- 英
- surface antigen
- 関
- 細胞表面抗原
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CD分類(シーディーぶんるい)とは、ヒト白血球を主としたさまざまな細胞表面に存在する分子(表面抗原)に結合するモノクローナル抗体の国際分類。白血球やその他の細胞は、細胞表面に糖タンパクなどでできたさまざまな分子を発現しており、この分子の違いを見分けることで細かい細胞の違いを識別することができる。これらの分子は、モノクローナル抗体が結合する抗原として識別することができ、表面抗原あるいは表面マーカーと呼ばれる。しかし、異なったモノクローナル抗体が同じ表面抗原に結合することがあるため、混乱が生じることがある。そこで、同じ表面抗原を認識する抗体群を、同じ番号(と記号)で国際的に統一して分類したものがこのCD分類である。CD分類でつけられた番号(と記号)をCD番号とよぶ。CD分類は本来はモノクローナル抗体の分類であるが、モノクローナル抗体が認識する表面抗原の名称にも用いられる(CD抗原またはCD分子)。これらCD抗原には細胞の機能や分化に関わる分子が含まれる。CDとは、cluster of differentiation の頭文字で、訳すと「分化抗原群」であり、白血球分化に関わる抗原分子に対するモノクローナル抗体をクラスタ解析(群解析)で分類したことから名付けられた[1]。
CD分類は1982年にパリで開かれた第1回ヒト白血球分化抗原に関する国際ワークショップ[2]でCD1〜CD15の15種類が決定されたのに始まり、2007年1月現在までに9回のワークショップを通じてCD350までが決定されている[3]。
目次
- 1 歴史
- 2 CD番号の付け方
- 3 主なCD抗原
- 4 外部リンク
- 5 参考文献
|
歴史
1975年ケーラーとミルスタインによってモノクローナル抗体の作成方法が確立される[4]と、1970年代末から1980年代前半にかけて多くのモノクローナル抗体が樹立され、白血球の細胞表面に存在し白血球の機能や分化のマーカーとなる分子が多数同定された。しかし、同じ抗原に対し、研究者によって異なった名前がつけれられるなど命名が混乱したため、ヒト白血球分化抗原 human leucocyte differentiation antigens (HLDA) に関する国際ワークショップが立ち上げられることとなり、第1回が1982年にパリで開催された。ここで多くのモノクローナル抗体を複数の施設で評価し、抗体の認識抗原の相同性をクラスタ解析で群別し、同一抗原に対する抗体とされた抗体群に同一のCD番号が振り分けれられた[5]。第1回会議では約140種類の抗体からCD1〜CD15の15種類のCDが決定された[2]。
その後HLDAワークショップは2〜4年に1回ずつ開催され、多くのCD番号を決定した。もともとは白血球の表面抗原に対する抗体の分類を目的としたものであったが、赤血球や赤血球、血管内皮細胞、線維芽細胞などの細胞表面分子に対する抗体も含まれるようになったため、2004年HLDA委員会はワークショップの目的をヒト細胞分化抗原 human cell differentiation molecules (HCDM) の研究・分類に変更し[6]、2006年よりワークショップの名称もHCDMワークショップに変更された。
ワークショップ |
開催年 |
開催地 |
定義CD[7] |
第1回HLDA会議[2] |
1982年 |
パリ |
CD1〜CDw15 |
第2回HLDA会議 |
1984年 |
ボストン |
〜CDw26 |
第3回HLDA会議 |
1986年 |
オックスフォード |
〜CD45R |
第4回HLDA会議 |
1989年 |
ウィーン |
〜CDw78 |
第5回HLDA会議[8] |
1993年 |
ボストン |
〜CDw130 |
第6回HLDA会議[9] |
1996年 |
神戸 |
〜CD166 |
第7回HLDA会議[10] |
2000年 |
ハロゲート |
〜CD247 |
第8回HLDA会議[6] |
2004年 |
アデレード |
〜CD339 |
第9回HCDM会議[3] |
2006年 |
ケベック |
〜CD350 |
CD番号の付け方
CD番号はワークショップで決定された順に番号を振ってあるだけであり、番号には特別な意味はない。また、既存のCD分子に複数の分子種が存在することが判明した場合にはCD1a〜CD1dのように枝番をつけるが、この枝番のつけ方にも定義はない。一方、ある種の細胞に限定した分布をする亜型が存在する抗原には、CD45Rのように後ろにR(restricted distributionのR)をつける。またCDとしての定義に満たない場合にはworkshop CD (CDw) として暫定的な番号をつける[7]。
主なCD抗原
CD番号 |
別名 |
主な発現細胞 |
機能 |
CD1d |
R3 |
APC |
MHCクラスI様分子。糖脂質やリン脂質を提示してNKTを活性化する |
CD4 |
T4 |
T |
MHCクラスII認識、HIVが感染する際の標的分子 |
CD8α |
T8 |
T, 骨髄系DC |
MHCクラスI認識 |
CD20 |
B1 |
B, 濾胞性DC |
成熟B細胞マーカー、リツキシマブの標的分子 |
CD34 |
|
造血幹細胞 |
造血幹細胞マーカー |
CD80 |
B7.1, CD28L, CTLA-4L |
