出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/04 21:07:55」(JST)
遺伝性非ポリポーシス大腸癌 | |
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分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | C18-C20 |
ICD-9 | 153.0-154.1 |
OMIM | 120435 609310 114400 |
DiseasesDB | 5812 |
MeSH | D003123 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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遺伝性非ポリポーシス大腸癌(いでんせい・ひポリポーシス・だいちょうがん、英: HNPCC; Hereditary nonpolyposis colorectal cancer )とは常染色体優性の遺伝的素因による大腸癌である[1]。子宮癌、卵巣癌、胃癌、小腸腫瘍、胆嚢癌、尿管癌、脳腫瘍、皮膚癌など、他臓器における発癌もしばしばみられる。これらの発癌リスクの上昇はDNAミスマッチ修復酵素の変異による。
ヘンリー・リンチ(クレイトン大学医学部教授)[2]が1966年に報告した[3]。当初彼は「家族内集積発癌症候群」と記載していた。 「リンチ症候群」とは他の執筆者によって名付けられ、リンチ自身は1985年にHNPCCという概念を提唱した。それ以降これらの二つはそれぞれ用いられていたが、近年の分子生物学の進歩によりHNPCCの本質が解明された[4]。 合併症については別に「ベセスダ基準」が制定されている[5][6][7]。
マイクロサテライト不安定性[8]により病理組織学的には3つのグループに大きく分類される。
HNPCCの遺伝的素因を持つヒトの一生を通じての大腸癌発癌の可能性は80%である。これらの癌の3分の2は右半結腸にみられる。アムステルダム基準に合致した家系での大腸癌の発症平均年齢は44歳であった。HNPCC素因を持つ女性は、一生を通じての子宮内膜癌発症は30~50%にみられる。その発症平均年齢は46歳である。大腸癌と子宮内膜癌の両方を発症した女性のうち半数は子宮内膜癌が先行して発症している。HNPCC関連胃癌の発症平均年齢は56歳であり、多くの場合病理組織は腸上皮化した腺癌である。HNPCC関連卵巣癌の平均発症年齢は42.5歳である。そのうち約30%は40歳未満で診断される。他のHNPCC関連癌も特性がある。
HNPCCではDNAミスマッチ修復能が欠損しており、マイクロサテライト不安定性(MSI)を呈する。高不安定性を示すことはHNPCCの特徴である。マイクロサテライト不安定性は癌組織でも検出される[9]。
HNPCCはDNAミスマッチ修復系の遺伝子の変異と関連することが知られている。
OMIM®[10] 名 | HNPCC関連遺伝子 | HNPCC家系に占める頻度 | 遺伝子座 | 第一報告論文 |
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HNPCC1 (120435) | MSH2 | 約 60% | 2p22 | Fishel et al., 1993[11] |
HNPCC2 (609310) | MLH1 | 約 30% | 3p21 | Papadopoulos et al., 1994[12] |
HNPCC5 | MSH6 | 7-10% | 2p16 | |
HNPCC4 | PMS2 | 比較的まれ[13], <5% [要出典] | 7p22 | |
HNPCC3 | PMS1 | 症例報告[14] | 2q31-q33 | |
HNPCC6 | TGFBR2 | 症例報告[15] | 3p22 | |
HNPCC7 | MLH3 | 議論がある[16] | 14q24.3 |
MSH6の変異を持つ患者は新アムステルダム基準には合致しない傾向がある。[17] MSH6表現形とは、MLH1およびMSH2がやや異なるため、"MSH6 症候群"という表現も用いられてきた。[18] ある研究では、ベセスダ基準はアムステルダム基準よりもこのことを検出しやすいと報告されている。[19]
HNPCCにおける変異のある家系のうち、その39%はアムステルダム基準に合致しないともいわれる。[要出典] それ故にHNPCC遺伝子に欠失を持つ家系は、家族歴にかかわらず、HNPCCに留意しなくてはならない。これはアムステルダム基準では、リンチ症候群の危険性を同定することに失敗することもあるということも意味している。研究の最先端ではスクリーニングのための基準の改善が進められており、この記事のスクリーニング戦略に記載がある。
