出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/04 14:45:42」(JST)
肝細胞(かんさいぼう、英: Hepatocyte)は、肝臓を構成する70-80%を構成する約20μm大の細胞。肝細胞はタンパク質の合成と貯蔵、炭水化物の変換、コレステロール、胆汁酸、リン脂質の合成、並びに、内生および外生物質の解毒、変性、排出に関与する。また胆汁の生成と分泌を促進する働きも持つ。
肝細胞には、多量のミトコンドリアを反映する好酸性細胞質と、粗面小胞体とリボソームより構成される好塩基性斑点が見られる。褐色リポフスチン顆粒も加齢とともに見られる。 また試料調製の際に除かれた細胞質グリコーゲンと脂質により細胞質に不規則な染色されない部分が観察される。肝細胞の平均寿命は5ヶ月で再生可能である。
肝細胞の細胞核は分散したクロマチンと明確な核小体を持ち球形である。四倍性、多倍性が通常50%以上の肝細胞において起こっているため、核の大きさにはばらつきが見られる。二核細胞もまた良く見られる。肝細胞は平板状に整列しており、レチクリン(コラーゲン タイプ III)ネットワークで支えられた脈管構造(類洞(英: sinusoid)で区切られている。肝細胞板は哺乳類においては一細胞層であり、ニワトリにおいては二細胞層である。類洞は不連続で有窓の血管内皮細胞からなる。この血管内皮細胞は基底膜を持たず、リンパ液をリンパ系へと送りだすディッセ腔により肝細胞から離されている。内皮細胞間には、細網内皮系の一部である食作用をもつ単球由来のクッパー細胞が散見される。ビタミンAを貯蔵し、細胞外マトリックスとコラーゲンを生成する伊東細胞も内皮細胞間に存在するが、光学顕微鏡で発見することは難しい。 さらに肝細胞は肝小葉と言われる集合体を形成し分葉構造を呈する。
肝細胞は、生体異物の生体や代謝への影響を評価する上で重要な生理学的指標である。また肝細胞は培養液の中で増殖せず、冷凍、解凍を含む低温保存の過程で非常に敏感に損傷を受けやすい。 [1]
肝細胞はアルブミン、血液凝固因子のフィブリノーゲン及びプロトロンビンを製造する。またリポタンパク質、セルロプラスミン、トランスフェリン、補体系タンパク質、および糖タンパク質の主な合成の場である。肝細胞はそれ自身の構造タンパク質、細胞内酵素も製造する。 タンパク質の合成は粗面小胞体(RER)で行われる。粗面、滑面(SER)両小胞体は生成されたタンパク質の分泌に関与する。
「脂肪酸の合成」も参照
肝臓は炭水化物から脂肪酸を生成し、さらに脂肪酸とグリセリンからトリアシルグリセロールを合成する。肝細胞はまた、後に脂質と結合してリポタンパク質となるアポタンパク質を合成する。 肝臓はアラニン、グリセリン、オキザロ酢酸などの前駆体から炭水化物を合成する糖新生の生体における主な場でもある。
肝臓は体循環により多くの脂質を受け取り、カイロミクロンの断片を代謝する。アセテートからはコレステロールが合成さえれ、後にコレステロールからは胆汁が生合成される。肝臓は胆汁合成の唯一の場である。
肝細胞は薬物、殺虫剤などの外生物質と、ステロイドなどの内生物質の代謝、解毒、不活性化の能力を持っている。恒常性の維持と、摂取した毒物から生体を守るために、肝臓は腸からの静脈血液に含まれる様々な物質の効率的な解毒を担っている。肝細胞の解毒作用の一つはアンモニアの尿素への変換である。
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陽性率(疾患があるときに陽性となる確率, 感度) | ||||||
肺癌 | 備考 | |||||
扁平上皮癌 | 腺癌 | 小細胞癌 | その他の疾患 | |||
CYFRA21-1 | 57.5%* | 70-80%/73.1%* | 30-40% | 30-40% | 良性疾患:10-15% | |
SCC | ○ | 子宮頸癌、食道癌、皮膚癌 | ||||
CEA | 40-50% | 50-60% | ||||
SLX | 70%* | 0.4 | 肝硬変 | |||
NSE | 10-30% | 70-90% | ||||
proGRP | 70-90%/65.1%* | NSEより上昇率が高く、特異性に優れる | ||||
KL-6 | ○ | 肺腺癌、膵癌、乳癌で40-50%。間質性肺炎の補助診断 | ||||
無印:標準呼吸器病学 第1版 p.327。* 臨床検査学第32版 p.634 |
肝癌関連 AFP, AFP-L3%, PIVKA-II 膵癌ならびにその他の消化器癌 CEA, CA19-9, Dupan-2, CA50, Span-1 肺癌 CEA, sialyl Lex-i (SLX), SCC, SYFRA21-1, NSE, ProGRP 婦人科悪性腫痩 子宮癌:SCC, CA125 卵巣癌:CA125, AFP, CEA, CA19-9, GAT 乳癌 :CA15-3, BCA225, CEA, NCC-ST-439 尿器科悪性腫壕 前立腺痛:PSA(γ-Sm), PAP 膀胱癌 :BTA, NMP22 神経内分泌腫療 NSE 広範な腫瘍に反応するマーカー TPA, BFP, IAP
AFP | 肝細胞癌、肝芽腫、卵黄脳腫瘍 |
CEA | 消化器系の癌、肺癌、乳癌(腺癌の頻度が高く、臓器特異性は低い) |
CA19-9 | 胆道系の癌、膵癌 |
CA125 | 卵巣癌 |
CA15-3 | 乳癌、卵巣癌 |
PIVKA-II | 肝細胞癌 |
PSA | 前立腺癌 |
上皮性腫瘍 漿液性腺癌: CA125 *1 粘液性腺癌: CA19-9 *2, CA72-4, CEA 胚細胞腫瘍 卵黄嚢腫瘍: AFP *3 絨毛癌: hCG 未分化胚細胞腫: LDH *4 悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫(扁平上皮癌) : SCC 性索間質性腫瘍(ホルモン) 顆粒膜細胞腫,莢膜細胞腫:工ストロゲン Sertoli-間質性腫瘍, Leydig細胞腫(門細胞腫) :テストステロン *1 上皮性腫瘍中で最も有用.類内膜腺癌,明細胞腺癌でも陽性を示す.子宮内膜症,炎症,妊娠初期も軽度-中等度上昇 *2 成熟嚢胞性奇形腫で陽性を示すことがある *3 胎芽性癌,混合性腔細胞腫療でも陽性を示す *4 非特異的
(略)
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
肝細胞 | APP産生 |
腎メサンギウム細胞 | 増殖 |
神経細胞 | 分化 |
NK細胞 | 活性化 |
骨髄腫細胞 | 増殖 |
B細胞 | 抗体産生 |
T細胞 | キラーT細胞、IL-2産生 |
巨核球 | 血小板増多 |
造骨系幹細胞 | 分化 |
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