成熟DC, MΦ |
T細胞活性化の共刺激分子、DCの成熟化マーカー |
CD86 |
B7.2 |
活性化DC, MΦ |
T細胞活性化の共刺激分子、DCの成熟化マーカー |
CD133 |
|
造血幹細胞 |
造血幹細胞マーカー |
CD134 |
OX40 |
活性化T |
T細胞の共刺激分子 |
外部リンク
- Human Cell Differentiation Molecules 公式サイト(英語)
- abcam社 CD Antigens ポスター(英語)
参考文献
- ^ 橋本亙 「CD分類 —HLDAからHCDMへ—」『リウマチ科』34号、664-675頁、2005年。
- ^ a b c Bernard AR, Boumsell L, Dausset J, et al. (Eds). "Leucocyte typing: Human leucocyte differentiation antigens detected by monoloclonal antibodies." Springer-Verlag, Berlin, 1984.
- ^ a b Zola H, Swart B, Banham A, et al. "CD molecules 2006 - Human cell differentiation molecules." Journal of Immunological Methods, 2006. PMID 17174972
- ^ Kohler G, Milstein C. (1975) Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity. Nature, 256, 1975, p.p. 495-497. PMID 1172191
- ^ 菊地弘吉・今信一郎 「CD分類と免疫」『免疫・Immunology Frontier』4号、399-405頁、1994年。
- ^ a b Zola, H, Swart B, Nicholson I, et al. "CD molecules 2005: human cell differentiation molecules." Blood, 106, 2005, p.p. 3123-3126. PMID 16020511
- ^ a b 橋本亙・宮坂昌之 「CD分類の新たな展開」『臨床免疫』43号、556-566頁、2005年。
- ^ Schlossman SF, Boumsell L, Gilks W, et al. "CD antigens 1993." Journal of Immunology, 152, 1994, p.p. 1-2. PMID 7902854
- ^ No auther listed. "CD antigens 1996: updated nomenclature for clusters of differentiation on human cells. IUIS/WHO Subcommittee on CD Nomenclature." Bulletin of World Health Organization, 75, 1997, p.p. 385-387. PMID 9342899
- ^ Zola H, Swart B, Boumsell L, et al. "Human Leucocyte Differentiation Antigen nomenclature: update on CD nomenclature. Report of IUIS/WHO Subcommittee." Journal of Immunological Methods, 275, 2004, p.p. 1-8. PMID 12723570
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Japanese Journal
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Related Links
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- これまで、フローサイトメトリーによる細胞表面抗原分析は、「細胞に抗原が発現しているか否か」、あるいは「試料中に抗原陽性細胞がどのくらいあるか」を調べることを目的として行われてきました。一方で、細胞表面の抗原発現レベル ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ビームゲン (0.25mL)
組成
製法の概要
- 本剤は、組換えDNA技術を応用して、酵母により産生されたHBs抗原を含む液にアルミニウム塩を加えてHBs抗原を不溶性とした液剤である。
組成
有効成分
HBs抗原(B型肝炎ウイルス表面抗原)
添加物
水酸化アルミニウム
添加物
ホルマリン(ホルムアルデヒド換算)
添加物
チメロサール
添加物
塩化ナトリウム
添加物
リン酸水素ナトリウム水和物
添加物
リン酸二水素ナトリウム
禁忌
(予防接種を受けることが適当でない者)
- 被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合には、接種を行ってはならない。
- 明らかな発熱を呈している者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