HNPCC は常染色体優性遺伝である。多くのHNPCC患者は両親から受け継いでいる。しかし罹患率・診断年齢・癌危険率低下・早期死亡については検討が不完全なため、すべてのHNPCC遺伝子変異をもつ患者の両親が癌に罹患したとはされていない。一部の患者は、遺伝ではなく、その世代で遺伝子突然変異を起こし、新たにHNPCCを発症している(de novo HNPCC)。これらの患者はしばしば若年発症大腸癌により診断されている。HNPCC患者は50%の確率で子供に遺伝子を受け継ぐ可能性がある。
DNAミスマッチ修復遺伝子のスクリーニング検査をHNPCC家系では勧められる。日本においては健康保険適応となっている。 癌を発症した場合には癌組織と正常組織でのマイクロサテライト不安定性を調べることができるし、組織採取を行わない場合には採血により白血球での検査を行う。家族内での素因保持の有無を調べることは医療経済的にも有用であるとの報告がある。[20]
以下は分子遺伝学的検査を受けるべき高リスク者を選択するためのアムステルダム基準である: [21]
アムステルダム基準:
アムステルダム基準II (新アムステルダム基準):
新アムステルダム基準に沿って診断を下す。切除組織の病理学的診断と遺伝子検査を行う。
HNPCCの治療の第一選択は外科手術である。ステージ1および2を主として、HNPCCに対する5FUを中心としたアジュバント療法については未だ議論の余地がある[22]。
リンチ症候群の大腸癌・直腸癌に対するアスピリンを用いた無作為二重盲検試験の結果は有意でなかったことが報告された[23]。バーンらは先日NEJMにおいてその後の経過を追ったデータを報告した。それによると4年間以上の高用量アスピリン投与は、リンチ症候群患者において新規発症を減少させることを示していた[24]。現在、高用量アスピリンによる危険性を低下させるため、アスピリン投与量の調節が検討されている。
リンチ症候群患者は、各種の癌に対する検診を定期的に受けなければならず、特に大腸癌・直腸癌に対しては毎年大腸内視鏡を受けることが推奨されている。
日本でもHNPCC家系の症例が報告されている[25]。米国では毎年およそ16万人が大腸癌・直腸癌と診断される。HNPCCはこれらのうち2から7%を占めると考えられている。 日本では、これよりも少なく0.15%から2%との報告がある[26]。HNPCC患者の癌発症年齢の平均は44歳であり、非HNPCC患者の大腸癌発症平均年齢 64歳と比べると非常に若い[27]。
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国試過去問 | 「104D002」 |
リンク元 | 「Lynch syndrome」「HNPCC syndrome」「HNPCC」「hereditary non-polyposis colorectal cancer」「hereditary nonpolyposis colon cancer」 |
関連記事 | 「大腸癌」「癌」「大腸」「遺伝」「ポリポーシス」 |
B
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[★] 遺伝性非ポリポーシス大腸癌, hereditary nonpolyposis colon cancer。リンチ症候群
[★] 遺伝性非ポリポーシス大腸癌、hereditary nonpolyposis colorectal cancer
[★] 遺伝性非ポリポーシス大腸癌 hereditary nonpolyposis colon cancer
stage | 定義 | 治療 |
0 | 癌が粘膜にとどまっている。(M) | 内視鏡 |
I | 癌が大腸壁にとどまっている。(SM,MP) | SM軽度浸潤(<2cm)では内視鏡、それ以外は手術療法 |
II | 癌が大腸壁の外まで浸潤している。(SS,SE) | 手術療法 |
III | リンパ節転移がある。 | 手術療法+補助化学療法 |
IV | 肝転移、肺転移または腹膜播種がある。 | 手術療法 and/or 化学療法 and/or 放射療法 |
N0 | N1 | N2 | H1,H2,H3,M1 P1,P2,P3 | |
M | 0 | |||
SM MP |
I | IIIa | IIIb | IV |
SS,A SE SI,AI |
II |
腫瘍の局在 | 右側結腸 | 左側結腸 | S状結腸・直腸 |
症状 | 自覚症状に乏しい(貧血、腹部腫瘤、腹痛、まれに腸重積) | イレウス多い、左下腹部痛 | 血便/粘結弁 |
下痢 | 便秘、便通過障害(下血・血便) | 便通異常(下痢・便秘、腹部膨満感、しぶり腹、輪状狭窄、糞柱の狭小化) |
Neoplasm | Causes | Effect |
Small cell lung carcinoma | ACTH or ACTH-like peptide | Cushing’s syndrome |
Small cell lung carcinoma and intracranial neoplasms | ADH | SIADH |
Squamous cell lung carcinoma, renal cell carcinoma, breast carcinoma, multiple myeloma, and bone metastasis (lysed bone) | PTH-related peptide, TGF-β, TNF-α, IL-1 | Hypercalcemia |
