)
- 0.12%吉草酸デキサメタゾン(商品名:ボアラ)
- 0.3%吉草酸酢酸プレドニゾロン(商品名:リドメックスコーワ、スピラゾン)
- 0.025%フルオシノロンアセトニド(商品名:フルコート)
IV群[編集]
- 0.1%酪酸ヒドロコルチゾン(商品名:ロコイド)
- 0.05%酪酸クロベタゾン(商品名:キンダベート)
- 0.1%プロピオン酸アルクロメタゾン(商品名:アルメタ)
- 0.1%トリアムシノロンアセトニド(商品名:レダコート)
- 0.02%フルメタゾンビバル酸エステル(商品名:テストーゲン)
V群[編集]
- 0.5%プレドニゾロン(商品名:プレドニゾロン)
- 2.5mgヒドロコルチゾン(商品名:エキザルベ)
ステロイド外用剤の副作用[編集]
- ステロイド皮膚症を参照。
ステロイド外用剤適応疾患[編集]
- 湿疹・皮膚炎群
- 全てのランキング群において適応となる疾患群である。
- この群に包括されるのは急性湿疹、慢性湿疹、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、進行性指掌角皮症、女子顔面黒皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎、日光皮膚炎である。
- アトピー性皮膚炎については顔面・頚部など皮膚の弱い部分では副作用が起きやすいため、酢酸クロベタゾン軟膏もしくはタクロリムス軟膏を用いる。また、慢性の経過をたどる疾患であるため、ベリーストロング以下のクラスを用いることがアトピー性皮膚炎ガイドラインでも示されている。
- 脂漏性皮膚炎については、発症に真菌であるPityrosporum属が関与していると言われるため、イミダゾール系抗真菌薬の外用も試みられている。
- 放射線皮膚炎については、特に急性放射線皮膚炎についてステロイド外用の有用性について議論がなされている。一般には熱傷に準じた治療が行われる。また、慢性放射線皮膚炎については適応とはならず、有棘細胞癌の発症を厳重に監視する必要がある。
- 全身性接触性皮膚炎や重症の自家感作性皮膚炎など、外用剤で炎症を抑制できない場合は内服のステロイド剤が使用されるが、その使用は短期間に留められる。
- 痒疹群、虫刺され
- 湿疹・皮膚炎群と同様に第一選択的に使用される疾患群である。
- この群に包括される疾患は急性痒疹(小児ストロフルス・蕁麻疹様苔癬)、亜急性単純性痒疹、慢性痒疹(多形慢性痒疹・結節性痒疹・固定蕁麻疹)がある。
- 難治性の固定蕁麻疹には注射用ステロイド剤の局所注射も行われる。
- 一般に蕁麻疹については適応とはならず、主に抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服が行われる。
- 刺傷部位への対処:抗ヒスタミンクリーム (Antihistamine Cream) や、ヒドロコルチゾンクリーム (Hydrocortisone Cream) などの副腎皮質ホルモン剤ステロイド外用薬の塗布。
- 紅斑症
- ストロングクラス以上において適応となる疾患群である。
- この群に包括される疾患は多形滲出性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑、遠心性丘疹状紅斑である。
- 吉草酸ベタメタゾン軟膏には結節性紅斑の保険適用もあるが、結節性紅斑については一般的には安静と非ステロイド系抗炎症剤投与や病巣感染源の除去、重症例に対してのみステロイド剤の内服が行われるため、通常はステロイド外用剤の適応とはならない。
- 薬疹・中毒疹
- 固定薬疹・湿疹型薬疹・苔癬型薬疹などの軽症例に使用されるが、大抵はステロイド剤の内服が行われる。治療の第一は原因薬剤の同定と中止である。
- 粘膜を侵す症例では口腔用軟膏の使用も行われる。
- 紅皮症
- ストロングクラス以上で適応となる疾患群である。
- 湿疹続発性紅皮症、各種疾患続発性紅皮症、苔癬状続発性紅皮症、紅皮症型薬疹、腫瘍続発性紅皮症(特に悪性リンパ腫=セザリー症候群)が対象となる。
- 乾癬性紅皮症については、ステロイドの外用を行わず活性型ビタミンD3軟膏やレチノイド、あるいはシクロスポリンの投与が主体となる。
- 炎症性角化症
- マイルドクラス以上で適応となる疾患群である。
- 乾癬、扁平苔癬(扁平紅色苔癬)、光沢苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、ジベル薔薇色粃糠疹が対象であり、保険適応外ではあるが類乾癬・線状苔癬も適応疾患である。
- 乾癬についてはかつて密封法(ODT)が行われていたが、現在ではより強いクラスのステロイド外用剤を単純塗擦する方法が行われる。ただし長期連用によって膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症といった重症型乾癬を誘発するという報告があるため、注意が必要である。ただし膿疱性乾癬の外用療法の一つとしてステロイド外用が行われるケースもある。