- 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
- 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
効能または効果
- 通常、0.5mLずつを4週間隔で2回、更に、20〜24週を経過した後に1回0.5mLを皮下又は筋肉内に注射する。ただし、10歳未満の者には、0.25mLずつを同様の投与間隔で皮下に注射する。ただし、能動的HBs抗体が獲得されていない場合には追加注射する。
- 2.B型肝炎ウイルス母子感染の予防(抗HBs人免疫グロブリンとの併用)
- 通常、0.25mLを1回、生後12時間以内を目安に皮下に注射する。更に、0.25mLずつを初回注射の1箇月後及び6箇月後の2回、同様の用法で注射する。ただし、能動的HBs抗体が獲得されていない場合には追加注射する。
- 3.HBs抗原陽性でかつHBe抗原陽性の血液による汚染事故後のB型肝炎発症予防(抗HBs人免疫グロブリンとの併用)
- 通常、0.5mLを1回、事故発生後7日以内に皮下又は筋肉内に注射する。更に0.5mLずつを初回注射の1箇月後及び3〜6箇月後の2回、同様の用法で注射する。なお、10歳未満の者には、0.25mLずつを同様の投与間隔で皮下に注射する。ただし、能動的HBs抗体が獲得されていない場合には追加注射する。
一般的注意
- B型肝炎ウイルス母子感染の予防及びHBs抗原陽性でかつHBe抗原陽性の血液による汚染事故後のB型肝炎発症予防には、抗HBs人免疫グロブリンを併用すること。
- B型肝炎ウイルス母子感染の予防における初回注射の時期は、被接種者の状況に応じて生後12時間以降とすることもできるが、その場合であっても生後できるだけ早期に行うこと1)。
- 本剤の3回目接種1〜2箇月後2)3)を目途に抗体検査を行い、HBs抗体が獲得されていない被接種者には追加接種を考慮すること。
他のワクチン製剤との接種間隔
- 生ワクチンの接種を受けた者は、通常、27日以上、また、他の不活化ワクチンの接種を受けた者は、通常、6日以上間隔を置いて本剤を接種すること。
- ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接種することができる(なお、本剤を他のワクチンと混合して接種してはならない)。
慎重投与
(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)
被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合は、健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種すること。
心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
過去にけいれんの既往のある者
過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
本剤の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への接種」の項参照)
重大な副作用
ショック、アナフィラキシー(頻度不明):ショック、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、顔面蒼白等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群(いずれも頻度不明):症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- 感染により血中に入ったB型肝炎ウイルスは、肝細胞に取り込まれ増殖するが、あらかじめB型肝炎ワクチンを接種して能動免疫が獲得されていると、血中に迷入したB型肝炎ウイルスは肝細胞に取り込まれる以前に血流中で中和され、肝炎の発症が防御される。 B型肝炎ワクチンのチンパンジーを用いた抗体産生試験及びB型肝炎ウイルス感染防御試験においても、対象となったすべてのチンパンジーにHBs抗体の産生が認められ、十分な防御効果があることが報告されている7)。
★リンクテーブル★
[★]
- 関
- cell surface antigen
[★]
- 英
- cluster of differentiation, CD
- Bリンパ球 CD10,CD19,CD20
- Tリンパ球 CD2,CD3,CD5,CD7
- 幹細胞 CD34
- 顆粒球 CD13,CD33
- 単球 CD14:LPSをリガンドとし、Toll-like receptorと共役して細胞内シグナルを伝達する分子。
- 巨核球 CD41(GpIIb),CD42(GpIb)
- NK細胞:CD16(IgGのFc部に対する受容体)、CD56(NCAM-I)
[★]
- 英
- cell surface antigen
- 関
- 表面抗原
[★]
- 英
- hepatitis B surface antigen、HBsAg
[★]
- 英
- hepatitis B surface antigen-negative
[★]
- 英
- antigen Ag
- 関
- 抗体
分類
[★]
- 英
- surface、face、superficial
- 関
- 顔、直面、表在、表在性、表層性、面、外面的、表面上、向かう
[★]
- 英
- proto
- 関
- プロト、元