Renal cell carcinoma, hemangioblastoma | Erythropoietin | Polycythemia |
Thymoma, small cell lung carcinoma | Antibodies against presynaptic Ca2+ channels at neuromuscular junction | Lambert-Eaton syndrome (muscle weakness) |
Leukemias and lymphomas | Hyperuricemia due to excess nucleic acid turnover (i.e., cytotoxic therapy) | Gout, urate nephropathy |
●2005年の死亡数が多い部位は順に | ||||||
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
男性 | 肺 | 胃 | 肝臓 | 結腸 | 膵臓 | 結腸と直腸を合わせた大腸は4位 |
女性 | 胃 | 肺 | 結腸 | 肝臓 | 乳房 | 結腸と直腸を合わせた大腸は1位 |
男女計 | 肺 | 胃 | 肝臓 | 結腸 | 膵臓 | 結腸と直腸を合わせた大腸は3位 |
●2001年の罹患数が多い部位は順に | ||||||
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
男性 | 胃 | 肺 | 結腸 | 肝臓 | 前立腺 | 結腸と直腸を合わせた大腸は2位 |
女性 | 乳房*1 | 胃 | 結腸 | 子宮*1 | 肺 | 結腸と直腸を合わせた大腸は1位 |
男女計 | 胃 | 肺 | 結腸 | 乳房*1 | 肝臓 | 結腸と直腸を合わせた大腸は2位 |
*1上皮内がんを含む。 |
Table 79-1 Cancer Predisposition Syndromes and Associated Genes | ||||
Syndrome | Gene | Chromosome | Inheritance | Tumors |
ataxia telangiectasia | ATM | 11q22-q23 | AR | breast cancer |
autoimmune lymphoproliferative syndrome | FAS | 10q24 | AD | lymphomas |
FASL | 1q23 | |||
Bloom syndrome | BLM | 15q26.1 | AR | cancer of all types |
Cowden syndrome | PTEN | 10q23 | AD | breast, thyroid |
familial adenomatous polyposis | APC | 5q21 | AD | intestinal adenoma, colorectal cancer |
familial melanoma | p16INK4 | 9p21 | AD | melanoma, pancreatic cancer |
familial Wilms tumor | WT1 | 11p13 | AD | pediatric kidney cancer |
hereditary breast/ovarian cancer | BRCA1 | 17q21 | AD | breast, ovarian, colon, prostate |
BRCA2 | 13q12.3 | |||
hereditary diffuse gastric cancer | CDH1 | 16q22 | AD | stomach cancers |
hereditary multiple exostoses | EXT1 | 8q24 | AD | exostoses, chondrosarcoma |
EXT2 | 11p11-12 | |||
hereditary prostate cancer | HPC1 | 1q24-25 | AD | prostate carcinoma |
hereditary retinoblastoma | RB1 | 13q14.2 | AD | retinoblastoma, osteosarcoma |
hereditary nonpolyposis colon cancer (HNPCC) | MSH2 | 2p16 | AD | colon, endometrial, ovarian, stomach, small bowel, ureter carcinoma |
MLH1 | 3p21.3 | |||
MSH6 | 2p16 | |||
PMS2 | 7p22 | |||
hereditary papillary renal carcinoma | MET | 7q31 | AD | papillary renal tumor |