- 類乾癬については局面状類乾癬や苔癬状類乾癬、異型類乾癬が悪性リンパ腫(皮膚T細胞リンパ腫)の一つである菌状息肉症の前駆段階であることから、外用を行いつつ皮膚科専門医による厳重な観察が必要となる。
- 毛孔性紅色粃糠疹(特に成人型)、ジベル薔薇色粃糠疹については自然治癒傾向が強いため、あまり積極的には使われない。従って、積極的に使用されるのは扁平苔癬が主となる。
- 膠原病とその類症
- 対象となるのはエリテマトーデスのうち皮膚に限局する慢性円板状エリテマトーデスである。また、保険適用外ではあるが亜急性皮膚エリテマトーデスや凍瘡状狼瘡、限局性強皮症も適応となる。全身性エリテマトーデスの皮膚症状(蝶型紅斑)や皮膚筋炎のヘリオトロープ疹は、ステロイド内服の対象である。
- 水疱症・膿疱症
- ストロングクラス以上で適応となる疾患群であるが、膿疱症のうち掌蹠膿疱症については全てのクラスで適応となる。
- 対象となる疾患は天疱瘡、類天疱瘡、ジューリング疱疹状皮膚炎、掌蹠膿疱症、家族性良性慢性天疱瘡(ヘイリー・ヘイリー病)であり、適応外ではあるが妊娠性疱疹、稽留性肢端皮膚炎、好酸球性膿疱性毛嚢炎、疱疹状膿痂疹にも使用される。
- 天疱瘡群(尋常性天疱瘡・増殖性天疱瘡・落葉状天疱瘡・紅斑性天疱瘡)は重症の自己免疫疾患であるため治療の主体はステロイド内服であり、軽症例にはミノサイクリンとニコチン酸アミドの併用療法が行われる。類天疱瘡においても同様であり、ステロイド外用が行われるのは軽症の紅斑性天疱瘡や妊娠性疱疹などに限定される。
- ジューリング疱疹状皮膚炎ではDDS(ジアフェニルスルホン)の内服が著効を示すため、現在ではステロイド外用剤の出番は少ない。
- 疱疹状膿痂疹では重症例で死亡する危険性もあるため、主体はステロイド内服となる。
- 紫斑病・白斑症
- ベリーストロングクラス以上で適応となる疾患群である。
- 通常紫斑病は全身管理が必要なことが多く、ステロイド外用の適応になることはないが、例外として特発性色素性紫斑が適応となる。
- 原因不明であるが出血性素因が無く慢性出血性炎症を伴う特発性色素性紫斑(慢性色素性紫斑)にはマヨッキー血管拡張性環状紫斑、シャンバーグ病、紫斑性色素性苔癬状皮膚炎、黄色苔癬および掻痒性紫斑があるが、保険適用となるのは前三疾患である。ただし全ての疾患に有効性がある。
- 色素異常症のうち尋常性白斑については汎発型が自己免疫疾患であり、免疫抑制を目的にステロイド外用を行う。類症である炎症性辺縁隆起性白斑やサットン遠心性後天性白斑にも適応外ではあるが有効性がある。
- 腫瘍性疾患
- ベリーストロングクラス以上で適応となる疾患である。
- 対象となる疾患は悪性リンパ腫の一つ皮膚T細胞リンパ腫である菌状息肉症とセザリー症候群である。
- 菌状息肉症については初期段階である紅斑期や次段階の扁平浸潤期が適応となる。また前駆症状である類乾癬やムチン沈着性脱毛症にも使用されるが、一時的に進行を遅らせる程度であり、腫瘍期や内臓浸潤期への進行をストップさせる訳ではない。
- 吉草酸ベタメタゾンローションには適応として進行性壊疽性鼻炎があるが、これは現在ではNK細胞性リンパ腫に分類されており当初から強力な多剤併用化学療法を行うため、ステロイド外用剤の適応にはならない。
- 肉芽腫症・代謝異常
- ベリーストロングクラス以上で適応となる疾患群である。
- 対象となる疾患は皮膚サルコイドーシス、皮膚アミロイドーシス、環状肉芽腫である。
- 皮膚サルコイドーシスについてはあらゆる病変について適応となる。またサルコイドーシスに伴う結節性紅斑にも適応である。
- 皮膚アミロイドーシスについては掻痒の強いアミロイド苔癬や斑状アミロイドーシスが適応となる。ベリーストロング以上の単純塗擦や密封法(ODT)が特に有効といわれている。
- 環状肉芽腫にも有効性が高いが、生検を実施しただけで治癒したり無治療でも自然消退するケースも多いことから経過観察のみ行われるケースもある。
- 円形脱毛症
- ストロングクラス以上で適応となる疾患である。
- 通常型では塩化カルプロニウム液が使用されることが多いが、いわゆる悪性型と呼ばれる汎発型や全頭型ではローションタイプが主に使用される。難治性円形脱毛症になるとステロイド剤の局所注射やPUVA療法、局所免疫療法、抗うつ剤が併用される。
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ジフラール軟膏 0.05%
組成
有効成分(1g中)
添加物
- プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、無水クエン酸、白色ワセリン
禁忌
(次の患者には使用しないこと)
- 細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)の患者[免疫機能を抑制し、症状を悪化させるおそれがある。]
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎の患者[穿孔の治癒障害を起こすおそれがある。]
- 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷のある患者[創傷修復を抑制し、症状を悪化させるおそれがある。]
効能または効果
- 湿疹・皮膚炎群(ビダール苔癬、進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎を含む)、乾癬、痒疹群(ストロフルス、じん麻疹様苔癬、固定じん麻疹を含む)、掌蹠膿疱症、紅皮症、薬疹・中毒疹、虫さされ、紅斑症(多形滲出性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑、遠心性丘疹性紅斑)、慢性円板状エリテマトーデス、扁平紅色苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、特発性色素性紫斑(マヨッキー紫斑、シャンバーク病、紫斑性色素性苔癬様皮膚炎を含む)、肥厚性瘢痕・ケロイド、肉芽腫症(サルコイドーシス、環状肉芽腫)、悪性リンパ腫(菌状息肉症を含む)、皮膚アミロイドーシス(アミロイド苔癬、斑状型アミロイド苔癬を含む)、天疱瘡群、類天疱瘡(ジューリング疱疹状皮膚炎を含む)、円形脱毛症。
- 通常1日1〜数回適量を患部に塗布する。
慎重投与
(次の部位には慎重に使用すること)
- 顔面・頸・陰部・間擦部[局所的副作用が発現しやすい。(「重要な基本的注意」 (2)の項参照)]
重大な副作用
皮膚の細菌・真菌感染症(0.53%)
- 皮膚の細菌性感染症(伝染性膿痂疹、毛嚢炎等)、真菌性感染症(カンジダ症、白癬等)があらわれることがある〈密封法(ODT)の場合、起こりやすい〉。このような場合には、適切な抗菌剤、抗真菌剤等を併用し、症状が速やかに改善しない場合には、使用を中止すること。
下垂体・副腎皮質系機能抑制(0.01%)
- 大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)により、下垂体・副腎皮質系機能の抑制を来すことがあるので、短期の使用が望ましい。特別の場合を除き、密封法(ODT)や長期又は大量使用は避けること。
後嚢白内障・緑内障(頻度不明)
- 眼瞼皮膚への使用に際しては、眼圧亢進、緑内障を起こすことがあるので注意すること。
大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)により、後嚢白内障、緑内障等があらわれることがある。
薬効薬理
1.臨床薬理試験
(1)血管収縮作用
- ヒト皮膚での血管収縮試験において、本剤の血管収縮能は、クロベタゾールプロピオン酸エステルと同等で、ベタメタゾン吉草酸エステル及びヒドロコルチゾン酪酸エステルより有意にすぐれていた10)。
(2)局所皮膚への影響
- ヒト皮膚に6週間密封塗布したとき、皮膚の厚さの減少を指標にした本剤による皮膚菲薄化は、ベタメタゾン吉草酸エステルとほぼ同等で、クロベタゾールプロピオン酸エステルより有意に弱かった11)。
(3)全身への影響
- 血中及び尿中コルチゾール等を指標とした下垂体・副腎皮質系機能抑制はベタメタゾン吉草酸エステルと同等ないし僅かに強い程度であった12)。
2.基礎薬理試験
==
(1)抗炎症作用====
- マウスのクロトン油又はピクリールクロライドによる耳浮腫及び抗ラットウサギ血清によるラット皮膚浮腫等の急性炎症を抑制するとともに、ラットの肉芽増殖、創傷治癒及びアジュバント関節炎等の増殖性炎症及びマウスのアレルギー性炎症を抑制した13)。
(2)全身への影響
- ラットのアジュバント関節炎において、胸腺及び脾臓の重量を減少させたが、その程度はベタメタゾン吉草酸エステルとほぼ同等であった13)。
有効成分に関する理化学的知見
分子式
分子量
融点
性状
- ジフロラゾン酢酸エステルは白色〜微黄色の結晶又は結晶性の粉末で、においはない。アセトン又はクロロホルムに溶けやすく、アセトニトリル又は酢酸エチルにやや溶けやすく、メタノール、エタノール(99.5)又はジエチルエーテルに溶けにくく、塩化n-ブチルに極めて溶けにくく、水又はヘキサンにほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
[★]
商品
</rad>
[★]
- 英
- steroid ointment
[★]
- 英
- diflorasone
- 化
- 二酢酸ジフロラゾン 酢酸ジフロラゾン diflorasone diacetate
- 商
- アナミドール、カイノチーム、サコール、ジフラール、ダイアコート