juvenile polyposis | SMAD4 | 18q21 | AD | gastrointestinal, pancreatic cancers |
Li-Fraumeni | TP53 | 17p13.1 | AD | sarcoma, breast cancer |
multiple endocrine neoplasia type 1 | MEN1 | 11q13 | AD | parathyroid, endocrine, pancreas, and pituitary |
multiple endocrine neoplasia type 2a | RET | 10q11.2 | AD | medullary thyroid carcinoma, pheochromocytoma |
neurofibromatosis type 1 | NF1 | 17q11.2 | AD | neurofibroma, neurofibrosarcoma, brain tumor |
neurofibromatosis type 2 | NF2 | 22q12.2 | AD | vestibular schwannoma, meningioma, spine |
nevoid basal cell carcinoma syndrome (Gorlin's syndrome) | PTCH | 9q22.3 | AD | basal cell carcinoma, medulloblastoma, jaw cysts |
tuberous sclerosis | TSC1 | 9q34 | AD | angiofibroma, renal angiomyolipoma |
TSC2 | 16p13.3 | |||
von Hippel–Lindau | VHL | 3p25-26 | AD | kidney, cerebellum, pheochromocytoma |
疾患 | 危険因子 | 防御因子 | |
悪性腫瘍 | 胃癌 | 塩辛い食品、喫煙、くん製製品、ニトロソアミン土壌、腸上皮化生、Helicobacter pyroli | ビタミンC、野菜、果実 |
食道癌 | 喫煙、飲酒、熱い飲食物 | 野菜、果実 | |
結腸癌 | 高脂肪食、肉食、低い身体活動、腸内細菌叢の変化、遺伝(家族性大腸腺腫症) | ||
肝癌 | HBVキャリア・HCVキャリア、アフラトキシン、住血吸虫、飲酒 | ||
肺癌 | 喫煙(特に扁平上皮癌)、大気汚染、職業的暴露(石綿(扁平上皮癌、悪性中皮腫)、クロム) | 野菜、果実 | |
膵癌 | 高脂肪食、喫煙 | ||
口腔癌 | 喫煙(口唇・舌-パイプ)、ビンロウ樹の実(口腔、舌)、飲酒 | ||
咽頭癌 | EBウイルス(上咽頭癌)、飲酒 | ||
喉頭癌 | 喫煙、男性、アルコール | ||
乳癌 | 高年初産、乳癌の家族歴、肥満、未婚で妊娠回数少ない、無授乳、脂肪の過剰摂取、低年齢初経、高年齢閉経 | 母乳授乳 | |
子宮頚癌 | 初交年齢若い、早婚、多産、性交回数が多い(売春)、貧困、不潔]、HSV-2、HPV、流産、人工妊娠中絶回数が多い | ||
子宮体癌 | 肥満、糖尿病、ピル、エストロゲン常用、未婚、妊娠回数少ない、乳癌後のタモキシフエン内服 | ||
膀胱癌 | 喫煙、鎮痛剤乱用、ビルハルツ住血吸虫、サッカリン、防腐剤 | ||
皮膚癌 | 日光(紫外線)、ヒ素(Bowen病) | ||
白血病 | 放射線、ベンゼン、地域集積性(ATL)、ダウン症(小児白血病) | ||
骨腫瘍 | 電離放射線 | ||
甲状腺癌 | ヨード欠乏または過剰 |
1)膨起性往復運動 haustralshuttling movement 2)(単一)膨起性移送運動 segmentalhaustralpropulsion 3)多膨起性移送運動 multihaustralpropulsion 1) 2)により内容物のゆっくりした移動(5cm/hr) → 48hrで上行結腸よりS状結腸へ 4)総蠕動mass movement(mass peristalsis,maSS PrePulsion) 1-3回/日、強い蠕動→結腸内容物が直腸へ移動(→排便誘発) 5)収縮回数:直腸 > S状結腸 のため内容物はS状結腸へ移動 (通常は、直腸に内容物(-)) 6)胃大腸反射 gastro-colonic reflex 小腸大腸反射 ileo-colonic reflex:胃、小腸に内容物-→結腸に総蠕動(+) *排便 1)解剖 ①内肛門括約筋internalanal ②外肛門括約筋externalanal sphincter---平滑筋 sphincter山-一横紋筋 2)排便のメカニズム i)総蠕動一糞便直腸へ ii)直腸内圧〉20Ⅷ舶g ⇒ 直腸壁伸展⇒ 仙髄排便中枢(S2-4) ⇒ ①高位中枢(便奇形成) ②排便反射defecation reflex 内肛門筋弛緩 外肛門筋収縮(一過性) 直腸蠕動運動(⇒内圧をさらに高める) iii) 内圧45-55mmHg以上 内容物200ml以上 便意による排便動作 外肛門筋弛緩 腹筋、横隔膜収縮
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